軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ドボルザーク討伐

「ゴアアアアッ!」

「甘いっす!」

ドボルザークの尻尾攻撃を躱したロスカが、ハンマーを振るって腹に攻撃を入れる。

「あっ、ここだけちょっと肉質が柔いっす!」

「では、できるだけお腹に爆発を当てましょう!」

ロスカがドボルザークのヘイトを取ってくれている間に、俺は広間に点在する爆発石の中から一番誘導しやすいものを選ぶ。

そして、俺が火魔法を撃ち込んで起爆しやすいものを見定めた。

「ロスカさん! そのままこちらに走って誘導してください!」

「わかったっす!」

俺の指示を頷いたロスカは、ドボルザークの踏みつけ攻撃をステップで裂けて、指示通りにこちらに走ってくる。

ドボルザークの目にはロスカが慌てて退いたように見えたのだろう。低く身を沈めると、ドスドスと地面を踏みしめてロスカを追いかけてきた。

ロスカが爆発石の傍を駆け抜けて爆発範囲から抜け出すと、ちょうどドボルザークが爆発石を避けようと速度を緩めた。

「ファイアーボール!」

そのタイミングを狙って俺はファイヤーボールを発動し、ドボルザークの傍にある爆発石に直撃。

火気が加わることによって爆発石は瞬時に爆発。

傍にいたドボルザークは堪らずのけぞり、くぐもった声を上げた。

「効いてるっす!」

ドボルザークの体を見てみると、爆発の衝撃で腹部を覆っている鉱石の鎧が弾け飛んで、灰色の地肌らしきものが露出していた。

ゴツゴツした体表ではなく、肉質を感じる。多分、あそこならばロスカの攻撃も通じるだろう。

このまま爆発石や魔法で腹部を狙って攻撃しようと考えていると、ドボルザークが上体を逸らした。

「ゴアアアアアアアアアアアアッ!」

またもや火炎弾を飛ばしてくるのかと思ったが、その口から放たれたのは重厚な音の嵐。

「ぐっ!?」

音の暴力に俺とロスカは堪らずに両耳を塞ぐ。

鼓膜だけでなく内臓にまで振動が伝わって気持ち悪い。

洞窟内にいるせいか音が反響してしまい、レッドドラゴンの咆哮よりもうるさく感じる。

ようやくドボルザークの咆哮が終わったかと思うと、相手は既に身を深く沈めてこちらに突進してきていた。

さっきの攻撃が俺の仕業だとバレているらしい。

耳の調子に違和感を抱きながらも、俺はその場を退避するべく走る。

しかし、ドボルザークもそれに合わせて突撃してきた。

咆哮で内臓が揺さぶられたせいか、体が上手く動いてくれない。

緩慢な走りながらも俺は爆発石のあるルートに誘導し、ダイブしながらドボルザークの近くにある爆発石にファイヤーボールをぶつけた。

しかし、爆発の衝撃を食らったのはドボルザークだけでなく俺もだった。爆発石との距離が近すぎた。

「あぐっ!」

爆発によって俺の身体はいとも簡単に吹き飛ぶ。幸いだったのは、その先に爆発石がなかったことだ。

「シュウさん! 逃げるっす!」

全身の痛みを我慢して何とか立ち上がると、再びドボルザークが突進をしてきていた。

ロスカの悲鳴のような声が響き渡る。

動き出そうにも痛みのせいで動けない。今から魔法で障壁を張ろうにも圧倒的な質量で押しつぶされる。

なんとかして障壁、障壁になるものを……と考えたところで、ふと脳裏にある物が浮かび上がった。

俺は咄嗟にマジックバッグから硬魔石で作ったツルハシを取り出す。

そして、即座に魔力を込めて極硬魔石にしたツルハシを突っ込んでくるドボルザークに向かって掲げた。

すると、極硬魔石に変化したツルハシが淡い光と共に障壁を展開。真っすぐに突っ込んできたドボルザークを弾き飛ばした。

ドボルザークは見事にひっくり返り、爆発によって傷ついた腹部の肉を露出させる。

狙うなら今がチャンスだ。

「今だ、ロスカ!」

「は、はいっす!」

俺が叫ぶと、戸惑っていたロスカもすぐに動き出した。

「てやああああああっ!」

