軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第836話 ラウルの目指す未来を共有

俺達のチヌークヘリ編隊はモエニタ王都領空内に侵入する。敵襲に備え領空内に入る前に編隊の変更を行った。各員の状況は以下の通り。

フル武装のベルAH-1Zヴァイパー戦闘ヘリにエミルとケイナが乗り込み後方を飛行。

シャーミリア、マキーナ、ルピア、アナミスがM240中機関銃及びVP9ハンドガンにて武装しヘリとヘリの間を飛行。

ギレザム、ガザム、ゴーグ、ラーズ、ミノスは、腰にデザートイーグルを装着し、五頭のグリフォンに12.7㎜M2重機関銃一基とSMAW ロケットランチャー四本ぶら下げて周辺を飛行。

俺のチヌークヘリはマリアが操縦し、俺とファントム、モーリス先生とデイジー、イオナ、アウロラ、カトリーヌ、ミーシャ、ミゼッタ、カーライル、聖女リシェルが搭乗。

グレースのチヌークヘリはティラ操縦し、グレース、オンジ、デメール、アンジュ、セルマ熊、エドハイラ、キチョウカナデ、イショウキリヤ、ナガセハルトが搭乗。

スラガのチヌークヘリはスラガが操縦し、ホウジョウマコとテイムしたティブロン以下の魂核を変更した騎士五人とナンバーズ二十人が搭乗

極めつけはその編隊を扇動しているのが、キチョウカナデがテイムしているドラゴンだった。

基本は俺とグレースのチヌークヘリを護衛するような編成とした。

「壮観じゃな!」

その飛行編隊を見てモーリス先生がやたらはしゃいでいる。

「気に入りましたか?」

「かっこええじゃろ? そうは思わんか!」

「思います」

「そうじゃろそうじゃろ」

するとデイジーがモーリス先生に向かって言った。

「子供じゃあるまいし」

「ふん! 昔のお嬢様にはわからんのじゃ! この良さが」

「昔のじゃと?」

「なんじゃ! 今はお嬢さんじゃなかろう!」

「この! しわしわジジイ!」

「なんじゃと!」

いつものやり取りが始まってしまった。昔同じ冒険者パーティーに居たらしいが、これで本当にやれていたのかが不思議だ。

するとイオナが口をはさむ。

「先生。それは女性に対していささか失礼では?」

「すまんのじゃ。わしが悪かった」

なんか急激に素直になった。イオナやアウロラたちには滅法弱いモーリス先生なのだった。ちなみに、このお爺さんはゴーグにもメロメロだ。全員を孫だとでも思っているらしい。

まあ元気そうで何よりだ。

俺は席を立って聖女リシェルの所に行く。

「慣れないかい?」

「はい」

相変わらず顔が青い。カトリーヌが話し相手をしていたが、そうそういつまでも同じ相手と話をし続ける事は難しい。かといってミーシャは年齢が近いにもかかわらず、薬品の事や開発の事しか話さないから余計に具合が悪くなるようだ。

