軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第833話 王都進行に向け

俺達がウルブス領に到着した時、騎士隊長のコスタにやたらと感謝された。やはり自分の所の領主が、分けの分からない俺達と一緒に出掛けたらそりゃ心配になる。そしてアリストからの報告を聞いて、アリストの判断が間違いじゃなかった事も知る。

「やはりそうでしたか。シュラスコが襲撃を受けたと…」

「まあ直接的な攻撃を受ける前に、未然に防いだという事だ」

そしてコスタは俺を見て言う。

「ラウル様。我が主を無事に連れ戻ってきていただいてありがとうございます。また、あなたを疑っている部分もありましたが、これで確証が取れました」

「いえ。突然来た、訳の分からない奴を信じろと言っても無理があります。俺の方こそ強引なやり方をして申し訳なかったと思っていますよ」

「まあ正直驚きましたけどね」

俺が手を差し伸べると、コスタが俺の手を取って頭を下げる。

次にコスタがサーヘルをチラリと見る。そしてサーヘルが話し出した。

「我々も王都から潜り込んで来た騎士達に尋問して発覚しました。そしてそれらをたぶらかしていた者も、ラウル様のお力により仕留めたと言う事です。コスタ殿、我々もラウル様を疑っていました。同じ穴の貉です」

「そうでしたか」

騎士は騎士の仕事をしているのだから仕方がない。もちろん騎士としての矜持もあるだろうし、そこを俺達は強行突破したのだ。コスタがアリストに言う。

「それではアリスト様。兵をあげるのですか?」

「いや。コスタ、我々は領の防衛に努める」

「しかし、王都が訳の分からない敵に侵略されてしまったままでは」

するとアリストがコスタの肩に手をかけて言う。

「あの時、ラウル様のお力を見たであろう?」

「はい」

「なんと、あれで死なぬ相手なのだ」

「えっ!」

「我々のウルブス領など、敵が本気になれば一瞬で焼けてしまう」

「そんな…」

「事実だ。我はこの目で見たのだ」

「にわかには信じられませんが、そんなものが攻めてきたら…」

「だからラウル様がいらっしゃるのだ。我々のやるべき事は民を守る事。敵が攻めてきたら出来るだけ民を逃がし命を繋ぐ事だ」

「そうですか…わかりました。信じましょう」

「うむ」

そしてコスタの隣りに立っている、副長のタキトゥースが言う。

「あの、ラウル様達の歓迎の用意がまだ出来ておりません」

「仕方がないタキトゥース、突然だったからな」

そうタキトゥースに告げるアリストの隣りに、シュリエルが立ってうんうんと頷いていた。それを見たコスタがシュリエルに声をかけた。

「シュリエル様。お久しゅうございます。覚えてはいないと思いますが、幼少の頃にお見かけしているのです」

「そうなんですね! 私が不甲斐ないばかりに、王都で起きている異変に気が付く事が出来ませんでした」

「仕方ありますまい。我々とて、何かを出来たとは思えません」

俺が皆の話に割って入る。

「それでは我々は前線に戻ります」

タキトゥースが意外そうな顔で言った。

「えっ? せっかくシュリエル様もいらっしゃったというのに?」

するとアリストがタキトゥースに言う。

「タキトゥースよ、事は一刻を争うのだ。既にシュラスコ領で食事はいただいている」

「わかりました。残念ですが次の機会に」

それに俺が答えた。

「タキトゥースさん。俺達が終わらせたら立ち寄らせてもらいますよ。それまではウルブス領を守っててください」

「は! 誓います!」

するとコスタとタキトゥース、騎士達が膝をついて俺に頭を下げた。

「じゃ、辺境伯。俺は行くよ」

「お気をつけて」

俺が踵を返すと俺の配下達も回れ右をして俺について来る。シュリエルは何故か楽しそうにしていた。どうやらモーリス先生同様にヘリコプターが気に入ったらしい。ヘリの後部ハッチから乗り込んでいくと、騎士達がまだこちらを見て手を振っていた。皆が乗るのを見計ってハッチを開いたままヘリが浮上していく。そして徐々にハッチが閉まり始め、騎士達の姿が見えなくなった。

