軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

指名依頼の消化

ルミアがネックレスを買ってくれると、俺の作ったアクセサリーは見事に完売。日が暮れる前に、俺とロスカは撤収することになった。

「いやー、荷物を持ってもらっている上に送ってもらって悪いっすね」

「道具をたくさん貰い、貸してくださったのでこれくらいは当然ですよ」

あれだけ色々な品や道具を借りながら、ロスカ一人に全て持たせて颯爽と帰るなんて俺にはできない。

ロスカの厚意への恩返しだ。

「にしても、シュウさんのアクセサリーが全部売れてよかったっすね!」

露店で売る作業も終わり、ロスカの口調もすっかりといつも通りのものになっている。

しかし、見た目がお嬢様のままなので違和感がすごいな。

「まさか、全部売れるとは思わなかったです」

「いやいや、あのクオリティなら全部売れて当然っすよ。あたしの買う分がなくなって残念なくらいっす」

「それならば、今度作って持っていきましょうか?」

ロスカがそこまで欲しいというのなら作って持っていくくらいお安い御用だ。

「おっ、本当っすか! ありがたいっす! シュウさんのデザインは見たことがないものも多いので参考にしたいんすよね!」

さすがはプロの装飾人。こんな素人である俺のデザインでも、取り込むべきものとして見定めている。

ロスカのその貪欲さと向上心には敵わないな。

そんな風に露店での出来事を語り合ったりしていると、あっという間にドロガンの工房にたどり着いた。

既に店の扉は閉店していることを告げる札がかかっているが、ロスカは従業員なので構わずに入る。

「おう、戻ったのか」

「あっ、お疲れ様です。ドロガンさん」

工房の受付では、ドロガンさんが工具類を並べて整備しているところだった。

いつもとまったく違うロスカに驚かない辺り、既に慣れているらしい。

「お前さんのアクセサリーは売れたのか?」

「はい、ありがたいことに完売しました」

「ほう、ロスカの補助があったとはいえ、初日で全部売れるとはやるじゃねえか」

ドロガンがこうも素直に褒めてくれるということは、やはりそれだけすごいことなのだろう。

「半日露店で売ってみてどうだったっすか?」

「自分の作った物の感想が聞けたり、喜んで買ってもらったり、とても楽しかったです。また作って、売ってみたいなって思うほどに」

最初は自分の作品を否定されたらどうしよう、などとビビッていたが、それ以上に喜びを知れた。

元からある素材を採取して、納品して喜んでもらうのとはまた違った感触だ。

勿論、俺の中で一番好きなのは、自然にある素材を採取することだが、好きなものがいくつあってもいいと思う。

素材採取以外の趣味として、継続的にやっていきたいと心から思えた。

「そうっすか。それはなによりっすね」

「また今度一緒に出店させてもらってもいいですか? 勿論、道具などは自分で揃えてきますので」

一人で出店したい気持ちもあるが、まだまだ俺は知らないことだらけだ。

もう少しロスカと一緒に出店して、学んでから、いずれは一人でやってみたい。

「勿論っすよ。実は誰かと出店するのは初めてだったんすけど、思っていた以上に楽しくて……こっちからお願いしたかったくらいなんすから」

よかった。ロスカは有名だし、実力もあるみたいなので邪魔に思われるかなと思ったが、彼女も楽しんでくれたらしい。

「次の作品を作りたいので、また宝石を買わせてもらってもいいですか?」

ロスカから買った宝石は、既に全部使い切ってしまった。

今日でたくさんのアクセサリーのイメージが湧いたので、鮮明なうちにできるだけ作っておきたい。

「いいっすよ。この宝箱に入っているものから選んでくださいっす!」

ロスカはそう言って、自慢の宝石箱を開いて見せてくれる。

次はもっと女性が喜びそうなデザインを作ってみたいので、華やかに色合いのものにしよう。

「あっ、ちなみに持ち込んだ宝石を望む形にカットすることもできるっすよ。その場合はカット料金だけでお安くなるっす」

宝石の色合いを見て吟味していると、ロスカが思い出したように言うので、俺は早速とばかりにマジックバッグから二つの水晶を取り出す。

「それならこの間採掘したばかりの水晶と青水晶のカットを頼んでいいですか?」

「おっ、中々いい色合いっすね! ひとまず、装飾に使いやすいように色々な形にカットしておけばいいっすか?」

