軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第719話 誰が企てた?

なんと偶然にもアウロラは、オージェ達と同じ飛行機に乗っていた。それを聞いた俺達は一瞬言葉を失ってしまう。しかし、それは偶然だったのか?

「もしかしたらアウロラちゃんがたまたま居て、巻き込まれちゃったんですかね?」

グレースが口を開くと、俺達は堰を切ったように意見を出し始めた。

「どうだろうな。座席が近かったとか?」

「それなら他にも人が居たと思いますよ」

「知らんうちに誰かがどこかに転生してるんじゃないか?」

「ありえる。光柱で転移して来た奴らもいるくらいだから」

「今まで、そんなやつ一人も巡り合ってないぞ」

「それもそうだ」

「名乗り出ていないだけかもしれません」

「やはり俺達とアウロラしか転生してないって事じゃないか?」

「わからん」

「「「「うーん」」」」

俺達が謎についてあれやこれやと騒いでいるが、アウロラだけが取り残されていた。

「あ!」

騒ぐ俺達を傍らから見ていたアウロラが、いきなり声をあげた。

「なになに?どしたどした?」

俺がアウロラに尋ねる。

「デジャヴュだわ!」

「デジャヴュ?」

「今のお兄ちゃんたちが騒いでいる光景を、見たことがある!」

「そうなのか?」

「確かに見たわ!」

そんなわけはなかった。俺達がアウロラの前に集結したのはこれが初めてだ。

アウロラが、急に黙ってボーっとし始めた。

「アウロラ?」

「しっ!」

俺が話しかけようとしたら、アウロラが口に人差し指を立てる

「「「「……」」」」

今度は俺達四人が口を閉ざす。アウロラが次に発する言葉を静かに待つのだった。しばらくすると、アウロラが俺達の方を振り言う。

「見たの!」

「なっなにを見た?」

「テレビ!」

「テレビ?前世のか?」

「うん!」

「何を見たんだ?」

「サバイバルゲームで発砲事件があったって言うニュース!アメリカにいる時テレビで見た!」

「そうなのか!?」

「うん!」

マジか。アウロラはサバゲでの射殺事件をニュースで見ていたようだ。なぜか、それをたった今思い出したらしい。デジャヴュと何か関係があるのだろうか?

「今思い出したのか?」

「うん。デジャヴュを感じたら、思い出したの…」

「こういうの初めてか?」

「ううん違う。初めて前世の記憶が戻った時も、こういう事が起きたの」

なるほど。アウロラにとってのデジャヴュは、記憶を呼び覚ますカギになっているのかもしれない。もしかしたらそれもアトム神の能力なのだろうか?

「それでグラドラムから、俺の所に来たんだっけ?」

「うん…」

アウロラがまた物思いにふけるような表情をした。

「テレビでそのニュースを見ていたら、何故か他人ごとに思えなくなってきて。たぶん被害者が日本人だからだったと思うけど、とにかく目が離せなくなって…」

「うん…」

「天啓…」

「天啓?」

「しっ!」

またアウロラが人差し指を口に持って行き俺の言葉を止めた。どうやら俺はアウロラの邪魔をしているようだ…静かにしておこう…

「釘付けになってテレビを見ていたら…」

「見ていたら?」

「誰かが私に 囁(ささや) きかけたの」

「友達とかか?」

「違うわ。一人で部屋にいる時だもの。ホームステイ先で借りている私の部屋でニュースを見たの」

「一人の時に囁きかけられた?誰もいなかったのか?」

「分からない。でもなぜかやたらリアルで、頭の中に直接囁かれているような気持ちだった」

「何て囁かれた?」

「すぐに日本に帰れって…。でも急にそんな言葉が浮ぶだなんておかしいでしょ?飛行機のチケットだってないし、すぐには帰れないと思ったの。ホームステイ先の親御さんにもいきなり言えないから」

