軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第680話 ラウルVSダンタリオン

カーライルがバティンの斬月刀に削られていく。それでも竜人になった聖騎士は神業のような動きで、それを全て避けており致命傷を受けないようにしていた。

「はははははは!やっぱり魔人は魔人!デモンのボクには敵わないんだよ!」

だからそいつは魔人じゃ無いって…

可愛い見た目の女の子のボクっ子デモンが、必死で防ぐカーライルを見て高笑いする。

《よし!バティンがカーライルを削る事に集中しだした》

俺はそれを尻目にダンタリオンに突進していく。カーライルが命がけでバティンの意識をひいてくれている間に、何とかしなくてはならない。

「お!わたしに勝てるとでも思ってんのか?おまえ魔人だけど弱いだろ?」

「おまえなんか俺で十分だ」

少年だか少女だか分からない風貌のダンタリオンが笑いながら言う。恐らくは俺が単独で突っ込んでくるのを待っていたのだろう。確かにシャーミリアや直属の魔人たちに比べたら、俺なんか雑魚かもしれない。だが俺はかまわずにダンタリオンに突っ込んでいく。するとダンタリオンの手が尖り、両の腕が槍のようになった。どうやらこいつは体を自由に変形させることができるらしい。

ボッ!

まだ距離があるのに両腕の槍が、触手のように腕が伸びて俺に到達した。まるでゴム〇ムのなんとやらだ、鞭のようにしなり俺を突き刺そうとしてくる。俺はすぐさま軍用のライオットシールドを召喚してそれを防ぐように突き出す。ライオットシールドは高度の耐衝撃性を備えており、ほとんどすべての小火器の射撃に対抗できる。

グサ!グサ!なんとその触手の先端はライオットシールドに刺さり、そのままの勢いで俺は突き飛ばされてしまった。盾を離して転がりながら次の攻撃に備えようとした時。

「くっ!」

真上から触手の槍が降ってくるところだった。俺は咄嗟にライオットシールドを召喚し、両腕と両足でシールドを抑えた。グサ!グサ!その槍がまたライオットシールドに突き刺さった。完全に貫通する事は無かったが、先端が押さえていた俺の腕を斬り裂く。

「痛っ!」

ダンタリオンは俺からライオットシールドを引きはがして、どこかに飛ばしてやった。そしてその触手が再び俺に向けて飛んでくる。それをかわすべくゴロゴロと横転して逃げる。俺が居た場所を追いかけるようにグサグサと石畳の床を刺していくのだった。

「ほらほらほらほら!あたしの槍から逃げれるのかい?」

ビリッ!間一髪のところで服を斬り裂きながら槍がついて来る。

パン!パン!パン!パン!

横転しながらも、槍の伸びる触手部分に向かってコルトガバメントを向けて撃った。

「ギャ!」

コルトガバメントから射出された、9x19mmパラベラム弾が触手にあたる。触手から体液をだしながら、ダンタリオンは伸ばした腕を引っ込めた。

「ざまあみろ!」

「痛ったいな!」

「お互い様だ」

俺の左腕から滴る血を見て、ダンタリオンはにんまりと笑う。

「やっぱおまえ、弱いじゃん」

「これくらい大したことは無い」

ダンタリオンが俺にわざと腕を見せるようにつきあげる。カツン!カツン!ダンタリオンの傷口から、俺が撃ちこんだ銃弾が吐き出された。そしてみるみる傷口が塞がっていく。

「ははは!そんな魔法効かないよ」

いやいや、痛いっていったじゃん。

パンパンパンパン!俺がすかさずコルトガバメントをダンタリオンに向けて撃つ。だがダンタリオンの前に、今度は俺が出したようなシールドが現れた。カン!カン!という音と共に、俺の銃弾は弾かれてしまった。

「なるほどね、こいつは便利だ」

「真似たのか?」

「さあてね」

どうやらこいつは自分の肉体を変化させ真似る事が出来るらしい。魔人や魔獣をグールに出来る能力があるし本当に多才だ。ムカつくけど。

ズドン!

