軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第12話:弟子

「それじゃ、行ってくるな」

「はい、お気をつけて」

「頑張ってね!」

蒼井さん(ネモフィラ) と 細野さん(ミモザ) に見送られ俺は城へ向かう。二人を元の世界に戻す手段が見つかるかの期待半分、もしなかったらという怖さ半分で足が重くなる。

(昨日、二人にはああいった手前、何かしら手がかりが見つかれば良いんだが……)

見上げる白亜の城は綺麗だが、今は綺麗過ぎて妖しく思えてくる。

「もしかして……ホウショウ先生ですか?」

懐かしい声に視線を降ろすと、目の前には人懐っこい笑みを浮かべた兵士が居た。

「えっと……まさかリオルか!?」

3年前に新人冒険者であった彼をギルドの講習で鍛えたのはまだ記憶にも新しかったけど……。

「今は、兵士をやってるのか?」

「はい! 冒険者をやってたんですが、路銀稼ぎに闘技場で戦ってた時。この国の騎士団の人から騎士へ勧誘されました!」

「いや、騎士って……リオルは〝貴族〟なのか?」

この国における騎士というのは、貴族の若者が15歳から入れる騎士養成学校を卒業した後に就ける職業だ。

「あはは~何かトクレイソチ? とか言うのでなれました!」

「なれましたって……」

そんな簡単じゃ無いし、何か出自で理由があるのだろうか。

「それよりも、先生はどうしてここに?」

見上げる瞳が俺を捉えている、最後に顔を合わせたのはこの街からリオルが旅立つのを見送った日以来だ。

「あぁ、なんかギルドマスターからの指名依頼で、極東語が話せる俺に面倒を見て欲しい相手が居るそうだ」

教え子とはいえ何も知らない風に答える方が良さそうだよな……。

「あー! 先生があの人たちの先生になるんですね!」

「あの人たち? 複数人居るのか?」

「あれ? 聞いて無いですか?」

「あぁ、昨日突然言われたんだ。男か女か何人居るのかも聞いて無いし」

「そうなんですね! じゃあ僕が案内しますよ!」

無邪気な顔で俺の手を引く、この感じだと何も知らなそうだな……。

「リオルはその人達と会ったのか?」

初めて入る城の中、リオルに案内されつつ何か情報を得られないか話を仕掛けていく。

「はい! ですがあの人たち凄く弱そうなんですよ……」

「弱そう?」

「はい! 騎士団長が言うには『この国を救う者達と教えられたんですが』何ていうか凄く普通の人達なんです!」

普通って……そりゃ普通少年少女だしそんなものだろう。

「普通の人?」

「はい! なんていうか、僕の子供の頃を見ているみたいで……」

いや、今も子供だし……それに、3年前にリオルを指導した時は同年代と比べて頭二つくらい抜けてたから普通と言ってもそこそこ強いのでは?

「そうなのか? 俺と出会った時は相当に強かったじゃないか?」

「えっと……村を出るには門番のおじさんを倒せるくらいまで強くなりましたから!」

その門番のおじさんがどのくらいの強さかわからないけど、あの時で既に強いのはそういう事だったのか……。

「でも、先生! 強いと思ってたら言って下さいよ!!」

「あーすまんすまん、新人は褒めるとすぐに調子に乗るからな。自分の実力を過信して死なれても困るしさ」

冒険者の死亡率で一番高い期間が、講習を終えての半年~一年の間だ、慣れて来ると探索や警戒がおざなりだったり、油断が生まれやすくなる。

(俺がマニュアルを作るまでは毎年、新人が半分くらい死んでたもんなぁ……)

「むぅ……僕なら大丈夫ですよ?」

「じゃあ、リオルは油断した事はないのか?」

「うっ……その質問は卑怯ですよ……」

思い当たる節があるだろう、リオルは苦虫を嚙み潰したような顔をした。

「だろ? お陰でリオルもこうして騎士まで昇りつめたんだし許してよ」

「ぐぅ……じゃあ先生! 後で模擬戦お願いします!」

「いや、騎士相手じゃ敵わないだろ……」

「でも! 先生も金等級になったんでしょ!」

リオルのその発言に俺は眉を顰める。

「リオル、誰に聞いた? 俺が金等級になったなんて」

公開して無い情報だし、少なくともギルマスが伝えてない限りわからない筈だ。

「えっと……今朝の団長会議で『今回指導に来る冒険者は金等級である為失礼の無い様に』って!」

胸を張るリオル、だがそれよりも俺は聞き捨てならない事があった。

「へっ? 団長?」

「うん!」

「リオルが?」

「そう言ってるじゃん! 第三騎士団だけど、団長なんだよ!」

「マジか……」

この国には騎士団が約12団あり、強さが1から順番に下っていく。第一団や第二団の中にも金等級の実力者が居るが、この国の全騎士団でトップ12人が各団長を務めている。

「つまり、リオルは国で三番目に強いのか……」

「うーん、実力を隠してる人も居るからしっかりとはわからないけどそうだよ!」

「余計に無理じゃん……少なくともこの国の第一団長は 天星(てんせい) 級だろ……」

人の至れる極地である金剛級、それを超える人知を超えた存在の天星級。この国が周辺国に睨みを効かせてられるのも第一団長が 天星級(強すぎる) という事だからだ。

そして、第二・第三団長の実力は少なくとも金剛級、つまり金等級の俺以上であるはずだ。

「無理、死んじまう」

「えー!! いいじゃん!!」

「まだ、俺は生きてたいからな」

「ぶーぶー!!」

文句を垂れるリオル、流石に素手で猛獣に立ち向かう様な事は止めにしたいよ。