軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第824話 雷雨の山脈での戦闘

大抵のデモンは力押しでガンガン前に出て来る事が多い。だがあのバティンというデモンは、いくつもの搦め手を使ってネチネチやって来るから油断は出来なかった。脳筋のように攻めて来るデモンと、バティンの違いは良く分からないが頭は悪く無いようだ。デモンにもいろいろいる。

俺はシャーミリアに念話を繋ぐ。

《シャーミリア、敵はどこだ?》

《消えました。恐らくは他空間に潜んでいるものかと》

《あれは…厄介だな》

《はい》

バティンが他空間に逃げる原理が分からない。まあデモンなので俺達の常識が通用しない事は確かだ。

《大体のデモンはガンガン突撃してくるんだけどな。バティンとかいうヤツはいろんな手を使って来る》

《小賢しいです。ご主人様を相手に無駄なまねを》

《その無駄な事がね、厄介なのよ》

《私奴の足りない頭で考えてみたのですが、恐らくデモンと人間が合わさるとそのような面倒な事をしだすような気が致します》

《人間か…》

《はい。これまでの厄介なデモンの陰には、必ず人間が絡んでいたように思います》

言えてる。

そう言えば今まではそうだった、まだ遭遇したことはないがアブドゥルという人間が絡んでいた時も面倒だった。そう言えばバティンはファートリアの騎士の…名前が思い出せないが、カーライルの知り合いが絡んでいた気がする。

風が山の上から吹き降ろして来ている。出現したら風下の方が敵を確認しやすいだろう。もしかすると敵は既に、ここより高い場所に逃げているかもしれないが。

俺達は気を研ぎ澄ませて周りを見渡す。

《雲が出て来たな》

《そのようです》

山の天気はすぐに崩れる。雨が降ると気配を掴みづらくなりそうだ。まあ、シャーミリアがいる限り問題はないだろうがね。ギレザムも回り込んでいるし。

そんなことを考えていると、空が一瞬光った。一瞬デモンの攻撃かと思って反応してしまう。

「うお!」

ゴゴーン! ゴロゴロゴロ!

雷だった。光ってから音がするまで時間が空いていたので、だいぶ遠い所に落ちたらしい。

ポツリ

一粒の雨が俺の頬にあたった。

《雨が降るか…》

《お任せください。私奴の気配感知からは逃れられません》

《任せた》

《はい》

それでも敵は来なかった。既にこのあたりにはいないのだろうか? 雷が先ほどから連発している。

俺はギレザムに念話を繋げてみた。

《そっちにデモン出てないか?》

《いえ。気配はございません》

《そうか》

次第に雷が連発でなり始める。するとシャーミリアが言った。

《恐れ入りますが、敵は何かを企んでいると愚考いたします》

《なんだ?》

《それは分かりませんが、ギレザムたちの包囲網からは出ていないと思います。先ほどの攻撃から突然何も無くなりましたし、何かを狙っているのではないでしょうか?》

ビシャッ! ゴロゴロゴロ!

《雷が近いな。まさか天候でも味方につけるつもりか?》

《そのような力を持つのでしょうか?》

《わからんが、もう一体の強い気配があったんだろ? そいつの力とか》

《いかがなさいましょう?》

《逃したくない。可能な限り敵の数は確実に減らしていきたい》

《では、私奴が囮に》

‥‥‥‥‥

今のシャーミリアであれば、敵に瞬殺されたりはしないだろう。

だが俺はすぐに指示が出せなかった。なんというか勘のような物が働いて、シャーミリアを俺達から離してはならないような気がする。敵は何を狙っているのか? 雷を利用する? そんなことができるのか?

《ひとまず様子を見よう》

《は!》

ポツリポツリと、俺の顔に落ちる雨の数が増えて来た。

何か…前にこんな状況で嫌な事があったな…あれは何だったか?