「先生。アリスト辺境伯が戻った事で、騎士達は安心してました」

待っていたモーリス先生に告げる。

「自分らの親分が無事なら、安堵したことじゃろうて」

「はい」

「自らが率先して戦いたがるのはラウルくらいのもんじゃろうて」

俺はモーリス先生に言う。

「先生」

「なんじゃ?」

「実を言うとね。僕は自分が王子だという自覚がないんです」

「ふぉっふぉっ! そうじゃな、自由じゃもんなあ」

「だって、こういうの面白いじゃないですか。次から次に訳の分からん敵が出てくるんですよ」

「そんな王子はおらん」

するとイオナが言った。

「やめなさいラウル。そのうち親の顔が見てみたいとか言われるじゃない」

「いいじゃないですか母さん。そのおかげでこんなにたくさんの仲間が出来た」

俺がヘリの中にいる配下の面々を見ると、胸に拳を当てて頭を下げている。

「自らが動いたからこそなのでしょう。あなたは、あの人の子だものね」

そうイオナに言われ、育ての親のグラムを思い出す。正義感があふれ熱血の親父だった。

「はい」

ヘリはあっという間にシュラスコ領に戻った。

「ただいま戻りました」

シュリエルがモアレムに告げる。

「おかえりなさいませ」

「まだまだ乗っていたかったわ。すっごく早いのよ」

「シュリエル様!」

「いいじゃない」

そして俺達はなぜか正門の前で、しばらく待たせられた。とにかく俺はすぐに先に進むために、話に割り込む。

「すみませんがモアレムさん。死刑囚をもらい受けたいと思います。我々はすぐに発たねばなりません」

「はい。分かっております。既に受け渡しの準備は出来ております」

俺はギレザムに伝える。

「俺とシャーミリアとアナミスで、囚人を連れて来る。ホウジョウマコを連れてきてくれ」

「は!」

するとホウジョウマコが俺のもとにやって来た。

「出番だ」

「はい!」

そして俺達が、モアレムと一緒に収容所に向かおうと正門を潜った時だった。そこには市民達が大勢集まっており、大通りの脇にもたくさんの見物人が出て来ていた。

わぁぁぁぁぁぁ!

と大歓声が起きる。

「これは?」

「ラウル様は、我が領を救ってくれた英雄様です。皆が歓迎ムードですよ」

とモアレムが俺に説明をした。凄い大歓声の中を、俺達がモアレムとシュリエルについて行く。

「ラウル様ぁぁぁぁ!」

えっ! いきなり俺の名前が呼ばれて戸惑う。

「さあ、ラウル様。お手を振ってください」

モアレムが俺に言うので、俺が沿道にいる人々に手を振った。

「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」」

うそ。俺にめっちゃ黄色い声援が飛んでいる。こんな事生まれて初めてなんだけど! 前世でも体験したことがない。当たり前だけど。ただのサバゲ―マ―だったし。

「たくさんの女達を救ってくれた事で、女達の人気がうなぎのぼりですよ」

マジ? えっ? ホント?

俺はまた道端の人達に手を振る。

「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」」

するとシャーミリアがどや顔で言う。

「この都市の人間は見込みがあります。ご主人様の偉大さに気づいたのですから」

「ま、まあシャーミリア。そんなに言うなって」

「出しゃばった事を申し上げました」

「そうでもないけどさ」

するとモアレムが俺に言った。

「いえ。ラウル様、本当にありがとうございました」

「いやいや」

「こうしてシュリエル様も一緒に歩く事で、市民を救ったという印象を与える事が出来ます」

あ…、これは仕組まれた事だったのね? シュリエルのイメージ挽回という訳か。なんかおかしいと思ったんだよな。シュリエルに対する声援も聞こえていたし、やはりこのモアレムという男は抜け目がない。

