軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第652話 異世界人の行方

異世界人たちがこの世界の村人たちと共に、こちらに向かっているという情報を聞いた。異世界人が村人を先導しているのか、無理やり連行しているのかは分からない。目的自体が何なのかが分からないからだ。

「とにかく接触してみるしかないでしょう」

そういう結論になった。直接行ってコンタクトを取るしかない。

「やはり聖都に向かっておるのじゃろうか?」

「そうじゃないでしょうか。一番大きな都市へと向かっているのかもしれません」

「都市など既に存在しておらんのじゃがな」

「村人も知らないのでしょう」

「確かに村人は聖都が滅びたことを知らんじゃろうな…じゃが…」

「何のために?というところですね」

「ふむ、その目的が分からん」

俺もモーリス先生にも想像がつかない。

「サイナス枢機卿、ファートリア聖都の光柱の件はお任せしてよろしいですかね?魔人達に指示を出し全面的に協力するように言っておきます。魔人は枢機卿の指示を聞くと思いますので、食料の補給だけではなく必要な事は指示をしてください」

「わかったのじゃ」

「我々はすぐに謎の集団に接触するために、西に向かおうと思います」

「あのビクトールと一緒に来た者達はどうするのじゃ」

盗賊の寄せ集めの事だ。

「彼らは敬虔な信者です。ハイラに心底忠誠を誓った信徒なのです」

「なら彼らはこの聖都のために、働いてくれるという認識で間違いないだろうか?」

「そうです。ただ彼らは常識を知りませんので、騎士の皆さんや枢機卿が厳しい教育を施してあげてはいかがかと思います」

「うむ。アトム神様のお力になれるように教えてやるしかあるまい」

「はい」

これで盗賊たちの身の振りは決まった。今までの悪行を悔い改め、聖都で敬虔な信者となるだろう。

《ラウル様!》

《どうしたナタ?》

《申し訳ありません!謎の集団が消えました!》

《なに!ちょっとまて!》

ナタからの緊急通信だった。俺は皆に向かってふりむいた。

「皆さんすみません。ナタからの緊急情報です。こちらに向かっていた謎の集団が消えてしまったようです」

「なんじゃと!」

「消えたというのはどういう事じゃ?」

「とにかくナタに詳しい事を聞きます」

《ナタ》

《はい》

《消えたというのはどういうことだ?》

《はい。謎の集団ですが、ある場所まで来た時に足を止めました。恐らく休憩に入ったのだと思ったのです》

《それで?》

《そのまま言います》

《ああ》

《何やら皆で話をしていたようなのですが、話を終わったと思ったところで皆が中央に集まりだして、そして…》

《そして?》

《消えました》

《全員?》

《はい。跡形もなく消えてしまいました。俺も見ていたので間違いありません》

《どこに行ったかわかるか?》

《申し訳ございませんが…》

《了解だ。気を付けて周辺を捜索ししてくれ。罠の可能性もある》

《はい》

《直ぐにそちらに向かう。無理はするなよ》

《わかりました》

俺は今の会話をそのまま、そこにいるみんなに伝えた。

「どういう事だろうか?」

サイナス枢機卿も聖女リシェルも意味が分かっていないようだった。

「サイナスよ」

「なんじゃ」

「恐らくは転移魔法じゃ」

「転移魔法じゃと?」

「そうじゃ」

「禁術ではないのか?」

「それはこの世界の者の道理じゃよ。異世界の者にそんな道理は通じぬ」

