軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第616話 デモン捕縛

《どうだ?》

《飛んではおりません。岩肌を登ってきています》

《地を走ってミリアについて来たってのか?》

《そのようです》

だとすれば何か、おかしな力を身に付けているとみて間違いないだろう。森や岩肌をかなりの速度で移動できる奴だ。シャーミリアが速度を五分の一に抑えたとはいえ、そのスピードで地面を移動してついて来るのは異常だ。

《まもなく接触します》

北の山脈はところどころ雪が積もっており、岩肌は凍り付いているところも多い。それでもかなりの速度で昇ってきていることになる。

《岩壁に、12.7㎜を設置する。そのまま後退しよう》

《は!》

俺は岩を背にして12.7㎜重機関銃を呼び出し、正面の空間を狙ってセッティングした。シャーミリアは俺の側で臨戦態勢に移っている。

《気配が消えました》

《またか》

《出たり消えたりをくりかえしておりましたが、また消えたようです》

《ちょっとおびき出してみるぞ、最大限の注意を払ってくれ》

《かしこまりました》

俺は12.7㎜重機関銃を構えながら、何もない空間に向むける。

「おーい!俺はここにいるぞー!」

俺の声が山にこだましてすぐに消えた。何も起こらず、広大な森が眼下に広がっているだけだった。寒い風が吹きあがって来る。

《ずーっと、呼びかけてみるかな》

《はい》

「どこの誰かは知らないが、なんで俺を狙う!人違いという事は無いか?もしかしたらお前が思っているやつとは違うと思うぞ。だって俺はタダの町民だからな、きっとまちがっ」

ガキィィ、という音と共にシャーミリアが炎の円盤を止めた。弾かれるように円盤は飛んでいき、右方向2時のあたりでスッと消えた。遮蔽物が無いのでどこで消えたのかがはっきりわかる。それは間違いなく、どこかの空間に吸い込まれるように空中で消えたのだった。

ダダダダダダダダダダダダダ!

俺はその空中に向かって、12.7㎜重機関銃を打ち込んでみる。弾は火線を描いて、その空間を通り越し遠くまで飛んで行った。

《透明になってるってわけじゃなさそうだな》

《攻撃の一瞬、気配がありましたが消えております》

《消えているのか…厄介だな》

《見当がつきかねます》

どういう事だろう?シャーミリアの飛翔速度で走る事は不可能だ、そう考えるとテレポート能力か?そんなことができるデモンがいるのか?まあデモンの能力を熟知しているわけではないので、いないとは限らないか。

《次に出た時にシャーミリアが飛べば捕まえられるだろうが、その間に俺が炎の円盤で真っ二つになる可能性があるな》

《はい。あの円盤はかなりの速度で飛んでくるようです》

《とにかく俺が話すと攻撃してくるよな?》

《そのようです》

《よし》

今度はLRAD長距離音響発生装置を召喚する。

《シャーミリア。それつけろ》

《は!》

米軍仕様の防音用耳栓。バトルプラグを渡した。物凄い音が出るので耳を守ってもらう。シャーミリアの耳は地獄耳だし、正確に状況判断できなくなったら困る。

《その状態で、敵の攻撃は止めれるか?》

《聴覚は頼っておりませんので、問題ございません》

《了解》

LRAD長距離音響発生装置のボリュームをMAXにした。

「おまえ!俺が無関係だっつってんのに!なんで攻撃してくんだよ!バッカじゃねーの!そもそも姿も見せないで卑怯極まりないっつってんだ!弱虫ー!バーカバーカ!悔しかったらさっさっ」

ガキィィン ドサ。LRADのスピーカーの足が断ち切られて、地面に倒れる。だが敵の狙いは明らかに、俺からずれたようだった。どうやら音を頼りに俺の位置を探り攻撃してきているらしい。

《やっぱ声だ》

《そのようです》

《若干の攻略方法が見えたぞ》

《さすがでございます》

俺は両手を広げて、視界の範囲内にLRAD長距離音響発生装置を6台召喚した。手元にはマイクが握られている。

《この状態なら攪乱できるだろう、数秒は俺に攻撃があたらないはずだ。ミリアは数瞬だけ俺から離れて攻撃する事が出来る。声を出した瞬間に気配に向かって攻撃してくれ》

《かしこまりました》

俺は伏せの姿勢をとってマイクに向かって叫ぶ。

「ははは!バーカ!俺を殺ったと思ったろ!姿も現さない卑怯者からやられるほど間抜けじゃないんだよ、全くアホの面を見てみたいもんだ。きっとぶっさいくなっ」

シュキィン。数台のLRADのスピーカーが斬って落とされたが、俺に向かってはこなかった。その瞬間にシャーミリアが飛び、その鋼鉄をも斬り裂く爪攻撃を繰り出した。

「ぐあっ」

次の瞬間、空間から緑色のしぶきが舞った。

《手ごたえはあります。体のどこかを斬りました》

《了解》

「バーカ!お前はノロいからすぐに捕まるんだよ!全くとろくさい奴がいたもんだな!」

LRADで叫ぶが、今度は攻撃がやってこない。どうやらシャーミリアに負わされた傷で、すぐに動けなくなったらしい。

《シャーミリア。次はM240中機関銃を撃ち込みまくってみろ》

《かしこまりました》

「どうした!もう終わりか。なっさけないなあ、まさかこんなんで俺の命を狙おうと思っていたなんてなア、いったいどこの間抜けが差し向けた刺客なんだか。おれなら絶対っ」

シュキィン、ジャキィン、シャキーン。次々に切り落とされていくLRAD。しかし俺に届く事は無かった。その瞬間シャーミリアが飛び、中機関銃の掃射を行った。

ババババババババババババ!