「モアレムさんは優秀ですね」

「いやいや。すみませんな…多少利用させていただきました」

正直に言うもんだ。

「いえ。問題ないですよ、こんなことぐらいだったらいくらでもします」

「ありがとうございます」

シュリエルは王都の騎士達の不正に目を伏せていた。その風評をこれで一気に飛ばしてしまおうとういう計画らしい。

「勉強になりますよ」

「ですが、感謝の気持ちは本物でございます」

「素直に受け取っておくよ」

急遽パレードような形になって市民達の間をすすんだ。そして俺達は収容所の門を潜る。収容所にはシュラスコ領の兵達が大勢いて、反乱などが起きないように見張っていた。王都の騎士も八百人いるので、その管理はそれなりに大変だろうと思う。

モアレムが俺に告げる。

「それでは主犯格の者達を連れてまいります」

「はい」

俺達がそこで待っていると、足枷の鎖の先に鉄の玉を付けられた男達が五人連れてこられた。かなり痛めつけられたようで、体中に傷を作っていた。手は木で出来た枷を付けられており、暴れる事は出来ないだろう。

「あのー、モアレムさん。このまま今の道を連れて帰って、この人達は殺されたりしないだろうか?」

「もちろん騎士が周りを護衛します。ですが何かを投げつけられたりはするでしょうな」

市中引き回しって事ね。まあそれなりの事をしたから仕方ないか。

「わかりました」

俺はシュリエルとメイドのアムレットに目配せをして、モアレムに向かって言う。

「あの、このアムレットさんなんですけど」

「は、はい。アムレットが何かしましたか?」

俺がシュリエルに目配せをすると、シュリエルがモアレムに言う。

「アムレットを私の護衛に置きます」

「は? それはどういう?」

「言った通りです」

「いや。メイドですぞ。護衛など…」

するとシュリエルがアムレットに言う。

「アムレット。モアレムに見せてあげて」

「はい」

アムレットが周りを見渡し、そこそこの太さの木を見る。そしてシュリエルに目を向けた。

「いいわよ。倒して」

「はい」

そしてアムレットが魔法の詠唱を始める。その手にはモーリス先生からもらった魔法の杖が握られていた。

「焼き尽くせ! ファイアボール!」

詠唱が唱え終わると、ボゥ! と杖の先から火の玉が飛んでいき、そこそこの太さがある木に命中し幹を折ってしまったのだった。

「おお!」

騎士達が目を見張り、アムレットを見て口々に言う。

「凄いぞ! アムレット!」

「そんな力を隠し持っていたのか!」

「知らなかった!」

するとシュリエルが代わりに言った。

「北の大地から来た大賢者様に見出していただいたのです。どうです? 私の護衛に相応しいと思いませんか?」

騎士達はパチパチと拍手をしていった。

「素晴らしい! もちろん意義などありません!」

そしてシュリエルは、それを遮ってもう一人を前に出す。それはサーヘルだった。

「今後は、このサーヘルが騎士団長となります。この度のウルブス領の護衛を見事にやりきりました! 意義のある方はいますか?」

「いえ! 元よりサーヘル副団長は力のある人でした。意義などございません!」

よかったよかった。これでシュラスコ領の領主が誰なのかも示せた。俺がモアレムに目配せをするとモアレムが頷いた。

「さあ。ラウル様はこれより我々の代わりに、前線へと向かう事になっている」

その言葉をきっかけにして、騎士の一人が囚人のティブロンを棒で小突いた。

「歩け!」

「貴様! 王都の騎士に対して!」

ティブロンが何かを叫ぼうとしたが、シュラスコの騎士に棒で打ち伏せられてしまう。

「だまれ! 反逆者!」

「くそ! 見てろよ! 王都についたらこの事は王に伝えてやる!」

それをいわれ少し騎士が怯んだ。やはりもともとは王直属の騎士なので、そうなるのも無理はない。だがそこで俺が言う。

「お前。王に謁見できると思ってんの? この後に及んで?」

「うるせえガキ!」

「ま、いいや。とにかく行こうか」

囚人たちは縄に繋がれて進んでいく。縄を引いているのは馬だった。囚人たちは渋々と馬に惹かれて歩きだすのだった。

最初、俺は催眠をかけてしまおうと思っていたがやめた。こいつらは市民の罵声を浴びて打ちひしがれた方が良い。俺達は進む囚人の後ろから距離を取って歩きだすのだった。