「編成替えをする時も言ったけど、エドハイラたちと一緒に乗った方が良かったんじゃない?」

「いえ。私はラウル様のご家族を守る使命が御座います」

いや、むしろ守られてるような雰囲気だけども。蘇生が出来る唯一の術者だからあながち間違っても居ない。

「ケイシーも話し相手になってやれよ」

ケイシーは、なんと床にゴロリと寝転がってグーグーと寝ているのだった。こいつの肝っ玉を少しは聖女リシェルに分けてやりたい。俺がごつんとグーでケイシーの頭を小突く。

「ん? なんすか? ついたんすか?」

「お前…旅行じゃないんだぞ」

「あ…すんません。ふわぁーあ!」

どデカいあくびをかますケイシーは無視をすることに決めた。

「カーライル。何か面白い話をしてやったら?」

「面白い話? …ですか?」

「何かないのか?」

「えーっとですね。そうですねぇ…」

ダメだこりゃ。

「もういいや」

するとリシェルの席の隣りにアウロラが来た。そしてアウロラが聖女リシェルに言った。

「あの…、わたしやラウルお兄ちゃんが居た世界の話を聞きたいですか?」

アウロラが言った途端に全員がこっちを向いた。どうやら皆は前世の話を聞いてみたいらしい。よくよく考えたら俺は皆に前世の詳細を隠していたかもしれない。

そしてアウロラが俺を見て言う。

「お兄ちゃん。話しちゃっていい? お母さんにはいっぱい話したけど」

「いいよ。もうほとんどの人が知っている事だしね、俺もモーリス先生にしか言ってなかったかもしれない」

「じゃあ話す」

リシェルはアウロラに向き直った。

「はい。ぜひ聞かせてください」

「はい!」

そしてアウロラが話を始める。

「このヘリコプターとか車とか、ラウルお兄ちゃんが召喚する兵器は全て前世の物なんです」

「はい。そのように伺っております」

「でもラウルお兄ちゃんが召喚する機器は、何故か全部軍用の兵器や関連機器ばかりなんです」

すると皆の顔が俺に向いた。

「まあそうだね」

「わたしも何故かは知らないんだけど、前世の人はほとんど軍用の乗り物や機器に触れる事なんてなかったんです。一般の人が乗る車はもっと可愛いのとかもあるの」

「そうなんですか?」

「はい。例えば、ちっちゃい軽自動車と呼ばれる車とか、あとは自転車とかバイクって言う二輪で動く車とか」

皆はアウロラの話を興味津々に聞いていた。

「わたしは女子校生と言って、若い学生だったんです。わたしが移動するとしたらもっぱら電車という乗り物だったんです」

「電車?」

「そう。切符を買って改札という門を潜って、乗り場に行くと長く連なる多くの人を乗せる車両があって。それに大勢がぎゅうぎゅうになって乗るんです」

「ぎゅうぎゅうに?」

「そうです。まるでお祭りのようにぎゅうぎゅうに」

「想像がつかないけど、そんなにぎゅうぎゅうに乗り込んでも動くんですね」

「そうそう。しかもそれが三分ごとにやってきて、次々に人を連れて行くんです。何百人何千人という人が次々に乗り込んで目的地に行くんです」

聖女リシェルが目を丸くして驚いている。リシェルだけではなく、みんなが驚いた顔をしていた。

「それでそれで?」

リシェルが酔いも忘れて話に食らいついた。さっきまでの真っ青な顔が色づいて来た。

「みな、仕事場や学校や遊びにいくんですよ。朝から深夜までずっとです」

するとそれを聞いていたミゼッタが手をあげる。

「そんなにいっぱいいたの?」

「そう。すっごいいっぱいの人が居たの!」

皆はアウロラの話に引き込まれている。この世界とは全く異質の世界の事に、居眠りしていたケイシーですら目を見開いて聞いている。シャーミリアからの報告はまだないので、恐らくはまだ安全圏内だろう。アウロラが俺をチラリと見るので続けるように促した。

「そして道路とかもこの世界とは違っていて、継ぎ目のない石畳でとてもスムーズに車が走れるの。それでみんなが買い物に行ったり遊びに行ったりして、魔獣なんかいないからどこに行っても安全なの」

「外敵がいないの?」

「わたしとお兄ちゃんが居た日本はそう」

「すばらしいわね」

「うん。でもそれにもまして凄いのは、通信やインターネットという技術なの」

「通信はラウル様の機器で見たことがあるわ」

「そうそう。あれより凄い機械を、それこそ国民の全てが持っていたの」

するとミーシャとデイジーがこちらを振り向いた。技術的な事になって更に興味が湧いて来たらしい。アウロラが身振り手振りで言う。

「このくらいの大きさの板のような物に、数百キロ離れた違う土地に住む人の顔を映し出して話す事も出来るの。その機器があればどこに居ても話す事が出来て、世界中のいろんな情報をその板で調べる事が出来るんです」