「はい、そんな感じで」

俺はまだ素人に毛が生えた程度なので、ロスカがカットしてくれたものをベースに使う方がいいだろう。

でも、いつかは自分の装飾のアイディアに合わせて、宝石をカットしてもらいたいな。

露店でアクセサリーを売った翌日。

クラウスの約束を果たすために、俺は久し振りに冒険者ギルドに訪れた。

前にやってきたのはいつだっただろうか。領主の屋敷に向かう前だったので、軽く十日以上は前だな。

たくさん指名依頼や採取依頼が溜まっていそうだな。

「やっときたぁ!」

なんて思いながらギルドに足を踏み入れると、ラビスが急接近してこちらの腕を取った。

「ようやく、ギルドにきましたねシュウさん」

どこか獲物を狙うような目つきをしているラビス。兎系の獣人のはずなのに、そんなぎらついた目をするものなのだろうか。

というか、ほのかにいい香りがするし、腕を抱えられているせいか微妙に柔らかいものが当たっているような。

「あ、あの、ラビスさん。そんな風に腕をホールドしなくても……」

「そう言って逃げるつもりですね? そうはいきませんよ!」

俺が捕獲できたことが嬉しいのだろうか、ラビスはどこか興奮していて密着していることに気付いていない。

「シュウさんに是非消化してもらいたい指名依頼がたくさんあるんです!」

いや、気付いているが、それよりも指名依頼の滞りを何とかしてほしいのだろうな。

そのまま俺はラビスに引きずられるようにして受付に。

そして、ラビスはテーブルの引き出しから依頼書の束を取り出して受付台に並べた。

というか、正確には並べきることができずに重なっている。

「……これ、全部俺への指名依頼ですか?」

「はい、レッドドラゴンを討伐した事やランクがCに上がったことが広まって、指名依頼を頼む人がかなり増えたんです」

以前きていた指名依頼は多くても十個程度。

しかし、今回の依頼の数は軽く三十は越えている。

チラリと依頼書を眺めていると、そこには討伐依頼を示す赤いハンコマークが。

「討伐依頼まで混ざっているじゃないですか。基本的に採取依頼しか受けないことをラビスさんも知ってますよね?」

「レッドドラゴンを討伐できるほどの実力を持っているんですよね? 討伐依頼にご興味はないんですか?」

どうやら俺がレッドドラゴンを討伐してしまったことにより、妙な誤解を与えてしまったようだ。

「俺はのんびり採取をしていたいだけなので、受けるつもりはありません」

「それが貴重な魔物の素材でもですか?」

きっぱりと告げる俺に、ラビスが悪魔の囁きをしてくる。

そんな言い方をされてしまえば、収集癖のある俺が否と言い切れるわけがない。

「うぐっ……ほ、捕獲や討伐をせずとも採取できるものなら興味がないこともないです」

「なるほど。では、純粋な討伐依頼の方はお断りしておきますね」

断腸の思いでそう答えると、ラビスはあっさりと一部の依頼を下げた。

妙に手際がいいことから、俺がそう答えるとわかっていた整理していたんだな。

「ひとまず、今は採取の指名依頼をこなすということで」

「わかりました。こちらが採取の指名依頼です」

ラビスが並べ直した依頼書は十数枚程度。これならば、いつもと変わらないな。

多分、いつも頼んでいる人たちが討伐もできるなら、頼んでしまえってノリで出したものなのだろう。

採取の指名依頼を俺はひとつひとつ確認していく。

「半分以上は既に持っている素材を納品すれば、完了になりそうですね」

ほとんどの依頼はいつも頼んでいる素材の追加や、デミオ鉱山が入れることになったことで頼まれた素材の採取。

指名依頼で頼まれる素材は常にストックしているし、鉱山でたくさん採掘もしたので素材は大体手元にある。今ここで全部を出せばマジックバッグ持ちだとバレるので、小出しにして消化させることにしよう。

「本当ですか!? 助かります。もう、依頼人がまだかまだかと言ってくるのが辛くて……」

指名依頼が消化できるとわかったからか、ラビスがホッとしたように受付台に身を預ける。

形のいい兎耳も疲労を表すようにへにゃりと崩れていた。

俺がギルドに顔を出していない間、ラビスも大変だったようだ。

ラビスに催促をしていたのは、主にクラウスな気がする。

露店をやっている俺に催促してくるほどだから。

「すいません。依頼を受けない日が続く時は、ギルドに顔を出して連絡することにします」

「……次は是非、そうしてください」