軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第82話 魔人の決起

俺はダークエルフの狩りの日は彼らと行動を共にしている。

ビッグホーンディアの毛皮を貫通出来ない己の非力さを克服するために、起床してすぐにランニングと筋トレをすることにした。ダークエルフと狩りの日、セイラたちと漁の日以外のルーティーンにほぼ変化がない。トレーニング、配下と乱取り、城内巡回、戦闘訓練、正直過密スケジュールなのだが・・毎日がめっちゃ楽しかった。

「欲張りすぎだろうか・・?」

俺はぽつりとつぶやいた。

俺は前世でサラリーマンをやっていたのだが、サバイバルゲームの為に朝晩はランニングと筋トレを欠かさなかった。休日になれば全てサバゲに時間を使っていた。休みというものはそういうものだった・・ところがこの世界では、毎日がサバゲをやっているようなものだ。言ってみれば俺にとっては毎日が休日だった。

とにかく体力があり余っている、そして最近は滅茶苦茶大量に飯を食うようになってきた。

3ヶ月が過ぎだいぶ体は鍛え上げられてきたように思える。目に見えて筋肉の量が増えた。

「最初の雪中行軍の時は、いきなりすぎたんだな・・」

しみじみと最初のラーズとの雪中行軍を思い出す。あの時は魔人に覚醒してもいないのに自分の力を過信して、遭難して死にかけてしまった。どうやら俺は常に強いわけではない、召喚武器を使用して死闘を繰り広げている時だけ力が覚醒するようなのだ。普段は11才にしては青年くらい力がある子供だった。まあ山での訓練はだいぶ底上げになったので、やっておいてよかったと思う。シロも仲間になったし。

夜になって俺はマリアと一緒に、闘技場に向かって廊下を歩いていた。

あと最近気になることは・・城内巡回をすると、女の魔人達が俺を見ているような気がする。気のせいだと思うんだが・・

《今も、場内を歩いているけど、なんか視線を感じるんだよなあ。》

「見られてますよね・・」

マリアが俺に話しかける。

「やっぱり?やっぱ・・そうか・・そうだよなあ。」

その廊下ですれ違う女の魔人達が俺を見ている気がするのだった。マリアも見ている事に気が付いたらしい、俺の認知度が上がってきたのかもしれないなあ。毎日の巡回が効いている?

《なんでだろな。》

闘技場の前に着く。

ガヤガヤ

闘技場から大勢の話し声が聞こえた。

俺が中に入っていくとピタッっと話し声がやんだ。シーンとした場内に入っていく・・

《なんか、緊張するなぁ・・》

というか・・想定していたより人数が多い。いったい何人いるんだろうか?中央付近にシャーミリアが待っているのでそこまで歩いて行く。

「シャーミリアご苦労様。」

「ありがとうございます。私奴に労いの言葉など不要にございます。」

すっごく有能な秘書なんだけど謙虚すぎる・・。まあいいかシャーミリアはずっとこうだし。

「ところで何人集まったんだ?」

「119名です。」

「ずいぶん集まったな。」

「ラウル様の配下9名、セイレーン5名、ハルピュイア5名、サキュバス5名、ゴブリン隊長5名副隊長格10名、ダークエルフの隊長と副隊長と兵士10名、オークの隊長ガンプと副隊長とその部下10名、スプリガンの隊長ニスラと副隊長と部下10名、オーガ隊長ザラムと副隊長とその部下10名、竜人の隊長ドラグと副隊長と部下10名、ライカンの隊長マーグと副隊長と部下10名、ミノタウロスの隊長タロスと副隊長と部下10名、スライムのルフラ、アラクネのカララ、そしてファントムにございます。」

シャーミリアが一気に読み上げた。

「えっと、ちょっと聞いていいか?」

「はい」

「ゴブリン、ダークエルフ、オーク、スプリガン、オーガ、竜人、ライカン、ミノタウロスのそれぞれの隊長がいるということは、ルゼミア王配下の階層ごとの種族が集まったということか?」

「上から順番通りに読み上げました。さらに精鋭だけが集まっております。」

「やっぱりそうなんだ。えっと・・セイレーンとハルピュイア、サキュバス、スライム、アラクネは隊を持っていないのか?」

「セイレーン、ハルピュイア、サキュバスに兵士はいません。アラクネにも兵士はおりませんが、アラクネの子供たちの数は魔人の中で一番多いかと、アラクネの子供たちは魔人ではなく魔獣に該当します。スライムは唯一知能を持っているのがルフラで、通常のスライムは言葉を話したり理解しません。」

