軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第827話 ベルゼバブとバティン

俺達がベルゼバブを攻略するべく集中していると、いつの間にかバティンが消えていた。

逃げたか? ならば!

ベルゼバブを攪乱しつつ突撃しようとすると、また円月刀が俺を襲って来る。どうやらバティンは自分の異空間に潜み、この部屋の内部に居て俺の首を刈る機会を伺っているようだ。

《ご主人様! お気を付けください! 小娘のデモンは我々の隙をついてきているようです》

《了解》

それでもどうにか距離を縮めて俺達がベルゼバブを撃つが、また周囲に黒い幕が現れ弾が当たらない。その隙に、また円月刃が俺に迫って来た。

ガキィ!

俺がバレットM82ライフルの銃身で円月刃を受けると、ボキリと銃身が斬り落とされてしまった。使えなくなったバレットM82ライフルを捨てて新たに召喚する。

《バティンはどこだ? あいつをどうにかしないと》

《ベルゼバブの側から攻撃を繰り出しています》

やはり高位のデモン二体は厄介だ。バティンの円月刃が邪魔をして、なかなかベルゼバブに近づく事が出来ない。デモン二人の能力がお互いを補って、俺達を近づけないようにしている。

するとカーライルが叫ぶ。

「バティンの円月刀を抑える事くらいは出来ます! ベルゼバブに集中してください!」

シュッ! ガキィ!

恐ろしい速度でカーライルが飛び、俺に飛んで来たバティンの円月刀を防いだ。

でた! デイジー&バルムス製の噴射機移動!

ガキン! キィ!

カーライルは噴射機を使って飛び、次々に俺を襲う円月刀を防いでくれている。あんなもん、もはや人間じゃない。

《行くぞ!》

《は!》

《ハイ》

カーライルがバティンの円月刀を防いでくれているうちに、俺達三人が一気にベルゼバブとの距離を詰めて至近距離に近づいた。その時だった。

ブブブブ

ドサッ! 俺が唐突に転んでしまった。

《ご主人様!》

《なんだ?》

咄嗟にシャーミリアが俺を掴んで、ベルゼバブの側から飛び去る。すると俺がいた場所に向かって、あの黒い影が流れて来た。

バグン!

俺がいた場所の地面が丸くえぐられている。シャーミリアが助けてくれなければ俺は死んでいた。

《ファントム! 避けろ!》

俺はベルゼバブの近くにいたファントムに指示を出す。ベルゼバブまでもう少しというところだったが、ファントムに黒い影が伸びてすんでのところで飛び去る。

バグン!