「ギャッ!」

ダンタリオンが体の一部で作ったシールドに穴をあけながら、体液をまき散らして叫んだ。俺がバレットM82ライフルを召喚し、12.7mm弾をお見舞いしてやったのだった。

「おまえも弱いな」

「ぐぎぎぎぎ」

シュッ!シュッ!ダンタリオンはまた腕を槍に変え、触手のようにしならせて俺に飛ばして来た。俺はまたライオットシールドを召喚して体の前に出す。

「うお!」

だがシールドにあたる瞬間に触手は軌道を変え、左右から回り込むように俺を襲ってきたのだった。

「あぶな!」

何とか避けたものの、俺の上腕とわき腹を軽く引き裂いて触手が通過した。

パンパンパンパン!

すぐにコルトガバメントを召喚して触手部分に打ち込むが、その触手はまたシールドに変わって弾を防いだ。どうやらこちらの武器を見て判断してるらしい。

「学習してるのか…」

俺はバレットM82をもってダンタリオンを中心に、円を描くように回り込んでヤツめがけ発砲した。

ズドン!

しかし、その触手はズボッと石畳の石を一つ抜き取って、俺の銃を防いだのだった。

「それ、構えないと攻撃出来ないんだろ?構えたら攻撃してくるのが分かっちゃうな!ははははは!」

その通りだ。

バレットM82ライフルは大きい分、近接戦闘には向かない。もっと至近距離で撃つことができれば、何とか相手に致命傷を与えることができそうだが触手が邪魔で近づけない。俺はバレットM82ライフルを捨て、APC9-Kサブマシンガンを召喚する。ブリュッガー & トーメット APC9-Kサブマシンガンは、ストックを畳むと385 mmとコンパクトになり近接戦闘でも扱いやすかった。毎分1080発の弾丸を射出する。

「タコかよ…」

俺は触手を避けながらも、APC9-Kサブマシンガンをダンタリオンに撃ち込んだ。しかし9×19mm弾は、俺のライオットシールドを真似たダンタリオンのシールドに弾かれてしまう。

「遠いかっ!」

ダッ!俺はそのままダンタリオンに突進していく。ダンタリオンは触手を俺に向けて伸ばし、いろんな角度から攻撃して来た。俺は攻撃の角度に合わせてライオットシールドを出して、その攻撃をことごとく避けてダンタリオンに近づいて行く。

「シッ!」

ダンタリオンまであと5メートルに近づいた俺は、APC9-Kサブマシンガンを掃射した。だがまたダンタリオンはシールドを出してそれを防いだ。

バシュッ!

俺が近づこうとした時、ダンタリオンの触手が鞭のようにしなり俺を横なぎに薙ぎ払った。咄嗟にその方向にシールドを出したが、その力は俺をはるかに上回り体ごと吹き飛ばす。俺はシールドごと吹き飛ばされて、おもいっきり壁に激突し口から血を吐いた。

「ごほっ!」

ズドッ!ズドッ!すぐに身動きが出来ない俺を、再びダンタリオンの槍が伸びて貫こうとした。咄嗟にライオットシールドを正面に出して防ぐも、先端が貫通して俺の腕に再び傷をつけた。シールドがはがされどこかに捨てられてしまう。

「終わりだ!」

ダンタリオンの触手が一旦引く。おそらく勢いをつけるための動作だが、さっきから俺はこれに目をつけていた。

ボシュボシュボシュボシュ―!

瞬間的に召喚した、M202 四連装ロケットランチャーを一気に撃ち込んだ。口径66mmのM74焼夷ロケット弾がダンタリオンに向かって飛ぶ。

バグゥゥゥゥン!!!

派手な炎と共にダンタリオンに着弾した。勢いよく炎が舞い上がりダンタリオンの姿が見えなくなる。すぐさま12.7㎜ブローニングM2重機関銃を召喚し、燃え盛る炎の場所に掃射した。

ガガガガガガガガガガ!

シュッ!

