軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28.卒業パーティーの後 sideウィレムス公爵家③

ー父ー

押し寄せる領民にうんざりし、妻を連れ王都の屋敷に戻ってきた。

ん?邸が汚い…庭の花に彩りや美しさがない。

いったいこれは…

「父上、連絡もなしにどうなされましたか?はっ!シルヴィの居場所がわかりましたか?」

「いや、そうではない。それより、この邸のありさまはなんだ。使用人の管理はどうなっている。」

「…今から説明いたします。こちらへ…」

薄汚れたテーブル、輝きのないシャンデリア。飾っている花が貧乏くさい。

次々と料理が運ばれてくるが、こんなところで食事をしろと!?

「まずい!!!なんだこれは!シェフ、いや、使用人も変えたのか?」

見た目も悪いが、味のバランスが最悪だ。こちらの皿は薄味、こちらのスープは、塩辛い。配膳するメイドは皿を置くたびに音を立てる。

「…いいえ、父上がいた頃からだれ一人変わってはいません。」

私がいなくなり、手を抜いているのか?なんというやつらだ。

「それどころか、仕事への意欲も取り組む時間も以前と変わりません。でも、使用人の能力が落ちたのです。」

息子、フェルナンが王太子から見せてもらったというシルヴィの冊子に”私が公爵家にいる間、どんなに手を抜いても、完璧な仕事ができてしまうように使用人に能力強化の魔法をかけた”と書いてあったという。

能力強化だと?使用人の能力を上げる理由がわからない。

「使用人ともほとんどかかわりがなかっただろう?何のために、シルヴィが。」

「かかわりがなかったからではないでしょうか。使用人たちはシルヴィの食事や部屋の掃除に明らかに手を抜いていました。手を抜かれても、自分に影響がないように能力強化の魔法をかけたのかと。」

青ざめ震えているシェフが、膝をついて話し出した。

「私は旦那様のご命令通り、私たち使用人が食べる食事よりも粗末なものをお嬢様に出していました。しかし、なぜか味見をするとおいしかったのです。腕のいい私は手を抜いてもこんなにおいしいものを作ってしまうのかと、そう、自惚れ、おかしな現象を報告しておりませんでした。」

「わ、わ、私たちも、手を抜いて掃除をしたはずなのにお嬢様の部屋が綺麗になっているのを自分たちが優秀で、うっかりきちんと掃除をしてしまったんだといつも笑って話…、申し訳ありません。」

愚かな。

「なぜ早く報告をしない!そしたらシルヴィの能力ももっと早く知ることができたのに!!お前たちなんか解雇だ!!」

「それだけは…旦那様!!!」

公爵家の使用人はそれに見合った能力を持っていなくてはいけない。能力の強化前に見抜けなかったとは。総入れ替えだ!!

「解雇はしません。父上。」

淡々と話すフェルナン。

「公爵家には、解雇時に払う退職金も新しく人を雇い入れる金も、いや、使用人の給金すらありませんから。」

********************

一夜明け、公爵家の使用人は半分に減った。紹介文も持たずに愚かな奴らだ。

しばらく給金がなくても、住むところがあればという者たちだけが残った。まあ、この程度の能力ではどこも雇うことはするまい。

「やり直して!髪がちゃんとアップにされていないではないの。」

妻がメイドにヒステリーに叫んでいる声が聞こえる。

領地の作物は過剰に余っている状態でこのまま適切に取引するものがいなければ、かえって赤字だ。商会もいつの間にか人の手に渡っていた。正式な公爵が許可を出したんだ、それも可能だろう。フェルナンが先行投資を行っていた事業の関係者は、金を持って逃げたらしい。鉱山からの収益が入る口座は凍結されていた。商会や鉱山からは金が入らないとなるとどうすれば、どうすればいい。

…隣国だ。隣国の叔父のところに行ったとしか考えられない。あの護衛も消えた、そうだ間違いない!

叔父と頻繁に連絡を取っていた形跡はなかったが、そもそもこの国でシルヴィと交流している人間など皆無だ。隣国しか選択肢はない。

執事にフェルナンを呼んでこさせる

「隣国の叔父ですか?」

「そうだ、この国で見つからないのであれば、可能性は一つしかない。隣国だ。連れて帰り、まずシルヴィの商会と鉱山の権利を譲渡させよう。他国との契約も結びなおさせなくては。そして今度こそ、公爵をお前に譲らせよう。」

「すぐ行きます。父上も共に行き、うまいこと言いくるめてください。」

「ああ、分かっている。愛情に飢えているあの娘であれば、甘い言葉一つで涙を流し、喜んで帰るだろう。しかし侯爵家とは言え、シルヴィの叔父は、皇室ととても近い関係だと聞く。面倒だ。慎重に動かねばならない。そうだ!シルヴィはこの国の大聖女だ。国王陛下に親書を頼もう。」

今までの行いなどすべて忘れ、甘い予想を立て、王宮へ使いを出し、連絡を待つ。

シルヴィがまいた種から芽が出始めていることにも気付かずに。