「ぎゃぁあぁぁ」

《消えました》

《やったか?》

《恐らく死んではいないかと思われます》

《手ごたえは?》

《ありました》

なるほど。どうやら敵は音を頼りに攻撃するが、敵が攻撃している時はこちらの攻撃が通るらしい。だが深手を負っても姿を消す力はあるようだった。

《ご主人様》

《どうした?》

《離れていきます》

《俺を連れて追え》

シャーミリアは直ぐに俺の下に現れて、その出たり消えたりする気配を追って飛び始める。どうやらそいつは、俺達の隊がいた方向へと向かっているようだ。

「先回りして降りてくれ」

「は!」

シュッ、ドン!シャーミリアは深い森の中に、地響きをたてて下りた。

「どこだ?」

「気配が消えました。恐らくは隠れたかと、身動きはしていないようです」

シャーミリアが気配を追えない…。

これまでそういう現象が起きたのはエルフの里を内包する、二カルス大森林の北と南に分かれた時だ。あの時はシャーミリアが俺の気配を見失い、半狂乱になったのだとオージェに聞かされた。オージェとカララとドランなどの主力の力で、何とか取り押さえたと聞いている。

「そう言えば、エミルのヤカンもそんな感じか…異空間」

俺がポツリとつぶやく。

「ご主人様。敵が動く様子がございません」

「恐らく深手を負っているんだろう。動いたらお前に殺されると思ってるんだよ」

「もちろん次は仕留めます」

《ミリア、瞬殺はダメだ。情報を聞き出したいんだ》

《かしこまりました》

とはいえ、相手が動かない事には打開策が見つからない。

呼ぶか

《ファントム、俺の所に来い。アナミスとマキーナは隊を連れて、ルタン方面に後退してくれ》

《……》

《はい》

《かしこまりました》

身動き取れないし、味方を危険に晒すわけにはいかない。敵が他にいないとも限らないので、本体を逃がすのを優先する。

《はやくおし!ウスノロ!》

シャーミリアがファントムを叱りつけている。とはいえ、ファントムはシャーミリアのような高速飛翔は出来ない、出来る事があるとすれば‥‥と思っていたら、やはりそうなった。バキバキバキバキ、遠くから木々が倒れる音が聞こえる。恐らく木を避けることなく一直線にここに進んでいるのだろう。

「来たか」

俺の側には、体のあちこちに木や葉っぱをくっつけたファントムがいた。

「さて」

敵の正体はつかめていないが、恐らくは異空間系の力を使うやつだと推測された。

《恐らく敵は異空間を駆使している》

《はい》

《俺達が隙をみて入れるかとも思ったが、中に入ったとたん閉じ込められたらこちらの負けだ》

《左様でございます》

《ファントム。ミニガンを下ろせ》

ドサドサとファントムが装備を外す。それを確認して俺はLRADをまた数台召喚した。

《敵が動くかは分からないが、ミリアはファントムと二人で行動してくれ。敵を斬るのを辞めて引っこ抜けるか?》

《最善を尽くします》

《引っこ抜いたやつをファントムが受け止めろ。絶対に離すなよ》

《……》

《じゃあ行くぞ》

「おい!にらめっこしてたって、どうしようもないぞ!お前が潜んでいる事は知ってるんだ、どうせ逃げられない!顔を出して俺と一騎打ちでもしようじゃないか、それならお前にもっ」

バッ!シャーミリアが消え、ファントムがどうにかついて行く。

シュバ

LRADの頭が何個か落ちるが、シャーミリアが引き抜くのが早かった。抜かれたやつをファントムがしっかりと受け止める。

《とりました》

《でかした》

俺がファントムのいる場所へと近づいてくと、両手を左右に引かれ十字架のように捕らえられているやつがいた。シャーミリアが喉元に鋭い爪を突き付けている。

「これはこれは、ようやくお出ましかい?」

俺がぐるりと回って、ファントムの前に行くと意外な光景が目に入る。ファントムにつかまっているのは、目鼻立ちの綺麗な女の子だった。濃い紫の肩までの髪に、皮か何かで出来たボディースーツ、露出が多くガムテープをぐるぐる巻きにしたようなデザインだ。生足魅惑の…前世でこんな服を着て、ミュージックビデオに出てるお兄さんを見たことがある。だが特徴的なのは、耳の上からうねるように上を向いて生えている大きなツノだ。

