軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1010.世界を変えうる者

「さあ覚悟しなさい、世界を乱す闇の者たち! 私は星野エトワール!」

「同じく、花森ミヤビ!」

「同じく、雪崎ヒカリ!」

「「「悪しき魔物は、私たち光の使徒が打破します!」」」

しっかりタイミングを見計らって、名乗りを上げる光の使徒たち。

「そしてわたしが――――世界を変えうる者だ」

最後にしれっと、カッコつけた名乗りを上げるメイ。

「きますよ! 世界を変えうる者!」

白の軽鎧に白のコートをまとった、白金の短髪少女。

可変する光の武器を剣にした、星野エトワールが叫ぶ。

強烈な追い風に押される形で飛び込んでくるのは、『緑紫』に輝く結晶を胸元に埋め込んだ黒獅子。

急速に生成された紫結晶の豪爪を、先頭のメイに振り下ろす。

「はっ!」

これを身体の傾け一つでかわしたメイ。

「【アクロバット】!」

そのまま逆の前足で放つ二撃目を、バク転で回避。

だが黒獅子の攻撃は続く。

紫結晶によって伸びた尾の、回転撃が迫り来る。

描かれるエフェクトラインは『橙』だ。

「ふっ、劇毒を含んだ攻撃か……」

『世界を変えうる者』と呼ばれて気分上々のメイ、ちょっと口調をカッコつけたまま、難なくしゃがんでこれを回避。

当たれば炸裂して『劇毒』をもたらす一撃も、問題なくかわしてみせた。

二度のバク転で、生まれた距離。

すると黒獅子は、その大きなアギトを開いた。

そして結晶が『橙緑』に輝き出す。

「これは毒の風砲弾……! 回避を!」

クール顔を作るメイの言葉の直後、放たれたのは【毒爆風砲】

嫌な橙色の風弾が、こちらに向けて放たれた。

足の速いエトワールは、すぐさま回避行動を取る。

白銀の盾とランスを持った花森ミヤビも、盾を構えた。

「【ルミナスシールド】!」

白に黄色と橙の束が混じった長いポニーテールとフードマントを、風が揺らしていく。

「【ホーリーストライク】!」

ミヤビの盾に、守られた雪崎ヒカリ。

大きな白魔女帽の魔導士は、すぐさま魔法での反撃に成功。

こうして見事、先制ダメージを与えてみせた。

「さすが。見事な先読みと身体さばきだ」

メイの驚異的な戦闘能力に、思わずこぼすミヤビ。

「ふふふ、これが『世界を変えうる者』の――――力だす」

「力だ」と「力ですっ」が、つい混ざってしまって生まれた「力だす」

良いスタートを切った四人。

メイの『世界を変えうる者』口調以外は、完璧だ。

「グオオオオ――ッ!!」

二度ほど転がって体勢を直した黒獅子は、すぐさま攻撃体勢に入る。

「「「「ッ!?」」」」

結晶が『紫橙』に輝くと、地面から次々に突き立つ結晶塊。

バラバラの高さの結晶が、メイたちを取り囲むように立ち、黒獅子の姿を隠してしまう。

「……これは厳しいですね」

辺りに視線を走らせながら、息を飲むエトワール。

ミヤビが盾を持つ手にも、力が入る。

「門の方向から、時計回りで王都の方へ……来るっ!」

しかしこの動きを『足音で判断』したメイは、すぐさま位置を通達。

直後、黒獅子が紫結晶をへし折りながら飛び掛かってきた。

砕けた紫結晶が舞い散る中、特攻への反応は本来とても難しい。

「【フラッシュジャンプ】!」

だが前もって方向まで知っていれば、恐れるほどのものではない。

エトワールは、これをしっかりと跳躍でかわす。

すると黒獅子は長めの制動を取った後、振り返って紫結晶を全身に展開。

そのまま爆散させ、無数の結晶片を吹き飛ばした。

