軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ノイマン子爵家に届いた手紙

フィリップ・ノイマン様

新涼の候。ノイマン様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。

ご無沙汰をしており申し訳ございません。諸事情で周囲が忙しく、なかなか筆を執ることができずにおりました。

さて、このたび手紙を送らせていただきましたのは、他でもございません。

ノイマン様のご息女であられるテレーゼ嬢との、婚約についてのお話です。

前年から婚約させていただいておりましたこのお話ですが、私どもギュンター家の事情と、現在のテレーゼ嬢の状況を鑑みまして、一度白紙にさせていただいた方がお互いのためではないかと考えております。

私としてはテレーゼ嬢を支えていきたい気持ちはあるのですが、なにぶん結婚は二人だけでするものではなく、家同士の問題も絡んできてしまうものです。こと今回に至っては、両親のみならず親類の反対もあり、私ひとりの意思ではどうにもできない状況になってしまいました。

勝手な言い分で大変申し訳ありませんが、どうかご理解いただけますようお願いいたします。

テレーゼ嬢に、私以上に素晴らしい相手が現れることを祈って

ダミアン・ギュンター

追伸

この話は、テレーゼ嬢の現在のご両親であられる、シュトルム伯爵ご夫妻にもすでにお話を通しております。

本来であれば、シュトルム伯爵家との間だけで済む話ではありますが、それではあまりにも薄情であると思い、こうして筆を執っている次第です。

どうかその旨もご考慮いただき、賢明な判断をしてくださることを期待しております。

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フィリップ・ノイマン様へ

平素は大変お世話になっております。

アーデン商会のランドルフ・アーデンです。

このたびは、ノイマン様よりお預かりしておりました商品につきまして、諸般の事情により取り扱いを中止することが決定しましたことをご連絡させていただきます。

また、ノイマン様よりご用意いただいておりましたバルトルート楽譜集につきましては、取り扱いを中止する関係上、お預かりできないことになりましたのでご了承ください。

現在お預かりの商品は、順次ノイマン様へ返送させていただきます。契約に従い、返送分の商品の半額をお支払いいただきますので、重ねてご了承ください。

用件は以上となります。

今後とも、アーデン商会をよろしくお願いいたします。

アーデン商会 音楽・楽器担当 ランドルフ・アーデン

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親愛なるフィリップ・ノイマン様

僕です。リヒャルト・バルトルートです。

先日はいただいた手紙に返事ができずすみませんでした。

少し前に下宿先を移っていて、手紙を受け取るのが遅れてしまいました。

連絡もせずに移動してしまいすみません。ノイマン様もお忙しいようでしたし、僕の方もちょっと事情があって、いろいろ後回しになってしまっていました。

実は連絡ができない間、僕に新しく曲を書かないかと声をかけてきてくれた方がいて、現在はその人のところでお世話になっています。ノイマン様にお世話になっていた手前、一度はお断りをしていたのですが、あの事件の後にもう一度声をかけてもらえたんです。

ノイマン様には、まだ無名で一曲も売れなかった僕を拾って、ここまで育てていただいた御恩があります。本当に悩んだんですけど、僕を高く評価して、一緒にやろうと言ってくれる人のために、僕もなにかしてみたいと思ってしまいました。

事後報告になってしまって、本当にすみません。ただ、今のノイマン様の状態では、新しく曲を出すこともままならず、僕自身ももっと上を目指してみたいんです。今回声をかけてくれた人は、商会にも楽団にも強いつながりがあって、今よりももっと広く打ってくれると約束してくれました。

いち作曲家として、多くの人に僕の曲を知ってもらいたい。この気持ちを、ノイマン様ならきっとわかってくださると信じています。

ノイマン様のお手を煩わせるわけにもいきませんし、相手の方に迷惑になりますので、返信は不要です。今まで、ありがとうございました。

リヒャルト・バルトルート

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我が友 フィリップ・ノイマンへ

やあフィリップ。ヨアヒムだ。今回は、ヨアヒム・キーン商店の代表として手紙を出させてもらう。

なにを言いたいかは、もう先を読まなくてもわかっているだろう。君との取引の件だ。

たぶん、君の元にはすでに似たような手紙が何通も届いているのだと思う。

俺の方としても、今の君からの商品を受け取るわけにはいかない。君の名前を冠した商品を置くだけで、客たちから非難轟々なんだ。

理由ももちろん、わかっているな。君の養女のテレーゼのことだ。「カミラ・シュトルムへの不当な評価を流し、反逆者どもに協力した」と、散々な噂になっている。

事の真相は、俺にはわからない。君の姪であるカミラ嬢は、テレーゼを罪に問うことなく、一切を許したとも言われている。

ただ、まあ、これまたわかっているとは思うが、真実なんてどうでもいいんだ。テレーゼの名は、世間では悪評の代名詞みたいになっている。養育した君の責任を問う声は、君にだって聞こえているだろう。君自身がテレーゼをかばい、現在も養っているということが、ことさら君の立場を悪くしている。君がテレーゼを突き放せば少しは変わるかもしれないが、まあできないんだろうな。それは俺にもわかっている。

だが、こちらも商売だ。

今の君と仕事をすることはできない。

俺自身としては、君の仕事ぶりは高く評価している。目利きの難しい芸術品、ことさら音楽関係に限っては、君ほど良い目を持っている人間はいないくらいだ。楽器、楽譜、演者まで、君の目を失うことを俺は本心から惜しいと思っている。

だから、取引はいったん「停止」だ。

君からの商品は預かったまま、返品も返金も要求はしない。いつかまた、君の選んだ品々を店に並べられる日を待っている。

つらい状況だとは思うが、どうにか乗り越えてくれ。

ヨアヒム・キーン

追伸

君のところで育てた芸術家たちが、どんどん他所へ流れていると聞いた。虎の子のバルトルートまで盗られたというのは本当か?

俺が聞いたところによると、君の苦境を知って、これを好機と声をかけている連中がいるらしい。自分で見る目もない癖に、調子のいい奴らだ。

だがな、君には彼らをもう少し見習う必要があると俺は思う。君は良い目利きではあるが、商売っ気がなさすぎる。

楽譜集を一つ出したときの、他所の連中の取り分を知っているか? 君のところの十倍以上だぞ。作曲家にはほとんど金を渡さず、大半を自分の懐に収めているんだ。

もちろん、不満を抱いたところで他所への流出も許さない。そこも含めて、最初にきっちりと契約を結んでいるもんだ。

芸術家連中を守りたい気持ちはわかるが、奴らだって自分でなんとかする力くらいは持っている。他人を気にして、自分の足元をおろそかにするなよ。その目利きで、譲れない一線がどこなのか見定めてくれ。

小言ばっかりになってすまない。

友よ、君の未来に幸福があることを祈っている。