「確かに。そんな戯言、信じないよな。じゃあ帰らなかったのか?」

「ううん。帰ったわ、だって急にチケットが送られて来たんだもん」

「チケットが送られて来た?誰から?」

「分からない。わからないけどその日中に手紙が届いて、航空チケットが入っていたの。お父さんお母さんが私を呼んだと思って、急いで荷物をまとめて留学先から帰国しなきゃって思ったわ」

「怪しいとは思わなかったんだ」

「というよりも、むしろ私自身が行かなきゃって思った」

「「「「……」」」」

俺達四人は数奇なアウロラの出来事に言葉を詰まらせる。アウロラの身に何かが起きたのは確かだったが、まるで誰かに仕組まれたかのように、見えない意志が働いているように思えたのだ。

「ふぅ…」

俺は一息ついて、ペットボトルの水を全部飲み干した。それにつられて全員が水を飲む。想定外のアウロラの話に頭がついて行かない。

「で…乗った飛行機が落ちたと…」

「うん」

…てことは、アウロラは巻き込まれたんじゃない。こっちの世界に来るべくして、オージェ達と同じ飛行機に乗ったと考えて間違いないだろう。

「あの…」

グレースがポツリと声を出すと、皆が黙ってグレースを見た。

「もしかしたらですが…いや…違うか…」

「なんだグレース、気になる事があるなら言ってみろよ」

「あの、アウロラちゃん。気にしないでほしいんだけど」

「何を?」

「今から僕が言う事」

「うん」

アウロラがコクリと頷いて身構える。俺達も身を乗り出してグレースが何を言うのかを待っていた。

「仮説だけど…もしかしたら、アウロラちゃんが巻き込まれたんじゃないと思う」

「それはどういうこと?」

「巻き込まれたのは、俺達?」

「……」

アウロラも俺達もグレースの言う事に息をのむ。

「アウロラちゃんをこっちの世界に呼ぶために、誰かがわざと飛行機を堕としたんじゃないだろうか?」

「誰が?」

「もしかしてだけど、それはアトム神じゃないかと思わない?」

グレースが言うが、俺はいまいち腑に落ちなかった。

「まってくれ、グレース。この中で一番最初に死んだのは俺だぞ、なら最初に死んだ俺が皆をひっぱったと考えるのが妥当じゃないか?」

アウロラは俺の死後に天啓を受けている。だとすれば、俺が先にこちらに呼ばれているという事になる。その後に誰かがこちらに呼んだと考えるのが筋だろう。

「確かにそうですね…、忘れてください」

「待てラウル、グレース。そう言えばアトム神が言っていた言葉を思い出した」

エミルは俺達の会話から、何かを思い出したみたいだ。

「なんだ?」

「アトム神は、アウロラを守らせるためにラウルをユークリットに遣わしたって事を匂わせてなかったか?」

「言ってた、確かに言ってた…」

そういえばアトム神はそんなことを言っていた。そしてユークリットの女神であるイオナと、生まれたアウロラの事を気にかけていた。彼女らに会うのが楽しみだとかなんとか…

俺はアトム神が話していた一字一句を思い出してみる。

「なんか、先代の魔神と約束したとかそんなことを言っていたような…」

「神様同士の約束事なんじゃないのかね?」

「それが履行されたと?」

「そんな感じじゃね?」

エミルの言う事にも一理ある。

「だがそれだと、あらかじめ敵が攻めてくるのが分かっていて、それに合わせて赤ん坊の俺がユークリットに預けられた事になる。赤ん坊の頃に、そんな運命が決定づけられていたって事か?」

俺がそう言うと、今度はオージェが話し出した。

「…実はな、俺は龍族の間では運命の子と言われていた。なにが運命の子かも分からなかったけどな。とにかく俺は勝手に大陸に来たんだ、自らそれを決めて実行した。もしかしたら、それも神々の間で運命づけられていたってことかね?」

