軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第807話 よく分からない存在 ~ギレザム視点~

我々は先行してモエニタ国の深部まで進んで来た。ここまでいくつかの村を確認してきたが、デモンの気配はなく転移魔法陣も見当たらなかった。だがこれ以上、無防備に進むのは得策ではないと判断する。ラウル様から下賜いただいたM93・フォックス戦闘車両の燃料も三分の一となり、積載している燃料を入れても来た道を半分戻れるかどうかという状況となった。

まあラウル様からは戦闘車両などいくらでも召喚するから、不要になったら破壊してくれと言われている。我々の足であれば、同じ速度で走る事も出来るのでその辺りは問題ない。だが積載されている兵器を全部外して、我らに下賜いただいた銃火器も全て持って行くとなるとそうもいかない。

車両を停めて、我とガザム、ゴーグ、ティラ、アナミス、ルフラの六人が後部座席に集まりどうすべきかの意見を出し合っていた。我がゴーグに聞く。

「ゴーグは匂いがしたのだな?」

「うん。恐らく人間以外の匂いだと思う、デモンか火の一族か分からないけど」

「ならばこの位置で待機するか、少し戻ってラウル様を待つかと言うところだな」

「今、念話繋がらないよね?」

「先ほどまでは気配がしたのだがな、次期に連絡がつくはずだ」

我がゴーグの情報を聞いて皆にそう告げる。するとガザムが我に言う。

「この場合、俺は総大将であるギレザムが決断を下せばいいと思うがな」

すると他の魔人たちも同意して、ティラが口を開いた。

「あたしもそうだと思う。感じるか感じないかの気配を感じ取ったくらいで、わざわざラウル様にお伺いを立てなくてもいいんじゃない?」

「だが我は、皆の命を預かる身だ。お前達に何かがあったらラウル様に申し訳が立たん」

するとアナミスが言う。

「あら、危険を察知したのなら後方に下がってしまえばいいんじゃない?」

「そのくらいはラウル様とも相談済みだ。かなり深部に来てしまっているし一度、昼頃に過ぎた村のあたりまで戻って様子を見る事にした方がいいのではないだろうか?」

するとゴーグが手を上げて皆に告げた。

「俺はギルに賛成。なんかおかしな匂いがするし、そうすべきだと思う」

「そうだな。なら俺が偵察に出て確認してこよう。皆は先の村まで戻り拠点を作ればいい」

ガザムが言うとティラもそれに同意するようにいった。

「ガザムが行くなら、あたしも行った方がいいかも」

「隠密が得意な二人が偵察に出るのは妥当なところか」

「なら決まりだな」

ガザムが言い皆が同意して頷いた。

「我々は先の村の北東の森林部に拠点を置く。正体不明ではあるが敵である可能性が高い。ガザムとティラはそいつを見つけたら、手を出さずに必ず我に伝えてくれ」

「そのつもりだ」

「そのつもりよ!」

「行け!」

するとガザムとティラは後部ハッチから外に消えていった。俺達は後部ハッチを締めルフラが運転席に移る。そのままM93・フォックス戦闘車両をUターンさせて、来た道を戻り始めた。ゴーグが感じたという気配の正体を掴むまでは容易には動けないだろう。村の東側の草原を北に進むと、俺達が想定していた森が見えて来た。高い木々がそびえており深くて隠れるには丁度良い森だった。

「車を隠そう」

「そうだな」

我らは倒木や葉をあつめ、M93・フォックス戦闘車両にかけ始める。そう時間はかからずに車両を隠す事が出来た。俺達は森に入り車両が見える位置に位置取りする。

「総員、銃火器を携帯して周囲を警戒。ゴーグは先に飯を食え」

「わかったわ」

「了解」

「うん」

そしてゴーグがラウル様より頂いた缶詰を開けて食べ始める。我とルフラがゴーグを中心に左右に分かれ、アナミスが木の上に飛んで周囲の警戒をした。そして我はガザムに念話を繋げる。

《どうだガザム》

《今の所、異常なしだ》

《了解。ティラはどうか?》

《こっちも何もない。なにかはっきりしないモヤモヤはあるけど》

《きっとお前達の直感は正しい。二人とも警戒して事にあたれ》

《《了解》》

ゴーグが感じた気配は、我も含め全員が多少なりとも感じていた。だがその正体が分からずに困っているのだった。デモンであれば交戦するつもりだったが、火の一族となると分が悪い。恐らくは我に新しく備わった力で押し切る事は出来るかもしれないが、他の者が対応できないだろう。我はガザム、ゴーグ、ティラ、アナミス、ルフラの命を預かっている。彼らが対応出来ないようなら迷わず撤退するつもりだった。

そして陽が落ち、あたりを闇が包んでいく。我らの周囲には特に脅威になる気配はない。あとはガザムとティラだが…。念話が飛んできた。

《ギレザム》

《どうしたガザム》

《俺とティラが反応を捉えた。それは西に移動しているようだ》

《デモンか?》

《それが…デモンでも火の一族でもない》

《なんだ?》

《分からんが、姿形は女のように見える》

《どこに向かっているんだ?》

《このまま追跡する》

《気とられるな》

《問題ない》

どうやらガザムとティラが何かを捕捉したようだ。デモンでも火の一族でもないとすると、一体なんだ? 俺は皆に合図をして一か所に集まるように言った。ルフラが近づいて来てすぐに言う。

「デモンでも火の一族でもない? でも人間じゃない?」

「そう言っていたな」

するとアナミスが言った。

「獣人かエルフか、私達のような魔人とは考えられないかしら」

「それならおおよその気配で分かるだろうが、ただし他にも違った種族が居ないとは限らない。あまりにも強大な力ならば龍族かもしれないが、それならば我が既に感じ取っているだろう。とにかく警戒しつくして丁度良いくらいだろう」