「それを、使える人間がおるという事か?」

「恐らくは、そうじゃろうと思う」

「なんと…」

サイナス枢機卿も聖女リシェルも信じられないという顔をする。この世界では何千年も使われなかった魔法だけに、どう考えていいのかも分からないのだろう。

「サイナスよ、わしらは見たのじゃ」

「転移魔法をか?」

「そうじゃ」

「何という事じゃ」

「恐らく転移魔法を使う異世界人がおる。とにかくこうしてはいられんのじゃ」

「そのようじゃな」

敵が消えたとなると、もしかしたらすぐにでもここに現れる可能性がある。こんなところで悠長に会議などをしてはいられない。

「ミリア!」

「は!」

「全員に通達だ。ハイラと礼一郎、ビクトールと盗賊たちはここに置いて行く。マリアは連れて行くからそう伝えてくれ。全員ヘリポートに向かうように」

俺の指示を聞いてシャーミリアは部屋を出て行った。

「枢機卿!光柱を監視する作戦は少し先になります。枢機卿も聖女リシェルも生き残った人々も、引き続きこの魔人基地へと残留してください」

「わかったのじゃ」

「かしこまりました」

「あの、もし可能であれば私も連れて行ってはくれませんか?」

カーライルだけが連れて行けと言う。

「カーライル、状況としてはかなり危険だと思うが?」

「囚われているのはファートリアの民なのでしょう?」

「恐らくはそうだろう」

「どうか私だけでも、お願いできないだろうか…」

カーライルが必死の形相で言う。

「ラウル君。カールも連れて行ってほしい、足手まといなら適当に切り捨てても構わん」

サイナス枢機卿が言った。どうやらカーライルの気持ちを汲み取っての事らしい。

「枢機卿に言われたら、連れて行かない訳にはいかないでしょう。そして切り捨てる事などありません。カーライルは俺達の大切な仲間ですから」

「すまんのう。ファートリアの民がいいようにされては、いてもたってもおられんようじゃ」

「気持ちは分かります。カーライルよろしくな」

「感謝いたします」

「では枢機卿、我々はすぐにまいります」

「気を付けてのう」

「お気をつけて」

サイナス枢機卿と聖女リシェルが心配そうに言う。

「ありがとうございます」

俺達はすぐに司令塔をでてヘリポートに走った。そこにシャーミリアに連れられてマリアも合流してくる。他の魔人達も集合した。

「マリア、礼一郎はどうだった?」

「一応、魔人の監視の元で落ち着いております。ほとんど寝ているようですが、ハイラの言う事も聞いておりますし」

「あの、地下にいた子らとの会話は」

「ありません」

「そうか」

「距離を置いているようです」

「まあ…仕方がないな」

同じ日本の学生が来たので、もしかしたら打ち解けて回復するかとも思ったが、そう上手くは行かないようだ。同級生の死体を見たことによる心に負った傷と、俺達に捕えられた時のバイオレンスなショック、自分がやったことに対しての後悔と、殻が幾重にも重なってしまっている。

「ラウル、機体は?」

エミルが聞く。

「スーパースタリオンだ」

「了解だ」

そして俺はCH-53E輸送ヘリ スーパースタリオンを召喚した。シャーミリアとマキーナ以外が全員乗り込みハッチが閉まる。エミル、ケイナが操縦席に座り、俺、モーリス先生、ファントム、カトリーヌルフラ、アナミス、ルピア、マリア、スラガ、マカ、クレ、そしてカーライルが乗り込む。シャーミリアとマキーナは外からの攻撃に備えて護衛につかせた。

