軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第638話 襲撃と謎の移動能力

ルピアが「殺す」という言葉を使ってしまったおかげで空気が一変してしまった。盗賊たちが殺気立ち、舌なめずりをしている。おあずけされていた餌を、どうやって食ってやろうかとでも考えているのだろう。

「あららら、せっかく盗賊たちが命拾いしたはずなのに…残念な結果に」

「そうじゃのう…穏便に済みそうな所じゃったがのう」

「やはり盗賊は、盗賊ということでしょうか?」

「やっぱそうじゃないですかね」

俺とモーリス先生、マリア、エミルがドローンから送られてくる映像をディスプレイで見ながら、残念な盗賊たちの様子を実況していた。

「でもルピアさんのあの言い方じゃあ、ああなっちゃうのは仕方なくないですか?」

エミルが言う。

「ラウルが、教えんからじゃなかろうか?」

「いや、まあ天真爛漫がルピアの売りかなと思いまして」

「確かに、それはそうじゃがのう」

「えっと、そんなことを悠長に言っている場合でしょうか?」

後ろからカトリーヌが言って来る。

「いやカティ。シャーミリアのマキーナを育てたいという意見も、きちんと汲み取りたいんだよ」

せっかく自主性が出て来たんだから。

「ご主人様。この場合、指示を出して早めに始末をつけた方がよろしいのではないでしょうか?」

「いやミリア。もうちょっと見てみようぜ」

「かしこまりました」

「あのー、あんなに綺麗な方達ですから、まずいんじゃないですか?」

ハイラがちょっと怪訝な顔で言う。ハイラからすれば、マキーナ達の方が絶体絶命に見えるのだろう。

「あんな盗賊たちなんか問題ないよ、大丈夫だと思うけど」

「大丈夫だと‥思う(・・)?」

「ああ」

「あっ…」

何か中学生の少年が反応した。

「なんだ?なんか気が付いたか?」

「あの…」

「ああ」

「なんで…、なんで、ど、ドローンとディスプレイなんてあるんだ?」

「それは我が国の…」

「こら!だから偉い人なんだから敬語を使いなさいって!」

ハイラがいきなり口を挟んで叱る。

「……」

少年が黙った。

「ハイラさんそれはいいから。少年よ、とにかくこれは我が国の兵器だよ」

もちろん企業秘密だよ。

「……」

「教えてくれたんだから、お礼!」

コクリ

ハイラに叱られて、とりあえず少年が首を前におとす。

「見てください!盗賊がマキーナ達ににじり寄ってますよ!」

ずっとディスプレイを見ていたマリアが言う。

「あ、マジか!」

俺達は、再びみんなでディスプレイを食い入るように見る。

「!」

「どうした?ミリア?」

「ご主人様。マキーナ達を下げましょう!」

「せっかく学ぶチャンスだぞ。あんな盗賊たちは問題にならないだろ?」

「一瞬おかしな気配が!」

なに!?

《マキーナ!アナミス!ルピア!一旦下がれ!》

俺がシャーミリアの言葉に瞬時に反応して、3人娘に下がるように念話を送った瞬間だった。ズズゥゥウゥン!マキーナ達と騎士崩れや盗賊がいる場所の、反対側に位置する集落に土煙が立つ。

「少年と似たような気配が突然3体現れました」

シャーミリアが言うので、俺はそちらの方にドローンを飛ばした。集落の反対側の上空からあたりを撮影すると、大きな岩が集落に落ちたようだった。何人かが下敷きになったようで岩の下から血が飛び散っている。

「騒ぎを起こさなくても、むこうから来たみたいだな」

「そのようです」

「なんじゃ?あの巨大な岩は、あんなもんが飛ばせる魔力があるのかの?」

「土魔法は相当なものですか?」

「計り知れんわい」

あんな魔法を使える魔法使いは、この世界にはいないのかもしれない。それだけ巨大な岩が転がっている。そのことで集落内の盗賊たちが、アリの巣をつついたように上を下への大騒ぎになっていた。

「顔をみれますか?」

スラガが言うので、顔を確認するため拡大を試みようとしたときに、ドローンの高度が下がった。どうやらバッテリーがきれそうになっているようだ。

「あ、そろそろドローンのバッテリーが切れる」

俺はドローンをその場から離すように飛ばしてやる。このドローンは小型で気がつかれにくいメリットがあるが、バッテリーが30分くらいしか持たない。そのおかげで謎の3人組の姿を、はっきり捉えることができなかった。

