軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第99話 トップ会談

俺はいとこに毒を喰らわせて殺すところだった。

しかも間違って・・いや・・知らないで・・

カトリーヌはきょとんとしながらも、俺がしがみついて泣くのを黙って見つめていた。

しばらくは時が止まってしまったようにみんなその場に固まっていた。

俺はカトリーヌに自分の名前を告げた。

「カトリーヌ、俺はグラム・フォレストとイオナ・フォレストの息子で長男のラウル・フォレストだ。」

「えっ!そんな・・」

「君のいとこだ。」

「い・・生きて・・うぅ・・うわあぁぁぁん。うぁっぁぁぁ!」

今度はカトリーヌの番だった。俺の姓名をきいて分かったようだ。カトリーヌはその場に泣き崩れ落ちてしまった。それはそうだ一族が滅ぼされ国が占領され、貴族から落ちて身を隠して生きてきたのだ。それがやっと自分の一族の生存を知り、耐え忍んできたものが決壊し号泣していた。

するとその横からマリアがカトリーヌに話しかける。

「カトリーヌ様、私はイオナ様の従者でマリア・サナルと申します。あなた様がまだ小さかったころにお会いしたことがあるんですよ。すぐに気が付かずに申し訳ございませんでした。間違いなくカトリーヌ様です!」

「いえ。私も大きくなりましたから・・、でも叔母様は?どこに?」

「ああ、母さんは無事に魔人国グラウスで来賓として暮らしているよ。」

「よかった・・生きていた・・よかった。」

まだカトリーヌの大きな目からポロポロと涙の粒が溢れ落ちていた。

「カトリーヌ、生きててくれてありがとう。これからは俺達が守る!もう怯えて暮らさなくていいんだ。」

「はい!」

「モーリス先生にもなんとお礼を言ったらいいか分からないな。」

「モーリス先生は相変わらずですよ。」

ニコっと笑って教えてくれた。カトリーヌはイオナにどことなく似ている・・俺がこの顔にひっかかったのはイオナの面影を見たからだった。いまさらながらに気が付いた。

「でも・・よくバルギウスの使用人に潜り込めたね。」

「協力者がいました。」

「協力者?」

「はい、先生が言うには世界のあちこちに反ファートリアバルギウスの人たちがいるようなんです。私を潜り込ませてくださったのはファートリアの聖女様でした。名前は明かせないと言われましたが、内部から人々を解放するために活動している方ということでした。とても綺麗な方でしたよ。」

《そうか・・敵国といえこのバカげた侵略に反発している人もいるんだな。》

「世界にはもっとそういう人がいるんだろうか?」

「はい・・モーリス先生もその一人です。」

「モーリス先生もか。」

「はい。」

《そうか・・世界の全てが俺達の敵というわけではないんだな。》

これはだいぶ大きな収穫だった。これからの作戦の立て方に大きく影響する情報となりそうだ。

「本当に生きててくれてありがとうな。」

「ラウル様、叔母様を守ってくださってありがとうございます。」

「まあ、母親を守るのは当然だよ。」

「はい。ただ・・ラウル様はもっと・・小さかったはずですが?まだ12才ぐらいではなかったですか?」

「ちょっといろいろあってね。成長しちゃったんだよ。」

そうだよな彼女は14才で俺は12歳だ、自分と変らない・・いや自分より大きい俺を見たら疑問に思うよな。

「びっくりしちゃいますよね。ラウル様は戦うたびに強く大きくなられて、私も驚きの連続なんですよ。一緒にいればこれからカトリーヌ様も驚く事がたくさんあると思います!」

マリアがカトリーヌに嬉しそうに話す。カトリーヌにも微笑みが戻ってきた。

「私もかすかにマリアさんの記憶があります!私が小さかったころ1度だけ王都で見かけたことがありますが、マリアさんも・・ずいぶん雰囲気が変わったようです。」

「私もラウル様と幾多の戦いをきりぬけてきましたので、少し表情が険しくなってしまったのかもしれません。でも私の心は昔のままなんですよ。」

2人の距離が少しずつ近づいて行く、お互い身分は違えどもどちらもユークリットの王都出身者だ。意気投合するのも時間の問題だろうと思う。今度は俺がカトリーヌに聞きたいことがあった。