「ファントム!」

ファントムの腕の先がM134ミニガンと共に消え去っていた。ファントムが後方に飛びさって距離を取る。

「バックパックを捨てろ!」

ファントムはバックパックを、思いっきりベルゼバブの方に投げつける。すると黒い影がバックパックを食った。

「来い!」

ファントムが一気に俺のもとに来る。

ズルリとファントムに新しい腕が生えて来た。だが肘から先のコートの腕が無くなっている。

「ご主人様、どうなさいました?」

「わからない。ベルゼバブに近寄ったら物凄い振動が伝わって、気が付いたら転んでいた」

「なんでございましょう?」

「いきなり脳と体が揺れた感じだった。シャーミリアもファントムも感じなかったか?」

「はい。私奴にはなにも」

《……》

答えないのは、ファントムも感じなかったと言う事だろう。

「カーライル! 一旦引け!」

「はい!」

ドシュッ! とカーライルが噴射機を使って俺達の元へと戻って来る。

「ファントム! ミニガンだ!」

俺はファントムに新しいM134ミニガンとバックパックを召喚して渡した。ファントムがそれを受けとって新たに装備する。

するとベルゼバブが高笑いした。

「おほほほほほほ! わらわに近づく事すら出来ぬではないかえ! バティンよ、お前はあんなものに手こずっているのか?」

スッとバティンがベルゼバブの側に浮き出て来た。

「あんなもんじゃないんだよ。アイツは」

「これだから下等なデモンは世話が焼ける。お前の消滅した双子も浮かばれぬのう」

「おばさんも気を付けた方が良いよ」

「何を気をつけるというのだ? というか、おばさんと呼ぶな! 下等なデモンの分際で」

「あー、はいはい」

そんな会話をしていると、バティンと一緒に異空間から出て来たビクトールがカーライルに話しかけて来た。

「おい! カーライル! 力の差が分かっただろう? 所詮、人間は神やデモンにゃ勝てないんだよ!」

「黙れ」

「お前もそんな奴を見限ってこっちにつけ」

するとカーライルはこめかみに思いっきり筋を立てて言う。

「まっていろ、そのデモンを片付けたら次はお前だ」

「はは、相変わらず怖いねえ。 ま、やれるもんならやってみろよ」

カーライルは黙った。するとビクトールが付け加えるように言う。

「どうした? 不利になったらだんまりか?」

別に不利になった訳じゃない。とにかくどうにかしてベルゼバブとバティンの複合攻撃を止めさせる必要がある。

《シャーミリア、ファントム》

《は!》

《ハイ》

《やり方を変える。よく聞け》

《は!》

《ハイ》

そして俺はシャーミリアとファントムに作戦を告げ、すぐさま散開してベルゼバブに向かい突撃の瞬間を伺う。

「カーライル、バティンの円月刀をさばき続けられるか?」

「やってみます」

「頼む」

そして再び俺達はベルゼバブに突撃を開始した。撃ちながら接近していくと再びベルゼバブが、周囲に黒い幕を張って銃弾を防ぎ始める。するとスッとバティンとビクトールが消えた。俺達の攻撃が当たらないように別の空間に入ったのだ。

だがいまだにカーライルが円月刀をさばいているので、バティンはちょこちょこと異空間から出て攻撃を繰り返しているようだ。

《位置取りを確認》

《は!》

《ハイ!》

俺達はベルゼバブに攻撃を仕掛けつつ、着かず離れず戦っていた。そして戦う位置を少しずつ左にずらしていく。それに合わせてカーライルも俺について来て円月刀をさばき続ける。

「よし!」

俺はすぐさま、重量のあるナメル兵員輸送車を召喚する。するとそれをファントムが思いっきりベルゼバブに向けて蹴飛ばすのだった。物凄いスピードで、ナメル兵員輸送車がベルゼバブに飛んでいく。

《行くぞ!》

《は!》

《ハイ》

俺がその場に12.7㎜M2重機関銃を召喚し、寝そべってベルゼバブに向けて掃射を開始した。動きを止めた俺は格好の的となり、更にバティンの円月刀は攻撃を激しくさせる。だがカーライルが必死にバティンの円月刀をさばき続けた。

ベルゼバブにナメル兵員輸送車が到達する寸前、バグン! とナメル兵員輸送車の四分の三くらいがベルゼバブに食われた。

「あーはっはっはっはっ! デカければなんとかなると思ったのかねぇ!」

ベルゼバブがまた高笑いして、俺に言葉を浴びせかけた。

だが…

《成功です!》

シャーミリアから念話が繋がる。

《よし!》

ベルゼバブの意識を完全にナメル兵員輸送車に集中させている間に、俺が12.7㎜M2機関銃を撃ち込む。そして蹴り飛ばしたナメル兵員輸送車をベルゼバブが食っている最中に、シャーミリアとファントムが向かった先はバティンだった。別空間からの攻撃を繰り出す一瞬のスキを狙って、シャーミリアがバティンを異空間から引き抜いたのだ。そしてファントムがそれを抱き留めて、一気にベルゼバブから引き離した。

「なっ!」

ベルゼバブがあっけに取られている。

「くそ!」

バティンが苦虫を潰したような顔をした。

「はれ?」

異空間が消滅してビクトールがベルゼバブの側に投げ出され唖然としている。

「ファントム! 潰せ!」

《ハイ》

めきょめきょめきょめきょ!

「うぐあぁぁぁぁぁぁ!」

バティンの胴体部分がファントムの両腕に挟まれて、一気にひしゃげ潰される。そしてシャーミリアがすぐにファントムの横に現れた。

シュパン!

バティンの両腕が斬り落とされる。

「うあぁぁぁぁぁ!」

あれでも、まだ生きてんのか?

