軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新しい採取道具

「さて、採取しないとな」

ヒカリゴケをしばらく眺めた俺は採取にとりかかることにした。

コケの採取にはスコップなどでもいいが、せっかくドロガンに作ってもらったナイフがあるので、それを使って採取しようと思う。

マジックバッグから収納ケースを取り出して、採取用のナイフを取り出す。

ヒカリゴケの光に採取用ナイフが反射した。

「やっぱり自分だけの物っていいなぁ」

市販のものではなく、俺の手に合わせた俺だけのものなのでとても馴染む。

なにより道具に愛着が出ていい。こうして見ているだけで我が子のような可愛さがある。

傍目に見ると、今の俺はナイフを見て笑っているヤバい奴だけど、ここには誰もいないので気にしない。

ナイフを存分に観察した俺は壁に生えているコケに触れてみる。

触るとフサフサとしており、よく見るとミズゴケのようだ。長い期間、生息していたお陰か壁にしっかりと根付いているみたいだ。手で取ることができない。

これはスコップでも厳しいかもしれない。採取することができても、ヒカリゴケ自体に傷がついてしまいそうだ。

だが、今の俺にはオーダーメイドの採取用ナイフがある。

コケの根元に採取用ナイフを挿し込むと、あっさりと刃が食い込んでコケが剥がれた。

すごい、あれだけ硬かった吸着部分をあっさりと切ることができている。

無駄に力を籠める必要もなく、とても楽だ。

水分を吸収して発光するからか、詳しい生態はわからないが採取しても発光はするようだ。

剥がしたコケを採取ケースに入れて、次々とナイフで剥がしていく。

まるで北京ダックの皮を剥がしているようで、ちょっと楽しい。

採取用ケースが満タンになれば十分だと依頼書に書いていたが、個人的に飼育してみたいので自分用にも採っておく。

にしても、ヒカリゴケは鑑定しても薬の情報は出てこなかったな。

もしかすると、今回はクラウスが観賞用に欲したのかもしれないな。

露店で掘り出し物を探す趣味があったり、妹にアクセサリーをおくったり、ヒカリゴケを観賞用に欲したり。

依頼を通して少しずつクラウスのことがわかっていくのが面白いな。

「よし、ヒカリゴケの採取は完了だな」

自分の分の採取用ケースをマジックバッグに入れる。

次は魔晶石だな。

最初に検索調査をした場所から結構離れているので、この辺りならばあるかもしれない。

「魔晶石、調査」

検索してみると、先程進んでいた道の先に魔晶石がぽつぽつと赤く表示されるのが見えた。

どうやらこの先にあるみたいだな。

道を引き返して進んでいくと、壁の中に埋まっている魔晶石のところに着いた。

次に使うのは勿論、ドロガンが作ってくれたツルハシだ。

マジックバッグからツルハシを取り出す。

硬魔石に魔力が極限近く込められているからか黒に近い青色に染まっている。

黒じゃないし青でもない深い色合いだ。

こちらも俺だけのために作られたオーダーメイドなので、すごく持ちやすい長さになっている。

早速、俺はツルハシを壁に打ち付けてみる。

すると、驚くほど簡単に壁が崩れた。

「すごい! 簡単に掘れる!」

硬い土壁をツルハシで削るのではなく、柔らかい土をツルハシで砕いていくような感触。

特別に硬いと言われるデミオ鉱山の土壁が、そこらにある土のようだ。

ラッゾに教えて貰った自重を活かしたコンパクトな振り方と、この硬魔石のツルハシにかかればザックザックと壁が掘れた。

そして、あっという間に魔晶石が露出した。

どうやら岩の中に空間があったらしき、そこにあったものが表示されていたようだ。

綺麗なピンク色の水晶が群生している様は、とても美しい。自然の宝箱のようだ。

ピンクといっても光の当たり具合によって微妙に色の濃度が違う。

見る度に色合いを変えるためにずっと見るのを楽しめる。

「このまま綺麗に全部持って帰ってしまいたいくらいだな」

これだけ大きな水晶なのだ。ツルハシで砕いて、小さくして持って帰ってしまうのは非常に勿体ない。

どうせならこの美しさを保ったままに持って帰りたい。

幸い、俺にはマジックバッグもあることだし地道に周りを削っていけばいけるか。

というわけで、そのまま採取するのも勿体ないので、俺はツルハシを振るって周りの岩から切り離すことにした。

「水晶の周りにある岩はかなり丈夫そうだけど、このツルハシを使えば……」

思い切ってツルハシを打ち付けてみると、こちらもあっさりと抉れた。

「いける!」

魔晶石にヒビが入らないように気を付けながら、ツルハシを慎重に振るっていく。

そして、時にロックハンマーやタガネを使っていくことしばらく。

なんとか魔晶石を砕くことなく塊のままに採ることができた。

「やっぱり、この魔晶石の美しさは塊でこそ輝くよなぁ」

魔晶石の塊を見て、俺はしみじみと思った。

でも、クラウスが欲しがる魔晶石はこんな大きなものではない気がする。

俺も硬魔石が欲しいが故に採掘をしに来たが、こんな巨大なものは必要なかった。

冷静になるとこんな物を納品したら絶対に呆れられてしまう。