「くそ。簡単な仕事だと思ったのに」

「残念だな。お前は何者だ?」

「ボクは何者でもない」

うわあ。ボクッ子だ。可愛い顔と露出のある服でボクって。

「デモンが何の用だ」

「なんの用でもない」

「じゃあ消していいか?」

足をじたばたとさせるが、シャーミリアの爪が食い込んで止めた。

「デモンにも血があるのか?」

「人間のような下品な赤じゃない」

そいつの体からは血か体液のような物が滴っている。だが色は赤では無く緑色だった。だがどこを見ても傷があるようには見えなかった。確かにシャーミリアが傷つけたはずだった。

「傷をつけたはずだが?」

「そんなもん、再生する!」

「なるほど。じゃあ細切れにしたり、完全に焼却したらどうなる」

「……」

「答えろ」

「し、しらない」

グイ。シャーミリアの爪が少し刺さって、首から緑色の液体が流れ出る。

「帰る」

「どこに?」

「デモンの国だ。この世界じゃない」

「それだけ?」

「も、もちろんだ」

スパッ!

「ギャ――――」

シャーミリアがもう一つの手の爪で、腕を一本切り取ってしまった。腕は地面に落ちて灰になって燃えた。

えっと…なんで切った?

ずるぅ、と音を立てて新たな腕が生えて来る。

「トカゲみたいだな」

「うるさい!」

スパッ!

「ギャ―――――」

また同じところから切り落とされて、腕が地面に落ちて燃える。ずるぅ、と再び腕が生えて来た。

「じゃあ、最初から聞くぞ。時間はたっぷりあるんだ、こいつらは人間じゃないから食べなくても死なないし、延々と続くぞ」

「お前のようなヤツがっ」

スパ!

「ぎゃぁぁぁぁぁあ、ヤメロ!」

「痛いのか」

「痛いわ!」

また腕が落ちて燃え、腕がゆっくりと生えて来た。どうやら腕の生える速度が少しだけ遅くなったみたい。シャーミリアは、コイツの俺に対する応対が気に入らないようだ。

「じゃあ、最初っから」

「うぅう…」

見た目が女の子だから、ちょっとだけ可愛そうになるがデモンなのでそうでもないと思い直す。

「お前は何者だ」

「……」

シャーミリアが今度は足に向けて爪をのばした。

「バティン」

デモンが慌てて答える。

「それがお前の名前か?嘘じゃないか?」

「デモンは自分の名を嘘はつかない」

「なるほど。誰の差し金だ?」

「それは言えない」

スパッ

「ぎゃああああああああ」

バティンの足がスッパリ切り落とされ、地面に落ちて燃え始める。ずるるるるるっとゆっくり足が生えて来た。また再生速度が落ちてきたようだ。

「や、やめろ!け、契約なんだ。だから口からでてこないんだ」

「なるほど。嘘じゃなさそうだな」

「ボクをどうする?」

「答えている間は生きていられる。質問が終わったら細切れにして焼却する」

「まて!ボクは召喚されたんだ!」

「なるほど、それで?」

「北の大陸にいる魔王子を消せといわれた」

「それで、ここにたどり着いたのか?」

「探しまくった。大きな機械があればそこにいると」

「そういうことか」

敵はやはり俺の事情を知っているやつだ。アブドゥルかその黒幕と言ったところか。コイツも供物と引き換えに召喚された口らしい。オスプレイを発見して待ち伏せしていたようだ。

「どこから侵入した?」

「西の山脈に設置された、転移魔法陣だ」

「こちらに送られたのは何人だ?」

「ボクだけだ。あとはしらん」

「嘘をついてもためにならんぞ!」

「嘘ではない」

「どうだ?」

シャーミリアに聞く。

「嘘は言っておりません」

シャーミリアが言う。どうやら本当のことを話しているらしい。

「さっき出たり入ったりしてたな、どうやってんだ?」

「ボクの住みかにだ」

「住みか?住みかが移動するのか?」

「少しの距離だけ、動かすと放り出されるからまた入って動いて」

「それで追いかけて来たのか」

「そうだ」

なるほど、ずいぶん器用な事をするものだ。それでシャーミリアについて来るのだから大したものだな。それが瞬間移動の正体だったというわけだ。

「それでお前が俺を始末出来ないとどうなるんだ?」

「殺すまで付きまとうだけだ」

あらら、ずいぶん残念な答えが返って来た。ならこいつを生かしておけば厄介ごとが消えないって事だ。

「さて…」

俺が次の言葉をかけようとした時だった。

「あららら、バティン。お前ぶざまだねぇ」

森の陰から少年のような声が聞こえるのだった。シャーミリアがバティンから離れて警戒する。俺は咄嗟にウージ―を召喚して、声の出た方に掃射をかますのだった。

パラララララララ

《デモンです。森に隠れております》

《バティンは嘘を言っていないんだよな?》

《はい。恐らくバティン自体も驚いておるようです》

《じゃあこいつもしらない別動隊か…》

《はい…》

「てか、なにその凄い奴ら…困ったなあ…」

少年のような声は飄々と、困って無さそうに俺達に声をかけて来るのだった。俺達が声の方向を警戒していると、ゆっくりとした足取りで木の陰から影が姿を現すのだった。