なるほど。オージェは自らの意志で大陸に来たのであって、それが運命だったのかといわれると違うような気もする。その言葉を受けて今度はエミルが話す。

「だとすれば、俺の一族や母さんが殺されたのも神が決めた運命なんだろうか?」

エミルも俺と同じように、敵に攻められて肉親を殺されている。アウロラだってそうだ、父親の顔さえ知らないのだ。それが決められていた運命だとしたら、こんなに悲惨な事は無い。

「僕は、砂漠から卵が飛んで行って孵化しました。そして奴隷商に拾われて奴隷になった。その後何故かバルギウスに拾われ、あれよあれよという間にバルギウスの二番隊隊長になったんです。そうしているうちに、ラウルさんと再び出会い魔人軍に合流した。こんな人生数奇すぎて、神様がいたずらしたと考えてもおかしくはないです」

それもそうだ。そんな素っ頓狂な人生があってたまるかって感じがする。グレースの人生はまさに神が仕組んだものと言ってもおかしくはないだろう。

「あの…結果私は、守られるべくして守られたって言う事?」

アウロラが、なかなか見えない話を理解しようと質問してくる。まあおおむねそういったところだろう。

「俺はそうだと信じているよ」

「お兄ちゃん…」

「俺はアウロラが生まれる前から、お前を守る事が決められていたと考えるとしっくりくる。もちろんそれは俺の勘違いかもしれないがな」

「決められていたんだろうさ、もちろん勘違いかもしれん。俺達もな」

オージェが肯定すると、他の三人もコクコクと頷く。

「もとい」

グレースが話し出した。

「アウロラちゃんが巻き込まれたとか、僕たちが巻き込まれたとかじゃなくて、全員が巻き込まれたような気がしてきました。受体した神々がそれぞれの後継者を選んだのかもしれませんよ」

それが一番しっくりくるような気がする。偶然などとは考えにくい。俺は結果的に、あの幼少期のユークリット王国からの過酷な逃亡から、いままでずっとアウロラを守り通し続けている。それは神の思惑通りに進んでいるとみて間違いないだろう。

「ただ…」

「なんだラウル?」

「そのむかし、敵が北の大陸に侵攻してくる、ずっと前から侵攻作戦は進められていたはずだ。それこそ俺がこの世界に生まれる前からな。ということは敵にも、俺達が現れる事をあらかじめ知っていた奴がいた事になるな。それがアブドゥルってやつなのかね?」

「デモンの手先か?」

「そうだ。デモンが俺達が生まれるのを察知して、何十年も前から仕込んでいたって事も考えられるぞ」

「そうなるな…」

今の議論で皆がだんだんと気が付いて来た。この戦いの裏側の存在に…

「この戦いは人間対デモンではなく、最初っから神々対デモンの戦いだったのではないだろうか?」

俺がそう言うとオージェが付け加えた。

「そうなると俺達全員が、神々とデモンの戦いに巻き込まれたって事になるだろうな」

「なぜ神は俺たち異世界人をこちらに転生させたのかね?」

「謎だ。一万年前の世代替わりの時はどうだったのか知りたいよ」

「まったくだ」

…しかしながら…ここまでの話は、あくまでも俺達の仮説にすぎなかった。俺達は先代の神々に説明を受けないまま今に至る。裏にそんな事実があるのかどうかも分からない。むしろ俺達に説明をしなかったのは、神々すら知らなかったからかもしれない。

「私知ってたかも…」

ポツリとアウロラが呟いた。

「デジャヴュか?」

「うん。今の結論を出すお兄ちゃんとオージェさんを見たことがある」

デジャヴュが起きたとなると、アウロラはまた天啓を受けたようだ。

「何を知った?」

「お兄ちゃんたちと私を呼んだのは」

「呼んだのは?」

「アトム神だわ」

「「「「マジか!!!」」」」

俺ら四人は一斉に叫ぶ。このアウロラの証言は、一切確証を得られるものではない。だがしかし、アトム神には危機を察知する能力があったのは確かだ。すべてを察知してその対策のために、俺達を呼んだ可能性はある。

そしてアウロラは、その力を発動させ始めているのかもしれなかった。