軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【書籍化記念SS】幸せの重さは羽のように

※本SSに出てくる執事のレインは、アランたちがミュラー侯爵家から連れてきた使用人で、ナタリーと仲良しです。書籍版でもちょっぴり出てくる人ですが、前SS同様、読んでなくてもお楽しみいただけます。SS、本日でラストです!

sideシルヴィ

双子を授かり、過保護なアランにあきれながらも、出産の日まで無事にたどり着いた。産んでからもアランの過保護は加速するばかりだけど。

でも、乳母は雇わず自分で育てたいという願いをアランは快く受け入れてくれた。

朝日が差し込むころ、部屋の空気があたたかくなる。毛布の上で、小さな音がする。見ると、藤色の髪をふわふわ揺らしたリュシエンヌが、器用とは言い難い動きで、はいはいをしながら、私の方へ向かってくる。

「まぁ、リュシエンヌ。今日も早起きね」

声をかけると、娘は丸い瞳をぱちくりと瞬かせ、口を小さく開けて笑ったような顔をする。その後ろでは、金色の髪のルークが毛布を蹴り上げたまま、仰向けで寝返りを打っている。

まったく、二人とも同じ日に産んだはずなのに、こうも性格が違うのだから不思議なものね。

こちらは、起きる気配がまるでない。

「ルーク、あなたも少しはお姉ちゃんを見習ったら?」

返事があるはずもなく、すぅすぅと寝息だけが返ってくる。

リュシエンヌを抱き上げると、小さな指が私の髪に絡まった。笑顔のまま、そのまま引っ張るリュシエンヌ。赤子は本当に容赦がない。

しかし、その痛みさえ愛しく感じてしまうのだから、不思議だわ。

少しして、朝の訓練をしていたであろうアランが部屋に顔を出した。少し焦ったような顔をしている。

「しまった。リュシエンヌは、もう起きてしまったのか? もっと早く帰ってくるとよかった」

彼がそう言うと、リュシエンヌは嬉しそうに手足をばたつかせる。渡すと、アランはやわらかく目尻を下げ、そっと娘の頬に触れた。

「リュシエンヌは早起きだな。ルークは?」

「こちらも相変わらずよ」

頭を撫でると、金色の小さな頭がふらふらと揺れ、ようやく目を開いた。

「ん……」

言葉にならない声がこぼれ、次の瞬間には泣きそうに眉が寄る。

「よしよし。起きるのが嫌だったのね」

抱き上げると、ルークは私の胸元に顔をすり寄せて小さく息をつく。その仕草があまりにかわいくて、アランと、二人で笑ってしまった。

廊下ではナタリーが待っていた。

彼女の姿を見つけた瞬間、なぜかルークは片手を伸ばす。まだ幼いのに、好ましい人を判断するのだろうか。

「まぁ、ナタリー。相変わらず懐かれてるわね」

「ふふ、当然です」

ナタリーがルークを受け取ると、リュシエンヌまで手を伸ばす。ナタリーが嬉しそうな、困ったような顔をすると、執事のレインがそっとそばに寄り、リュシエンヌを抱き上げていた。

ふたりがいてくれるのから私もアランも、この小さな日々を乗り越えていける。

泣き声も、笑い声も、全部まとめて私の宝物。

眠たいのか、お腹が空いたのか、あるいはただ気まぐれなのか。双子は理由もなく機嫌が悪くなる日がある。

この日がまさに、その「ぐずぐず」の日だった。

「二人とも、どうしてそんなに機嫌が悪いの?」

私があやしても、リュシエンヌは唇を尖らせてぐずり、ルークは両手をばたつかせて泣き声を大きくする。

そこへアランが足早に駆け寄ってきた。

「どうしたんだ?」

その声を聞いた瞬間、双子はまるで合図したかのように泣き声を大きくした。

……絶対にアランの注意を引こうとしているわね。困った子たち。

アランは小さく笑い、迷いのない手つきで二人を抱き上げた。

「ほら、お父様だ。もう泣かなくていい」

途端にぴたりと泣き止む双子。なんなのかしら、これ。アランの安定感のある抱き方がいいのかしら。

私は、子供たちのふっくらした頬を軽くつつきながら小さく嘆息した。

「……なんだか、二人にアランを取られた気分だわ。もう、アランの腕の中は完全に二人の場所ね」

ぽつりと出た言葉に、アランは一瞬だけ驚いたように目を見開き、私を見る。

わざとふくれた顔をしてみせた私を見て、アランは、目を細めた。

「ナタリー、レイン。二人を頼む」

「は、はいっ!」

慌てて駆け寄る二人に、アランは双子を渡す。少しぐずりだす双子。

「え、アラン……いいの?」

思わず問い返すと、アランは、私にだけ聞こえるように言った。

「いい。今の俺の最優先は、お前の機嫌を取ることだ」

アランはそのまま私の腰に手を回し、ぐっと引き寄せ、簡単に抱き上げ片腕で支えた。

「きゃっ、アラン!?」

「暴れるな、落ちるぞ」

驚く私に、彼は平然とした顔で言う。

「機嫌は直ったか?」

「ふふ、そうね、直ったわ。さすがに、子供たちよりは重いでしょう?」

つい意地悪く言えば、アランは迷いなく首を振る。

「何を言う。お前はいつだって羽のように軽い。安心して甘えていろ」

後ろでナタリーが「ひゃ……」と可愛い悲鳴を上げ、レインは顔を真っ赤にして赤子を見つめているふりをしている。

私とアランはそんな二人に軽く微笑みを返す。

双子に振り回される毎日。

だけどそのたびに、アランが双子も私も大事にしてくれる。

『聞いてくれ、お前のそばに誰かがいるのを見るのは、もううんざりだ。お前は、むちゃばかりするし、傷つきやすく優しすぎる。虚勢をはって、立とうとするお前を支えるのは俺だ。結婚式で誓いを交わすのも俺だし、初夜ももちろん俺とだ。子供? 俺とお前の子だろ? 可愛がるに決まっている。看取りたくはないな……できるのなら共に逝こう。愛しているんだ。伯爵位ならつり合いが取れるだろ?』

ふふ、共に逝くまで、アランはきっと約束を守ってくれるわね。

END

ありがとうございました!