軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

47 満腹食堂と楽しい時間

私は住んでいた頃、いつも通っていたお店にニーナを連れて行くことにした。

町の冒険者ギルドに併設した『満腹食堂』

幾多の戦士達が集う戦場の暖簾をくぐる。

私の顔を見て、店主さんは瞳を揺らした。

「久しぶりだな、嬢ちゃん」

「はい。お久しぶりです」

覚えててくれたんだ、と少しうれしい。

「何にする?」

「満腹定食でお願いします。ニーナは?」

「じゃあ、私は日替わり定食を」

手際よく調理する店主さん。

周囲のテーブルにいたお客さんが私を見て言う。

「おいおい、死んだだろあの嬢ちゃん」

「あんな子供が満腹定食頼むとか」

誰が子供だ。

私は品格と色気を兼ね備えた大人女子だと強く抗議したい。

ちくしょう、許せない。

目に物見せてやる……!

二十分後、綺麗さっぱり完食した私に、お客さんたちは呆然としていた。

「嘘、だろ……」

「どんな胃袋してんだよあの嬢ちゃん……」

やれやれ、圧倒的大食い力を誇る私に戯言を言わないでもらいたいね。

どや顔でお茶を飲む私に、ニーナは笑って言う。

「ノエルって本当に昔からよく食べるよね」

「そうだった?」

「うん。家で食べたとき、あまりに食べるからいつもクールなお母様が白目剥いてたもん。あれ、可笑しかったなぁ」

思いだされる昔の記憶。

そうだ。

ニーナの家のごはんがあまりにおいしくて、ここで二日分食いだめしちゃおうみたいなテンションで食べるようになって。

それから、大食い力が劇的に上がっていったんだっけ。

全然気づいてなかったけど、今思えば大分迷惑な子供だったかもしれない。

「あの……今さらだけどごめん……」

「なんで? 私は本当に感謝してるんだよ。ノエルは、私を退屈な毎日から救い出してくれたの。我慢しなくていい。良い子にしてなくてもいいんだって」

そう言ってくれるのはうれしいけど、かなり悪い影響を与えてしまっている気がする。

裕福なお家のお嬢様に木登りと悪ガキの殴り方を教えるって……。

冷静に考えればなにやってるんだ、昔の私……。

若き日の行いを振り返って頭を抱える私に、ニーナは言った。

「私が魔法医師になったのもノエルの影響なんだよ。教えてくれた回復魔法がきっかけなんだから」

「え、魔法医師してるの?」

驚く。

魔法医師は国家資格が必要な狭き門で。

優秀な極一部の人しかなれない、魔法職の中でも最難関のひとつのはずなのに。

「女性で魔法医師ってまだほとんどいないんじゃ……すごいね、ニーナ」

「えへへ。もっと褒めてくれるとうれしいなって」

「頭良い! かっこいい! ニーナ天才!」

「ふふふ」

ニーナはうれしそうだった。

そっか、魔法医師なんだ。

すごいなぁ。

感心する私に、ニーナは言う。

「でもね。実はもう一つ別の仕事をしてるの。これ聞くと、ノエルは驚くと思うなぁ」

「何の仕事?」

「冒険者」

「え?」

予想以上に意外な言葉が信じられなくて聞き返す。

ニーナはいたずらっぽく笑って言った。

「 回復術士(ヒーラー) として冒険者をしてるの」

冒険者は身分、家柄を問わず誰でもなることができる職業だ。

なのでそのほとんどが平民出身。

上流階級には軽んじてバカにする人も多いと聞く。

だからこそ意外だった。

どうしてお嬢様なニーナが冒険者を?

聞いた私に、ニーナは言った。

「冒険者は村や町を襲う魔物から人々を守るお仕事でもあるでしょ? 魔物の暴力から、弱い立場の人たちを守れる自分になりたかったの。ノエルちゃんが私にしてくれたみたいに」

ニーナはなりたい自分を見つけて。

あきらめずそこに真っ直ぐ向かっていったんだ。

きっとつらいこともたくさんあったと思う。

女性で魔法医師で冒険者なんて、覚悟なしになれるようなものじゃないから。

「尊敬する。本当にすごいよ、ニーナは」

大人になったニーナはなんだかきらきらしてて、まぶしくて。

そんなニーナを心から祝福できる自分でいられるのがうれしかった。

『実は仕事がうまくいってなくて』

前にここで昔の友達と再会したときには、

『つい比べちゃって、心からお祝いできなくて。ごめんね、私ダメなやつだ』

心からお祝いできない私がいたから。

本当に、王宮魔術師として拾ってもらえてよかった。

誰にも必要とされずにいた私を、見つけてくれてありがとう、ルーク。

声をかけてくれた親友に、改めてそう思う。

「でも、私はノエルの方がすごいと思うよ」

ニーナがそんなことを言うので、

「ふふふ。もっと言って」

と甘えてみることにした。

「かっこいい! 最強! 天才!」

「えへへ」

二人で昔みたいに笑い合う。

お互いに褒めあって照れあって。

楽しい時間はあっという間に過ぎていった。