「それでどうする?」

「まずは聖都の周辺を捜索する」

「了解」

スーパースタリオンが空に浮かびあがり、聖都に向かって飛んだ。聖都の周りを飛翔しながら哨戒行動をとる。

《シャーミリア、気配は感じるか?》

《ございません。しかし光柱のある都市内や反対側に至っては、感知できないようです》

《やはり阻害されるか》

《はい》

「エミル!聖都の西側につけてくれ」

「了解」

ヘリは光柱がある都市を迂回して西側へと向かった。シャーミリアとマキーナもそのままついて来る。

《どうだシャーミリア》

《こちら側にも何の気配もないようです》

《ならここで少し待つ。シャーミリアとマキーナは手分けして周辺を探ってきてくれ》

《《は!》》

「エミル、ここにホバリングしててくれ」

「了解」

そして少しの間シャーミリアとマキーナを待つことにした。

「ラウル様」

「なんだ?」

カーライルが話しかけて来た。

「もし異世界人がファートリアの民に何かをしたならば、私はそれを許せそうにありません」

「当然だろ。誰だってそう思う」

「それがあちらの世界の一般人であっても、それが子供であっても許されません」

「だな。だから事故が起きる前に阻止したいと思っているんだよ」

「はい。何もない事を祈ります」

「ああ」

カーライルは淡々とした表情で言っているが、内心は穏やかではないと思う。これ以上自分の国の人間が何かされるのを黙ってはいられないのだろう。

《ご主人様》

《どうだった?》

《広い範囲で探索しましたが、気配は確認できませんでした。数個の村がありましたが、どこにも魔法使いなどおらず農民たちがいるだけのようです》

《そうか…マキーナの方はどうかな?》

《目視ではありますが、何も見つける事は出来ません。私の気配感知でも見つける事はできませんでした》

《了解だ。ひとまず二人とも戻ってきてくれ》

《《は!》》

皆が俺の方を見ていた。念話の結果を待っているのだろう。

「何も発見できないそうです」

「そうか…こちらには飛んではおらぬか…」

「やはり先生の予想通り、行ったことがある場所か目視で確認できる場所にしか、飛べないのかもしれませんね」

「そうかもしれぬな」

だとすればどこに消えたのだろう…。

「先生。目的は聖都じゃないのかもしれません」

「そうかもしれぬ」

「ラウル様、先生、それならば異世界人たちはどこへ?」

カトリーヌが言う。俺達にも答える事は出来ない。

「ラウル様。もし彼らが普通の学生であったなら、どう行動するのでしょう?」

カトリーヌが更に聞いて来る。

「うーん。いろいろと考えられるかな、ゲーム感覚で冒険を楽しんでいるのかもしれないし」

「集団で同じ方向に向かって進む。そういう冒険がありますか?」

「…たしかに。何か目的があっての事と考えるのが妥当だろうな」

「やはり、目的を考えなければ相手の行動はつかめませんよね」

「目的か…目的…」

カトリーヌに言われて考えるが、さっぱり思いつく事は無かった。まったく新しい未開の地に来て目的なんてあるはずがない。カーライルの言う通り志しもない奴に…目的?

「カーライル」

「はい」

「人のために動く、人のために何かできるか、民のために何が出来るのか。そういう志しがあったとして、自分のために何が出来るか何をするか?ってのもあるよね」

「もちろんあるかと思います」

「何がある?」

「自分磨き、さらに高みに昇るため、自分を超えるため?」

それはお前の目的だろ。

「ラウル様」

「何かあるかなマリア?」

「私やラウル様のお気持ちを考えて見ると良いかも、そしてカーライルやモーリス先生の気持ちも」

「ふむ。なるほどのう」

「そうですね」

「私にもわかりました」

俺とモーリス先生、カーライルが一緒に気が付いた。

「復讐ですね」

「そうじゃな。それも大きな力を生むじゃろな」

ならどう動く?だが復讐する動機は?分からないが確認をする必要がある。

《ナタ!》

《はい》

《位置は?》

《巨大都市のさらに奥にある山を越えて降りたところです》

《…了解。ナタはそこから北へ迎え》

《はい》

「エミル、急いで北の街道沿いの村へ向かってくれ」

「了解」

ナタが言った場所から更に北へと進めば、魔人と村人が一緒に暮らす村々がある。あくまでも推測にすぎないが、異世界人はまた同じ過ちを繰り返すかもしれない。日本の少年少女が暴走しないうちに接触する必要がありそうだ。

《早まらないでくれよ、さすがに許せる限度っていうのがあるんだ》

焦る俺達を乗せて、スーパースタリオンは北西へと飛ぶのだった。