軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ガラルゴン討伐

「キエエエエエエエエエエエエエッ!」

音光球による閃光と轟音のダメージから回復すると、ガラルゴンはひと際大きな鳴き声を上げて激しく体をくねらせた。

多分、音光球からの魔法攻撃でガラルゴンを怒らせてしまったのだろう。

冷静に観察していると、ガラルゴンは滞空してバサバサと翼をはためかせ始めた。

羽を射出してくるのかと思ったが、そのような様子はない。

……一体、何をするつもりだ?

「シュウさん、気を付けてください! ガラルゴンの翼に風の魔力が集まっていますわ!」

冷静に観察していると、フランリューレが声を上げた。

言われてみれば、ガラルゴンの翼にドンドンと風の魔力が収束している。

激しい気流が発生し、俺たちは身体が持っていかれないように堪えるしかできない。

やがて、収束した気流は大きな竜巻となり、ガラルゴンは大きく翼をはためかせて飛ばしてきた。

「マズイですわ!」

「それはヤバいでしょ!」

巨大樹の頂上は比較的開けているとはいえ、竜巻が悠々と通り抜けられるほどに広くはない。羽のように走って回避するのは不可能だ。

地響きを上げながら迫りくる竜巻。

あまりにも強い風が吹きすぎて、竜巻からはヒュンヒュンと金切り音のようなものが聞こえてくる。

きっと、あの中では風の刃が乱舞しているのだろう。

取り込まれてしまえば、身体が塵になってアウト。

風で吹き飛ばされようものなら千メートルから地上へと真っ逆さまに落下だ。無事に落ちることができたとしても、無防備な落下中を狙われることになるし、ここよりも足場の悪い場所で戦闘を強い

られることになる。

絶対に食らうことは許されない。

「ブリザードウォール!」

俺は氷魔法を発動させて、竜巻の進路上に巨大な壁を作り上げた。

竜巻が氷壁に直撃すると、巨大な氷を鋭い刃で削るような音が延々と鳴り響く。

「これで止まるか?」

竜巻の勢いは明らかに減衰しているし、動きは鈍くなっている。

いける。なんとか竜巻を止めることができる。

「シュウさん!」

そう思った瞬間、フランリューレから鋭い警告の声。

次の瞬間、氷壁が切断されてしまい、ガラルゴンが一直線にやってきた。

竜巻の気流に乗っているのか、かなりの速度と破壊力が出ている。

吹き飛ばされないように堪え、魔法を発動していた俺は逃げることができない。

回避することを不可能だと判断した俺は、マジックバッグから極硬魔石の盾を取り出した。

鋭利な翼が盾に直撃すると、淡い光を帯びた障壁が展開されてガラルゴンを弾き飛ばした。

「キュケエエッ!?」

まさかこんな小さな人間相手に弾き飛ばされるとは思っていなかったのだろう。

ガラルゴンが困惑した声を上げ、無防備になっている。

「ライトニングアロー!」

そこに突き刺さるフランリューレの雷の矢。

魔法の威力は低いが、甲殻に覆われていない腹部や嘴部分を狙ったのでしっかりとダメージを与えることができていた。

畳みかけるなら今だ。

衝撃で後退していた俺は体勢を整えながら、氷柱を連射。

相手の機動力を奪うために翼を狙うが、ガラルゴンは即座に空中で体勢を整えると、高度を上げて回避。

「キエエエエエエエエッ!」

ガラルゴンが怒りの声を上げながら、またしても翼をはためかせる。

またしても竜巻を発生させるのかと思ったが、今度は風の魔力が収束する様子はない。

恐らくあれはガラルゴンにとっても大技で、早々連発できるものではないのだろう。

となると、遠距離から一方的に羽の雨を降らしてくるつもりか。

極硬魔石の盾を見て、迂闊に接近すればカウンターをされると判断したのかもしれない。

空に上がる手段がない俺たちからすれば、それをやられるのが嫌だな。

「シュウさん、羽の処理は任せてください!」

迫りくる攻撃を迎撃しようとしていたが、フランリューレからそんな声が上がった。

先ほどのように風で逸らすのだろうか? ガラルゴンもそれがわかっているだろうから、何かしらの対処をしてくるが大丈夫だろうか?

こういった広範囲の攻撃は俺が魔力にものを言わせて防ぐ方が確実なのだが、フランリューレの顔は自信に満ち溢れている。

「わかりました。では、お願いします」

こくりと頷くと、フランリューレが嬉しそうに微笑んだ。

羽の処理を考えない。俺がやるのはガラルゴンに致命傷を与えることだけ。

俺はともかく、フランリューレには魔力にも限界だってある。決着は早めにつけるに越したことはない。

ガラルゴンが翼を動かして、大量の羽を降らせてくる。

大きなためを作っただけあって、先ほどとは射出してくる羽の量が桁違いだ。

「エルウインド!」

そこに素早く発動される中級風魔法。

「そのままお返しいたしますわ!」

射出された鋭利な羽は、こちらに降り注ぐことはなくはじき返されてガラルゴンの強靭な体を引き裂いた。

強靭な体をしているガラルゴンだったが、自らの翼に宿した強靭な武器には負けるようだ。

さすがはフランリューレ。魔法の使い方と冷静な状況判断が抜群だ。なんて感心している場合じゃない。

俺はガラルゴンの真下にやってくると、足元にブリザードを発動。

巨大な氷塊が出来上がり、その上に乗っている俺は勢いを利用してグングンと上昇。

ガラルゴンが体勢を整える前に跳んだ。

魔力による身体強化とバイローンの肉を食べたことによる筋力向上効果によって、人間ではあり得ないほどの高さの跳躍を発揮。その高さは、空を飛ぶガラルゴンの高さを越えていた。