俺は重機関銃から手を離して後方に飛ぶ。俺の目の前に触手の槍が飛んできて、12.7㎜ブローニングM2重機関銃を破壊した。

「はははは!狙いはよかったねぇ!しかし勘が良いやつだ」

ダンタリオンは炎の場所にはいなかった。どうやらロケット弾を避けて回り込んだらしい。

「マジか…」

「その魔法は発動に時間がかかるんじゃない?攻撃されるのが見えてたよ」

魔法じゃねえし。

なるほど。向けて弾が着弾するまで、確かに銃より隙があるかもしれない。集中していればデモンなら避けれるのは当然だろうな。

「なら避けるなよ」

「はぁ??ばーか。危ない魔法を避けるななんておかしいだろ!」

そうか。ロケットランチャーは効く可能性があるのね…だけど当てるのは至難の業だな。ここまで戦ってようやく突破口が見えて来たというのに、まだ届かないとはね。

パラララララララララ

APC9-Kサブマシンガンを再び召喚して、ダンタリオンを回り込むように走りながら撃ち続けた。もちろんダンタリオンは、あのシールドもどきを出して俺の銃を全て防ぐ。

「無駄だよ!それは効かない!」

今度は動かずにシールドで受け止めている。槍の触手で近づく事も出来ず、遠くからではバズーカを当てる事すらできない。コイツは本当に面倒な敵だった。

「そんな事はわかってるさ。だがお前は俺では届かない存在では無い事が分かったよ」

俺がダンタリオンに告げる。

「はぁ??どこをどうとったら、お前が俺を殺せるって言うんだ?」

「だから言ったろ。お前は俺ひとりで十分だって」

「お前ひとりで何ができる!わたしには通用しない!」

おっ!俺を仕留めきれなくて、ちょっとイラッと来てるな。なかなか挑発に乗らなくて困ってたところだ。

バシュッ!

俺はすぐ近くに120mm迫撃砲を召喚して、ダンタリオンに向けて照明弾を撃った。

「馬鹿の一つ覚え。そんな遅い魔法が当たるわけない」

ダンタリオンはそう言って照明弾を避けるが、そのまぶしい光に俺を一瞬見失ったようだ。俺はそのまま真っすぐにダンタリオンに突撃し、ダンタリオンの懐にとびこんだ。

「いるのはわかるぞ!そこだろ!」

ダンタリオンの触手の槍が俺めがけて飛んできた。ライオットシールドを何枚も出してかわしつつ、突き進んで行く。あと十メートル。

ドスドスドス!

俺が走る後を槍がさしていく。俺は足に魔力を最大限に流し込み、ダッシュ力を数倍に加速させていた。そのおかげで俺の性格な位置を把握する事が出来ないようだ。あと三メートル。シュッ!シュッ!至近距離からまた触手を飛ばして来た。すんでのところで飛んできた槍の一本を避ける。だが、もう一本が俺の腹の真ん中に刺さってしまう。

「ぐうっ!」

あまりもの苦痛に声が漏れる。

「ははは!終わりだ!死ね!」

ダンタリオンが叫ぶ。

だが俺は、その腹を貫通した触手を更に深くつき刺すように前に進み、ダンタリオンの胴体にしがみついた。俺は口から大量の血を吐き出すが、それでも力いっぱいしがみつく。

《殺れ》

俺が念話で言う。

バズゥゥゥン

次の瞬間ダンタリオンの胸から上が吹き飛んだ。俺の頭上すれすれを何かが飛んでいく。

ドサッ!ゴロゴロゴロゴロ!

ダンタリオンの下半身の亡骸と共に、俺も転がっていき壁にぶつかった。

「ぐはっ!」

また大量に吐血した。

「ご主人様!」

誰かが俺の腹からダンタリオンの腕を抜き取り、エリクサーを振りかけた。

シュゥシュゥシュゥシュゥ

穴が塞がり傷が癒えていく。だいぶ血が流れたために少し力が入らないが、命はとりとめたようだ。

「よくやった。マキーナ!」

そう、俺が指示をした相手はマキーナだ。マキーナがダンタリオンにとどめを刺してくれたのだった。俺が一人でダンタリオンを相手にしているのだと勘違いをさせて、マキーナの存在に意識が行かないように仕向けていたのだ。

