軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第859話 ダンジョンに向かう救出隊

ギルドのエントランスに銀等級の冒険者が集められ、ギルド職員から事故の状況など詳細が伝えられる。だが万雷の回廊の二十六階層と聞いて皆がざわつき始めた。

「なんだってアークライトのやつら、そんな深い所に行ったんだ」

「そもそも罠を踏んで更に階層下に落ちたんだろ? かなりヤバくないか」

「ゼルニクスが戻って来れねえのに、俺達が行って大丈夫なんか?」

だがギルマスが言う。

「もちろん俺も行く! 現役を退いたとは言え、俺でも役には立つだろう」

それを聞いた冒険者達が、勇気を奮い立たせるように言った。

「ギルマスが来てくれるのか!」

「ああ、ゼルニクスとアークライトの連中を見殺しには出来ん。ギルドの稼ぎ頭だからな」

「まあ俺達もあいつらには散々助けられて来たからな、見殺しには出来ねえ」

するとギルド試験官が銀等級冒険者達に言う。

「新しく冒険者になった、サバゲチームも参加してくれる事になってます」

すると銀等級冒険者達が、めちゃくちゃガラの悪い目つきになって俺達を睨んだ。まあ嫌われるだけの事をやっているので、ここは甘んじて受けるしかない。

「はあ? こいつらを連れていく? そもそも鉄等級じゃねえか! 薬草採取でもやってろ!」

「いや…ブラックドッグを倒したシャーミリア・ミストロードさんもいらっしゃいますし」

「それだって眉唾もんだ。大型の魔獣かなんかにやられてる残骸を拾って来たんだろ?」

「本当ですって!」

「まったく、いくらつかまされたんだかな」

「不正などしていません!」

揉めだしたので俺がそいつらに言う。

「そんな事で、揉めている時間はないでしょ」

するとギルマスが俺達の間に立って言った。

「回復薬などはギルドに保管している物を支給する。各自は武器の点検を頼む」

ギルドマスターに従い冒険者達が武器の確認をし始め、準備が出来た者からギルドを飛び出して行った。続いて俺達が行こうとすると、試験官がこっそり声をかけて来た。

「すみません。皆さんラウル様達の事を疑っているのです。実際に力を見た私がいくら言っても信じてもらえず、賄賂をもらってるのだと言うのですよ」

「肩身の狭い思いをさせましたね。大丈夫ですよ」

「と、とにかく。高難易度のダンジョンですのでお気をつけて」

「わかりました」

俺達は冒険者の一番最後尾からついて行く。市民も何事が起きたのかと、興味津々に野次馬していた。門をくぐって都市を出た時にふと思う。

ダンジョンまで、どのくらいかかるんだ?

俺は近くの銀等級冒険者に尋ねてみる。

「万雷の回廊までどのくらいかかるの?」

「話しかけんな!」

ビキビキビキ! とシャーミリアの血管が浮き出る音がするが、俺はシャーミリアに落ち着くように言った。そして長い距離を進む事を考えミーシャに耳打ちする。

「ファントムに乗って」

「あ、はい」

するとファントムがミーシャを持ち上げて肩に乗せた。ミーシャはちょこんと座ってファントムの頭に捕まっている。少し進むと視界には草原が広がり、農道のような小道が真っすぐに伸びていた。先頭のギルドマスターがそこに入って行き、後続の冒険者達が歩いて行く。

道はそこそこの広さはあるものの、馬車が通るにはちょっと厳しそうな悪路であちこちに水たまりがある。救出までの時間がかかればかかるほど、事故った奴らの命が危ないと思うのだが大丈夫なのだろうか? 一応皆が早足で進んでいるので、急いでいるのは分かるが時間がかかりそうだ。

それを見た俺が一旦立ち止まる。

「車両を召喚する」

「は!」

俺は米軍のM939 六輪駆動トラックを召喚する。俺が運転席に乗りミーシャが隣に、シャーミリアとファントムが荷台に乗った。そしてすぐに前方を行軍している冒険者達の後を追いかけた。すぐに追いついてしまい、トラックの進行の妨げになるのでクラクションを鳴らした。

プーッ! ププー!

