軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第691話 M1エイブラムスで行く

俺達はメリュージュの背に乗って一気に都市の中央へと飛んだ。空から見た都市内にはあちこちで煙が上がっており、戦闘は更に激しさを増しているようだった。地下の入り口に到着しメリュージュの背を降りる。地下入り口付近には誰もおらず、このあたりで戦闘は起きていないようだった。

「ご主人様!」

すると道向こうからマキーナが声をかけて来る。だが…マキーナは一人じゃなかった。

「マキーナ!!…大変だ…」

俺はマキーナが連れている人を見て絶句する。

「メリュージュ様が飛ぶのを、お見掛けしてお連れ致しました」

マキーナはボロボロに負傷しているサイナス枢機卿に肩を貸し、すぐ脇ではカーライルが剣を杖代わりにしてよろよろと歩いて来るのだった。

「枢機卿!大丈夫ですか!」

俺が駆け寄り枢機卿に肩を貸す。

「う、うむ。すまんのう…」

かなり弱っているようなので、そのままゆっくりと地面に座らせた。

「とにかくこれを」

俺はレーションからペットボトルの水を召喚して、蓋を開け枢機卿に渡す。枢機卿はペットボトルに口をつけてゴクゴクと水を飲み干した。

「なんじゃ!怪我をしておるでは無いか!なんの役にも立たぬのに気張るからじゃ!」

モーリス先生が怒りながら、懐からハイポーションを取り出して枢機卿にかけた。すると枢機卿は仄かに輝き傷が癒えていくのだった。

「馬鹿を言うな!ジジイがここにおらんから、わしが代わりにラウル君のために奔走しとったのじゃぞ!」

「ジジイにジジイと言われとうないわ!」

二人のいつものやり取りを無視して、俺はカーライルにハイポーションをかけてやりペットボトルの水を渡してやる。

「すみませんラウル様。転移者を保護し回っておりましたが、このざまでございます。どうやら都市内には、敵側の魔法使いが送り込まれて来ているようです」

「またか…」

また魔法使いを特攻させてきてるらしい…一体どこから集めて来るんだか…

「ご主人様、さすがにきりが無いかと。敵か味方かもわからぬまま、あちらこちらで魔法での戦闘がおきております」

「それじゃあ同士討ちの可能性もあるな」

「はい」

「ラウル様、私と枢機卿はマキーナさんに救われたのですよ」

カーライルが言う。

「そうか、よくやったぞマキーナ」

「当然の事でございます」

マキーナが俺に頭を下げた。

「敵の魔法使いに囲まれ、遠距離からボコボコにやられていましたから…もう少しマキーナさんが遅ければ枢機卿と私は死んでおりました」

「そうならなくて本当によかった」

「それよりもラウル君!なぜこのような危険な場所にアウロラちゃんがおるのじゃ!」

怪我が治って少し復活したサイナス枢機卿がアウロラを見て驚いている。アウロラも苦笑いをして枢機卿を見ていた。

「そう思われるのも無理はないです。私もここまで渋々連れてきましたから」

「渋々とな?ラウル君にしては珍しいのう」

「あの、おじいさん?」

アウロラが言う。

「なんじゃな?」

「おじいさんも一緒にきてほしいの」

「どこへじゃ?」

「この都市の地下へ」

「アトム神様のところへかの?」

「うん」

サイナス枢機卿はいまいち話が飲み込めていないようだ。もちろん俺も飲み込めていない。

「ラウル君、あまり悠長なことは言っていられないわよ」

俺達の頭の上からメリュージュが言う。あちこちでまだ戦闘音が聞こえ、そのたびに人が死んでいるのだ。確かに悠長なことは言ってられない。

「アウロラ、枢機卿はメリュージュさんに安全な所に連れて行ってもらった方が…」

こんなボロボロのおじいさんを、どうなっているかわからない地下に連れて行く訳にはいかない。

「ううん、いてもらったほうがいいの」

「どうしてもか?」

「うん」

アウロラの目が強く訴えかけて来る。

「それでは枢機卿。申し訳ないのですが、私達と一緒に地下へ入ってもらえますか?」

「わかったのじゃ、とにかくついて行けばよいのじゃな?」

「まあ、そのようです」

枢機卿はボロボロでどうにもならないが、アウロラが必要だと言うならば仕方がなかった。

「じゃあメリュージュさんは安全な所に!」

「馬鹿を言いなさい、この入り口を守らねば侵入されてしまうわ」

「ですが、もしメリュージュさんに何かあったらオージェに申し訳がたたない」

「そっくりそのまま、お返しするわね。もしあなたに何かあったら、イオナとルゼミア王に私はなんて言うのかしら?」

…確かに。イオナとは気まずい関係になるくらいだろうが、ルゼミアは何をするか分からない…ここで敵とやるよりもよっぽど怖い。

「すみません。ではここをお願いします」

「まあ安心して頂戴。私はこれでも龍神の母親よ、ラウル君が思うより強いと思うわ」

「わかりました」

メリュージュがこちらを向いて、何か表情を浮かべているが恐らく笑っているのだろう。だが、俺にはおっかない龍の顔にしか見えない…オージェになら見分けがつくのかもしれないけど。