「よ!」

俺はすぐさま、新しいブラックホーネットを召喚して飛ばしてやる。急いで先ほど3人がいた場所に飛ばすが、3人の姿は消えてしまっていた。岩の周りには盗賊たちが集まって、右往左往しているだけだった。

「どこ行った?」

「ご主人様!まったく違う方向に気配が!」

「どっちだ?」

「集落の洞窟の上です」

「え、もうそんなところに行った?」

俺はすぐさま軍用双眼鏡を二つ召喚して、モーリス先生とマリアに渡した。そしてドローンのコントローラーをエミルに渡す。

「エミルが飛ばしてくれ」

「ドローンは上手く飛ばせるか分からんぞ」

「俺よりはうまいはずだ。洞窟の上空から撮影を」

「わかった」

ボウボウボゥ!ゴゴォォォォ!集落の中央辺りにいた盗賊たちの集団の上に、火の玉が降り注いだ。どうやら火魔法を使ったらしい。崖の上から次々と火の玉が落ちて来る。

「ギャアアアアア」

「熱いぃあつぃぃ!」

「に、逃げろ!」

盗賊たちは蜘蛛の子を散らすように四方に分散していった。

「む?」

「あれ?」

モーリス先生とマリアが同時に声をあげた。

「どうしました?」

「消えたのじゃ」

「3人がですか?」

「そうじゃ。光を発したと思うたら消えおった」

「シャーミリア!気配は!」

「最初にマキーナ達がいたところにおります」

俺も双眼鏡を召喚して、そちらの方を見ると3人の少年が立っていた。そして何やら一人が手をあげている。

「落とされるじゃろうな…」

先生がつぶやいた。

ズズゥゥウゥン!再び岩が盗賊たちの上に落ちて来た。何人かの体が完全に見えなくなり、下半身を岩に挟まれてもがく者、上半身に岩が乗り少し足をばたつかせて動かなくなる者がいた。そしてその岩に飛ばされてバタバタと倒れている人間達の上に、火の玉が大量に降り注ぐ。

「があああああ」

「熱いぃいぃぃ」

「焼けるぅぅ」

身動きの取れなくなった盗賊たちが、なすすべもなく火に包まれていくのだった。恐らくどこから攻撃されているのかも分からないだろう。きっとマキーナ達がやっていると勘違いしているやつらもいそうだ。

《マキーナ》

《は!》

《どこだ?》

《仰せのままに離脱しておりました》

《異世界人が出現した。どうやらおかしな移動方法を使う、とにかく安全が分かるまで待機だ》

《かしこまりました》

彼女らは、どうやら既に離脱して安全圏にいるみたいだった。

「また…」

モーリス先生が言葉を失う。

「消えたのですか?」

「消えたのう」

「私もみていました」

モーリス先生とマリアが同時に確認している。間違いなく異世界の人間は何らかの能力を持っているようだった。

「迂闊に手が出せないですね」

「うむ。あれで先の村がやられたのは間違いないじゃろう」

「はい」

俺はスラガに顔を見てもらおうと思い、軍用双眼鏡を渡す。

「スラガは、次に出たらこれで確認してくれ。まあ襲った奴らで間違いないだろうがな」

「かしこまりました」

「ミリア、いま奴らはどこだ?」

「申し訳ございません。見失いました」

「見失ったか…」

どうやら正体不明の3人がいなくなってしまったらしい。

「シャーミリアが見失うという事は、空間系の魔法でしょうか?」

「すまぬがそんな魔法自体の存在を知らぬのじゃ、それはむしろ神業というもの」

確かに、エルフの里を作ったのは神の教えだし、虹蛇の体内空間も神の仕業だ。もしかしたらデモンも神に関係しているのだろうか?とりあえずモーリス先生は知らないらしい。

集落は滅茶滅茶になってしまったが、盗賊たちは洞窟に入ったり、四方に散って行ったりしてしまった。集落の3カ所から煙が上がっている。

「終わったのかな?」

エミルが言う。

「いや。まだそうとは限らない。不用意に近づく事は出来ないだろうな」

「ご主人様。次に現れた時に捕らえてみてはいかがでしょう?」

「そうだな。敵の移動方法だけが分からないが、二人の魔法の攻撃方法は分かったしな。対応できるかもしれない」

「は!」

そしてシャーミリアが身構え、俺も集落に意識を集中した。その時だった…

「ふむ。少年よ、余計な事はせぬ方が良いぞ」

モーリス先生が後ろを振り向いて、少年に言う。

ピクッ

少年は見透かされた事に驚いたのか、一瞬目を見開いたがすぐにうなだれてしまった。

「少年。この人は君のような魔法使いをたくさん育てて来た大先生なんだ。魔力の動きがあれば隠す事はできないよ」

俺が言う。

「……」

「あなたね。魔法を使って何をするつもりだったの?」

「……」

「答えなさいよ」

ハイラが詰め寄るが少年はうつむいたままだった。

「良いかの少年。おぬしの力はかなり膨大じゃ。しかしまだ器が出来ておらんのじゃ、体に何かが起きては取り返しがつかんからのう。せっかくの才能を身に付けたのじゃ、それを大事にしてみようとは思わんか?」

