軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ライラート家からの招待状

応接室にやってくるといつものソファーに腰かける。

対面にはカルロイドが座り、執事のベルダンが紅茶や焼き菓子などを並べてくれた。

「あ、これフツの葉を乾燥させたものです。良ければどうぞ」

「おお、ありがとう。そこまで気遣わなくてもと言いたいところだが、シュウ君の持ってきてくれるお土産はどれも魅力的だからな」

「はい、クレッセンカの蜜をはじめとする食材も全て高品質でございます。下手な商会で買うよりも、よっぽどいいです」

「というわけで、無理にならない範囲で頂けると嬉しい」

貴族らしい建前を無しにして、ぶっちゃけてくれるベルダンとカルロイド。

そんな風に言われると、お土産を持ってくるこちらとしても嬉しいものだ。

「ありがとうございます。また何か良さそうなものがあれば持ってきます」

今回はクラウスからの貰いものだが、また喜んでもらえそうな素材が採取できれば持ってくることにしよう。

「さて、本日急に呼び出してしまった理由を話そう。実はシュウ殿にとある貴族から招待状が届いている」

「招待状ですか?」

俺が小首を傾げる中、カルロイドが懐から一枚の手紙を差し出してくる。

手に取ってみると、裏には見慣れない紋章がついていた。

「アルトリウス=ライラート?」

「その名に聞き覚えはないかい?」

「あるような、ないような……?」

なんだろう、この引っ掛かる感じ。

どこかで聞いたことあるようでないような。

貴族の名前って色々な場所で聞いたりするから、正直自分に関係あるのかないのかわからなくなる。

少なくとも差出人とやらに俺は会ったことがないはずだ。

「フランリューレという少女のことは、知っているのではないかな?」

カルロイドに言われ、俺はようやく思い出した。

魔法学院の課題としてレディオ火山の素材を集めていた貴族の学生たち。

その中のリーダー的な存在だったツインテールの少女のことだ。

「あっ! フランリューレさんの家名でしたか!」

「そうだ」

「しかし、どうしてライラート家が俺に招待状を?」

レディオ火山では互いの目的のために協力したが、わざわざ招待状を出される理由がわからない。あの時世話になったから招待したいと思ったとか?

