軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

浜辺で採取

海に入るなり激しい水のかけ合いをすると、高揚していた様子のサフィーも落ち着いてきたようだ。

今ではのんびりと海の中を泳いでいる。

中々に達者なクロールを見る限り、泳ぎは得意なようだ。

クラウスやネルジュは少し疲れたのかパラソルの下で休んでおり、ルミアは水分補給をしているようだ。

まだ元気な俺はどうするべきか迷う。サフィーのように泳ぐべきだろうか。

しかし、今それを選択すると遠泳とか付き合わされるかもしれない。

それも悪くはないが、水のかけ合いで激しい運動をした今、少しゆっくりとしたい気分だった。

海の中に入っていくのをやめて、俺は海岸を少し歩く。

「おっ」

すると、足元で綺麗な白い貝殻を見つけた。

【フエガイの貝殻】

先端に穴を空けて空気を吹き込むと、笛のような音が鳴る。

気になって鑑定で調べてみると、どうやら笛のような音が出る貝殻らしい。

砂に沈んでいるそれを拾い上げ、海水で丹念に砂を洗い流す。

先端部分を指で押してみると、ポロリと折れたのでそこに口をつけて息を吹いてみる。

すると、貝殻から空気が突き抜けてピイーッと甲高い音が鳴った。

駄菓子で売っていたラムネのような音がしてとても懐かしい。

「シュウさん、それは?」

笛の音が気になったのかルミアがこちらにやってきた。

「フエガイという貝で、こうやって先端から息を吹きかけると音が鳴るんですよ」

「私も探してみます!」

俺がピーッと音を鳴らしてみると、ルミアは目を輝かせて探し始めた。

年齢の割に大人びているルミアであるが、こういう面白い素材や遊びには無邪気に反応してくれるのである。それがとても微笑ましい。

「あっ! ありました――わっ!?」

フエガイを拾い上げたルミアが驚いて飛び跳ねた。

「どうしました?」

「か、殻だけじゃなかったみたいで……」

恥ずかしそうに言うルミアの視線を追うと、フエガイからにょっと顔と足を出すヤドカリのような生物がいた。

殻だと思って覗いて出てきたらビックリするな。

「どうやら先客がいたみたいですね」

「はい、貝殻だけのものを探そうと思います」

「俺も手伝いますね」

二人で探せばすぐに見つかるかと思ったが、岸にはたくさんの似たような貝殻があって中々見つからない。

仕方がないので俺はフエガイの貝殻を検索して調査スキルを発動。

すると、周囲でポツリポツリと紫色のフエガイらしきシルエットが見えた。

意外とすぐ近くにたくさんあるが土で埋まっているようだ。それを掘り起こしても土がたくさん入っていて大変なために、できるだけ表層にある物を拾い上げる。

「ルミアさん、こっちにいくつかありましたよ!」

「もらってもいいですか?」

「勿論です」

「ありがとうございます!」

ルミアはお礼を言うと、俺の手の平にあるフエガイの貝殻を一つ手に取った。

彼女はフエガイを海水で洗うと、小首を傾げながら凝視する。

「あの、どこから息を吹けば……」

「先端の尖った部分を指で押して折るんです」

「あ、なるほど! わかりました!」

そう教えると理解できたのか、ルミアは指でフエガイの先端部分を追って穴を空けた。

そして、そこに口をつけて息を吹きかけると、ヒョローッと音が鳴った。

間の抜けたような音に俺とルミアは思わず笑ってしまう。

「なんだかシュウさんの音と違いますね」

「穴の大きさや貝殻の大きさで音が変わるのかもしれません」

興味深くて、俺は手の中にあるフエガイをいくつか吹いてみる。

すると、ボーっと音が鳴ったり、ビーッと音が鳴ったりした。

「やっぱり、貝殻の形なんかによって音が変わるみたいです」

「面白いですね。お土産にいくつか拾います!」

意気揚々と岸を歩いてフエガイを探し出すルミア。彼女もいくつか欲しくなったようだ。

俺が調査で探せば一瞬で見つかるが、自分で見つけ出したいことは察せられたので余計な気は回さないことにした。

そういえば、ルミアの言葉で俺もお土産を用意しないといけないのをすっかり忘れていた。

ラビスをはじめとするギルド職員の人に用意するって言ってしまったからな。