「おわ!」

「なんだ!」

「魔獣か!」

冒険者達がざわつきながらも、俺がぐいぐい進めると道の両脇にどいた。そのまま冒険者を分けながら先頭まで行ってギルドマスターに声をかける。

「うわ! あ! ラウル様!」

俺は窓を開けてギルマスに行った。

「冒険者をこれに乗せた方が良い。ちんたら進んでいたらゼルニクスが死んでしまう」

「は、はい!」

ギルマスがトラックの後ろに行って冒険者達に乗るように言った。だが冒険者達は何故か乗りたがらない。俺が運転席から降りて後ろに行くと、得体のしれない物に乗りたくないと騒いでいる。

こいつらは…冒険者のくせに保守的か! 俺はムカついて大きな声で言った。

「は! 銀等級冒険者が聞いて呆れる! 結局は弱虫の集団じゃないか!」

「な、なんだと!」

「言わせておけば!」

「小僧が!」

「アークライトとゼルニクスは仲間なんだろ! とっとと乗って少しでも早く駆けつけようって思わないのか?」

「そ、それは」

「ぼやぼやしてたら、お前らの仲間が死ぬぞ!」

するとギルドマスターが怒鳴る俺を制して冒険者に言った。

「言うとおりだ。ひとまずこの乗り物に乗るべきだ。みんな! 頼む!」

「わ、わかったよ!」

「くそが!」

「助けられたなんて思わねえぞ!」

なんとでも言ってくれ。とにかく俺もちんたらやっている時間はないんだ。次々に冒険者が米軍のM939 六輪駆動トラックの荷台に乗り込んでいく。結構な人数がいるのでぎゅうぎゅうだが、五トン車の荷台は意外に大きいので全員が乗り込むことが出来た。

俺はギルドマスターに言う。

「ギルマスは隣にいて道案内を」

「はい!」

速やかにトラックを走らせ、ギルドマスターの指示に従って進んでいく。一時間も進むと山道に差しかかり、渓谷を登っていくと道幅がどんどん狭くなってきた。そしてとうとうトラックが進めないほどの道幅になってしまった。

