軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

愚者の金

鑑定で壁が崩れないことを確認しながら、俺は地中に埋まっている素材めがけてツルハシを振るう。

無心になって壁を掘る。

これが普通の人ならば、どこにあるかもわからない鉱石や宝石がいつ出るかと思いながらツルハシを振るしかないはずだ。

しかし、俺の場合は調査のお陰で地中に埋まっている鉱石などお見通し。

最初から鉱脈の位置すらわかってしまうとは、今更ながらになんてズルいスキルだろうな。

でも、そのお陰で寄り道することもなく採掘ができるし、途中で心も折れることもない。

確かな目的地さえわかっていれば、どれだけ深くても頑張れる。

お金が埋まっているようなものと言ってしまえばロマンはないが、夢はあると思う。

ツルハシで岩を砕いていく音が坑道の中で反響する。石とツルハシの摩擦によって火花が散り、時折坑道を明るく照らす。

目的の素材に近くなればツルハシでの採掘を止めて、ロックハンマーとタガネで丁寧に岩を掘っていく。

すると、壁の中から透明な六角柱の石が出てきた。

【水晶 普通】

石英の六角柱状の結晶形を持った鉱物。ガラスのような外観を持っており、美麗で宝石の一部に加えられることも。不純物のない無色透明であるほど価値が高い。

装飾品などによく利用される。

鑑定してみると水晶と表示された。

おお、俺でも知っている有名なものだ。

素材がわかり、興奮と逸る気持ちを抑えて、水晶を割ってしまわないように慎重に掘っていく。

第三者から見ると、地道に土や岩を削っていくだけの作業。しかし、地中から綺麗なものや価値のあるものを発掘した達成感や興奮、素材を傷つけないようにしながら掘る緊張感は中々に堪らないものだ。