雨足がどんどん強くなってきた。俺はカーライルとナンバーズたちに近づいて言った。

「敵は間違いなくいる。だが、何かを狙っているようだ。それが何なのか分からないが嫌な予感がする。カーライルとナンバーズは自分の防衛に集中してくれ」

「わかりました」

「「「「「「「「「「は!」」」」」」」」」」

人間達が更に警戒を強めた時、バケツをひっくり返したように雨が降り出した。

「これは…」

シィ…

俺はコルトガバメントの腹で何かを受け止める。するとグリップの底に何かがビチビチとくっついていた。

「気をつけろ! 魔獣だ! レインニードルだ!」

俺達が北大陸の西山脈で遭遇した、鼻先が槍のように鋭い魚の魔獣だった。それが俺のコルトに穴をあけてビチビチいっていた。俺はすぐさま銃を捨てナンバーズ達の元に走る。するとカーライルが全てのレインニードルを斬り捨てている所だった。

「ナンバーズ! 盾だ! 受け取れ!」

すぐにライオットシールドを四十枚ほど召喚し、一人二枚ずつ手にしていく。

《ご主人様!》

ガシィッ…

なんとレインニードルの襲撃と土砂降りに隠れて、バティンの円月刀が襲い掛かって来たのだった。シャーミリアがそれを爪でさばき俺を守ったのだった。

《ファントム! アナミスを守れ!》

《ハイ》

アナミスは防御する術がない。何とか交わしていたようだが、ところどころ服が破れていた。

するとギレザムから念話が繋がる。

《ラウル様! 向かいます!》

《包囲を縮めるようにして来い!》

《は!》

そして俺は大声でナンバーズに号令をかける。

「竜人化薬を飲め!」

俺が言うと全員が青い錠剤を口に含んで飲む。その間もレインニードルが兵士たちを襲い、俺や魔人たちにも襲い掛かって来る。

ガシィ!

そして何よりも厄介なのは、レインニードルに紛れて攻撃してくるバティンの円月刀だった。レインニードルは直線的なので避ける事は出来るが、横殴りに飛んでくる刀が厄介だった。俺の所にファントムに守られながらアナミスが合流した。すぐさま俺はアナミスにライオットシールドを二枚渡す。

「足手まといになり申し訳ございません」

「いや、俺の想定ミスだ」

すぐさまファントムにM134ミニガンを召喚して渡した。

「薙ぎ払え!」

キュゥィィィィィィィィィィ! ガガガガガガガガガガガガガ!

ファントムが周囲に向けてM134ミニガンを撃ち始め、俺は次にナンバーズに指示を出す。

「シールドを全方位に構えドームを作れ!」

するとナンバーズが盾を外に半球状にドームを作った。だがライオットシールドにも何匹ものレインニードルが突き刺さっている。俺はそのドーム内に武器を召喚した。

「小銃はあてられない! それを使え!」

俺がナンバーズに与えたのは、UTAS UTS-15ショットガンだ。15連射が可能な、最新のショットガンで範囲攻撃に優れている武器だった。そうしている間にナンバーズ全員の竜人化が終わったようだ。そうなればちょっとやそっとじゃ怪我をすることはない。有限ではあるが、いまならナンバーズたちは魔神並みの力を持っている。

「盾を捨てて攻撃開始!」

ズドン! ガシャ! ズドン! ガシャ!