まあだいぶ時間は短縮出来ただろう、恐らくあのまま徒歩で進めば余裕で太陽は沈んでいた。俺がギルドマスターに言う。

「ここまでですね。ここからは徒歩です」

「いやいや。ここまでこんなに早く到着するとは、馬車も無いのに不思議です」

「まあ、そういう乗り物なので。とりあえず帰りもこれで帰ります」

「はい」

俺達が運転席から降りて後ろに行き、荷台の留め金を外して冒険者を降ろす。全員が降りて口々に、トラックの凄さを口にしていた。

馬より早いだの、こんなに大勢乗っても問題なく進むだの、悪路も関係なく進んでいくだのと、まるで喜んでいるかのように聞こえる。あんなに嫌がっていたくせに。

「どう? 早くついただろ?」

「ふん! 何かは知らんが、お礼などせんぞ」

「そうだ。まあ今までの事を考えたら、これでも足りない」

ビキビキビキビキっとシャーミリアのこめかみに血管が浮かぶが、俺はシャーミリアをなだめて先に進むように言った。

「ギルマス! 早く進もう」

「はい」

俺達が山脈を登っていくと、シルバーウルフに似た魔獣が現れた。だがさすがは銀等級冒険者と言ったところか、ものともせずに追い払いスムーズに進むことが出来た。

すると銀等級冒険者がどや顔で俺達に言って来る。

「見たか? これが銀等級の力だ。まあせいぜい足手まといにだけはならないでくれよ」

「へいへい」

すると森林地帯の間に上に登る階段が見えて来た。ギルドマスターは俺に説明する。

「この階段を上りきるとダンジョンの入り口があります」

「了解」

俺達は冒険者と共に上がっていく。俺はファントムの方の上で揺られるミーシャに言った。

「ミーシャは無理しないでよ。シャーミリアが護るから心配はしてないけど」

「はい! あの…バルムスとデイジーさんと開発した武器を使ってもいいですか?」

「いいよ」

「ラウル様のロケットランチャーを下賜いただきたいのですが? 出来ればRPGを」

「オッケ」

俺はRPGロケットランチャーを召喚し、ミーシャに渡してやる。

「これでよかった?」

「はい」

弾頭も装備済みだが、ミーシャはあえてそれを外した。そして自分のショルダーバッグからRPG用弾頭を出して嵌め込む。

「ぴったり!」

「それが開発した奴かい?」

「はい」

そしてミーシャはRPGロケットランチャーについている紐を肩にかける。そして再び俺に言う。

「出来ましたらコルトパイソン。リボルバー拳銃を」

「リボルバー? 了解」

俺はコルトパイソンを召喚してミーシャに渡す。するとミーシャは装填済みの弾丸をとってショルダーに入れ、見慣れない弾丸を込めて言った。

「これもぴったりです!」

「まあ、バルムスには結構な数の武器を与えているからね。恐らくはほとんどのサイズを掌握しているんだ」

「なるほどです」

ダンジョンの入り口に到着すると、重厚な石の扉で閉じられていた。鍵はないが魔獣が外に出ないようにしてあるのだとか。ギルマスがみんなに言う。

「みな! 装備の点検を! 斥候は集まってくれ。戦士とタンクと魔導士は準備を」

「「「「「はい!」」」」」

冒険者達が準備をし始める。するとギルマスが俺達に聞いて来た。

「あの…武器らしきものをお持ちで無いようですが? 回復薬などの準備をなさった方が」

「いや。もう準備は出来ています」

「わ、わかりました! 斥候が先に入り、タンクと戦士が続きます。ラウル様達はどうされます?」

「うちらも斥候で良いかな?」

「斥候はかなりの手練れが務めますので、後方で様子を見ていただいた方が」

いや。だって絶対シャーミリアの方が優秀だもん。

「いや。斥候と一緒に動きます」

「では…わかりました」

そう言ってギルマスと一緒に俺達四人で、斥候部隊の所に行くと煙たい目で見られる。

「ギルマス! 素人と組むんですかい?」

「いや、彼らにも考えがあっての事だ」

すると冒険者がにらみを利かせて俺達に言う。

「とにかく俺達の後を来い! 足手まといになったら承知しねえぞ!」

「了解~♪」

冒険者達が岩の扉を開いて、斥候が素早く入り込み俺達がその後ろに続く。階段を上がって来たが、なだらかなスロープで下に下っていく構造になっていた。スロープを降りると、斥候の一人が魔法の杖をかざした。斥候にも魔導士が加わっているらしい。もしかしたら気配感知とか出来るのかもしれない。

すると火の魔法が発動し、火の玉が通路沿いを飛んで行った。通路に仕込まれているランプっぽものに次々に明かりがともされていく。人の手が入っているようで、通路はきちんと削られて平坦な壁と床が続いていた。

「なんかさ…ナブルト洞窟とか豊穣神デメールの生家に似てね?」

シャーミリアが答える。

「そのようです。どうやら世界各地に似たようなものがあるのは、神に関係した場所だからではと愚考いたします」

「いや。間違ってない、恐らくは古代の神か何かがこさえたもんだ」

ダンジョンと言うからアグラニ迷宮のような無骨な洞窟を想像していたが、どちらかと言うと精霊神や虹蛇や豊穣神の住み家に似ていた。

「まあ警戒は必要だろうな」

「そうですね」

「ミーシャはそのままファントムに乗ってて」

「はい」

ギルマスが言うには、銀等級の冒険者がこれだけ集まれば二十階までは行けると言っている。そこからは一階層ごとに次元が違っていくらしく、恐らくそこからが俺達の仕事になるだろうと踏んでいた。そして斥候の一人が、地下一階層の入り口を開くのだった。