軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14 新たな戦力

「なんと……そのような……」

俺自身の事を話し終えた。

やはりと言うかズーグは驚きを隠せず、絶句したように二の句を継げないでいる。

看破のステータス画面に表れた「竜魔法」についても話したから、信用はしてもらえたはず。

この竜魔法と言う技能は竜化術とも呼ばれるもので、竜人が竜の能力を模して操る特殊な魔法である。

竜人には竜神信仰があり、彼らは竜化術こそ信仰を世に示す術と考えているようだ。自身を信仰対象になぞらえる、と言うのが立脚点としてあるため、竜魔法と言う呼び名は嫌われ使われる事がほとんど無いらしい。竜魔法と言う呼び名は集落内ですら使う者はおろか知っている者はほぼおらず、指導者一族の持つ一部の資料に載る程度である。

故に、その名を知っていた俺の能力についても信憑性が出たと言う訳だな。

「巻き込んで悪いが、まともな探索者とは異なる活動もするから、覚悟はしておいてくれ」

仮称ウィスパーさんに与えられた才能の器。

そして同時に与えられた予備知識が示唆する迷宮探索。

俺がこの世界に来た手がかりは迷宮の中にあると信じている。

しかし、どこにあるのか、本当にあるのかはまるで不明。

安穏とした……例えば王立資源探索隊の様な安全・効率重視の探索は、ある程度まではできるだろうが、深く潜れば潜るほど困難になるだろう。

迷宮の深部が危険な場所である事は予備知識が教えている。

地下三階から早くも仲間が必要になるとは思ってなかったが、見込みが甘かったと言う事だろう。

しかし幸運にもズーグと言う奴隷を得る事ができた。今は片腕で十全に、とはいかないが、危険な地で二十年近く戦い抜いた彼の技術と経験は間違いなく役に立つはずだ。

「分かりました」

色々な事を含めた了承の言葉だった。

複雑そうな、言葉を言い淀むような雰囲気がそれを物語っている。

俺達は頷き合い、その日はそのままそれぞれの床について夜を明かした。

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翌日。

今日から俺とズーグ、二人での迷宮探索が幕を開ける。

いつものように探索者組合で依頼を確認し、そこでマルティナさんに奴隷を得た事を話した。

「本当に奴隷を得るとは……。チームメンバーに奴隷を据えるなんてまともな神経とは思いませんね。いったいどうやったのか知りませんが、組合には迷惑を掛けないよう注意してくださいね」

まあこんな感じで当然のように嫌味を言われたが、前にも変人とか言われたのでその範疇って事で許してもらおう。

その後迷宮に向かい、道楽兵士グラウマンさんが居たので彼にもこの話をしてみた。

「ほお、奴隷を使う探索者と言うのは初めて見ましたな。軍には損耗率の高い部署に奴隷を配置する事もよくありましたが……。リョウ殿が活躍すれば、奴隷の新たな使い方として認知されるやもしれませんな」

そう言って朗らかに笑っていたが、そうなるとはあんまり思っていなさそうだった。有名になるのは良くないので地味に活動したいところだな。

そしてようやく、俺達は迷宮へと足を踏み入れる。

「今日はとりあえず、慣らし優先で行ける深さまで行ってみよう」

装備を揃えるための金稼ぎは一旦ストップで、お互いの実力を把握しつつ連携を確認して今潜れる階を知る事を目的とした。

「準備運動はいるか?」

「いえ、問題ありません」

俺は筋を伸ばしたりできるならやりたいが、歴戦の戦士は戦いの気配を感じ取っただけで体が温まったりするのだろうか。もしかすると唐突な戦闘に備えられる、そんな身体強化法があるのかもしれない。

俺の方は今日はたぶん後方支援が主になる。歩きながら軽く体を温めるくらいで良いだろう。

「よし、じゃあ一気に三階まで行こう」

「承知しました」

俺達は歩き始め、斥候スキルとセンスバイタルを併用しながら迷宮を進み始めた。

昨日確認したところ、やはりステータス画面は俺以外には見えないようなので、索敵の結果をズーグに共有できないのはちょっと残念である。

そして敵は避けずに小遣い稼ぎをしつつ、地下三階。

「ふんっ」

「おまっ、早いって!」

ゴブリン三匹を見つけたところ、俺が補助を掛ける前にズーグが突撃し、瞬く間に片付けてしまった。

「補助魔法掛ける前に行くかふつー」

「あの程度であれば不要です。さあ、先へ進みましょう」

「何かえらい張り切ってるなお前」

「そうですね……」

剣を鞘には入れず、警戒しながらズーグは歩き始めた。

俺が歩きながらセンスバイタルで再度索敵をかけ、ある程度周囲の敵影が無い事を確認すると納剣する。そして「昨日の話を聞いて思った事があるのです」と話し始めた。

斥候スキルで気配を探りつつ、俺はその話に耳を傾ける。

「俺は諦めていたのです。戦士として死にたいとクロウに言いはしましたが、満足に生涯を終える事は無いだろうと。終身奴隷として集落の者たちのため身を捧げたのですからそれが当然だと思っていました」

迷宮を進んでいると分岐路に差し掛かった。

索敵を行い、俺達は魔物の居る方へと進んだ。

ズーグの話は続いている。

「そこに旦那、貴方が現れた。身体欠損治癒を対価に戦う奴隷を求める貴方は、俺に最後の戦いを与えてくれる存在だと、昨日は柄にもなく気分が高揚しましたよ。しかも、その上に あの(・・) 話だ。これまでこんなに不思議な話は聞いた事が無い。幼き頃に聞いた英雄譚の序章のような、続きが楽しみになるようなそんな話でした。俺は年甲斐も無くワクワクしているのです。巻き込まれたのはそうかもしれないですが、誰かのために身を捧げた奴隷の戦いではない、俺にとっての特別な戦いの予感に、です」

