軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

テッポウウオ

「どうしてサフィーさんとルミアさんがここに?」

「いやー、ルーカス様とパーティーで仲良くなってね。ちょうどエキシオール家に向かう用事があると聞いたからお供させていただいたのさ」

そういえば町で出会った時にパーティーに招待されているとか言っていたな。

まさか、沈没船の話を聞くためだけに参加して、仲良くなったというのか。

それとなく視線をルミアの方に向けると、彼女は苦笑いをしていた。

サフィーの無駄な行動力に呆れるばかりである。

「ルーカス殿のご用件は進捗確認を合わせた訪問ということでよろしいでしょうか?」

「そういうことになります。突然押しかける形になって申し訳ありません」

振り回されるルーカスも大変だろうけど、サフィーはマスタークラスの錬金術師。仲良くなれるに越したことはない相手だろうからwinwinなのだろうな。

「いえ、構いませんよ。こちらもご依頼の件でご相談したいことがありましたから」

「それはなんでしょう?」

ルーカスが前のめりになりながら尋ねるが、クラウスは近くのソファーで腰かけているサフィーやルミアに視線を向けた。

彼女たちが聞いていてもいいのかと尋ねているのだろう。

クラウスが鋭い視線を向けるも、サフィーは面白そうな顔をしているだけだ。立ち去るつもりは微塵もない。

「ああ、サフィーさん達も依頼のことをご存知なので大丈夫ですよ」

「そうでしたか。では、遠慮なく」

クラウスはそこまで言うと、俺に会釈して説明するよう促した。

そこまで言ったのならクラウスが話してくれればいいのにと思ったが、現場を見てきた俺が直接伝えるのがいいだろう。

「本日、小島の傍で沈没船を確認しました」

「おお、慣れない海だというのに、もうそこまでたどり着いたのですね」

割と早いペースで進んでいることにルーカスは喜んでいる様子だ。

それだけにスケルトンのことは言いづらいけど、避けては通れない道だ。

「沈没船を軽く調査したところ、あるスケルトンがいました。鑑定スキルで確かめたところ、それはルーカス様の祖父であるバルバロイ様でした」

「亡くなった祖父が魔物に……」

ルーカスさんは驚きで目を見開き、声を漏らした。

亡くなった家族が魔物化しており、長い年月もの間存在していたことに驚いているようだ。

ショックを受けているルーカスにどのように声をかけていいかわからない。

亡くなった身内が魔物となっているのはどのような気持ちなのか。

談話室に重苦しい空気が流れる中、ルーカスが口を開いた。

「……祖父は船の中ではどんな様子でしたか?」

「アイテムをとても大事そうに守っておられました」

実は生きていたと言っても、既にバルバロイさんとしての意識は勿論ない。生前の強い感情で行動しているだけの魔物だ。

「アイテムを回収するにはバルバロイさんを無力化する必要があります。どういたしましょう?」

「……魔物と化し、いつまでも海の底にいるのは不憫です。可能ならばできるだけ傷つけずに遺骨を回収していただけないでしょうか? 報酬は上乗せいたしますので」

貴族でありながら真摯に頭を下げて頼み込んでくるルーカス。

クラウスから事前に頼まれるかもしれないと言われていたので、心の準備も既にできていた。

「わかりました。可能な限り傷つけずに回収しますが、再びスケルトン化するようなことは?」

「それならば、あたしが聖水を作ろう。それを振りかければ悪い魔力が寄ってくることはない」

「なら、問題ないですね」

真面目な顔つきになったサフィーが提案する。

どうやら聖水というアイテムがあれば、二度とスケルトン化するようなことはないようだ。

「お二人とも、ありがとうございます」

俺とサフィーが協力することを告げると、ルーカスは深々と頭を下げた。

バルバロイさんの件の相談と進捗の報告を終えると、話し合いはお開きムードだ。

他愛のない会話をサフィーやルミアと少し交わして、ルーカス達は帰ることになった。

「軽い気持ちで訪問したが、少しタイミングが悪かったようだ」

さすがにバルバロイさんの件があって、いつものように茶化すことや、海の様子を聞きづらかったのだろう。

う。

サフィーは気まずそうに頭をかいた。

「だから無理についていくのは良くないと言ったんですよ師匠」

「反省しているからそう怒るな」

珍しく素直な様子のサフィーにルミアもこれ以上は言わなかった。

サフィーは聖水を無償で提供すると言ったのも、強引についてきてしまったお詫びなのだろうな。

別に誰かが特別悪いとかはなく、たまたまタイミングが悪かっただけだ。

ルーカスもサフィーもこんな相談が出るとは思っていなかっただろうし。