するとベルゼバブがそれを見て叫ぶ。

「馬鹿が! わらわに任せておれば良いものを!」

「げぼっ」

バティンが真っ黒い液体を吐き出した。血ではなさそうだが、バティンから一気に気が消失していく。

「だからボクが言ったんだ。こいつらは危ないって」

「そいつを放せ!」

ベルゼバブが叫んで、シャーミリア達の元へと走り出した。その間も俺の12.7㎜M2機関銃が撃ち続けているが、黒い幕がそのすべてを食らい尽していく。

「いいよ、おばさん。逃げなよ、一人じゃ分が悪いって」

「下等なものが、わらわに進言などするな!」

「いいんだ…ダンタリオンが待ってる。じゃあおばさん、あとは」

ドガガガガガガガ!

バティンがニッコリと笑って何か言いかけた瞬間に、シャーミリアが至近距離からM240中機関銃でバティンの頭を掃射した。頭を吹き飛ばされて灰になって消えて行くバティン。

《シャーミリア! ファントム! そこから離れろ!》

俺の指示でシャーミリアとファントムが飛び去ったあとを、ベルゼバブの黒い空間が覆いかぶさって食った。すぐに俺の傍らにカーライルとシャーミリアとファントムが立つ。そして俺はパンパンと土を払いながら立ち上がった。

「あっけなかったな」

「はい、ご主人様。手こずった分だけ余計にそう感じるのかもしれませんが」

「さてと、アイツをどうしよう」

俺達が見ている先には、暗い表情を浮かべるベルゼバブがこっちを睨んでいる。どうやら仲間をやられた事で怒っているようだ。

「おもしろいねぇ」

そして、いきなり声をかけて来る。

「‥‥‥」

俺達が特に何も言い返さないでいると、ベルゼバブが続けて話す。

「わらわは、あの下等なデモンが気に入ってたんだがねぇ」

「‥‥‥」

俺達が何も返さないでいると、ベルゼバブの目が吊り上がって鬼の形相になる。

「下等なお前達が、わらわから逃げおおせると思わない事だ!」

しゃあない。答えてやるか。

「逃げる気など毛頭ない。お前はこれから消滅する運命だ」

「くっ、あーはははははは! やってみるがいい!」

そうしてベルゼバブが一気にこちらに距離を詰めて来るのだった。

《なるほど。どうやらベルゼバブは、バティンを守る為にあの位置から動かなかったんだな》

《気に入っていた、というのはあながち嘘では無かったようです》

《ならあのおばさんも、バティンの所に送ってやらないと可哀想だな》

《はい》

そして俺は俺とベルゼバブの間に、ナメル兵員輸送車を数台召喚する。

「ファントム」

するとファントムが次々に、サッカーボールのようにナメル兵員輸送車を蹴り出していく。だがそれらは次々にベルゼバブに食われていくのだった。

「馬鹿が! こんなもの! わらわには通用せぬわ!」

「一旦距離を取ろう」

そして俺達四人は一気に入り口付近まで走る。振り向けば鬼の形相で近づいて来るベルゼバブがいた。

さて…どうするか?

《あいつは何でも食うな》

《そのようです》

《どうしたもんかね?》

俺達が迷っていると、俺達の後の入り口から声が聞こえた。

「ラウル様!」

ギレザムとラーズが部屋の入り口に立っていた。どうやら向こうに敵は出ないと判断して、俺達の元へと駆けつけて来たらしい。それを見たベルゼバブが一度足を止める。

「ふははははは、何匹来ようが同じことなんだけどねぇ」

俺はギレザムとラーズに説明する。

「アイツは念話を阻害し、あの黒い空間でなんでも食う。近づけばあれの餌食になるぞ」

「「は!」」

俺はギレザムとラーズにM134ミニガンを召喚した。

「カーライルは俺のそばに! 魔人は散開!」

「「「は!」」」

《ハイ!》

そして再びベルゼバブを取り囲むような陣形を取る。するとベルゼバブが足を止めて、散開する魔人達を見渡した。だが再び俺を見て一直線に迫ってくるのだった。