とりあえず、魔晶石の塊はマジックバッグに収納して、ドロガンが持っていたような一般的な大きさのものも採掘しておこう。

調査してみると、この少し奥に程よい大きさの魔晶石があるみたいだし。

そう思って俺は引き続きツルハシを振るった。

程よい大きさの魔晶石を手に入れた俺は、次の素材を採取するために地下三階へとやってきていた。

だけど、次の素材は……

「モジュラワームの体液かぁ……」

思わず呻くような声が漏れる。

モジュラワームは硬魔石の採掘をする時に、スキルの力で遠目にシルエットを確認した程度。だけど、それだけであの魔物は十分過ぎるほどに伝わるものだった。

あのニュルニュルとした体に蠢く触手のようなもの。

直接目にしたわけでもないのに脳裏に鮮明に残っていた。いや、直接目にしていないからこそイメージしてしまうのだろうな。

素材を採取しに行くのにこれほど憂鬱になるのは初めてだ。

とはいえ、これも仕事であり、立派な採取依頼。冒険者としてだけでなく、俺のプライドとして逃げ出すわけにはいかない。

俺は意を決して、以前モジュラワームを見かけた場所に向かう。

そして、近くの分かれ道にきたところで魔石調査を発動。

「うわぁ、ちゃんといたー」

前と同じ場所にモジュラワームがいた。あまり広いとはいえない坑道内でにゅるにゅると動いている。

救われているのは前回三体だったのに対して、一体になっているということ。

移動したのか餌を探しに行っているのかはわからないが、これは大きなチャンスだ。

モジュラワームを複数相手するなんてハードルが高いからな。

今がチャンスと心に言い聞かせて、俺はモジュラワームの下に接近。

すると、先に相手がこちらに気付いたのか坑道の奥から近付いてくるような音がする。

「えっ! ちょっと、そっちから近付いてくるなんて聞いてない!」

こっちから近付く度胸はあっても、相手から迫られる心の準備はまったくできていなかった。

戸惑いながらも冷静にライトボールに魔力を込めて、坑道内を明るく照らす。

すると、灰色のブヨブヨとした皮に触手を生やしたワームが体をくねらせて接近してきていた。

「わああああああああっ! フリーズ!」

ライトアップされたモジュラワームを目にして、思わず叫び声を上げながらも氷魔法を発動。

接近してくるモジュラワームの体が半分凍ったところで、慌てて魔法を停止させる。

体が凍り付いているせいで動けないのかモジュラワームは必死に抵抗をする。

どうやら氷魔法のお陰で動くことができないようだ。それがわかって安心する。

「グロいな」

凍り付いていない部分がくねり、生えている触手がうねうねと動いている。

【モジュラワーム】

土の中にいる生物や魔物を捕食するワーム。暗い空間で生活することに特化しており、目は失われ、皮の色素が薄くなっている。だが、触手で空気の流れを感じることができ、音に敏感になった。

ストレスを与えられると体から体液を噴出する。

モジュラワームの体液は肌にとてもよく美容液として広く使われる、また、ハンドクリームなどの皮膚の再生を促す効果もあり。

鑑定してみると、モジュラワームの情報が出てきた。

なるほど、暗い空間で生活するのに特化しているから、一早くこちらの接近に気付くことができたのか。

突然、モジュラワームが接近してきたのも納得である。

どうやらラビスの言っていた捕獲というよりは、ストレスを与えると体液が出てくる特性らしい。

モジュラワームを見てみると、いつの間にかヌメリを帯びていて体液らしきものが出てきている。

これが美容液の元になる体液の一種だそうだ。

俺が近付いてみると、モジュラワームはギザギザに尖った歯を見せつけるように威嚇してくる。

鋸のような細やかな歯が見えていて怖い。が、そこからは唾液らしきものが垂れている。

体液っていうことは唾液でもアリだよな? 唾液も体液の一種だし。

とはいえ、美容効果などがなかったら意味がない。

【唾液にも皮膚の再生や美容液としての効果あり】

念のために鑑定してみると、唾液にも効果がしっかりとあるようだ。

俺はそーっと近付いてモジュラワームの唾液が垂れている場所に採取瓶を置く。

そして、すぐに離れて噛みつかれない範囲で動き回って観察する。

その間もモジュラワームは危機を感じてもがいているが、体の半分が凍っているので抜け出すことができない。

俺にできることはこうやってモジュラワームにストレスを与えることくらいだ。なんだか苛めているようで申し訳ないが少しだけ我慢してもらおう。

モジュラワームからどんどんと噴出する体液をササッと採取瓶に流し込んでいく。

体液自体は透き通っておりとても綺麗だな。何も知らずに美容液だと言われれば塗ってしまいそうなくらい。

「うわっ!」

呑気に考えながら体液を採取していると、モジュラワームが激しく触手をくねらせた。

そのせいか触手についていた体液が俺の腕や頬にかかる。

肌にいいものだとはわかってはいるが、モジュラワームからかけられると複雑な気分だ。

とはいえ、少しくらいこうなることは予想していた。拭ってもキリがないし、無視して採取だ。

何度もモジュラワームの体液を採りにきたくないので、できるだけたくさん採取しておこう。