作品タイトル不明
そんなつもりはないけどね、と女二人は言う。①
「ほほほほほんじつはお日柄もよくお招きいただき、あ、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる朝霞。若干曇っているがそんな野暮なことは言うまい。
「あらあら、丁寧にありがとねー。え、これ、お土産? あらあら、お母さんにもよろしく言っといてね」
朝霞が差し出すお洒落な紙袋を遠慮なく前のめりに受け取るマイマザー。俺、ちょっと恥ずかしいよお母さん! さて、今日はバーベキュー! なぜバーベキューをするかと言うと俺とトラの幼馴染の男女がアメリカ留学から帰ってきた男女のお祝いなのである。
『アメリカと言えばバーベキューでしょ!』という謎理論を持ち出すウチの母親。
何故アメリカとバーベキューで張り合おうとするんだ? 圧倒的に日本の不利だろ!
ていうか、ただバーベキュー食べたいだけだと思う。ウチの母。
で、ワイワイ大好きワイのマザーは、朝霞も呼んだ。なぜ? なぜか分からんが呼んだし、朝霞も来た。緊張してるくせに来た。なぜ?
「や、こ、小谷君……小谷君はわたしが守るからね……」
何故? アイツは、確かに凶暴だが、何故朝霞はそれを知っているんだ。
「やふもじゃなくて、じぶんのやふもってことばねぇえ~?」
トラ喰いながらしゃべるな。っていうか、なんで食ってんの? なんて言ったの?
自分のヤフーモバ〇ル? だが、なんか朝霞が顔真っ赤にしてトラを睨んでるから図星だったようだ。ていうか、何故俺の腕をぎゅっとしてるの? 照れちゃうでしょ!
「おおおおおおい!」
そんな俺達の耳にぶちこまれるデカい声。ヤツが……ヤツが帰ってきた。そのビッグボイスにびくりと慌てて離れる朝霞。ちょっと残念……い、いや! ちがうぞ! 俺は、純粋に朝霞の事を! トラはシャウトにむせている。ウケる。
遠くを見ると手を振る金髪女。デカい。色々デカいのが全力で走ってくる。って、え? スピード落ちてなくね? これ、俺にぶつか……!
「やくもく……!」
「ヤックモーーーーー!」
ビッグボイスと同時に衝撃が俺を襲う。なんだコイツはアメリカでアメフトを覚えてきたのか!? タックルしてきたんですけど!
しかも、体幹がしっかりしてるから倒れることなく俺を鯖折りしている。やめろ! 思いっきり、そのお前の男女っぽくないデカ胸部が押し当てられているんだよ! あと、なんかいい匂いするからやめて! 朝霞がもんのすごい目で見てるからやめて!
「ばか! 離れろ! きらら!」
星野きらら。とってもファンシーな名前のとってもパワフルな女。昔から何かと近い。あと、トラには勝てないと思っているのか俺にとことんぶつかってくるイノシシ女。
「久しぶりだなあ! ヤクモ! 背ちじんでんじゃねえか!? あはははは! やーいちーびちーび! ヤクモー!」
過剰なスキンシップ。アメリカで何を学んできたんだ、コイツは……。ていうか、マジでやめろ。お前の傍にジャパニーズホラーが近づいてんぞ。
「……あの、小谷君がいやがってるのでやめてくれませんか……?」
呪怨。
「いやああああああああああ! じゅおーん!」
流石幼馴染思考が一緒。闇圧を放ち続ける朝霞にはそんなの関係ねえ! の、ようだ。
きららの文字通り目と鼻の先でじっと目を見開いている。こええ。
「いやああって言いながらそのどすけべな胸をおしつけないでって言ってるんですけど?」
「……ん? あなた……が、もしかして、ヤクモの……あーそう。ごめんねえ~、これは小さいころからアタシとヤクモのおなじみのスキンシップだからさ~」
嘘つくな。ちがうだろ。いや、でも、確かに出合い頭にプロレス技とかかけられまくったから間違いではない、のか……。
「そうなんですか。だけど、あなたの知らない間に八雲君は変わったので。八雲君はこういうのいやなので、ね? 八雲君、そうだよね、ね?」
朝霞が俺の手を引いて笑顔で迫ってくる。しかも、ちょっと指関節を極めてくる。いてて。きららに鯖折りを喰らいながら朝霞に指関節を極められている。何、この状況?
「アハハハハハハハ! 我が息子ながらおもろ、アハハハハハ!」
「うまあ! おばちゃんこれおかわりぃ!」
爆笑するな、母。爆食するな、トラ。爆発寸前な感じでにらみ合う二人。
もう一度言うぞ。
何、この状況?