ナンバーズのショットガンと、ファントムのM134ミニガンの弾幕によりレインニードルが近寄れなくなった。それでもバティンの円月刀だけは飛んでくる。

「埒が明かない」

「ご主人様。今の攻撃により、大まかな敵の位置がつかめました」

度重なる円月刀の攻撃で、シャーミリアがその出現位置からバティンのおおよその位置を掴んだようだ。

「少しずつ前進する! 弾が切れた奴から俺の所に来い!」

するとナンバーズはすぐに来た。レインニードルの多さにあっという間に弾を使いきってしまったのだ。俺はすぐさま同じ武器をフル装弾で出す。

「使った銃は捨てろ!」

俺はナンバーズの間を素早く移動し、ショットガンの補充をしていくのだった。じりじりと前進してバティンが潜んでいるであろう場所へと近づいて行く。

「後、六十メートル! ご主人様、敵はあの洞窟付近に潜んでおります!」

「よし! 進め!」

ファントムのM134を入れ替えながら、俺達は歩みをとめない。カーライルは相変わらず、周囲に寄って来るレインニードルを片っ端から切って捨てている。

やっぱ、驚異的だわ。あいつ。

俺達がもうすぐ洞窟にたどり着こうというところで、洞窟の上の方に数人の人影が現れる。

「ラウル様!」

ギレザム達五人だった。と言う事は、デモン達はここから先には逃げていない。

「みんな! 敵はすぐそこだ!」

突如、円月刀の攻撃が無くなった。恐らく逃げ出したのだろう。

「ご主人様。デモンの気配が消えました」

「ギレザムたちが囲んできていたからな。とすれば逃げた先は一つだ」

そう言って俺は洞窟を指さした。次第に雨足が弱って来ると共にレインニードルの攻撃が止み始める。やはり山の天気は変わりやすい。

「全隊! 洞窟前に集結せよ!」

俺の号令で、全員が洞窟の入り口に集まる。唐突に日光が差し始め、レインニードルの攻撃が無くなった。

「ナンバーズ! 怪我人はいるか!」

するとファーストが答えた。

「おりません!」

「よし! お前達の竜人化はいずれ解ける。次に土砂降りが来た時は厳しくなるだろう。敵は恐らくそこの洞窟に逃げ込んだと思われる! お前達は洞窟の入り口付近で待機だ!」

「「「「「「「「「「は!」」」」」」」」」」

「総員! 基本武装の確認! 弾丸の補給のある者は来い!」

するとほぼ全員が俺の所に来て、補給用のマガジンを手に入れた。

「さてと」

するとギレザムが俺の側に来て言った。

「ラウル様。入りますか?」

「罠だろうか?」

「その可能性もあるかと」

「だが良くよ、ここまで来てみすみすデモンを逃したくない」

「は!」

話は決まったので、俺はすぐさまファントムを呼びつける。

「ファントム! お前が先を行け、ラーズとスラガはその後に! ギレザムは左翼を、ガザムは右翼を! ゴーグは殿を頼む!」

「「「「「は!」」」」」

「アナミスとカーライルは俺から離れるな。シャーミリアは護衛を頼むぞ」

「かしこまりました」

陣形を組んで俺はナンバーズに伝える。

「万が一ここに他の敵が来た時、竜人化薬がきれていたら迷わず狼化薬を飲め! そして全速力で山を降りて森に逃げ込むんだ!」

「「「「「「「「「「は!」」」」」」」」」」

ナンバーズたちをそこに置いて、俺達十人は洞窟の中へと侵入していくのだった。

「全員気を緩めるな! 敵はすぐ近くにいる!」

「「「「「「「「「は!」」」」」」」」」

隊列が奥に進んでいくと、洞窟内が暗くなってきた。

「カーライル、これを」

唯一人間のカーライルに俺は暗視ゴーグルを渡した。騎士の格好をしたカーライルが、目にだけ暗視ゴーグルを装備している。もちろん魔人達は暗闇でも夜目が効くから問題ない。

「よく見えますね。ですが戦闘時は外します」

「そういえば、カーライルは無い方が戦えるんだっけ?」

「ええ」

変な人間。だけど心強いな。

進んでいる間に俺は魔人達の装備を点検していく。ギレザムとガザム、ラーズ、スラガ、は乗っていたグリフォンから外して来た、12.7㎜M2重機関銃を持って進んでいる。ゴーグにはシャーミリアと同じM240中機関銃を装備させた。アナミスにはH&K MP5A3サブマシンガンを渡す。

洞窟の中は静まり返っており、中にデモンが潜んでいる気配はない。だが間違いなくいる。俺達は警戒値を最大にして進むのだった。