「それにしても・・カトリーヌ。君は凄い魔法を使うんだね?」

「モーリス先生に学び、王宮魔導士団の試験を受ける予定だったんです。しかしあの戦争が起きてしまって・・結局は入れずじまいでした。モーリス先生は間違いなく合格すれば、かなり活躍できるといってくださってたんですが・・」

「カトリーヌ。俺もモーリス先生から学んだんだよ!」

「一緒ですね!」

「それで王宮魔導士団はどうなったのかな?」

「皆殺しにあいました・・」

「やはりそうか・・」

カトリーヌは本当に強運なのだろう、女神の加護でもあるのかもしれない。もし王宮魔導士団に所属していたら間違いなく殺されていた。入る前だったからモーリス先生はカトリーヌをかくまうことができたんだ。

《王族や貴族、兵士は殺されても一応民間人は殺してないということか・・》

「とにかくよかった。まずはテントで休息をとってほしいんだ。マリアと一緒のテントが良いんじゃないか?話は体を休めてからにしよう。」

「マリアさんいいんですか?」

「よろこんで!」

話が終わり魔人も全員がテント村に戻ってきた。

マリアとカトリーヌがテントの日陰に入り休むのを確認して、俺はガザムに進捗確認をし再度救出と復旧作業に戻るのだった。

しばらく捜索を続けていたが、気づけば太陽は真上に来ていた。

「だいぶ暑くなってきたな・・。人間は完全に休んで貰おう。」

LRADスピーカーのマイクを使って俺は人間たちに完全に休むように伝える。

「皆さん!食事は今朝の物に、ビッグホーンディアの干し肉がつきます。それを食べたら全員今日は作業をやめて下さい。炎天下での作業は危険です。テントの日陰に入ってじっとしていてください。これはお願いではありません・・強制です。すみませんがこれを破る事を禁じます。」

人々がそれぞれのテントに入り日陰で横になったり、座って下をむいたりぐったりしていた。

《やはり・・人間はこの辺が限界だろう。》

俺は魔人全員を呼び寄せた。

「皆さんに食事を配ってくれ。そしてお前たちもいったん食事をとることにする、ビッグホーンディアの干し肉とスープになるが、後は俺が出すハンバーグ缶とソーセージ缶だ。」

「まってました!」

ハンバーグ缶が大好きなゴーグがニコニコしながら言う。

「よしそれじゃ食料を召喚するから順次人間に配ってくれ。」

「「「「は!」」」」

とりあえず少しずつ落ち着きを取り戻してきたような気がする。人々も一度食べた缶詰なので食べ方もわかりスムーズに食べていた。

配り終えて魔人全員が戻ってきた。目の前には召喚した戦闘糧食がある。

「よし!俺達も食おう!」

「あの・・私は必要ございませんが・・」

ルフラが必要ないという。

「えっとルフラどうして?」

「えと、戦闘中に敵兵を少々・・」

「・・わかった。」

「はい・・」

「よし!じゃ他の皆で食おう!」

するとアナミスも声をはさむ。

「あの・・私も必要ありません。」

「アナミスも?どうしてだ?」

「昨日の戦闘で人間の精を吸い尽くしました。」

「そういえばそうだったな。」

確かにアナミスにはそんな許可出してたな。お腹いっぱいだったか。

「じゃあもしよかったら俺が食べるよ。」

「私も欲しいです。」

ゴーグとジーグが腹ペコのようだ。

「ああ、それなら俺が死ぬほどだしてやるから遠慮するな。」

「「ありがとうございます!」」

「それじゃあ受け取ったやつから食べてくれていいぞ!」

「「「「はい!」」」」

ようやく魔人達の食事が始まった。しかしほとんど眠らず食べてもいないのに消耗している気配がない。魔人の体力は本当に底がないな・・

食事をとりながら魔人達とミーティングをする。

「これからグラドラムの復興支援のため行動するようになる。おそらく人間たちだけではすぐには復興出来ないほどのダメージを負ってしまった。民に必要な物は水と住居だ、食料はしばらくは俺が何とかするが、ペンタにもお願いして魚を獲って来てもらおうと思っている。あとは森の魔獣、動物、木の実、果物を採取しようと思う。森は丸腰の人間では自殺行為だ俺達が何とかするしかない。」

