軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第33話:魔法花とダンジョン

エルフの国に来て早5日、姫様二人の教練に、ルーカスさんに出された本の中身を調べたりと中々に忙しい。

そんな中、夕食後にエルメガリオス様から呼び出された。

「ホウショウ殿、ティティア嬢の治療について話しておこうと思ってな」

ここの着た目的の一つだ、確か特殊な花が必要だったはず。

「はい、確か『オルドリリウム』という花が必要なんでしたっけ?」

「あぁ、それでこの薬草が『オルドリリウム』だ」

出された花は日本で言うドライフラワー状態になっている、恐らく磨り潰したり煎じて飲むためなのだろう。

「なんか、普通の花なんですね……毒にもなるっていうからもっと色が派手だったりするのかと」

見た目は多弁花(花びらが沢山ある花)の一種、クリスマスローズみたいだ。

「うむ、〝ここにあるもの〟はこの国で栽培している花で、毒性は非常に弱いものだよ。だがね、ティティア嬢の治療に必要な『オルドリリウム』は特殊なもので。天然もので、毒性が強いものでないと駄目なのだ」

「だったら、急いで探しに行かないと駄目ですよね?」

しかもエルフの森は迷いの森である、早々に見つけないと手遅れになりかねない。

「それは心配ないよ、既に我が国の兵達に森に入り探しているし、見つけること自体はそれ程難しい事では無いからね」

「ありがとうございます。でも、それを知らされたら居てもたっても居られないですよ……」

「気持ちはわかるさ、だがねそう急いでも事は進まないし、この花の特性だと急いでも意味が無いからね」

「それは……天然物は咲くのに条件がいるって事ですか?」

世の中には咲くのに制限があったり、時間が凄くかかったりする花がある。例えば一夜しか咲かない月下美人や、咲くのに何十年もかかる竜舌蘭が代表的だ。

「察しが良いね、実はそうなんだ。その特性は二種類あって、まず一つ目は、この花は一度咲いた場所には翌年咲かない花でね、群生地を見つけたと思ったら翌年にはきれいさっぱり消えていたりするんだ」

「なんていうか、凄く面倒なんですね……」

薬草として使えるのは良いが、毎年毎年咲く場所が変わるなんて、使う側や育成する側にとっては非常に面倒臭い花である。

「うん、だから意図的に毒性を弱るように改良して、常に収穫できるようにしているんだよ」

「そうだったんですね……」

「それでね、こっちも面倒な特性でね。この花は〝毒が溜まりきったら咲く〟っていう中々に気難しい花でね、蕾を見つけても咲くまでに〝数日〟から〝数カ月〟かかるんだ」

「それじゃあ……間に合わないですよ……」

数カ月と聞いてくらくらする、そんなに流暢には待ってられないのだ……。

「大丈夫だよ、さっきも言った通り〝見つける事〟は難しく無いと」

立ち上がり、窓の開けるエルメガリオス様。外の森を見ると沢山の煙が上がっている。

「あの登る煙の数だけ見つけてあるのさ、今は兵達が交代で見張っているから見逃す事も無いし大丈夫だよ」

「あんなに……。何か申し訳ないです……」

「心配には及ばないよ、指揮官や部隊長たちも丁度いい訓練にもなると張り切ってるから。新兵には不寝番や夜間警備、単独や複数での野営、それに森の行軍訓練の練習をさせる必要があるからね」

「それはそれで、何か悪い事をしたような……」

「気にしないでくれ、四半期毎にやっている事だし。ここだけの話、花の監視と護衛も入っているから行軍訓練は免除されているんだ、兵達は内心喜んでいると思うよ」

確かに、いくらエルフと言えど目の前に広がる広大な森を行軍するとなると相当大変だろう。

「それに、花の本数も数本は必要になるからね。ホウショウ殿達は気楽に待っててもらいたいのさ」

「わかりました……」

「まぁ、待っているとやきもきするだろうからお願いがあってね。ネリーニアの治療も進めたいからホウショウ殿には【試練の大樹】を攻略してもらいたい」

「試練の大樹ですか?」

「あぁ、この国に来た際も見たであろうあの大樹、あの内部はダンジョンに変質していてな。内部の魔力溜まりを改善する為に定期的に魔物の討伐をしているのだ。だが、兵達は訓練中でな」

後はわかるよね? って感じで俺を見て来る。まぁここまで言われたら、察しが付く。

「わかりました、兵士の皆さんがやるお勤め、代わりにやりましょう」

「あぁ、助かるよ。それと、ティティア嬢の方は任せてくれ、ネモフィラ嬢程では無いが同系統の治療が可能な治療士が居るからな。それにホウショウ殿達であれば、攻略に一週間もかからないだろう、それくらいは余裕で持たせることが出来るさ」

「わかりました、お願いします」

「あぁ、こちらも頼んだよ。装備や用意するもので必要な物があれば言ってくれ」

「ありがとうございます、皆と相談してみます」

そうして俺達はダンジョンへ挑む事になった。

◇◆◇◆

翌日、俺と奏さんと恵さんが街から二時間くらいの距離を馬車に揺られながらダンジョンを目指す。

「ねぇ、旦那様。ダンジョンって行った事無いけど、どんなところなの?」

「やはり、罠や魔物が沢山居るのでしょうか……」

「うーん、一概にコレっていえないけど、基本は謎空間に飛ばされてそこで探索したり、敵を倒したりと……逆に罠は少ないかな? 迷宮型は自然発生する事が少ないし発生しても綺麗な迷路になる事はほぼ無いからね」

同様に、凝った罠も存在はしない。落とし穴とかもあるけど2メートルくらいだし、岩が転がって来るとか、矢が飛んでくるとか明らかに人の手が入った罠なんて存在しないのである。

「だから、基本は野営になるかな?」

「そうなんだ~じゃあ料理がんばっちゃお」

「私も頑張りますわね、旦那様」

「うん、 奏さん(ネモフィラ) の回復は頼りにしてるよ」

何か違う意味を含んでそうだけど、しらんぷりをしておかないとな……。

「はい、色々と新技がありますので♪」

何だろう、蛇みたいに舌をちろりと出すのは怖いから止めて欲しい……。

「ともかく、ダンジョン自体の地図は貰ってるし、魔力溜まりを解消する魔道具は借り受けたし、よっぽど不測の事態が無きゃ大丈夫かな?」

貰った資料には今回出る敵の分布とおおよその危険度が描かれている。地図も階層ごとに分かれていて見やすくなっている。

(本当に人手を借りる感じだな……)

「ただし、階層が多いんだよなぁ……」

「そうなの?」

「うん、大体普通のダンジョンって15階層が最奥なんだけどここのダンジョンは35階層まであるんだよ、5階層ごとに安全地域があるんだけどそれでも35階層は多いんだ」

「それって、一週間で終るのですか?」

「うーん……どうなんだろう。正直登ってみないとわからないんだよね……」

「それもそうね。ともかく今日と明日で、どのぐらい進むかわかれば計算もしやすいでしょうし」

「でも、二人は実力もあるし問題無いと思うよ。サリアも、二人共結構やれるようになったって言ってたし」

そう言うと二人共恥ずかしそうにする。サリアも銀等級じゃ中位の強さだし、二人は任務をこなして無いので青銅級のままだけど成長度合いで言ったらとんでもない。

「皆様、そろそろ到着いたしますので、準備をお願いいたします」

ルルカさんが小窓から覗いて来る、馬車がゆっくりと停まり扉が開けられる。

「でっか……」

「凄く……大きいわね……」

「逞しいですわねぇ……」

天を突く程の大樹を見上げていると、どこからともなく声が響いた。