軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

沈没船

「おっ?」

海底付近を進みながら調査スキルを発動すると、岩陰から生えている水晶や地中に埋まっている鉱石らしきものを見つけた。

どうやらこの辺りに海底鉱石があるらしい。

地中深くに眠っていたものが地殻変動などで露出したのか、それとも海底神殿の近くには文明があり、ここは鉱山かなにかであったのか。

調査だけではそこまで知りようがないが、今の俺は文明の歴史よりも目の前の素材の方が大事だった。

海底にある鉱石を採掘するなんてロマンがあるじゃないか。

マジックバッグから硬魔石で作ったツルハシを取り出す。

ドボルザークとの戦いで魔力を込めたせいか極硬魔石になってしまったが、魔晶石で魔力を吸い取ったお陰か元に戻っている。

こいつなら海底での採掘もなんなくこなせるはずだ。

【マリンオーラ】

海の中で見つかる青水晶。

ブルーが濃いほど価値が高いとされる。加熱すると澄んだ青になり、変色することがなくなる。

【ダークネスオーラ】

海の中で見つかる暗青水晶。

ブルーが暗くなるほど価値が高いとされる。光を半減させる性質がある。

【海鉱石】

海底にある鉱物や不純物が混じった鉱石。武具として加工するには不純物が多すぎるが、錬金術で抽出してやると、美しい真っ青な石になる。

宝石などの鑑賞用として扱われる。

海水があるせいでかなり力を込めて振らないといけないが、持ち前の硬さで岩を砕くことができた。

採掘できたのは二種類の水晶と一種類の鉱石。

マリンオーラはとても澄んだ色をした青水晶でとても美しい。

まるでリンドブルムの海を表しているかのようなハツラツとした青さ。眺めているだけで元気になれそう

だ。

ダークネスオーラは暗い青色に輝く水晶で引き込まれるような美しさがある。まるで深海のような深さと神秘さを秘めているようだ。

どちらも色味によって価値が変動するもののようだ。

そして、地中にあったのが海鉱石だ。

パッと見た感じでは青みがかったどこにでもあるような鉱石に見えるが、錬金術で不純物を抜いてやると真っ青になるようだ。

とてもそのようになるとは思えないが、鑑定先生が嘘をつくことはないので信じてマジックバッグに収納しておこう。

どれも装飾に使えそうでロスカに持っていってやれば喜んで買い取ってくれそうだな。

ロスカには食料なんかのお土産よりもこっちの方がいい気がする。

水晶と鉱石を収納して進むと、砂に擬態している魔物のシルエットが見えた。

丸っこいアンコウのような姿をしており、よく見ると微かに砂が盛り上がっている。

【スナガブル】

海底付近に生息している魚型の魔物。夜行性であり、日中はほとんど動かずに砂に潜っている。

砂に擬態し、真上を獲物が通過した瞬間食らいつく。

鑑定してみると砂の中で待ち構えているタイプの魔物だった。

興味本位で岩に付着していた貝をスナガブルのところに放り投げてみる。

すると、アンコウみたいな顔をした魔物が勢いよく食らいつき、鋭く尖った牙で殻ごと貝をバリボリと食べた。

「気付かずに足を踏み入れていたら大変なことになるだろうな」

スナガブルは貝を食べ終わると、こちらを一瞥して砂に潜った。

調査スキルでは地中深くに逃げていくスナガブルの姿が見えている。

海底は地上よりも危険が多いな。それに近海と沖では魚の種類や魔物の数も違う。

調査を小まめに使ってしっかりと索敵して進まないとな。

調査で索敵をし、水魔法の推進力で進むことしばらく。

リンドブルムの西にある小島の傍にやってきた。

海面から顔を出してみると小さな島が見えている。ということは、この辺りに沈没船があるというのは間違いないだろう。

船の中にはたくさんの魔道具や資財が残っているとルーカスさんは言っていた。

無暗に探し回らなくても調査を使えば、すぐに探し出せる気がする。

「調査」

いつもよりも魔力を多く込めて調査スキルを発動。

自分を中心に小島の奥まで浸透するように魔力を広げる。

視界の中で大量の素材が表示される。色々と興味深い形をしたものや橙色に輝く素材を無視して沈没船の探索に意識を注ぐ。

すると、海中で不自然な高さにある素材を見つけた。

そこに意識を向けてみると、貨幣らしき形をしたものやグラス、アクセサリーなどの人工物が多く固まっているのがわかった。

もしかして、沈没船にある資財なのではないだろうか。

気になった俺は水魔法で推進力へとその場所に直行してみる。

そこには大きな岩場――ではなく、藻類や貝に覆われてしまった沈没船があった。

かなり大きなガレオン船のようでマストが四本もある。

ルーカスさんが言っていた船の特徴とも合致しており、何よりこんな大きい船を持てるのは港町を治める領主くらいのものだろう。

周囲にはたくさんの魚が泳いでおり、数十年という時間ですっかりと海の景観に馴染んでしまっているようだ。

旋回しながら船の様子を眺めていると横っ腹に大きな穴が空いているのが見えた。そこから衝撃が広がり船体が真っ二つになってしまっている。

岩礁にでもぶつかったのだろうか? それとも巨大な魚にでもぶつかられてしまった?

理由はわからないが、この穴が船の致命的な一撃になったとみて間違いなさそうだ。

こんな巨大な船に立ち向かっていくような獰猛な魔物がいるのだろうか。願うならばクジラのような巨大な魚にぶつかったか、岩礁にぶつかってしまったと理由であってほしいな。

真っ二つになっていても船内は大きく、入り組んでいるように見える。

太陽の光が届かず、暗くなっているのでかなり不気味だ。

「調査」

スキルで索敵を発動してみると、船内にはたくさんの魔物がいる模様。

「ん? 人型のシルエット?」

その中で特に気になったのが人型のシルエットをした魔物だ。とはいえ、人間ではなく完全に骨の状態であることがわかる。

ゲームなどでよく登場するスケルトンとかいう魔物であろうか?

魔石の色合いを見てみると青色なので強大な魔物というわけではないが、元が生きていた人間だと考えると恐ろしかった。

ルーカスさんの依頼は資財のサルベージであり、船内に巣食った魔物の退治ではないが、もしものことを考えて確認しておきたいと思った。

スケルトンらしき魔物のいる船内に突入してみる。

船内が薄暗いのでライトボールを発動させると、明るくて見やすくなった。

それでも沈没船の船内というのは廃病院なんかのような独特な雰囲気を持っている。

船と共に沈んでしまった船乗りたちがバット飛び出してくるのではないかと想像してしまう。

調査スキルがあるので奇襲とは無縁だし、遠視することはできるのであるが、それとこれとは別の話だ。

船内はとても入り組んでいるが、冷静になって考えると元は船なので複雑な構造になっているわけがない。

朽ちたテーブルやイスの残骸を見ると、今いる場所が部屋であることはわかるので廊下に出てしまえば移動は楽だろう。

出入り口にあるドアノブを触るとボロリと取れてしまった。

仕方がないので扉を押そうとすると何故かビクともしない。

どうやら扉の隙間で貝が大量に付着しているせいだった。

少し荒っぽいが扉を足で蹴ってみると、あっさりと扉は外れた。

「……なんだか墓荒しのような気分になるな」

誰もいない船の中を勝手に漁るのはちょっとした罪悪感のようなものがあった。

とはいえ、ちゃんとルーカスさんに許可を得て探索しているのだ。変に考えないようにしよう。