「……そんなに特別視されたとは思わなかったな。けど、お前の言う通りだ。今はまだ下積みだが、資源を採取するためじゃない、俺達だけの迷宮への挑戦がこの先には待ってるはずだ。……たぶん」

俺としては、自分の運命がそこまで深刻なものだとは思っていない。

魂魄魔法と神聖魔法の治癒術が非常にお金になる事が分かったので、変な話、手がかりが見つからなかったとしてもこの世界で生きていく事は十分可能だろう。

しかし最初に決意した通り、自分で何も確認しないまま金を稼いで生きる事だけはしたくない。安穏に生きるとしても迷宮に何も無かった事を知ってからでも遅くはないはずだ。

まあ、そういう俺自身の事情に対し、こいつが面白がってくれているのは良い事だろう。嫌々なのを付き合わせるのは相手が奴隷でも気が引けるしな。

そんな風に話をしているうちに、俺達は分岐路の先へと辿り着いた。

そこに居たのは四頭のアッシュウルフ。俺一人なら散開された時点でかなり苦しい戦いになるが、これも身体強化を行ったズーグにより鎧柚一触であった。

本当にこの男、片腕片目なのに尋常な強さじゃない。

これで片手武器はまだ慣れ始め、伸びしろがあるんだから恐ろしいな。

流石に距離感が掴めないのか空振りをする事もあるが、多対一の立ち回りや空振りへのフォローは見事の一言に尽きる。極力距離感でのミスを減らすため、肉薄するような戦い方をしているので軽い引っ掻き傷は受けているが、今のところ致命的な攻撃を受ける気配は無さそうだ。

「ヒールはいるか?」

「魔力に余裕があれば」

戦闘後に尋ねるとそんな言葉が返ってきた。

今日は魔法をあまり使っていないので問題は無い。

疲労もあるはずなのでヒールは必要だろう。

「もう三階はよさそうだな」

「はい」

「地下四階からは俺も初めてだ。ここからは俺の魔法も使っていく。そういえば身体強化時には補助魔法が弾かれたりする事は無いのか?」

「理力魔法と神聖魔法については問題なく。北方領域では魔法軍の兵士もおりましたので経験があります。魂魄魔法については……分かりません」

魂魄魔法使いはクロウさんの話を聞く限りあんまり戦ったりしないイメージだしな。

それも試しながら、先へ進もう。俺とズーグのコンビでどこまで行ったら辛く感じ始めるのか。それを打開する方策を俺達は持っているのか。無いなら用意できるのか。

今日はそれを調べるための探索行である。

俺達は地下四階に移動し、魔物を探し始めたのであった。

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結論から言うと、俺達はその日のうちに地下六階まで歩を進めた。

四階でも五階でも、ポイズンビーやフラワービートルなどの虫系はファイアボール連発で片が付いた。倒し漏れた奴はズーグがきっちり仕留めていたしな。

ロックエイプやレッドキャップ、オークの様な相手はアイスランスやショックからの精神魔法も有効だったが、それ以上に補助魔法盛り盛りのズーグによる虐殺が最も効果的だった。

そんな戦いを経て地下六階へと至った俺達は、多少苦戦しつつも時間切れまで戦って、帰路についたと言う訳だ。

今日の探索は、俺の感覚から言うと結構無茶な前進だったと思う。

最初は慣らし優先とか言っていたが、最後にはどちらかと言うと「行ける所まで行く」がメインになっていたと思う。俺とズーグどちらが言い出した訳でもないが、何となくモチベーション任せで突っ込んでしまった。

大体にしてその階層の習熟は二の次。地形も十分把握してどのパターンの敵が来てもOK、なんてソロ探索の時みたいな事はしていない。索敵で見つかった魔物は極力避けないと言う縛りを設けはしたが、基本的に一直線に階段へ、と言う方法で探索したのである。

だがそのお陰で、自身の限界をかなり知る事ができたと思う。

十分な安全マージンを取っていた時には分からなかった「必死になる感覚」は間違いなく今後の糧になるはずだ。

まあ、それくらいしないとズルズル時間を掛けた上に限界付近で戦う技量が身につかない、なんて事になりそうだったしな。

多少スパルタ感はあったが、これで良かったと思う。

「あのブルーデビルと言うヤツは、片腕片目ではキツイ相手でしたね」

「いや、お前ガチンコ勝負しすぎなんだよ。もっと俺の魔法と連携しろよ」

「自身が敵に対してどこまでやれるのかを知る事は重要です。最初から搦め手は好きではありません」

「それで押し込まれてりゃ世話ないだろーが。次遭ったら 精神撃(ショック) から入るからな」

後はこんな感じで、ズーグとも忌憚のない意見を交わせるようになってきた。

僅か一日の事ではあるが、やはり戦友と言うものには特殊な絆を作る効果があるらしい。

俺達は議論を交わしながら探索者組合へ向かった。

その日の精算額は有色魔石を抜いて六千ゴルドほどである。

流石に地下六階まで進んだだけの事はあるが、これでも一般的な探索者チームが五人前後である事を考えると、一人頭一二〇〇ゴルドくらいなんだよな。

少なくとも一人でやっていた頃よりは遥かに良いが、これが高いのか低いのかは微妙なところである。

まあそんなこんなでズーグを加えた探索の一日目は終了した。

今日の事で分かったが奴は結構イケイケの性格なので、今後は暴走しないよう注意しないとな。

俺達は宿に戻り、ギールさん謹製の対労働者特化料理をたらふく食べて、就寝するのであった。