《そうか、セイレーン隊とハルピュイア隊はない・・海軍と空軍が無いか。人間とは2000年以上戦争していないんだもんな、海軍や空軍は不必要だったんだろう。俺の予想だが、セイレーンとハルピュイアはおそらく魔人軍団の虎の子となるだろうな・・》

サキュバスも政治的な心理戦や情報戦を仕掛けるには強大な戦力だ、きっと政治戦争を吹っかける事など魔人はしてこなかったんだな。国交が活発になったら絶対的な力を発揮しそうなんだが。

「ドワーフに隊はないのか?」

「はい、ドワーフは物づくりの達人ゆえ戦場に出る事はありません。」

「なら今度、俺の武器を見てもらい少しでも、メンテナンスや製造技術向上に役立ててもらわないとな。」

「はい。それではそちらの件も手配しておきましょう。」

シャーミリアがドワーフとの話し合いの場を設けてくれるらしい。とりあえずそれは後日。

「じゃあ始めようかな。」

俺はみんなの前の方に進んで振り返った。上手くいくといいなあ・・とりあえず前世のプレゼンといえば・・りんごマークの会社のあれだ、あれをイメージしてやってみよう。

「こんな夜に集まってくれてありがとう。」

身振り手振りを交えて話しはじめる。みんなシーンと静まり返って次の言葉を待っていた。

「ルゼミア王から聞いていると思うが、俺は王の息子となった。俺は半分魔人でガルドジンの血をひいている、だが俺は・・人間程度の力しかない。ただし俺は皆を強化する力を持っている!皆を強化する兵器を召喚する事が出来るんだ。その兵器とは銃というものだ。剣や槍、弓矢などとは比較にならない破壊力を持つ。明日はそれを使って訓練しようと思っている。全員が共通の認識でいると思って間違いないか?」

「「「「「はっ!」」」」」

119名が一斉に返事をして闘技場が地鳴りをあげる。荒くれの跳ねっかえりとかいないんだな。ルゼミア王の統率力というか系譜の力が絶対なんだろう。そして・・さすがシャーミリアしっかりと共有がかかってる。

「そして、これから先の戦い方は、おそらく今までの戦い方とは違う認識になっていくと思う。」

みんな集中して聞いているようだ。

「これからみんなに訓練をしていく戦い方っていうのは、極力死なない戦い方だ。」

「極力死なない戦い方・・」

「どういうことでしょう・・」

「戦いに死はつきものでは?」

ザワザワザワと騒ぐ。

「アルガルド様が話されておられる!お静かになされよ!」

シャーミリアが皆を鎮めさせる。

「みんなすまない。いきなりでよくわからないと思う。この国に来るまで魔人と一緒に戦ってきて分かったんだが、みな自分を犠牲にして主を守りすぎるということなんだ。」

「お言葉ですが!ラウル様それは当たり前では!?」

一番の部下であるギレザムが口をはさんできた。《よしよし打ち合わせ通りだ!ギルも役者よのう・・》シャーミリアも打ち合わせ通りなので黙っている。

ザワザワザワ

「あーそうだね。ギレザムは俺を守るために命かけたっけな。確かにそれをしなくても良いって事じゃないんだ。軍隊は国や本部、主を守るのは当然の事だからね。でも死なないって事は大事な事なんだよ。」

「はい。」

また魔人達が静かになって聞き耳を立てる。

「みんなの武器は近接戦闘が主体となったものだ。剣に槍、斧、かぎ爪、噛みつき、殴打などほぼ肉弾戦をメインとした戦い方だよな。唯一竜人が炎を吐くが、それも遠距離に飛ばずには射出速度が遅い。それだとどうしても自分の身を相手の攻撃範囲にさらす事になるんだ。」

「お言葉でございますが!我々は魔法が使えませんのでそれは当たり前の事です!?」

ガザムが俺にそんなことも知らんのか?っといった風にツッコミの演技をする。ガザムも演技がうまいなあ・・前はこんなキャラじゃなかったのに。

「そうなんだよ。そこでだ!この俺が召喚する武器を使って、安全圏から戦いを進める方法を教えていこうと思う。」

「ええーっ!そんなことが!できるんですかぁ?できるんだったらすごいなぁ!」

・・・おいおい!ゴーグ!お前!演技下手すぎんだろが!