「「「「っ!?」」」」

さすがに初見での回避は不可能。

盾を持つミヤビ以外は、防御を選択してダメージを軽減。

だが、黒獅子の結晶片攻撃はこれで終わらない。

「これはっ!!」

思わずエトワールが驚愕する。

黒獅子の身体を新たに覆う紫結晶に、橙の光が灯る。

すると突き立ったままの結晶塊たちも、橙色に輝き出した。

嫌な予感は当たる。

黒獅子のまとった結晶片と、付近の結晶塊から弾け散る結晶片。

全方位から放たれるのは、劇毒を含んだ散弾攻撃だ。

「この密度で、劇毒を使うのかよ!」

「これはさすがにキツいね……っ!」

ほぼ全方位からの攻撃。

それは盾持ちのミヤビですら、諦めざるを得ない状況。

しかしメイにとっても、粉砕攻撃は二度目。

対処法はすでに、考案済み。

「【グリーンハンド】【豊樹の種】!」

すぐさま自分たちを中心に、小さな密林を生成。

全方位から迫る劇毒破片を、厚い木々の輪で防いでみせた。

役目を追えた木々は自然とひしゃげ、道を開いていく。

「「「「ッ!?」」」」

しかし黒獅子は、この瞬間を狙って動いていた。

緑の輝きによる、高速移動。

その狙いはエトワールだ。

「【チェンジアームズ】!」

回避からの反撃を狙い、魔力の剣を生み出し構える。しかし。

攻撃にくると思わせてからの、直前停止。

黒獅子は大きく息を吸う。

【咆哮】は、付近一帯のプレイヤーを強制的に硬直させる一撃だ。

「マズいです……!」

「これはさすがに、どうしようもないね……っ!」

必死に防御態勢を取る、エトワールとヒカリ。

「グオオオオオオ――――ッ!!」

「がおおおおおお――――っ!!」

「「「ッ!?」」」

しかし負けじとメイも、【雄たけび】で反撃。

二つの音波攻撃の可否を決めるのは、当然その威力だ。

【咆哮】をかき消された黒獅子が、動きを止めた。

これを見たエトワールは、すぐさま動き出す。

「【シャイニングステップ】!」

輝きを残す華麗なステップで迫り、手にした無形の光剣を振り払う。

「【シャインセイヴァー】! ミヤビ!」

光の粒子を散らしながらの斬り上げ、そして振り降ろし。

「【ディバインスラスト】【大旋回】! ヒカリ!」

続いて烈風と共に放たれるミヤビの突きが刺さり、そのままランスの回転撃で弾く。

「【ホワイトノヴァ】!」

そして広がる白光の爆発が後を追い、黒獅子を吹き飛ばした。

見事な連携で、黒獅子のHPは2割強ほど減少。

「…………」

一方メイは、【雄叫び】という野性味あふれる自身の行動に、手で口を押えたまま硬直していた。

光の使徒三人に持たれていた、『世界を変えうる者』というカッコいい印象。

それが『野生』に上書きされてしまうかもしれない自身の行動に、震える。

「もっとカッコいい、『がおー』の言い方があったかも……」

レンが聞いたら「どう考えてもカッコ良くはならないと思うけど」と言いそうなことを、真剣に悔やむメイ。

「まさか三連続の攻撃を、全て防いでチャンスを作り出してしまうとは……」

「綺麗に全部、押し返してくれたね」

そんな中、ミヤビが一言。

「これが、これが『世界を変えうる者』の力だというのか」

「っ!?」

聞こえた言葉に、メイは思わず尻尾をピーン! と伸ばして歓喜。

「フフフフフ」

妖しい笑いを演出しながら、三人の前へ。

思わずもれそうになる「えへへ」という笑みを隠し、クールな面持ちを作り直す。

「その通り。これが、これこそが――――世界を変えうる者の力だす!」

気合を入れ直したメイ、やっぱり「力だ」と「力ですっ」が混ざる。