ロスカはハンマーを振り被ると、ドボルザークの傷ついた腹部に思いっきり振り下ろした。

獣人の力による一撃はドボルザークの柔らかい腹部を見事に陥没させる。

ドボルザークはくぐもった声と共に血を吐き出すと、痙攣して動かなくなってしまった。

それを一分ほど見届けて動かないことを確かめると、ロスカがこちらに駆け寄ってくる。

「シュウさん! 大丈夫っすか!?」

「大丈夫ですよ。擦り傷と軽い打ち身程度ですから」

爆風で派手に転がりはしたものの直撃はしていないので火傷などの傷もない。

あの魔物を相手にしてこの程度の怪我で済んだのは幸いだった。

「そうっすか。でも、最後は一体何があったっすか? ドボルザークが急にひっくり返ってびっくりしたっすよ!?」

あのような巨体が突然ひっくり返れば驚くのも無理はない。

よくあの状況でロスカはすぐに攻撃に移れたものだと感心する思いだ。

「ドロガンさんの作ってくれたツルハシのお陰ですよ」

「あー! 極硬魔石の障壁の力っすね!」

改めてツルハシを見せると、ロスカは納得したように頷いた。

極限まで魔力が注がれた硬魔石はオリハルコンをも超越した硬度になり、ある一定の衝撃が加わると鉱石に宿った魔力が障壁となって弾き返す効果がある。それを利用させてもらった。

「でも、ツルハシを防御に使うっておかしいっすよね」

「咄嗟に防げるものがこれしかなかったんですよ。今度、硬魔石できちんとした盾やアクセサリーでも作ってもらおうかな」

さすがに咄嗟にツルハシを出すなんて使い勝手が悪すぎる。

きちんと盾として装備するか、アクセサリーなんかにして放り投げて障壁を展開するなどの方法を使えば、もっと安全に自衛として使えそうだ。

「うわー、なんだかすごいアクセサリーができちゃいそうっすね」

なんてことを考えると、ロスカがちょっと引き攣った笑みを浮かべていた。

「もし、作ってもらえたらロスカさんやドロガンさんの分も魔力を注ぎますよ?」

「是非、お願いするっす!」

自分の身を守るための道具は一つでもあった方がいいしな。

大切な人のためであれば、魔力を注ぐことくらい訳はない。

「さて、ドボルザークの素材を採取しましょうか」

「そうっすね! 背中の水晶が傷付いてないといいんすけど……」

一息ついた俺たちは倒れたドボルザークに近付く。

「というか、これ仰向けになっているせいで背中の水晶が採れないっすよ!?」

ドボルザークは仰向けになって倒れているために、肝心の背中の素材が採れない状況になっていた。

「ちょっと待ってください。ひっくり返せないか試してみます」

俺はドボルザークの遺体をマジックバッグで収納。そして、今度はうつ伏せになるイメージでマジックバッグから出してみる。

すると、ドボルザークは見事にうつ伏せになった状況で目の前に出てきた。

これで背中が上になって水晶を採取することができる。

「おお! マジックバッグ様様っすね!」

マジックバッグがなければこういうところでも苦労するんだな。とはいっても、普通はこんな巨体の魔物を討伐することなんて早々ないだろうけど。

うつ伏せになったドボルザークをよじ登って、俺とロスカは水晶を確かめる。

「……見たところ傷はないみたいですね」

「いやー、良かったっす!」

背中に生えている水晶もかなり頑丈なのか、ひっくり返った衝撃で傷がついた様子はなかった。最初に見た時と同じように曇りのない透明具合を見せている。

「とりあえず、水晶だけ採取しちゃって後は時間のある時に解体しましょうか」

「そうっすね。冒険者ギルドにでも頼めば喜んでやってくれるっすよ!」

「そ、それはちょっと遠慮したいですね……」

レッドドラゴンを討伐してすぐにこんなものを討伐しましたといえば、また討伐の指名依頼が増えてしまう。

「ですけど、こんな大物を倒しておいて報告しないっていうのもマズいっすよ? こんな大物の素材、売り捌けば絶対注目が集まると思うっす」

これ以上ない程のロスカの正論に俺はしばらく頭を抱えるのであった。