軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話②:娼館の仕事初日<ネモフィラ視点>

「それに、ここに集まっている子達も皆同じ境遇なのよ」

カトレアさんの悲しそうな言葉に周囲の女性達が頷く。

「多くは言えないけど、私達は家や家族から疎まれたり。存在が許されなかった存在なの、それをホウショウが救ってくれたのよ」

「…………っつ!」

カトレアさんの言葉が私の心を貫く、私も同じ様な存在で飛翔さんに救われました……いや、勝手に救われたと言った方が正しいですね、飛翔さんはわかってないでしょうが。

「それにね、ホウショウはなんとなく私達と似ているのよ、彼も居場所を無くした私達と同じだからなんか放っておけないのよね……」

その言葉に心の中で大きく頷く、飛翔さんの境遇は私と似ている。両親を事故で亡くして彼は一人だった、私も同じ様に事故で義両親に引き取られはしたけど家の中ではいつも一人だった。

(いえ、同じと思うのは失礼ですよね……)

飛翔さんには異世界と言う場所で沢山の繋がりがある、それは飛翔さんが自力で繋ぎ紡ぎ認められてきたものだ。

(私にあるのは借り物と偽物だけ)

対して、私には何もない。学校では蒼井家の令嬢と言う事で皆から持ち上げられ、家では皆の理想のお嬢様《蒼井奏》を演じて生きている。

(今ここに居る人達は〝本気〟で飛翔さんの事が好きなのですね……)

恵ちゃんの話に一喜一憂、時には対抗したり、勝ち誇ったり、飛翔さんの事を大切に想っている。

(これは、疎外感なんですね……)

私はどうなのだろう、確かに好みのはずだ……。

(あれ、わたしなんで〝年上の男性〟が好みなのでしょう?)

いや、この〝好き〟と言う感情は家の為に作ったのだったような……。

(じゃあ、何で飛翔さんの事を考えると幸せになるのでしょう?)

あれ、私の心はどこにあるんだろう……。

(でも、失うと思うと、心が痛い……)

確かにあの、血に塗れた飛翔さんの事を思うと、失いたくはないと思ってしまう。

(でもこれが好きと言えるのでしょうか……)

「ねぇ、貴女……ねぇ」

「——へっ? うひゃう!?」

目の前に、いきなり顔があったので驚いて避けてしまう。

「むぅ……心配してたのに……大丈夫? ずっと黙ってたから、具合悪くなったりしてない?」

「あ、すいませン……大丈夫でス」

「そう、なら良かった。ねぇねぇ、貴女はホウショウのどんなところが好きなの?」

「えっ?」

まさに今考えていた事だ、それを聞かれてドキリとしてしまう。

「えっと……どこなんでしょうか……」

思わず日本語が零れてしまう、こんな言葉聞かせてはいけない。

「????? ねぇミモザちゃん、今何て言ったの?」

「えっト……」

恵ちゃんが困惑している、今の言葉を話して良いの?という視線で私を見る。

(話して、どうにかなるのでしょうか?)

いや、飛翔さんを好きな人で、私と似た様な境遇の人達なら……。

「あノ、 私(わたくし) ホウショウさんのコト、本当に好きカ、わからないのでス」

その言葉に静まり返る室内、先程、私を心配してくれてた女性、クロッカスさんも驚いた顔をしている。

「私は家にとっテ、都合の良い所とノ、婚姻をするだけの置物でス。そこニ、私の意志は介在しなイ、してはいけないト、戒めてきましタ。初めてホウショウさんを見た時ニ、好きという気持ちは存在していましたガ。今は全くわからないのでス」