「……」

「ちょっと!」

「ハイラ嬢!よいよい。もちろんハイラ嬢は叱る事で、この子を守ってくれておるのじゃな?」

「な、私は…はっきりしないこういうのが嫌なだけです」

「そうじゃったか、すまんのう。とにかく少年よ。こうやって、おぬしを気遣ってくれる人もおるのじゃから、今は静かに時が過ぎるのを待つがよいて」

モーリス先生が少年を諭すが、聞いてるんだか聞いていないんだかはっきりしない。ハイラが何かを言おうとしているので、俺が手を前に出して制する。作戦の準備をしなくてはいけない。

「ミリア。現れたら教えてくれ、あの魔法はちょっと厄介だ。そしてマリアはこれを」

俺はTAC50スナイパーライフルを召喚して、マリアに渡す。

「異世界人が出たと同時に、足を狙撃できるか?」

「はい、問題ありません」

すげえ…

「なら位置取りをしてくれ。ルフラとカティがマリアの守りについてほしい」

「かしこまりました」

「はい。マリア、守りは私達に任せてね!」

「カトリーヌ様。頼もしいお言葉ありがとうございます」

そしてマリアとルフラを纏ったカトリーヌが、狙撃の位置を確保するため動く。

「ラウル。ドローンのバッテリーが半分だがどうする?」

「一旦こっちに戻そう。新しいのを出す」

「了解」

静かになっていた盗賊の集落では、敵の攻撃が終わったと思ったのか人が出て来てあたりを警戒していた。

「先生。絶対にマキーナ達のせいだと思われてますよね」

「じゃろうなあ。濡れ衣を着せられたような形になってしもうたかの」

「ですよね。まあだからといって問題があるとも思えないですけど」

「ふむ。ラウルには何か考えがありそうじゃな?」

「はい」

「なんか、あいつらの危ないところにマキーナ達がさっそうと駆けつけて、助けるっていうのはカッコよくないですか?」

「カッコええのう!」

「ですよね!」

「じゃが危険じゃなかろうか」

「そこはほら、シャーミリアが何とかするという事で。シャーミリアはマキーナに成長欲しいと考えているのですよ。ひとつの自分でやった成功事例があると、マキーナの意識も変わると思いませんか?」

「ラウル、そんな無茶ぶりしたらシャーミリアさんが困るだろう」

「いえ。ご主人様がそういえばそうなのです。私奴にたしての課題であるという事です」

「え、そうなの?ラウル」

「エミル。お前には分からんだろうが、俺とシャーミリアにはなツーカーのアレがあるんだよ」

「なんか胡散クセェけど」

「あるんだよ」

エミルが俺を怪しんでいるが、本当にあるんだけどな。

「ですがまた3人は現れるでしょうか?」

「ああ、ミリア。南の村では徹底的にやってたからな、あいつらは絶対戻ってくるよ」

「ではその時を待ちましょう」

「シャーミリアはマリアの弾に当たらないようにな」

「避けます」

それも凄い。

「そうしてくれ」

そして再び俺達はあの3人が現れるのを息をひそめて待つのだった。盗賊の集落では怪我人などを集め、寝かせたり応急処置をし始めている。かなりの負傷者が出ているので、逃げるに逃げられなくなってしまったようだ。逃げてしまった人間もいるが、まだ半分以上は残って負傷者を助けようとしていた。

「あの騎士崩れの指示か…」

「そのようじゃの」

「案外悪い奴じゃないのかもしれないですね?」

「ふむ。そうかもしれん」

騎士崩れが指示を出して、あちこちから怪我人を運んできている。その中にはもう死んでいる者や、下半身がなくなっている者、腕が潰されてぶら下がっている者など様々な物がいた。

「こ主人様!」

「どこだ!」

シャーミリアが出現の合図を伝える。どうやら3人は隠れていた盗賊たちが出て来るのを待ち構えていたらしい。盗賊たちはそれを知らずに、救助活動を続けているのだった。