軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第878話 男か女か分からないロン毛イケメン

ゼクスペルの周囲が光り出したが、あれは俺達が過去に何度も見て来た転移魔法陣の光だ。あんな所に転移魔法陣が設置されていた雰囲気は無かったはずだが、目の前に出現し広がりつつ光が強くなってきた。俺は警戒の為、魔人たちに念話を繋ぐ。

《敵が送られてくるかもしれん。ヘリも十分警戒するように、空飛ぶデモンが出て来たら厄介だ》

《《《は!》》》

俺達が警戒する中、唐突に光の中から人が出現して来た。てっきりデモンが出てくるかと思っていたが、たった一人の人間が出現して来た事に更に警戒を強める。

グレーライトブルー色のロングヘアに、端正な顔立ちをした人物で男か女かも分からない。それが転移魔法陣から出て来てゼクスペルに話しかける。俺達がここに居るって言うのに随分余裕だ。

「フォイアー。状況はどうなっている?」

そう言われたフォイアーが俺達を指さして言う。

「恐らくはあれが魔人であると思われます」

「ふむ」

するとそいつは、こちらを値踏みするようにじっと見ている。何かムカつく。

《シャーミリア。撃て》

ガガガガガガガガガガガガガガガ

シャーミリアのM240中機関銃が火を噴くが、ゼクスペルの連中が炎壁を作り上げて防いだ。その炎の壁に包まれながらも、ロン毛のやつは顔色一つ変えていない。

《撃ち方やめ》

シャーミリアが撃つのを止める。するとゼクスペルが炎壁を取り払い、ただこちらを睨んでいた。だがそのロン毛は、にやりと笑ってこちらに言葉を投げかけて来る。

「これはこれは。あなたが魔人ですか、見た感じは人間と変わらないようですね?」

今、銃火器で攻撃したにも関わらず、その事に一切触れてこない。と言う事は俺達の事を知っているのだろう。それでもあんな感じだったら、嫌なくらい余裕でムカつく。

「そりゃどうも。あんたも見た目人間だけど、ゼクスペルの炎壁に顔色一つ変えないんだな」

「ああ、そんなことですか。この子らは気を使いすぎなのですよ」

まず答えになってないし。それより、この子? ゼクスペルが? てことは…

「あんたが火神か?」

「とんでもない。私はあの方に仕える者、そして一言だけ言っておきます」

「なんだ?」

「あの方は世界を統べるお方なりて、あなたが気安くお話できるような方ではございません」

「あっそ」

じゃあコイツは火神の手下か?

《シャーミリア。こいつはデモンか?》

《いえ。ですが気の量は凄まじいものです》

《人間なのかね?》

《申し訳ございません。わかりかねます》

「ところでこんな辺境に何をしに来た?」

するとロン毛はにこやかに笑って答える。

「もちろん神の器を探しに。そしてそこにあなたたちがいるという事は、あなたがたも同じ目的なのでしょう? しらじらしいですね」

「なぜ神の器を探す?」

「愚問ですね。あなた方はすでに豊穣神を手に入れているのでしょう?」

「知らん」

するとロン毛が少し表情を動かしつつ、鼻で笑った。

「まあいいでしょう。まさかあなた方も神の器を探していたとは、こちらの作戦を読んだのですかね?」

いや。たまたまそう言う結論に至ったのと、偶然にも探す日付が重なっただけじゃないかね?

だが適当にハッタリをかましておこっと。

「まあね。あんたらの作戦などお見通しってところだ」

するとそいつはパチパチと手を叩いて、小ばかにするように言った。

「そうですか。それはすごい」

なるほど、余計にムカついた。

「で、どうするんだ? ここでやろうか?」

「いや。ここでは武が悪い。どうせあなた方は三人だけではないのでしょうから」

ギクッ! どうやらヘリの存在を確認しているようだ。とにかく空気が張り詰めてきて、まるでプラズマが飛ぶようなピリ着いた時間が過ぎる。

「しかし。情報通りでしたね、恐ろしい武器を使うようだ。それでデモンを圧倒したと言う訳ですね」

「デモンを差し向けたのはお前達って事なんだな?」

「厳密には私達ではございません。まあ私達の手下の一部がやっただけの事、私ならそんな無粋な真似はしませんよ」

「そうなのか? ならば手下の教育がなってないんじゃないか?」

「それは失礼をいたしました。部下に粗野なものがいたようですね」

「まやりくちがゲスだったね」

「どうですか? 楽しめましたか?」

あー、ムカつく。北の国をことごとく亡ぼしておいて、楽しめましたか? だと?

するとヘリから念話が繋がった。

《ラウル様》

《どうしたアナミス?》

《マリアが撃ちますか? と聞いています》

《いや。どうやらそちらの存在を気づかれている。下手に動かん方が良い》

《了解しました》

こちらのピリピリ感が伝わっているのか、心配したマリアが声をかけて来た。俺は目の前のロン毛に答える。

「たいして楽しくはなかったよ、もう少し骨のあるやつを送ってくれ。ゼクスペルの三人もカスみたいなもんだった。食後の腹ごなしにもならんよ」

するとロン毛が高笑いする。

「あーはっはっはっはっ!」

何がおかしい?