一気に喋ってしまい、慌てて顔を上げる。すると何人かが顎に手を当て考え込んでいる。

「最初は好きだったんでしょう? それが変わる切っ掛けは?」

「冷たくは……されてる訳無いでしょうし……」

「物理的に痛めつけられた? いや、ハードなのはお願いするけど優しいものね……」

「まさか、エッチが下手?」

「あのねぇ、私が仕込んだのよ。それに皆もホウショウとは一夜を共にしてるんだから、それは無いとわかるでしょう?」

「そうですわね、ホウショウさんは他のお客様と違いますし」

「独り善がりじゃないもんね~」

「プライド高い男ほど早いし」

「痛くしてくるのに愛が無い……」

何故か途中からお客さんの愚痴大会に変化していく。

「はいはい、今はこの子のお悩みに回答する時間よ、愚痴は後にしなさい……」

「「「「「はーい」」」」」

「それで、何か切っ掛けがあったと思うのだけれど、」

「え、えっト……ホウショウさんが大怪我をした時ニ、私の中であの人ヲ、失いたくないと思ったんでス」

大怪我と聞いてカトレアさんの眉がきつく狭まる、それと同時に私の心にも重いものがのしかかる。

「それは、初めての気持ちだったの?」

「はイ……」

「……そういう事。それなら大丈夫よ、ねぇ?」

カトレアさんが振り返る、後ろで聞いていた他の娼姫さん達が笑いながら頷く。

「そうか、貴女も私達と似たようなもんだったんだね」

「でも間違いなく断言するよ、その気持ちは〝愛〟だよ」

「私達も持っている、彼を失いたくないという気持ち」

「何事に変えても守りたいという気持ち」

「それは、ネモフィラが本当に好きな人を見つけたからだよ」

「人を愛するっていう本当に大切な〝自分だけ〟の気持ち」

「いやいや、でも私の気持ちの方が大きいよ?」

「ちょっとクロッカス、今はそういう事じゃ無いのよ」

「でも、みんなもそう思ってるでしょ?」

クロッカスさんの言葉に皆が目を逸らす、どうやら私が本当に好きになった人はライバルが物凄く多いらしい。

「ありがとうございます」

(初めての自分だけの物……)

実感は無いけど、心が幸せと感じる。

(火が付くというのでしょうか……今までとは違う、心が身体が熱くなってます)

忘れない様にしよう今日の事。

(世界で初めて自分が自分になった日の事)

大切にしようこの気持ち。

(失いたくないこの愛を)

飛翔さんの事を失わないように。

(それが、幸せなのだから……。

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ここからオマケ↓書いてたんですが使いそうに無かったので……。

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◇リヒテラッシュ=ヴィルゲイナー(大旦那)side◇

(いやはや、相変わらずの 誑(たら) しっぷりだね、我が友は……)

最高級娼館の最上級娼姫達、様々な国の重鎮達から果てはお忍びで王族が遊びに来ては溺れていく存在。そんな彼女達に何故かあそこまで好かれるのかと、長年不思議だったが成程納得だ。

つい最近彼が身請けした二人、久々に見ると顔つきが変わっていた、ミモザと呼ばれた少女は以前よりも溌剌と幸せそうな顔に、ネモフィラと呼ばれた少女は引き取られた時は媚薬の効果が残ってたと思わせるくらいに蕩けていたが思い詰めたような顔をしていた。

だがその顔も、ただ単に〝恋〟から〝愛〟への変化に戸惑っているだけだった。

(これも、彼の人柄が成せる事なのだろう)

それに、二人と話す娼姫達も、生き生きとしている。

ここは娼館だ、欲望を叶える場所である、そりゃ男は自分の欲求に従う事が多い、そうなると遅かれ早かれ心が壊れてしまう、そんな場所で彼は娼姫達の癒しの存在となっていた。

(というか、彼女達、普段は一切話さないホウショウとの秘め事をここまであからさまに話すのは初めてだな……)

ころころと表情の変わる色とりどりの花たち、彼女達はホウショウの事を話すと本当に顔が明るくなる。

「本当に君は良い男だな」

そこまで言って思い出した、ある意味私も彼に誑し込まれた一人だった事を。