リンドブルムといえば海産物が一番の目玉だ。俺にはマジックバッグがあるので、鮮度を保ったまま持ち帰ることはできるが、それを教えるのは避けたい。

氷魔法で冷凍すれば鮮度も保つかもしれないが、遠くから生物を持ち帰るのってあまりオススメできないよな。それが原因で食あたりでも起こしたら非常に申し訳ないし。

かといって、魚の干物なんかを持ち帰るのもちょっと……。

食料品は選択せずに、海にあるものを持ち帰るのがいいかもしれない。

そう、ルミアがフエガイをお土産にしようとしているように。

決してお土産を選んだり、考えたりするのが面倒くさいわけではない。これは俺なりに考えた結果だ。

「よし、そうと決めたら何か拾おう」

まずは早速とばかりに調査を発動。

魔力を浸透させると、視界にたくさんのシルエットが浮かび上がる。

岸にはたくさんの素材が打ち上げられているからか、非常に素材が多い。

中でも気になるのがこの水色っぽい丸みを帯びた石だ。

【珊瑚片】

珊瑚の欠片が長い間波に揉まれることによってできたもの。

リンドブルムの名物であり、アクセサリー類としてよく使われる。

綺麗な色と丸みを帯びているのが価値が高い。

鑑定してみると、どうやら珊瑚片というらしい。

ビーチグラスと同じような感じで出来上がったもののようだ。

そういえば、町でこういう装飾品をつけている女性がいた気がする。それはこれだったのか。

これならばラビスの受けも悪くなさそうだし、装飾人であるロスカも喜んでくれそうだな。

俺は綺麗な色と形をした珊瑚片を次々と拾っていく。

「……珊瑚片を拾っているのか?」

夢中になって採取していると、クラウスがやってきた。

ネルジュは大丈夫なのかと思ったが、彼女はルミアと一緒にフエガイを探しているようだ。

「うん、グランテルの人たちへのお土産にしようと思って」

「懐かしいな。俺も子供の頃はよく拾ったものだ」

感慨深そうに呟くと、クラウスも珊瑚片を拾い始めた。

それが俺を手伝ってくれているのは言わなくてもわかることだが意外だった。

「……どうした?」

マジマジと見つめていると、クラウスが訝しむ。

「いや、クラウスのことだから露店で買えばいいとか言うと思ったんだけど」

「俺の本音はそうだな。珊瑚欠など露店で袋詰めされたものが銀貨一枚で買える。だが、お前はそれではつまらないと感じているのだろう?」

「俺のことをよくおわかりで」

装飾品として使えるのだ。そういう露店にいけば、すぐに百個くらい買うことができるだろう。

だけど、それじゃあつまらない。せっかく目の前にあるのだから自分の手で集めて、お土産としたいと思ったんだ。

「無邪気な顔で珊瑚片を拾っていれば、それくらいわかる」

クラウスはそう言うと、黙々と珊瑚片を拾っていく。

その手つきは素早く、使い物になりそうな綺麗なものだけを拾っていた。

子供の頃に集めていたというのは本当のようだ。

クラウスに負けないように珊瑚片を集めていると、地中から黄土色の物体が見えた。

それは奇妙な湾曲した形をしており、ただの石のようには見えない。

【ボーラの上顎骨】

ボーラの上顎の骨。生前は岩をも砕くほどの力を秘めていた。

思わず鑑定してみると、ボーラという魚の上顎の骨だということがわかった。

「クラウス、見てくれよ。ボーラっていう魚の骨だって」

「この辺りには生息しない魔物だが骨となって流れ着いたのか? ……まあいい。海の魔物の骨は稀少だ。研究者に渡せば、それなりの額になるはずだ。もし、他に見つけたのなら拾っておけ」

危険な魔物が多く潜む海を調べるには危険が多い。なので、あまり生態研究が捗っていないのだろう。研究者が喜んで買い取って調べてくれるのであれば採取しておこうかな。

魔物の研究が進むと、それだけ自分の安全にもつながるわけだし。

ボーラの骨と検索して調査スキルを発動すると、周辺にまるまる一体分の骨らしいものがある。

一部分だけ採取しても収まりが悪い。パズルからピースを一つ取ってしまったかのような気分。

「わかった。そうするよ」

どうせなら綺麗にそろえてあげたいじゃないか。

そう思って俺はボーラの骨を地中から掘り起こして採取することにした。