「では!」

「ええ」

「マキーナも来い!」

「は!」

サイナス枢機卿もカーライルも顔色が悪いが、デイジー製のハイポーションで怪我はすっかり治ったらしい。すっくと立ちあがり俺達と一緒に行くつもりのようだ。

「地下も安全とは言い難い、アウロラはお兄ちゃんから離れるな!マキーナは三人の護衛を」

「ではわしは結界を張るとしよう」

「お願いします」

俺達が元礼拝堂の地下入り口から坂道を下っていく。地下は静まり返っているものの地上の戦闘の音が時おり鳴り響くようだ。最初の大広間を抜けて、更に奥の通路に通じる出口を出る。

「静かじゃの」

「はい。ここにいた者は全て地上で戦っています」

「急ぐとしよう」

「えっと、ちょっと待ってください」

「どうしたのじゃ?」

モーリス先生が聞いて来る。

「あまり時間がないので最短で行きたいと思います。そこでサイナス枢機卿にあらかじめ謝っておきたいのです」

「どうしたのじゃ?ラウル君」

「この地下道の道順はほとんど覚えているのですが、最短で行く方法があるのです」

「そんな道あったかのう?」

「道は…作ります」

「ふむ。何を言っているのか分からんのじゃが、とにかく急ぐのであろう?ラウル君に従うのじゃ」

「ありがとうございます」

えーっと。俺は道幅を図り天井までの高さを見る。

うん、天井は問題ないな。あと横幅も多少の余裕はありそうだ。じゃあさっそく…

俺は皆から少し離れた場所に歩いて行く。

ドン!

俺が召喚したのは アメリカ軍のM1エイブラムス戦車だった。通路的にはギリギリだが特に走れない事は無さそうだ。ターボシャフトガスタービンエンジンを搭載し1500馬力を叩きだす。主砲にはM256 44口径120mm滑腔砲、M153CROWSIIにより中から遠隔操作できる12.7mm重機関銃M2を対空兵器として、対人兵器としてM240中機関銃を搭載していた。

「すみません、4人乗りなのでちょっと狭いんですけど」

「ふむ!」

やはりモーリス先生はノリノリだ。先生がこんな厳つい戦車に胸躍らない訳はないと思った。

「わかったのじゃ」

ハッチをあけて、モーリス先生と枢機卿を先に入れカーライルが中に入る。

「アウロラはちっちゃいから大丈夫だな」

アウロラも中に入れた。

「マキーナは副砲を頼む」

「は!」

マキーナがM240の銃座に座る。

「操作は同じだ」

「は!」

そして俺が最後に戦車の中に入ってモーリス先生に説明する。

「先生!私が撃ってと言ったらこのスイッチをこうして、これを押してください」

「ふむ!わかったのじゃ!」

めっちゃ楽しそうだ。

「カーライル、ここに予備の砲弾を召喚して置いておくから、先生が撃ち終わったらこの砲弾を装填してほしい」

俺が実際に砲弾を入れる場所をあけて、一旦砲弾を装填して見せた。

「わかりました」

「頼む」

「お兄ちゃん私は?」

「アウロラは俺の膝の上だ」

「分かった」

俺が操縦桿を握ると、アウロラが俺の膝の上にちょこんと座った。

「出発します。少し揺れますので気を付けてください」

ブオオオオオと1500馬力が唸る。キュラキュラキュラキュラ。M1エイブラムス戦車は快調に地下道を進んでいくのだった。これならフラフラの二人を連れていても早くつくだろう。奥へと進んでいくと正面がT字路になっており壁が迫って来た。

「先生おねがいします」

「うむ!」

ズドゴン!と車体を震わせて、M908 HE-OR-T(障害物排除戦車用榴弾)120㎜弾を発射した。障害物や障壁を破壊するように設計されている砲弾で、目の前にあった壁は派手に崩れ去ってしまった。

「次弾装填!」

「はい」

カーライルが先ほど教えた手順で、薬きょうをとりだし次弾を装填する。そして俺は開いた壁にそのままツッコむのだった。ゴドドドドン!と揺れるが物ともせずに進んでいく。そして部屋の中に入り車両を90度右に向けた。

「先生おねがいします!」

「うむ!」

ズドゴン!再びそちらの壁に向けて120㎜弾を撃つ。すると再び壁が崩れ去ってしまった。

「これは…外はどうなっておるのかのう?」

サイナス枢機卿が恐る恐る聞いて来た。

「えーっと、進みやすくなってます」

「進みやすく…。なるほど…とにかく早く進めるということかの?」

「そうです」

「つべこべぬかすなジジイ!」

「うるさいわいモーリス!わしはラウル君に聞いておるのじゃ!」

「ジジイがごちゃごちゃぬかすな!」

「おじいちゃんたち!何をやってるの!」

アウロラがいつの間にか二人の間に立ってプンスカ怒っている。

「おお、おやおや。違うんじゃよーアウロラちゃんー。これはいつもの、なんというか」

「そうじゃな。アウロラちゃん、わしらは別にいがみあっているわけでは…」

「とにかく!今は先を急ぐの!静かにして!」

「ごめん」

「ごめん」

モーリス先生とサイナス枢機卿が謝る。アウロラには弱いようだ。

俺はそれを気にせずに再び戦車を奥へと進めていく。狭い通路は避け、壁を貫いてほとんど直進するように奥へと進んだ。それからも次々に壁をぶっ壊して、戦車は進んでいくのだった。