「「「「はい」」」」

「あとは水源だがこれはこの土地に詳しいポール王に聞いて確保する。井戸を掘る事も考えねばならないがこれは時間がかかる。そして住居だが森の木を伐りだしてグラドラム都市内に運び込み、住居を作ろうと思う。しかしこれにはグラウス魔人国からドワーフを連れてくる必要がある。一度船で国に戻る検討せねばならないが、俺はこの地を離れる事はできない。俺が書簡をしたためるのでそれを届けてもらう必要がある。」

「「「「はい」」」」

「それの準備ができるまでは人命最優先でことにあたれ!」

「「「「はい」」」」

「ポール王やクルス神父と相談もあるから、いったん俺はテント村に残る。」

「我々はなにから取りかかりましょう?」

ギレザムが聞いてくる。やらねばならない事は山積みだが先にやってほしい事があった。

「ギレザム、ゴーグ、ジーグ、は引き続き不明者の捜索にあたれ!遺体は弔ってやる必要があるから、指定した安置所に運べ!丁寧に扱えよ!」

「「「はい!」」」

「ダラムバとダークエルフ8人に頼みがあるんだが、グラドラム墓地に敵兵とデイブと使用人たちの遺体が放置してある。夜が来る前に墓穴を掘って全て埋めてほしい。」

「「「「わかりました。」」」」

「嫌な仕事を任せてしまってすまない。放置して魔獣などが寄ってくるとまずいから早急に頼む。」

「ガザムは申し訳ないが人間たちの護衛役としてテント村に待機、何も無いとは思うが全員が墓地での作業に没頭するわけにはいかない。休んでる人間を守れ。」

「はい。」

「俺がポール王たちとの相談が終わったら、スラガ、ルピア、アナミス、ルフラの4人は俺と一緒に正門に向かってもらう。その先の指示はその時話す。」

「「「「わかりました!」」」」

「以上だ。」

魔人全員が俺が指示した作業に入る。そして俺はポール王のテントに向かった。

「ルフラ、クルス神父を呼んできてくれ。」

「はい」

ポール王のテントに着くと彼は寝ていなかった。胸の前に手を組み祈りを捧げていた。

「ポール王、少しは休まないとまいってしまいますよ。」

「ラウル様・・わかってはいるのですが、どうしても眠れないのですよ。昨日までいた民が大勢いなくなってしまった・・その叫び声や鳴き声が耳から離れんのです。あんなに大勢の民を殺してしまったのは私なのです。部下も使用人も全て私が殺した・・その罪をどうやって償えばよいのか、生きていてよいのかさえ迷っておりました。」

それはそうだ。ほんの十数時間前までいた民たちがいなくなってしまったのだ、気持ちの整理など着くわけもなかった。おそらく生き残った人々も家族を失ってしまった悲しみに、生きる気力を失ってしまっているだろう。ほとんどの人間が鬱状態になっていると考えて間違いない。これから人間たちの心のケアも念頭に入れながら復興しなければならない。テントで作った仮設住宅もこのままでいるわけにもいかない。

「はい・・まずは今はそれも仕方のない事だと思います。王よ私たちが生き残った人間のために動きます。復興のお手伝いをさせてください。我々はこれから強大な敵と戦わねばなりません。そして私にはその力があります。グラドラムをまた国として再興させるために、この都市を魔人の拠点とすることをお許しくださいませんか?」

「それは願ってもない、もともとガルドジン様とも良い関係性を保っておりました。ただ・・我々にはそれに応える・・いやお返しするものが何も無いのです。一方的に支援を受けるなどグラウス国に何の利点も無いのでは?」

「それなら問題ありません。土地を貸してください、グラドラム都市のすぐ隣に私たち魔人国の領土を分けてください。海を越えてこの地に我々の拠点を築こうと思っているのです。」