「実は先日シュウ殿に頼んだヴォルケノスの卵なんだが、渡した相手はフランリューレの父君であるアルトリウス様でね。その縁でエルドの一件を聞いたのさ」

ヴォルケノスの卵の納品先がアルトリウス。

「えっ!? それじゃあ、俺はその娘さんに依頼を手伝わせたことに!? 知らなかったとはいえ、本当にすみません!」

「いや、アルトリウス様も気にされてはいなかった。互いに思惑あっての協力だし、問題ないだろう」

娘を危険な目に遭わせたことで苦情がきており、謝罪を求められているのかと思ったが違うらしく、別に怒ってはいないみたいだ。

そのことをカルロイドからやんわりと告げられて安心する。

今のところ俺が出会った貴族は皆温厚な人ばかりだが、この世界では特権階級に位置する人々が大きな力を持っている。貴族の人と揉め事なんてことは勘弁したいからね。

「ただ、アルトリウス様にシュウ君のことを話すとかなり興味を示していた」

「それもあって招待状が来たのですね」

俺の呟きにそうだとばかりに頷くカルロイド。

フランリューレやカルロイドからどのような話を聞いて興味を抱いてくれたのか気になるが、そこは尋ねないでおこう。どんな風に話されているのかを聞くのが怖い。

「アルトリウス様のことについて伺ってもいいでしょうか? 自分はあまり貴族の方の情報にあまり詳しくないもので……」

「ああ、いいよ」

俺が尋ねると、カルロイドはアルトリウスという人物について説明してくれる。

「まずライラート家は私と同じように領地を治める貴族だ。ちなみに、私は子爵家なので、伯爵家であるライラートの方が家格は高く、国内でも大きな影響力を持っている」

カルロイドが気を遣っている相手だけあって、思っていた通り偉い人物のようだ。

というか、カルロイドが子爵だということに初めて気付いた気がする。

「そして、ライラート家の現当主であるアルトリウス様だが、簡単に言うと美食家さ」

「前に言っておられましたね。なんでも美味しい食べ物や珍しい食材に目がないとか……」

「彼は単に美味しい料理が好きなだけじゃなく、世界中から集めた食材を自領で栽培、研究し、食材となる希少な動物や魔物までも飼っているほどさ。そのエリアは『美食保護区』と呼ばれており、食材となる素材が数多の存在している」

「『美食保護区』……ッ!」

自分が食べたいがために世界中から食材となる動植物を集めている。

すごい執念だ。単に食材が好きな道楽者じゃない。

きっと食に対する意識が高いのだろう。

「そこにはすごい食材がありそうですね!」

「ああ、きっと私たちが見たこともない素材がたくさんあるのだろう。しかし、その保護区は年々拡大化し、管理が難しくなっていると聞いた」

「そ、そんなに広いんですね」

それだけ力のある貴族にも関わらず、管理できないとは……。

特別な植物だけじゃなく、動物や魔物も飼っていると聞いた。きっと、普通の牧場なんかとはスケールが違うんだろうな。

「多分、シュウ殿には保護区にある食材の採取を頼みたいのではないかと思う。無論、断っても構わないとは思うが――」

「断りませんよ! 珍しい素材が管理されている保護区! すごくいいじゃないですか! 是非とも入りたいです!」

美食家貴族が世界中から集めた食べられる素材の数々。

非常に楽しみだ。

もし、美食保護区で採取させてもらえるというのであれば、是非とも採取させてもらいたい。

どんな光景が広がっているのかわからないが、想像しただけでワクワクしてくる。

「まあ、シュウ殿ならそんな風に言うんじゃないかと思ったよ。実際に頼まれるかはわからないが、そういう可能性もあるとして心構えをオススメする」

「はい、ありがとうございます!」

というか、頼まれなくてもこちらから志願させてもらおう。

実際に許可が下りるかは不明だが、是非とも美食保護区とやらに足を踏み入れたいと俺は思った。

カルロイドからライラート家の招待状を受け取ると、翌日には高級馬車でグランテルを出発。そこから北西に六日ほど進み、ライラート領にある屋敷らしき場所にやってきた。

敷地をぐるりと囲っている大きな壁。

屋敷は奥にあるためか屋敷は見えないが、庭園の広さが尋常ではない。

恐らく歩いて向かうのではなく、馬車で敷地内を移動するのだろう。

それくらいパッと見た感じの敷地面積が大きかった。

とりあえず、ジロジロ眺めるのはこのくらいにしよう。

門を守っている警備の人が怪しむような視線を向けてきているし。

「冒険者のシュウと申します。アルトリウス様から招待状を頂いて参りました」

身分を証明するために冒険者のプレートと招待状を提示する。

「お話は聞いております。参られたのであれば、すぐにご案内するように仰せつかっております。どうぞ」

それらを確認すると警備が後ろの者に手ぶりで合図をし、門が開かれた。

「え? 今すぐですか?」

「はい、中にある馬車にお乗りください」

てっきり近くの街で滞在し、準備が整ってから呼ばれるかと思ったが、今すぐでもいいらしい。

余計な時間がかからないのは好ましいが、心の準備ができていなかったので少し戸惑った。

門をくぐると広い庭園が見え、ポツリと馬車が用意されていたのでそこに乗り込む。

内部のソファーがこれまたフワフワで実にお金がかかっていそうだ。

「では、お屋敷に向かいます」

「よろしくお願いいたします」

御者の声に頷くと、ピシャリと手綱の音が鳴って馬車がゆっくりと進みだした。

敷地の中にいるのに馬車で移動って不思議な感覚だ。