「ルーカス様の依頼が終わったら、また改めて声をかけるよ」

「わかりました」

本当は何かしらの用件があったのだろうな。

しかし、今の状況を考えるとルーカスの依頼を片付けてからがいいだろう。

「お忙しい中、お邪魔しました」

最後にルミアが軽く頭を下げると、ルーカスの後に付いていった。

リンドブルムに着いて、四日目の朝。

俺はルーカスの依頼を片付けることにした。

本当は三日目である昨日、とりかかろうとしたが、長時間海で活動していたせいか身体が異様に重かったのでやめておいた。

恐らく、旅の疲れやらが纏まってやってきたのだろう。

それもあって昨日は屋敷で一日中ゆっくりとしたお陰で今日の体調はバッチリだ。

身体も重くないし、魔力全快だ。

そんなわけで朝食を食べ終えた俺は、今日も海守の腕輪を使って海に入っていく。

調査で索敵をし、たまに素材を採取しながら進んでいく。

最近は海の中の地形も把握できてきた。

隠れやすい岩場や魔物の生息する場所もわかってきたので、危険な魔物と遭遇して肝を冷やすことも少なくなったな。

それでも森と違って全方位警戒しなければいけない海は侮れない。

水魔法で推進力を得ながら最短ルートで突き進み、西にある小島の傍にやってきた。

海底では沈没船が変わらない様子で佇んでいる。

周囲に魔物がいないことを調査で確認し、沈没船の中に入っていく。

幸いにもスケルトンを確認するために入っているので、船内の構造は少しだけ把握している。

「……バルバロイさんも変わらず船室にいるみたいだな」

調査を発動してみると、バルバロイさんと思われるスケルトンのシルエットが見えた。

二日目と同じように船室で大人しく座り込んでいるようだ。

他に気になる部分は日にちが空いたことで、船内に生息している魔物の数や種類が微妙に変わっていることくらいか。

これだけ大きな穴が空いていて、出入りも自由なのだ。魔物が変わったり、増えたりするのは仕方のないことだな。

暗い船内をライトボールで照らしながら進んでいく。

扉を壊した部屋を通り抜けて廊下に出ると、魔物のシルエットとして表示されている魚が泳いでいた。

やたらと細長い小魚で口元が尖っている。一見して、どこにでもいるような小魚であるが、危険なのだろうか。

【テッポウウオ 危険度C】

鋭く尖った口で海水を吸い込み、それを勢いよく吐き出して攻撃する。

噴射された水はとても速く、鉄板すらも貫く。

鑑定してみると、このような情報が表示された。

あっ、思っている以上に危険な奴だ。あんな小さくてひょろ長い見た目をしながら危険度がCもあるなんて。

舐めてかかったらあっという間に撃ち抜かれて穴が空いてしまうだろう。

しかし、今俺がいる場所は狭い船内の廊下だ。他に部屋こそあるものの基本的に一本道で、遠くから水を飛ばされたら避けるのが難しそうだ。

無理矢理押し通るよりも、隠れてやり過ごす方が無難だな。

そう思って部屋で待機しているが、テッポウウオが中々どこかに行ってくれない。

なにをするでもなく廊下をふらふらと泳いでいる。

この辺りに面白い生き物なんていないし、餌だって食べているように見えない。

早くどこかに行ってくれないだろうか。

上の壁をぶち抜いて無視する選択もあるが、音を聞きつけて他の魔物が寄ってきたら嫌だな。

ひょっとこみたいな顔をしているアイツを見ていると、若干苛立ってきた。

ボーっとしてよそ見しているようだし、今なら部屋から部屋に移動して進めるんじゃないか?

俺はこっそりと部屋から出て、身をかがめながら廊下の端を歩く。

すると、テッポウウオはボーっとした顔からは想像できないような反応で振り向いて、口元を丸く膨らませた。

まずい、水が飛んでくる。

身を投げるように転がると、頭上を弾丸のようなものが通り過ぎた。

再びテッポウウオの口元が膨らむのを見ながら、近くの部屋に避難する。

すると、入り口の壁が貫通して小さな穴が空いていた。

「調査」

顔を出すのも怖いので壁越しにスキルを発動すると、テッポウウオのシルエットが見える。

どうやらこちらに口を向けながらゆっくりと近付いている模様。

距離が離れているのが一番困るが、近付いてくるのなら好都合だ。

俺は部屋から出ることはせずにテッポウウオが接近してくるのをジッと待つ。

そして、テッポウウオが部屋の前までやってきて、こちらを視認すると海水を吸って口元を膨らませる。

俺は水魔法を発動させて、テッポウウオの口に海水を流し込んでやった。

体内で蓄積できないほどの海水にテッポウウオは大きく目を見開いて、パンパンに膨れ上がって破裂した。

目の前で四散する姿は少しグロテスクであったが、魔石は楽に採取することができた。