軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

高級馬車

旅に必要なものを食料品、レディオ火山に必要なものを買い揃え、各所に依頼で不在にする報告をする。

「にゃあ! また遠出するのかにゃ!?」

「そうなんです。今度はリンドブルムより近いですし、依頼を終えたらすぐに戻ってきますので」

「領主の依頼とはいえ、シュウは働きすぎにゃ。帰ってきたらもう少しゆっくりするにゃ」

確かにミーアの言う通りだな。各地を素材採取するのは本望であるが、少しのんびり感が足りないかもしれないな。

リンドブルムから帰ってきたばかりだし。

でも、あちこちの素材を採取できるのも捨て難いし……。

帰ってきてまたすぐにいい素材があるなどと言われたら、またフラフラと行ってしまいそうだな。

うーん、先のことはわからないし、その時の俺に判断を任せよう。

そんな風に各所に報告していると、あっという間に一日は終わった。

そして、出発日である次の日。

俺は準備を整えて西門広場にやってきた。

「こっちだ」

ドロガンとロスカを探していると、横から声をかけられた。

どうやら先に到着していたようだ。

「おはようございます。あれ? ロスカさんは?」

「あいつはまだ荷物を纏めている。あまりにも遅いから先に出てきた」

「あー、なるほど」

起きているし準備しているのなら問題ないだろう。

女性は何かと準備が大変だろうし、少しくらい目をつむってあげるのが紳士だ。

それにしてもドロガンは荷物が多いな。背中には大きな背嚢、手にはトランクを二つも持っている。

「ドロガンさん、かなり大荷物ですね」

「身の回りの物よりも仕事道具がほとんどだかな」

軽くトランクを持ち上げると、中から重そうな音がした。恐らく鍛冶に必要な道具が入っているのだろう。

元はエルドにいたと聞くし、滞在中に鍛冶仕事をするつもりなんだな。

「よければ荷物をマジックバッグで預かりましょうか?」

「……それじゃ背嚢だけ頼む。仕事道具は近くにないと落ち着かねえからな」

「わかりました」

大切な物を身近においておきたい気持ちはわかる。

仕事道具を大切にしているドロガンを微笑ましく思いながら、受け取った背嚢をこっそりとマジックバッグの中に収納。

すると、ロスカがドロガン同様にたくさんの荷物を持って走ってきた。

「お待たせしたっすー! いやー、仕事道具と素材の厳選に悩んでしまったっす!」

「別にいいですよ。俺もきたばかりですから」

「おっ! シュウさんお約束の言葉をわかってるっすねー!」

なんだろう、この言葉聞いたことがある。具体的にはリンドブルムでも。

女性二人からこのように言われるとは、やはりこの台詞はこちらでもお決まりのものなのか。

「遅い」

「親方、女の子には色々と準備が――あれ? 親方、なんか荷物減ってません?」

いきり立っていたロスカであるが、ドロガンの荷物の減りに気付いたようだ。

「こいつに収納してもらった」

「あああああ! そんな裏技があったすね!」

この二人は俺がマジッグバッグ持ちだと知っているからな。別にこれくらいどうということはない。

「あの、シュウさん! 工房に付いてきてもらってもいいっすか? 泣く泣く置いてきた物があって……」

俺がマジックバッグを持っていることを思い出したのか、ロスカが上目遣いで言ってくる。

どうしても持っていきたいものがあるらしい。

「……いいですけど帰り道はどうするんですか?」

「その時には荷物もいくつか減ってるんで大丈夫っす!」

本当だろうか。

エルドの街で仕事道具や素材を買い込んで、帰り道に困るロスカが想像できてしまうのだが。

まあ、ドロガンも付いているし、彼女も子供ではないのでさすがに何とかなるか。

俺は深く考え込まないようにしてロスカと共に工房に戻った。

ロスカの残してきた荷物をマジックバッグに回収し、西門の広場に戻ると、ようやく出発だ。怪しまれないように最低限のダミートランクを引っ提げて馬車乗り場に向かう。

「あれ? シュウさん、馬車の乗り場はあっちっすよ?」

「今回は領主様の依頼なので旅費も負担してくれるんです。だから、高級馬車で行きましょう」

「さすがは領主様! 太っ腹っすね!」

「だが、それは俺たちも適用されるのか?」

楽天的にとらえるロスカと違って、ドロガンが訝しむ。

まあ、それはそうだよな。この二人は依頼とはまったく関係がないんだし適用されるとは思わない。そう考えて動くべきだ。

「領主様の懐の深さなら馬車代も適用されそうですが、されなかったら俺が払います。道中の安全性を高めるってことで」

「別にそこまでしてもらわなくてもいいんだぞ?」

「いえ、無理してるのではなく俺がこっちに乗りたいので」

ドロガンが気を遣ってくれるが、本当にそんな理由じゃないんだ。

高級馬車の快適さを知ってしまうと、普通の馬車には戻れない。

本当にクラウスは悪いものを俺に教えてくれたものだ。

「……そうか。お前がそこまで言うなら素直に乗ろう。後で乗車代を請求するなよ?」

「しませんよ」

念を押すように言ってくるドロガンの言葉に頷きながら、高級馬車の受付へ。

お金を払ってエルド行きの馬車へと案内してもらい、乗り込む。

「ふわぁ、まるで貴族や豪商が乗るような馬車っすね! お嬢様にでもなったような気分っす!」

豪奢な馬車に乗れることが嬉しいのか、ロスカはひどく感激した面持ちだ。

フワフワとしたシートに腰を埋めて、感触を楽しんでいる。

俺も前回はあんな感じだったのだろうか。改めて見るとちょっと恥ずかしい。

「これだけ広いと簡単な手仕事ができそうだな」

「他の乗客もいますしやっちゃダメですよ?」

「冗談に決まってる」

いつもと同じ生真面目な表情で言うので、ドロガンの言葉が冗談かわかりにくい。

それにドロガンなら剣の手入れくらいは黙々とやってしまいそうだからな。

だが、思わず冗談を口にするのだ。ドロガンもこの馬車を気に入ってくれているのは間違いないだろう。

しばらくするとポツポツと他の乗客が乗り込み、出発時間になったのか馬車が出発する。

エルドという過去な場所だからかリンドブルムの時に比べて乗客が少ない。行く方向によって多少の乗客率の差はあるようだ。

西門をくぐる際に顔見知りの騎士に手を振り、グランテルの街を旅立つ。

今回は休暇目的ではなく、依頼をこなすことが目的なので長い旅にはならないだろう。

それでも向かうのは未知の場所だ。きっと俺の思いもよらない素材がたくさんあるに違いない。

「レディオ火山の素材。楽しみだなあ」

小さくなっていくグランテルの街並みを窓から眺めながら、期待に胸を膨らませるのであった。