こちらを見上げるガラルゴンの姿は、とても驚いているように見えた。

「ようやく近くで会えたけど、さよならだ。ブリザード」

俺は無防備なガラルゴンの背中に乗ると、ゼロ距離で最大出力の氷魔法を発動させた。

「すごいですわ! シュウさん! 危険度Aのガラルゴンを倒してしまうなんて!」

氷像と化したガラルゴンを空中でマジックバッグに収納し、風魔法を使って着地するとフランリューレが傍に寄ってきた。

強敵を倒せたことが嬉しかったのか、かなり興奮しているようだ。

普段の落ち着いた佇まいとは正反対で微笑ましい。

「無事に倒すことができたのはフランリューレさんのお陰ですよ」

お世辞などではまったくなく、フランリューレがいてくれて助かった。

一人じゃ、あの弾幕を捌いて攻撃に出ることは難しかった。

俺があんな風にとどめを刺すことができたのは、フランリューレが攻撃を防ぎ、大きな隙を作り出してくれたお陰だ。

「そうでしょうか? わたくしにもっと魔法の技術や魔力があれば、シュウさんが作り出してくれた隙を利用して、もっと楽に立ち回れていたかもしれません」

顔を俯かせてしまうフランリューレ。

極硬魔石の盾で弾いた時のことを言っているのだろうか? 確かにフランリューレの魔法にも俺ぐらいの威力があれば、あの時点で致命傷を与えられていたかもしれないし、ガラルゴンの意識も分散

していて楽になったかもしれない。

「そうだったとしても、フランリューレさんが活躍したことに変わりはないですよ。フランリューレさんの魔法のお陰で俺は何度も助けられました。素直にそのことを誇っていいと思います」

「そ、そうですか? シュウさんのお力になれたのなら嬉しいです」

賞賛すると、フランリューレは頬を赤く染めて前髪をくるくると指で弄り始めた。

それが照れている時や嬉しい時の仕草だと理解している俺は、そんな姿を見て安心した。

フランリューレの魔法運用を見ていると、その状況に適切な魔法を選択し、運用しているのがよくわかる。本当に魔法の使い方が上手い。俺も見習わないといけないな。

いくら魔力が多く、威力の高い魔法が放てても当たらなければ意味はない。

今回の戦闘を糧にして、魔法の使い方というのを考えてみよう。

「さて、安全も確保されたことですし巨大樹の実を採取しますか」

「ですわね!」

地上だけでなく、しっかりと上空にも調査スキルを放ち、周囲に魔物はいないことは確認済みだ。今度こそ安全に巨大樹の実を採取することができる。

先ほどと同じ場所に巨大樹の実は佇んでいた。

「どうやって採取すればいいんでしょう?」

「下から両手で持ち上げれば、綺麗に採れるそうです。どうぞ」

「ええ」

今回の依頼は彼女が保護区や食材について学ぶために付いてきているわけだし、実の採取も譲るべきだろう。それが大人であり、依頼を請け負った冒険者としての正しい選択だ。

ああ、だけど十年に一度しか生らないという巨大樹の実。可能であれば俺が採取してみたかったな。素材によっては採取される前と後で質感が変化してしまうものもある。できれば、ありのままの

巨大樹の実をこの手で触ってみたかった。

「えっと、シュウさんが採取いたしますか?」

心の中でうなっていると、フランリューレが振り返っておずおずと言う。

「いえいえ、俺のことは気になさらずに」

年下の少女に甘えてはならない。ここは年上として譲るべきだ。

「ですが、心の声が仇漏れでしたわよ?」

「えっ、口に出ちゃってましたか!? すみません、本当に気にしなくて大丈夫です!」

どうやら先ほどの悶々とした心の言葉が漏れてしまったようだ。

やってしまった。道理でフランリューレがかなり気を遣うわけだ。

「でしたら、わたくしからシュウさんへのお礼として巨大樹の実の採取をお譲りするというのはいかがでしょう?」

どうやって誤魔化そうかと考えていると、フランリューレがにっこりと笑いながら提案をしてきた。

素材を採取することが大好きな俺からすれば、それはとても魅力的な報酬だった。

「本当にいいんですか? そんなことを言われてしまったら遠慮なく採取しちゃいますよ?」

「構いませんわ。わたくしはまた十年後に採取できますから」

「ありがとうございます!」

礼を告げた俺は、フランリューレと場所を入れ替わる。

そして、薄黄色に輝く丸い実に触れた。

巨大樹の実には薄っすらと透明な膜に包まれている。

とても滑らかな手触りをしている。

「おお、かなり柔らかい! フランリューレさんも触ってみてください!」

「あら、意外と弾力があるのですわね」

衝撃を与えると破れそうに見えるが、触ってみた感じ意外と丈夫な感じだ。まるで水風船でも触っているかのようで気持ちがいい。

「では、採取しちゃいます」

「ええ、お願いしますわ」

触り心地を堪能すると、俺は巨大樹の実をゆっくりと両手で持ち上げる。

強い抵抗感。

巨大樹が長い年月をかけて吸い上げて栄養を溜めた実だ。

取られまいと抵抗するのは無理もない。

しかし、俺は力を緩めることなく、そのままグッと持ち上げた。

すると、巨大樹の実がブチッとした音を立てて茎から切り離された。

俺の手には薄黄色に輝く大きな実が鎮座している。

「巨大樹の実の採取完了!」

「はい! これでお父様から依頼された食材すべての採取が完了ですわ!」

地上千メートル。巨大樹の頂上にて俺とフランリューレの満足げな声が響き渡った。