「コホン。それでだ!近寄らずとも相手を殺害する方法を今日から教えていく!」

「それでは・・卑怯というものではないですかな?」

ミノスがうまく合いの手を入れてくる。ああ、こいつもなかなかの役者だ。

「いや!卑怯などではない!そもそも人間は罠を使い、時には拷問などをして相手を陥れる事だってある。また人間の軍隊は統率がとれており、無秩序に動く魔人達よりもかなり強い。大陸では我々の仲間が、人間の軍隊や冒険者にあっというまに殺されているんだ。」

「ええ・・そんなことが・・」

「人とは相まみえないというが・・」

「人間はなぜ我らの仲間を殺すんだ。」

ガヤガヤガヤガヤ

そうだよな。いままで魔人同士での戦いしかした事なかったんだもんな。魔人の国に住んでたらそんなこと知らないよなあ。事前にシャーミリアに調査してもらったら、2000年前の人魔戦争の前に生まれた者はほとんどいない。ルゼミア王、シャーミリア、アラクネのカララ、託児所のエキドナ、の4人しかいないそうだ。そして彼女らは人間の事を魔人達には語らない。

「お静かに」

シャーミリアがまた鎮めた。

「そう、いま俺達は魔人の国であるグラウスに生きている。しかし魔人は昔、大陸にいたんだよ。その大陸に残った仲間の子孫がいるんだが、彼らはその生活を人間に脅かされている。」

「そんな・・ひどい‥大陸に住む仲間が・・」

セイラが言葉をつまらせながら言う。よし!主演女優賞はセイラに決定しよう。

「ほんとだよな・・みんなはどう思う?」

「まったく・・許せませんな!」

ラーズが俺の言葉を肯定するように力強く言い放つ。

なんか俺の配下たちは・・順応力が高いというか、イオナに頼んだ演技指導だったが、イオナはどんな風に彼らに仕込んだんだろう?いまだにカリスマ性を発揮し続けているイオナに、ちょっとした尊敬と不安を感じたりする。

「だから俺はこれから時間をかけて仲間たちを救出していくため、グラドラム以外の人間の国とも国交をはじめて行こうと思う。それに先駆け俺はルゼミア王から特別大使として任命された。それについて異議のあるものがあれば言ってきてくれ。ここで言えなくても後から俺に伝えてくれてもいい。」

どうかな・・ここまでが俺達のしかけた演技、まあ茶番かもしれないが・・魔人のみんなはのって来てくれるのか?

ドキドキ

すると、ミノタウロスの隊長のタロスが言う。

「ルゼミア王のお墨付きであれば是非もない。仲間を救いたい気持ちは皆変わらぬと思います。」

タロスの言葉を受けてライカンの隊長のマーグが言う。

「まったくです。この世ではみなに生きる権利があると、ルゼミア王も教えてくださいました。大陸の仲間たちも生きる権利がある!」

すると口々に皆話をしだした。

「そうすべきではないのか?」

「解放してやらねば。」

「方法はあるのか?」

「一気に攻め込むのは?」

ガヤガヤガヤガヤ

《よし!のってきた》

「あー、みんなありがとう!そうだよね、大陸の魔人達にも生きる権利があるよね。でも一気にやるのはよしておこう。先に人間がどんな戦力を持っているのかを知る必要がある。みんなは魔法をほとんど知らないよな。」

「どうやって人間を知りましょう?」

サキュバスのアナミスがあいの手をいれる。

「人間の大陸に潜入して調査を始めようと思う。すでに俺はルゼミア王の特別大使として任命されている。ある程度の人選は決まっているのだが、本土の防衛の要である隊長格が抜けてはいけない。シャーミリアがある程度の人物を選出しているので協力してほしい。」

「「「「は!」」」」

一緒に調査しに行ってくれるものには、あらかじめシャーミリアから連絡をしてある。

「では発表する!」

するとシャーミリアが俺に紙を渡してくる。

「まずは俺の配下からギレザム、ガザム、ゴーグ、スラガ、アナミス。ダークエルフ副隊長ダラムバ。ライカンの副隊長ジーグ。スプリガンの副隊長マズル。ゴブリン隊長のティラとタピ。スライムのルフラ。ハルピュイアのルピア。そして人間のマリア。シャーミリアとマキーナ。ファントムは俺の護衛としてつれていく。」

「「「「は!」」」」

「大陸に渡ればしばらくはグラウスには帰ってこれない、日時等の連絡はおって通知を出す!」

「「「「は!」」」」

「ちなみに選ばれたものは人間の国に行くまでの間、特殊訓練に参加してもらう予定だ。」

「「「「は!」」」」

連れていく人員の基準は単純だった。見た目が人間に近い事、フードなどをかぶって誤魔化せばほぼ人間に見える事だ。魔人が大陸に行くと目立つためのカモフラージュ人選だ。

「それじゃあ、明日の朝イチから射撃訓練を行う、指定した訓練場に遅れないように集合するように!以上だ!」

「「「「は!」」」」

すでにオーガ3人衆やシャーミリア、ラーズから聞いていた武器に、魔人達は興味津々だった。

決起集会は無事成功に終わった。