「お、階段に出た」

一階層下に降りる階段が見えて来たので、俺はそのまま階段に突っ込んでいく。キャタピラで石階段が壊されていくが、そんなことはもちろんお構いなしだった。

「ゆ、揺れるのう…」

サイナス枢機卿が周りを抑えながら言う。

「大丈夫です!」

俺は意気揚々と答えた。もちろん大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら、俺達は大丈夫で石段は滅茶苦茶だが。

「先生!」

「うむ!」

俺が真っすぐに進むと再び壁が現れたので、120㎜砲弾を撃たせる。キュラキュラキュラキュラ!とそのまま進んでいく。この戦車のパワーは凄い…まるでファントムに乗っているようだ。

「もうすこしです」

「わかったのじゃ!」

「う、うむ!」

「はい」

そして地下道をめちゃくちゃにぶっ壊しながら、最後の階段を下って行く。

「ラウル様!デモンが!」

「あ、本当だ」

最後の地下通路の奥からこっちまでびっちりと骸骨サルのデモンが、いわゆるフレイムデモンと呼ばれる奴が居た。

うわあ…これ前世で見た映画の、宇宙のどこかにいる昆虫みたいな怪物の巣みたいだ。エイ〇アンのように通路を這ってこっちに近づいてくるところだった。

「全員で撃て!」

俺が遠隔で12.7㎜機関銃を、マキーナがM240中機関銃を、モーリス先生とカーライルがM830A1 HEAT榴弾に切り替えて撃ちまくる。フレイムデーモンは逃げ場も無いのでなすすべもなく、滅茶苦茶に撃たれまくるのだった。

「なんか…」

「はい…」

「うむ…」

「「「きっもちいい!!!」」」

脆い何かを打ち崩していくように、サクサクと次々に滅びていくフレイムデーモンに俺達は快感を覚えていた。こんなにサクサクと減っていくのは本当に楽しい。俺はそのまま12.7㎜機関銃の銃弾を補給し撃ちまくった。

「マキーナ!ほら!」

俺が大量の7.62mmの銃弾のベルトを召喚して置く。

「ありがとうございます」

そして撃ちながらも、俺は後ろにいるカーライルの所に大量のキャニスター弾を召喚した。

「たぶん、これの方が効率がいい!」

「わかりました!」

キャニスター弾とは筒状の容器内へ大量の散弾を詰めてあり、発射後に容器が飛散して、大量にバラ撒かれた散弾が広範囲の敵を殺傷する弾頭だ。砲口を離れる際に散弾となるため射程は短いが、この場合は超効率がいいと判断した。

ズドン!バドシュッ!!!キャニスター弾ではまるで面が数十メートルも下がるように、フレイムデーモンを消し去った。

「一気に減った!気持ちいいのじゃ!」

「どんどんやっちゃってください!」

「うむ」

「進みます!」

俺は再びM1エイブラムス戦車を勧めた。またフレイムデーモンが面になって近づいて来たので、モーリス先生がキャニスター弾を発射した。

ズドン!ババババシュッ!

ヤバいくらいにフレイムデモンが減っていく。シューティングゲームでめっちゃ弾が広がって出て来る無敵状態のようだった。まだ少し動いているやつに向けて俺とマキーナがとどめを刺していく。普通はこれほど撃ち続けたら砲身が熱くなって不良を起こすはずだ。だが一向に火器が不良を起こす事は無かった。俺の召喚兵器はイメージから錬成されているのか全く影響がない。

召喚魔法バンザイ!

そんな事を考えながら、どのくらいの時が経っただろう?

「…ラウルよ。そろそろ飽きてきたのじゃ」

「ですね…」

「同じ作業の繰り返しなのじゃ」

モーリス先生も俺も少し飽きてきていた。

「フレイムデモンも、少し減ってきましたね」

「そうじゃな、もう数千できかんじゃろ」

「確かに」

俺達が撃ちながら進んでいくと、フレイムデモンの数が減ってきたように感じる。それでも俺達は撃ち続けた、とにかくいなくなるまで撃たなければならない。

一匹いたら百匹はいると思っていい。

「よし!だいぶ勢いがなくなったぞ」

「そのようじゃな」

「ご主人様。デモンの反応も薄くなってまいりました」

マキーナの感知でもどうやら弱ってきているようだ。

「じゃあこのままゆっくり進みます。皆は撃ちつ付けてください」

「は!」

「わかったのじゃ!」

「わかりました」

そして俺達はフレイムデモンをめちゃくちゃ殲滅しながら進むのだった。俺の魔力が乗ったM1エイブラムス戦車のあまりもの強さに、ただただ驚くしかなかった。