これは採掘をしている者にしかわからないだろう。採掘には採取とはまったく違った楽しみがあるな。

慎重に水晶の周りを削っていくと、水晶がぐらりと揺れた。

もしやと思って手を伸ばしてみると、地中にあった水晶は綺麗に引き抜くことができた。

手の平に収まるサイズの水晶。

「おお、綺麗だ……」

不純物の一切ない無色透明とはいえないが、それでも十分な透明具合と鋭角的な美しいフォルムをしている。

見る角度を変えると、ライトボールの光に反射して虹色に輝く。

前世でも写真や動画で見たことがあったが、こうして現物を手に取ってみるとより美しく感じられる。

高品質のものとなると一体どれほどの美しさになるのか想像がつかないな。

「水晶、調査」

高品質、願わくば最高品質の水晶を採掘してみたくて、俺は水晶で検索調査をする。

すると、地中の中でたくさんの水晶が表示される。

しかし、それはどれも紫や青といった小さなものばかり。高品質な橙や金に輝くものは見当たらなかった。

「さすがに入り口付近では、そんないいものは埋まってはいないか」

鉱脈がある場所には、多くの鉱石が埋まっている。そんないい場所は大昔に掘りつくされているのだろうな。

もう少し奥に行って水晶の鉱脈を見つけるしかないな。

手元にある水晶を眺めた俺は、土を払ってマジックバッグに入れた。

水で洗うのは後で纏めてやればいいだろう。

気を取り直して、俺は比較的掘りやすそうな所に表示されている素材を狙う。

水晶と同じ要領でザックザックと壁を掘っていく。

【青水晶】

魔力と不純物が混ざり合わさり、変色した水晶。

青の色合いが強いほどこもっている魔力が強いことを示す。錬金術により、魔力のみを抽出すれば水晶になる。

【黒鉱石】

様々な鉱石が混ざり合った黒っぽい鉱石。多少の金、銀を含んでおり、黒鉱石の周りには金や銀があることがある。

不純物を多く含んだ、劣石との間違いに注意。

【鉄鉱石】

鉄の原料として用いられる天然の鉱物。様々な鉄製品に使われている。

【翡翠石】

深緑の半透明な宝石。非常に壊れにくく、武器の装飾として使われることも多い。

すると、このような素材を採掘することができた。

色々と気になる部分はあるが、今一番に気になるのは黒鉱石のある場所には金や銀のある確率が高いということ。

もしかして、ここに金や銀があるのだろうか? この世界で金と銀がどれほどの価値を持っているかわからないが、前世では途轍もない値段がついていた。

たとえ価値が低かったとして、金や銀を掘り出すのは男のロマン! これは探してみるしかないな。

「おおっ! 早速、金っぽいものがある!」

そう思って血眼で壁を眺めてみると、金色に輝くものが見えた。

この黄金色の輝きは恐らく金だ。これは採掘するしかない。

金の発見に心を震わせ、興奮しながら丁寧に採掘する。

すると、見事に金を採掘することができた。

大きさは手の平を転がるくらいの小さなものだが、金を採掘した興奮でそんなことは微塵も気にならなかった。

「すごい、金だ!」

目の前の金を眺めて興奮の声を上げる。この塊だけで一体どれだけの価値があるのだろうか。前世では金は一グラムで五千円以上はしていたはずだ。

この世界に当てはめると一グラムで銀貨五枚。もし、金が稀少であれば、この大きさでも余裕で金貨数枚の値段になるのではないか。

ギルドに持っていくのが楽しみになってきたな。

期待で胸が膨らむ思いであるが、落ち着かないとな。

まずは鑑定で品質を確かめないと。その善し悪しで価値も変わるはずだ。

いいものだったら売らずにコレクターズ品にするんだ。

【バカライト 普通】

鉄と硫黄から形成される鉱石。その色調より金と間違われることが多いことから「愚者の金」とも呼ばれる。金ではない。

錬金術で硫黄を抽出することができれば、製鉄することができる。

「はい?」

鑑定してみると金とは表示されなく、まったく別の名前が出てきた。

ちょっと待って。これはどういうことだ?

深呼吸をしてからもう一度鑑定結果を見てみるも、表示された言葉が変わることはない。

「バカライト……愚者の金?」

鑑定先生によると、これは金に似た見た目をしているが、金ではないとのこと。

実際は硫黄を含んだ鉄鉱石のようなものでバカライトというらしい。

俺のように知識のないものが間違えて金だとはやし立てることが多いことから、愚者の金と呼ばれるようにもなったのだとか。

まさに、その通りで俺が愚者なんだけど……いや、まだギルドに持っていってないし、誰にも金だと言って見せてないから愚者じゃない!

でも、これだけ似ていたら仕方がないと思うんだよね。本当に金のような綺麗な見た目をしているからさ。間違えてもしかたない。

「金っぽい見た目をしているけど違うのかぁ……」

このようなものまであるとは、本当に鉱石というのは色々なものがあるな。

金ではないけど、これはこれで面白いので回収することにする。

「ここに金や銀があるかはわからないけど、もうちょっと掘って探してみよう」

黒鉱石のあった辺りには、調査によってまだたくさんの素材が表示されている。これらの内のどれかが金か銀である可能性がある。

まあ、出てくるのは全部バカライトという可能性もあるけど。

そう思いながらツルハシを壁に打ち付けると、ピシリと音が鳴った。

「あっ、ツルハシにヒビが入ってる……」

気になって見てみると、ツルハシの先端に微かなヒビが。

それほどここの岩が硬かったのか、それとも初心者である俺の扱い方が悪かったのか。

多分、後者な気がする。

神様から貰ったツルハシではあるけど、本当にただの鉄でできた普通のものだから耐久力は高くない。

これはしっかりとしたツルハシの振り方と、新しい丈夫なツルハシを作ってもらう必要があるな。

代えのツルハシはあるが、今の自分がやってもすぐダメにしてしまう気がする。

夢中になって掘っていたが結構時間が経過してそうなので、今日はこのくらいにしよう。

魔力鋼、水晶、青水晶、黒鉱石、鉄鉱石、翡翠石、バカライトとたくさんの鉱石が採れたな。

鉱山は暗く、道も険しく、魔物との戦闘も避けづらい危険な場所だが、そのリスクを超える収益と採掘の楽しさがある。

鉱山での採取も中々に悪くないな。