「凄い…」

皆が唖然としている。確かに俺はインターネットの概念をモーリス先生くらいにしか話してなかった気がする。モーリス先生もイオナ母さんも俺とアウロラから聞いてはいたが、やはり珍しい話らしくアウロラを注視していた。

「車だって、一家に二台くらいあって皆がいつでも好きな所に移動できた」

「車が一家に二台…それも凄いし、自由だったんですね」

「そう。でもね…」

「なんです?」

「そんな便利な素晴らしい技術を持っていたというのに、人間達はあちこちで戦争をしていたの」

「そんなに満たされているのに?」

「実はわたしとお兄ちゃんのいた国の日本も、私達が生まれるずっと前に戦争で焼け野原になったの」

「「「「「「えっ…」」」」」」

皆が絶句した。ただ平和な世界だったと思っていたらしい。

「だけど戦争を経て、国が復興してそれからは戦争をしなくなった。だけど世界中では戦争をしていたの」

すると興味を示したカーライルが聞いた。

「なぜ。日本は攻められなくなったんですか?」

「わたしも良く分からない」

そこで俺がアウロラに変わって話した。

「俺達の日本は戦争に負けて大国に身売りしたのさ。その代償として大国に、世界の脅威から守ってもらえるようになった。日本に勝った国はそれはそれは強大で、そのおかげで日本は平和にしてもらっていたという感じかな」

「それは良い事では?」

「だけど、その大国の顔色を窺うようになった。いや、むしろ日本はいろんな大国の顔色をうかがうようになっていった。だから市民は自由のようでそうでは無かった」

皆が複雑な顔をする。するとモーリス先生が口を開いた。

「世界が変わっても、人間というやつは変わらんのかもしれんな。この世界でも似たような事は起きておる。目の前で痛い思いをするより、大国に身売りして最低限の平和を得る。同じじゃ」

それに聖女リシェルが答えた。

「本来は神のみ名のもとに人は平等なのですが、どうしても優劣を付けたがるものです…」

リシェルは気が付いたようだ。そのリシェルが崇め奉る神とは目の前にいるアウロラなのだ。自分が信仰する神様と普通に言葉を交わしていた事に、改めて気づいたようで頭を低くした。

「聖女リシェル、やめてください」

「しかし…」

「いいんです。それでもわたしは平和なあの日本が好きだった。だからこそお兄ちゃんが今やろうとしている事が分かるの。お兄ちゃんもあの平和な世界を取り戻したいんだなって」

アウロラの言うとおりだった。俺は平和な世界を取り戻し、そして仲間達と一緒にサバゲをしたり楽しい青春を送りたいのだ。平和を乱す存在はどうしても許せない。

そしてそれを聞いた聖女リシェルが大きく頷いた。

「なんだか、ようやくラウル様の目指しているところが何処かを知れた気がします。前の世界でうまく機能していなかったものを、この世界で完全なものとしたいという事なのでしょう」

その通りだった。俺が全世界に魔人軍基地を作っている理由がまさにそれだ。前世では大国が分裂し、小国が衝突し悲劇が繰り返された。

俺は聖女リシェルの言葉で、俺は俺自身がやりたかった事を再認識したのだった。

「まあ、実現できるかどうかはこれからの戦いにもかかっているし、俺が目的を達成したからといってそれが成るかは分からないんだけどね。ただ、そんなに高尚な思いで戦っている訳じゃないんだ。俺は俺の好きな人たちと平和に生きていたいから戦っているだけで、本当にそれだけ。魔人も人間も獣人もエルフも平等に幸せに生きれるならいいなって、そう思っただけ」

するとケイシー神父が言った。

「ラウル様らしいです!」

俺はケイシーの顔を見て言う。

「ケイシーがケイシーらしく生きれる世界。それが理想かな」

俺がそう言うと皆が大きく頷くのだった。