軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

肝心な報告

「あったあった。これで依頼内容を確認できる」

「本当に見つかってよかったです」

数分後、無事にライラート家からの依頼書は見つかったようだ。

封筒に埃が付いている辺り、長期間放置されているのがわかった。

どこで見つかったか聞くのは怖いのでやめておこう。

「千本タマネギの品種改良か。とりあえず、現物を送ってもらって判断だな」

「千本タマネギなら持ってるので、いくつかお渡ししますね」

手紙を送り、送ってもらってから作業にとりかかるより、いくつかサンプルを渡しておいた方が時間を有意義に使えるだろう。

「……ちっ」

「舌打ちされた!?」

そんな善意から素材を渡したのだが、サフィーは露骨に舌打ちをした。

「シュウ君のせいで、すぐにとりかかれるようになってしまった」

「……師匠」

なるほど。そのタイムラグの時間でゆっくりするつもりだったのか。

真剣になってくれたかと思えば、すぐにこれだ。油断も隙もあったもんじゃない。

これには優しいルミアも若干呆れ気味だった。

「あっ、最後に聞きたいんですが、消耗したスタンニードルの針の再利用できますか?」

「錬金術を使えば可能だ。もしや、針が折れたのか?」

「ええ、いくつか微妙に曲がってしまって」

俺はマジックバッグから曲がってしまった二本の針を差し出す。

サフィーは針を受け取ると、しげしげと見つめる。

「……スライムに針を刺してこのように曲がることはない。人間にでも刺したのか? 人間には触れて、電流を流すだけで十分だぞ?」

「人には刺してませんよ!」

疑いの視線を向けてくるサフィーに弁明する。

「人には?」

「魔物に刺して引っこ抜くときに曲がってしまったんです」

「魔物に刺す? 一体どういう意図で刺したんだ?」

「シュウさんの魔力があれば、魔法で対処した方が簡単ですよね?」

スタンニードルはあくまでスライムの素材を採取するための道具であり、ちょっとした護身道具だ。電流こそ強いものの魔物との戦闘に使うには向いていない。

サフィーとルミアが訝しむのも当然だろう。

「実はスタンニードルの便利な使い方を思いついたんです」

「というと、スライムの素材採取や暴漢対策とも違った使い方ですか?」

「そうです!」

「ふむ、興味がある。どんな使い方をしたのか教えてくれないか?」

スタンニードルの製作者として気になるのだろう。サフィーがずいっと迫る。

「実際にお見せしたいところですが、今日はもう遅いですね」

店の外を見ると、日はすっかりと沈んでおり薄暗くなっていた。

門の外に出る頃には夜になってしまい、閉門時間となってしまう。

「では、明日の朝――いや、正午に店の前でどうだ?」

実際に約束しようとして朝早くに起きるのが面倒くさいとか思ったんだろうな。

サフィーに思考回路は実に透けて見えた。

とはいえ、二人ともギルドからの製作依頼を終わらせて疲労が溜まっていることだろう。

ゆっくり身体を休めるもらった方がいい。

「いいですよ。では、昼にお伺いします」

「わかった。明日はよろしく頼む」

スタンニードルの実演の約束を取り付けると、俺は店を出て宿に戻るのだった。

翌朝。朝食を食べ終わった俺は、冒険者ギルドに顔を出すことにした。

グランテルに戻ってきてまだ一度も顔を出していなかったことに気付いたからだ。

それにスタンニードルの実演のために、生け捕りにして喜ぶ魔物なんかを教えてもらうのにちょうどいい。

そんなわけで宿を出た俺は、冒険者ギルドにやってきた。

ギルドの中に入ると、今日は掲示板の前には冒険者たちがたむろしている。が、それ以上に併設された酒場で呑んだくれている冒険者の方が多かった。

それでいいんだろうか? と思うこともあるが、そういうのが冒険者なので気にしても仕方がない。

街を空けていた間にどのような変化があったか気になる。

賑やかな冒険者たちを横目に掲示板へと歩いていくと、進路を塞ぐようにラビスが現れた。

「こんにちは、シュウさん」

「あっ、ラビスさん。ただいま戻りました」