「いえ!ご主人様の作戦のおかげです」

「敵を欺けたよ。お前をどこにも配置させないで潜らせておいてよかった」

「何度も助けに出かけてしまいました」

「よく耐えてくれた。おかげであいつを殺れた!」

「とにかく、すぐに休養をとっていただかなければ」

いやいや、今もカーライルが必死に敵と戦っているんだけど…マキーナもシャーミリアのように、カーライルなぞどうでもいいような対応は止めて。

「もう一人いるんだ」

俺が言うとマキーナがカーライルの方を見る。今までカーライルは必死に斬月刃を避けていたのだが、既に攻撃は止んでいるようだった。攻撃を止めてバティンもこっちを見ていた。

「だ、ダンタリオン…?」

「残念だな。お前の弟だか妹だかわからんが頭がどっかいったぞ」

「くそが!よくも!ダンタリオンを!」

バティンが可愛らしい目を血走らせて叫ぶ。

「お前らも俺の仲間をいっぱい殺してくれたじゃないか」

「虫けら風情が!お前らなど、フー様が!ゼクスペルの六人からみれば虫けらだ!」

なるほど。ゼクスペルとかいう六人がいるのね。誰だか知らんが。

「そいつらは今ここにいるのか?」

「ここには来ていない!だが、いつか必ずダンタリオンの仇を取ってくれる!お前たちを八つ裂きにしてくださる!!!」

泣きながら吠えている。どうやらあの二人は喧嘩をしてても、相手に対して愛情があったのかもしれない。

ガガガガガガガガガガガガ

次の瞬間バティンの体を撃ち抜いたのは、ファントムのM134ミニガンだった。すでに骸骨サルのデモンを一掃したファントムが狙い撃ちした。俺が念話で指示をして、このタイミングを待っていたのだった。

「ぎゃ!」

ミニガンの弾が何発かバティンに命中したが、次の瞬間にバティンの体が消えた。どうやらギリギリのところで逃げられたようだ。今のM134ミニガンの射撃で怪我はしたと思うが…

「ファントム、止めろ」

ヒュゥゥゥン

ファントムのミニガンが止まる。するとカーライルが体をがくんと落として膝をついた。体中から血を流している。

「大丈夫かカーライル!」

俺はカーライルに近寄って、デイジー製ハイポーションをかけてやった。カーライルの傷がシュウシュウと音を立てて塞がっていく。

「ラウル様こそ」

「まあ…俺も血が足りないかな」

「私もそのようです」

カーライルが剣を杖代わりにして立ち上がる。

「いまのデモンは、殺ったのでしょうか?」

「いや、カーライル。逃げられたようだ…俺達の情報がいくらか相手にバレたとみて間違いない」

「そうですか…」

「ビクトールは!?」

俺達が踊り場の手すりから魔石が浮かぶ地下堂の下をみるが、そこには既にビクトールの姿は見えなかった。

「いないようです」

「アイツはグールにはいなかったな…」

「おりませんでした」

「きっと転移魔法で逃がされたんだろう」

「くそが!」

カーライルが珍しく汚い言葉を吐く。そして少しずつ竜化が解けつつあるようだった。この薬の効果の時間は今ので大体わかった。戦闘中に解けていたらカーライルは間違いなく死んでいただろう。

「しかし、マキーナさんはいつの間に?」

「この時のために、ずっと温存してたんだ。どこにも配備しないでな、こちらも敵を欺くための罠を仕掛けてたって訳さ」

「まったく…ラウル様は食えない」

「何度も死にかけたけどな」

俺が笑って言う。

「本当です!ご主人様!私は何度出ようかと思った事か!」

マキーナが涙をためて訴えて来る。

「いや出なくて正解!本当によくやってくれたよマキーナは」

「あ、ありがたき幸せ!」

マキーナが膝をついて俺に首を垂れた。

「さて、あいつを追いかけなきゃな」

「行き先は分かるんですか?」

「まあ恐らくな、とにかくサイナス枢機卿の元へ行こう」

「ええ」

《ファントム!ここの死体という死体をぜーんぶ吸収しろ!》

《……》

ファントムだけを残して俺達は地下堂を出るのだった。