「わかったわ」

そして我らは夜の森でガザムとティラからの念話を待つのだった。南の森は北とは少し様子が違い、木々の形状などが変わっていた。魔獣はこちらの地域の方が危険なものが多い気がするが、我々の戦力をもってすれば何も問題が無い。そしてもう一つ、空に浮かぶ星が北大陸とは全く違う。北の星ならばそれを見ただけで、方角が分かったのだが南はそれが分からなかった。ラウル様より下賜いただいた、コンパスと我々の方向感覚だけが頼りだった。

退屈しているゴーグがポツリと言う。

「俺、狩りしてこようかな?」

「やめておけ。いつガザム達から念話が繋がるか分からん」

「そうだよね。暇だし腹減ったから言っただけだよ」

「もう少し待て」

「うん」

腹が減っている状態でゴーグが戦うと、狂暴性が増し手加減が効かなくなる。相手がデモンならいいが、火の一族だと大きな怪我をしてしまう可能性があった。我は次の食事の缶詰を数個だけ、ゴーグに放り投げる。

「ありがとう」

それを受け取ったゴーグは、すぐに食べ始めるのだった。するとガザムから念話が入る。

《ギレザム》

《どうなった?》

《女は森の中の小屋に入った。灯が灯りそこで暮らしているように見える》

《森の中は安全なのか?》

《いや、魔獣は普通にいた。だが女は平気そうに森を抜けて小屋に入った》

《位置は覚えたか?》

《もちろんだ》

《よし。ガザム、ティラよくやった。それが敵か味方か分からんが、位置がつかめたのなら中間地点で合流するとしよう》

《《了解》》

ガザムとティラから返答が来た。

「よし! 再び動くぞ、ガザムとティラを拾って拠点を変える」

「「「了解」」」

そして我らは再び車両に乗り南へと進み始め、ガザムとティラと合流して車を草原地帯に隠すのだった。我が二人に聞く。

「相手に気づかれてはいないか?」

ガザムが答えた。

「問題ない」

「して、それは何だった?」

「分からない。姿形は人間の女だったが、人の気配は少しもしなかった」

するとティラも言う。

「なんていうか…、感じた事のある気配とも言えるかも」

「どういうことだ?」

「それが良く分からないの」

「そうか」

二人が分からないのなら、直接接触して正体を暴くしかないが…危険ではないだろうか? デモンや火の一族以上の存在と言う事も考えられる。我々で歯が立たないどころか、逃げ切れない存在ならかなり危険だ。

ガザムが我に聞いて来る。

「どうするんだギレザム?」

「さすがに報告は必要だろう。夜明けまでラウル様との連絡を試みてみよう」

「そうだな。わかった」

そして我々は車両の中でラウル様と念話が繋がるのを待った。だがそれを待つ前に異変が生じてしまう。

「これは…」

「ああ…」

「デモンだね」

「そうみたいね」

「どうする?」

皆がデモンの気配を感じ取ったのだ。それはガザムとティラが先ほどまで潜入していた森の方角からだった。結構な数がいるが火の一族のような脅威は感じ取れないようだ。

我がガザムとティラに言う。

「敵に火の一族は居ないようだ。そして気配の流れからすると、お前達が見つけた女のもとに走っているように思えるが」

すると皆が頷いた。だがアナミスがポツリと言う。

「その女。万が一、私たちの同類だったらどうする?」

「…そうだな…」

ラウル様ならば恐らくすぐには動かず調査をするだろう。自分の味方ならば絶対に助けるというだろうが、見知らぬ人物に対しては急ぐ事はしない。ならば我も同じことをするまでだ。

「確認せねばなるまいな」

「行くのか?」

「ああガザム。その小屋まで皆を案内してくれ」

「了解だ」

「全員装備を装着せよ! だがくれぐれも偵察が目的だ! こちらからデモンの群れに攻撃をするな!」

「「「「「了解!」」」」」

そして俺達は草原にM93・フォックス戦闘車両を隠し、ガザムとティラが目撃したという小屋のある森に潜入するのだった。全員がラウル様から下賜いただいた兵器を装備している。

《どうやらデモン達は我々に気づいていないようだが、上位のデモンが居ないのか?》

《ああギレザム。なにか殺気立っているようにも感じるな》

《そのようだ。一体なんだ?》

《私が上空から監視するわ》

《分かったアナミス、気をつけろ!》

そしてアナミスは機関銃を構えたまま、森の木々の上に飛びあがった。

《ギレザム》

《どうだ? アナミス》

《どうやらガザム達が見つけたという小屋を、デモン達が取り囲んでいるようよ》

《そうか、戦闘は?》

《起きていないわ。デモン達は小屋の柵の中には入って行かないみたい》

《了解だ。皆、一旦我の元に集まれ!》

《《《《《了解》》》》》

恐らくデモン達はその小屋の中に潜む女に用があるらしい。するとティラが突拍子もない事を言い出すのだった。

《ガザム。なんか、ラウル様達に似ている気がしなかった?》

すると語り掛けられているガザムが答える。

《はっきりとは言えんが、遠くは無いかもしれない》

《どう言う事だ?》

《なんていうか、雰囲気が似ている感じがしたの》

…なるほど。だがそんな不確定な要素では判断できない。デモンの後ろに火の一族がいるかもしれないし、それ以上の存在がいたら取り返しがつかない。だがもしラウル様たちの世界から来たような存在なら、ラウル様は助けると言う可能性がある。

夜の闇は更にさらに深くなり、我らは闇に紛れて行動開始するのだった。