軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1.卒業パーティー~第三者視点~

「シルヴィ・ウィレムス!貴様は、公爵令嬢の権限をかざして傍若無人なふるまいをした。大聖女だというのに仕事のほとんどを他の聖女に押し付け、さらにここにいるミラに数々の嫌がらせをした。大聖女にも国母にふさわしくない。よって、婚約破棄を宣言する。」

きらびやかに彩られた学院の大広間で、婚約者のウィレムス公爵令嬢ではなく、別の女性をエスコートして現れた王太子殿下は、ウィレムス公爵令嬢を見るなりそう告げた。

今日は、卒業パーティーであって、殿下だけが主役ではないはずなのだが…。まあ、周りの令息令嬢は何が始まるのかワクワクしている様子…。

「かしこまりましたわ。セドリック殿下。」

白磁のような肌にきらめく金髪、宝石のようなディープグリーンの瞳。在学中、ほとんど感情を確認することができなかったその顔には、気品に溢れた笑みが浮かんでいる。

「婚約破棄だぞ。わかっているのか!」

「ふふ、嫌ですわ殿下。簡単に言えば「結婚するという約束を一方的に取り消す」ということでしょう?わからない人がいるのですか?」

こてんと首を傾げ、明らかに小ばかにしたような口ぶりの公爵令嬢。こんな姿を見たことがない。シルヴィ・ウィレムス公爵令嬢といえば、目立つことなく余計なことは話さず一歩引いているという印象だ。もちろん傍若無人なところなど見たことはないが、こんなに明るい雰囲気でもなかった。

ウィレムス公爵令嬢に動揺が見られないからなのか、殿下のほうが動揺しているように見える。

「そ、そうだ、貴様有責でだ。すべて認めるということでよいのだな!」

「ええ、傍若無人なふるまいも皆様への嫌がらせも心当たりがありますもの」

華々しい会場は、緊張感に満ちた。今、皆様って言ったか?

ウィレムス公爵令嬢の言葉を受け、勝ち誇った様子の殿下。しかしながら、隣の男爵令嬢はなぜか目に見えてうろたえてる。

「ならば、今この時点で婚約破棄を決定する。すでに王家並びに公爵家の許可はとってある。慰謝料の請求は、公爵家ではなく貴様個人にだ。そして、処遇もすでに決定している。」

ああ、新たなスタートを祝う卒業パーティーだというのに、今まさに一人の令嬢の人生が終わる。公爵家という恵まれた家に生まれても…人生とはわからないものだな。

「処遇云々は後にして、やはり取り消すとごねられても嫌ですので、先に婚約破棄の書類にサインをしてしまいましょう。用意してあるのでしょ殿下?」

…おかしい、追い詰められているはずなのに、なんだこの令嬢の前向きさは。

「な!ごねるのは貴様の方だろ!!当然用意はしている。書類をここへ。」

背筋を伸ばしまっすぐ前を見て優しい風のように歩く、ペンを執る、筆を運び、再び姿勢を正す。令嬢の美しい一つ一つの優雅な動きにだれもが見惚れる。2人のサインが終わり、王太子が高々と書類を掲げる。

「今この時をもってシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢との婚約が破棄された。そして、私は愛するこのミラベル・ルメール男爵令嬢と婚約を結ぶ。ミラは聖女としての力はないものの、自分ができることをと神殿の手伝いをし、民に寄り添い愛されている。他の聖女の信頼も厚い。博愛の精神をもち、私の心の支えだ。ミラ、今日から君は私の婚約者、未来の王妃だ。」

微笑み合う2人。涙を浮かべ、殿下の胸に顔をうずめる令嬢。おおおお、という歓声と拍手喝采の令息令嬢たち。まさに、物語の美しいラストのようだ。

そして、笑顔でひときわ大きく拍手をするシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢

………………。

徐々に周りの拍手が消えていく中、「まあ、素敵ね」と言いながら拍手を続けるその姿に、みながざわめき立つ。

「…貴様はなぜ拍手をしている。」

「拍手の意味もご存じない?愛し合う2人を祝福しているのです。私、殿下に全く興味がございませんでしたから、本当に愛し合える方と結ばれたことを心から嬉しく思っておりますのよ。」

「なんだと!…いやもういい。最後の強がりだろ?では、貴様の処遇を言い渡す。公爵家からの除籍、並びに国外追放、慰謝料の支払いのため…」

「あ、殿下?失礼ながら、発言の許可を。」

「なんだ!今更何を言っても貴様の処遇は変わらないぞ!」

「国外追放などは全く構わないのです。ただ、私の嫌がらせは高度すぎて、本当に殿下にご理解いただけているかどうか疑問で…」

「証拠はそろっているし、全て把握済みだ。何が理解だ。笑わせるな!」

「ふふふ。では、殿下、答え合わせをいたしましょう?」