「それは願ってもないラウル様魔人達のお力添えがあれば復興も早いでしょう。何卒我々にもご協力させていただきたく思います。」

その話が終わるころ、クルス神父がやってきた。

「クルス神父お疲れのところ申し訳ございません。これからのこの地についての事、そしてこれから解放するであろうラシュタルとシュラーデンについてのお話をしませんか?」

「解放・・ですか?」

「はい、私たちは世界の全てを解放するために来たのですから。」

「何という壮大な。しかしあなた様の神の如きお力をもってすれば叶うやもしれません。」

「壮大だとは思っていません。必ず成し遂げられると確信しています。」

「そうですか・・では、私にもぜひ協力させてください。」

「こちらこそよろしくお願いいたします。」

クルス神父が力強く俺の手を握りしめてきた。

「フフッ。これは・・私も落ち込んでなどいられませぬな。何卒私も協力させていただきたい!」

ポール王が俺の空いている手を握りしめる。

「クルス神父。ラシュタルに王族も貴族もいなくなってしまったいま、国を奪還した後はあなたに王の座に座ってもらわねばなりませんが・・異議はございますか?」

俺がクルス神父に尋ねる。

「わたしが・・王に。それは難しい・・私は王の器などではございませぬ。」

「国民をまとめる人がいないと国として再興するにしても問題がある。暫定でもいいからお願いしたい。」

「王にふさわしい人間が現れるまでの繋ぎの間だけなら。」

「それでかまいません。」

「私はどうしてもユークリットに会いたい人がいるのです。それにはその前の領土を拡大していく必要があります。いきなり敵の真っただ中に突撃するわけにもいきませんので、そのために協力をお願いします。」

「わかりました。」

「喜んで助力いたします。」

ポール王とクルス神父が俺に賛同してくれた。

「最初に攻略するのは、シュラーデン王国とファートリア神聖国、グラドラムの中継地点にあるルタン町です。ここを最初の攻略拠点といたします。」

「なるほど。」

「中継地点を抑えるわけですね。」

「はい。行動するのはまだ先ですけどね。まずはこの街を早急に復興させますので力を合わせてやってまいりましょう。」

「ではまず水の確保ですな。」

ポール王から水についての話が出てきた。

「あてはありますか?」

「はい。グラドラム墓地をさらに東に進んでいくと山脈にあたるのですが、その麓に森がありその森の奥に湖があります。魔獣が生息しておりますので手付かずではございますが、魔人様たちのお力があれば魔獣を退ける事が出来るのではないかと。」

「なるほど・・魔獣を抑えつつ水路を作ろうという考えですか?」

「その通りでございます。幸い200名以上の人間が生き残りました。男はその3分の1の70名ほどですが、水路を切り開く工事をしてもらいます。さすればこの都市内で農業を始める事が出来ます。」

「わかりました。それでは我々が護衛をしましょう。」

「助かります。次は飲み水に関してでございます。グラドラムが燃えて焦土になって隠れてしまったのですが、あちらこちらに井戸がありますのでそれを掘り起こします。井戸の捜索作業のお手伝いもお願いしたい。」

「ああ・・それならゴーグとジーグが適任だ。あいつらは鼻が効くんだ」

「よろしくお願いいたします。」

ポールからライフラインの確保についての提案があった。むしろこちらが聞く前にいろいろと考えていてくれたようだ。

《やはり・・この人は、王なんだな。》

「あの・・それでは私からも。」

クルス神父が話し出す。

「治療施設と薬品が足りていません。」

「はい」

「森に薬草を取りに入りたいのですが、魔獣の巣に入ったら私など瞬間で殺されてしまいます。」

「それの・・護衛ですね。」

「その通りです。」

「それでは薬品を作る施設も最重要項目としてあげましょう。」

「ありがたいです。」

「薬草を取りに行くついでに魔獣や果物を取りますので一石二鳥です。」

「一石二鳥?」

「ああ、私の国のことわざですよ。石を一つ投げて二羽の鳥を取る事を意味します。」

「面白いことわざですな。」

現状動くべきことは3人で話し合い決めた。

「それでは早速行動に移りましょう。この3人の絆が未来永劫続きますように。」

「ありがとうございます。」

「未来永劫続きますように。」

3国の初めてのトップ会談が終わった。