「依頼を確認するより先に、ライラート家からの指名依頼のご報告をお願いします」

あっ、どうやら俺がアルトリウスの依頼を受けて、グランテルを空けていたことはバッチリと知っているようだ。

「えっと、その前に先に依頼を確認したいなって」

「指名依頼の報告が先です」

「……はい」

ラビスの有無を言わせない圧力に俺は素直に頷いてカウンターに移動。

「ビックリしたんですからね? 急にライラート家のご当主であるアルトリウス様から指名依頼が届いたと思ったら、達成受領書も同時に届いたのですから」

棚から一枚の封筒を取り出すラビス。

そこにはライラート家の紋章が付いており、封筒の中には正式に俺への使命依頼の発注書と達成を認める書類が同封されていた。

「アルトリウス様から依頼は個人のものではないのですか?」

今回の依頼はてっきり個人で引き受けた依頼だと思っていたので、正式にギルドに対してそのような手続きが進められたとは驚きだ。

「ですが、こうして指名依頼がきていますよ?」

「みたいですね。どういうことでしょう?」

「恐らく、アルトリウス様がシュウさんに気を遣ってくれたのでしょう」

「どういうことです?」

「正式に冒険者ギルドを通し、指名依頼を達成したことにすれば、シュウさんの目に見える実績や評価へ繋がりますから」

「なるほど」

ギルドを通せば仲介料や依頼の受領料金などが発生するというのに、それらを嫌がることなく俺のために手続きしてくれたなんていい人過ぎる。

「ちなみにカルロイド様からの依頼も正式に指名依頼として提出されていますよ」

「そうだったんですか!?」

いつも普通に依頼を受けていたのに、まったく知らなかった。

俺のためを思って気を遣ってくれていたんだな。今度、会った時は改めて礼を言っておかないと。

「シュウさんはランクアップに対しての興味が薄いですね」

「俺は自由に採取依頼ができれば、それでいいので」

ランクが上がっても、それに応じた討伐依頼が増えるだけなので興味がない。

「相変わらずですね。ところでシュウさん、他に重要な報告はありませんか?」

ラビスがにっこりとした笑みを浮かべて尋ねてくる。

……美食保護区で素材採取したこと以外に重要なことなんてあっただろうか?

わかった! これはラビスからのお土産の催促に違いない!

「ありますよ。とびっきりの報告が」

「ですよね、ですよね!」

「クイーンアントの蜜を貰ってきました! ひとさじ食べるだけで、疲労回復に効果アリ。シャンプーに混ぜると、しっとりと潤いのある髪に。さらに気になる肌に塗布すると、ニキビや吹き出物などのトラブルを即座に改善してくれるんです!」

「ええっ! あの稀少食材ですよね!? 本当に売ってくれるんですか!?」

「はい、ギルド職員の皆さまの分もしっかりと確保していますよ」

他の女性職員に聞こえるように高らかに宣言すると、あちこちで感謝の声が上がった。

「さすがです、シュウさん! 本当にいつもありがとうございます――って、違いますよ!」

「え? 違うんですか?」

「これも重要な報告ですが、冒険者として報告するべきものがあるはずです!」

クイーンアントの蜜をしれっと手元に手繰り寄せながら言ってくるラビス。

お土産以外に重要な報告があるとは思えない。

「なんですか?」

「ガラルゴンの討伐! アルトリウス様からの手紙に討伐の報告が書いてありましたよ!」

「え? ああ、遭遇しましたね」

「危険度Aの魔物を倒したというのに軽いですよ!」

「採取の途中、不幸にも襲われたので退治しただけですから」

俺にとって重要なのは採取であって、どの魔物を討伐したかではない。

「大型魔物の生死は、環境や生態系に大きな影響がありますので、できるだけギルドに報告してください」

「わかりました」

俺にとってはそうでも、ギルドにとっては大問題だしな。

これからはしっかりと報告することにしよう。

「他に報告していない大型魔物の討伐とかありませんよね?」

「…………」

「シュウさん?」

じっとりとしたラビスの視線を受け、俺は過去に討伐したクラーケンとゲイノースのことを話した。

そして、ラビスが卒倒した。