「わかります! 大したことはないですよね! 本当にそのとおりです! 全く役に立たずに、あなた方をこの地まで引き入れてしまった。おっしゃる通りです!」

自分の手下をけなされてると言うのに、本当に笑っているように感じる。

《シャーミリア。あれは負け惜しみかな?》

《恐らく本気のようです》

《自分らの仲間を殺されて笑うか?》

《ご主人様とは真逆の考え方を持っているかと》

ムカつくのは頷ける。俺はたぶんこいつを生理的に受け付けないのだ。

「まあいいや。あんたらもここで片付けるから」

俺がドスの利いた声で言うも、ロン毛からさらりと受け流される。

「おっと、いけない。無駄話をし過ぎて殺されてしまう」

すると黙っていたフォイアーが言った。

「殺しましょう」

しかしロン毛が首を振った。

「いや。あなた方の誰かを失っても仕方がない、一度撤退いたします」

「しかし!」

フォイアーが言うと、ロン毛がぎろりとフォイアーを睨んだ。びりびりとした空気が伝わってきて、フォイアーは固まってしまった。

「だから三人も殺されたのですよ」

「は、は!」

するとロン毛が俺の方を向いてにやりと笑い、目を見ながら礼をしてくる。

「ではまたお会いしましょう。神の器はどうぞ持ち帰られたらよろしい」

「まて! 他の器は見つけたのか?」

「さて。どうでしたかね?」

また少しずつ光が増して来た。どうやら転移魔法陣をはらずに転移をしようとしているらしい。それを見たシャーミリアが俺に聞いて来る。

《攻撃を仕掛けましょうか?》

《無駄だな》

明かりが更に増して次第に光が収まる。するとそこにはロン毛もゼクスペルの連中も居なくなっていた。シャーミリアが気配感知で周囲を探るもどこにも見当たらないようだった。

「ふう。やり合ってたらこっちにも被害が出てたかもな」

「得体の知れない男でした」

「あ、あれ男?」

「感覚ではそのように」

「あ、そ。まるで女みたいだったから、わかんなかったよ」

「そのようでございました」

そして俺はアナミスに念話を繋げる。

《来てもいいぞ。敵は逃げた》

《は!》

しばらくしてチヌークヘリが現れる。それが村の側に着地すると同時に、ブリッツが飛びおりて走って来た。俺につかみかかるように聞いて来る。

「これはどういう事だ!」

「火の一族とか言うバケモンが出た、これから村に侵入するがくれぐれも警戒を怠らないようにしてくれ」

「くそ! 村をこんなにしやがって!」

俺達が村に入ると、あちこちで家が燃えていた。全焼しているわけではないが、かなりの範囲に火は広がっている。そして俺がブリッツに言う。

「延焼を止めるために、隣接した建物を壊した方が良い。じゃないとすべてが燃えてしまう」

「悔しいけど君の言うとおりだ。助けてくれるか?」

「もちろんだ。君はベニーの所に、シャーミリアは護衛としてついて行け」

「わかった! すまん!」

「は!」

ブリッツとシャーミリアが走って村の奥へと向かった。俺はグレースに声をかけて、火事を食い止めるようにゴーレムを貸してもらう。

「ファントムとゴーレムは、延焼を食い止めるように、隣接した建物を壊すしかない」

「了解です」

《ハイ》

「他のみんなは、生き残った村人を救助しよう」

「了解」

「「「「は!」」」」

俺達は総出で動き、村人を安全な場所に誘導しつつ建物を壊して行く。村人はその光景を呆然と眺めるだけだが、火事を止める為だと納得してくれた。それから一時間ほどして火事は食い止められ、俺はブリッツが向かったベニーの家に行く。

俺が到着するとベニーの家も燃やされていて、その前に横たわるベニーと座るブリッツ、見守るシャーミリアがいた。

「ベニー! ベニー!」

ブリッツが動かないベニーを揺さぶっている。俺はブリッツをどけてファントムから取り出したエリクサーを振りかけた。更にエリクサー注射をベニーの首元に刺す。

「ぷっはっ!」

ベニーが息を吹き返し。ブリッツをその視界にとらえた。

「ブリッツ!」

「べ、ベニー! 死んだと思った」

実際に死んでた。だが死にたてでエリクサーが効き無事に生還出来た。恐らく村のあちこちで、魔人とマリアやグレースやエミルがエリクサーで救命活動をしている。

「死んだと思ったのだがな。なぜかわし生きとるのう」

するとブリッツが俺を見て言った。

「さっきの薬のおかげかい?」

「そうだ。俺達の国で製造している蘇生薬だ」

「そうか! ありがとう! 旅立ってから、いきなり家族が殺されるなんて笑い話にもならない」

「よかったよ」

「まあ、ベニーの悪運は最強だって事だな」

そう言ってブリッツはベニーにハグをする。するとベニーが言った。

「分かれたばかりで感動の再開か?」

「そうだよ! 悪いか!」

「まったく、親離れせんバカ息子じゃ」

「なんでもいいよ」

よかった。ここでベニーが死んだりなんかしたら、ブリッツに恨まれそうだった。俺達がブリッツを連れ去ったおかげでこうなったようなもんだから。

だがこれで連れて行く人がもう一人増えてしまった。

「ブリッツ、ちょっといいか?」

「なんだ?」

「ベニーもここに置いておくのは危険だ。君と一緒に俺達と来た方が安全だろう」

「良いのか?」

「大事な人を失いたくないのは誰でも一緒だよ。むしろここに君とベニーがいれば、村人に危険が及ぶと思う」

「わかった。連れて行ってくれ」

「ああ」

だがそれからベニーを説得するまでが、結構時間がかかってしまうのだった。ベニーからこの村で生まれ育ったのだから、絶対に離れるわけにはいかないと言われてしまう。

一時間の説得の後に、ようやく了承したベニーを乗せた俺達は魔人軍基地を目指すのだった。