軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18 力をくれる言葉

舞踏会は夕方から夜にかけて。

それに合わせて、その日の私は午後から出勤することになっていた。

たっぷり昼前まで寝て体力を回復してから、ごはんを食べて王宮へ。

舞踏会に参加する王宮魔術師さんたちと一緒に、隊舎で身支度をしてもらう。

「お任せください。『誰よりも綺麗にしてください』とルーク様から仰せつかっておりますから」

王宮で働く侍女長さんは真剣な顔で私にお化粧をしてくれた。

「だ、誰これ……」

鏡の前で私は困惑する。

えらい美人さんがいるんだけど。

わ、私なのか……?

王宮のお化粧技術すげえ……。

絶句して鏡を見つめていた私に、侍女長さんは微笑んで言う。

「次は、ドレスの着付けをいたしましょう」

頭の九割を魔法が占めていて服もお化粧も適当系女子の私なので、百戦錬磨の侍女長さんに意見なんてできるわけがない。

うながされるまま、ドレスの着付けへ。

サイズを合わせていた侍女長さんは、私の胸元に目を留めて怪訝な顔をした。

「……これは何ですか?」

「ドレスを着るなら大きい方がいいのかなって! パットを多めに重ねておきました!」

折角王国一の舞踏会に出るのだもの!

セクシーで色気あふれる大人の女性な姿で出たいもんね!

いつもより大きな胸を張って言った私に、侍女長は抑揚のない声で言った。

「外してください」

「え、でもセクシーな大人路線が」

「いいから外してください」

「……はい」

有無を言わさず外されてしまう。

胸元すかすかにならないかな、と怯えていた私だけど侍女長さんのドレス選びは的確で、想像よりずっと綺麗なドレス姿の私が完成した。

すごい! まるで別人みたい!

綺麗になった自分がうれしくて、鏡の前でくるくる周りながら細部の点検をする。

ルークのやつ、絶対びっくりするぞ。

さあ見なさい、私の真の姿を!

どや顔で披露した私に、ルークは言った。

「綺麗だよ。でも、僕はいつもの君の方が好きかな」

やれやれ、見る目がないねえ、この人は。

公爵家の人なんだからもっと美というものに興味を持った方がいいよ、と伝えると、「君には言われたくない」と真顔で言われてしまった。

むむむ、なんと失礼な!

そういう方面に関心が無いのは否定できないけど。

まったくもってその通りだけど。

「各員にはこのボードに記した配置についてもらう」

ミーティングでガウェインさんの話を聞く。

舞踏会の警備は三番隊が主導で行われるらしい。

各隊から応援を呼び、ルークとレティシアさんを含む 聖金(アダマンタイト) 級魔術師が五名参加している他、 聖宝(メイガス) 級であるガウェインさん自身も参加する様子。

「いつ何が起きるかわからない。常に万全の準備をしておいてくれ」

腕組みして言うガウェインさん。

「いいか。俺たちの仕事にミスは許されない。警護する対象は舞踏会に出席した人たちの命だけじゃない。彼らを大切に思い、帰りを待っている人たちの気持ちもそこに乗っている。そのことを忘れるな。自負と覚悟を持って行動しろ。良いな」

思いのこもった言葉に、先輩たちと一緒に返事をする。

『よし、やるぞ!』と張り切る私の肩を叩いたのはガウェインさんだった。

「お前は背負い込む必要ないからな。大きな仕事はこれが初めてなんだ。ミスしてもフォローできる位置に配置してるし、何かあってもそこに置いた俺の責任だ。怖がらず、思いきりやっていい。責任は全部俺が取る」

にっと口角を上げて私の背中を叩いた。

「期待してるぜ。ノエル・スプリングフィールド」

その言葉がどんなにうれしかったか。

前の職場の冷たい侮蔑の言葉とは違う、あたたかくて力をくれる声。

なんてありがたい言葉だろう。

期待に応えられるようがんばらなきゃ。

決意を胸に、会場に向かう。

緋薔薇が咲き誇る庭園の先、世界でも有数の美しさとたたえられる『赤の宮殿』の大王宮。

『緋薔薇の舞踏会』が始まる。