軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第57話 逃げ場ない殺戮場

集まってきた兵士を狙撃して100数名ほど倒した。

死んだ者もいたようだが、数名は重傷を負ったもののその場に倒れてうめいている。

しかし、敵も攻撃されたことで建物内や路地に隠れてしまった。やはりこの装甲車はそれだけの威容なのだろう。また月が雲に隠れてしまったため、松明の灯りだけが頼りの兵士たちには、M1126 ストライカーが攻撃してきたように感じたのだ。屋根の上からの銃の攻撃だとは思わない。

そこで俺は次の作戦に移った。

「よし、屍人が最後尾の人間を攻撃し始めた。」

「はい」

シャーミリアの作った屍人部隊は噛んで攻撃するのではなく、剣や斧で攻撃していた。シャーミリアが指示した通り動くらしい。ゾンビには恐怖や痛みはないので、無理な捨て身の攻撃をする。それに対し相手は生身の人間だ、かなり押し込まれている。

「乱戦になっているな。」

同じ鎧を着ているのと暗闇のため、バルギウス兵は敵味方がよくわからなくなっているようだ。パニック状態になって戦っている。兵士同士が斬り合ったりしているのもいるようだった。俺がFWS-Sナイトビジョンで見ると、生きている騎士とゾンビの騎士では微妙に違うため見分けがつきやすい。

「温度の差かな?」

「ラウル様いかがなさいましょう?」

シャーミリアが聞いてくる。

「おう、ちょっとまて。」

「差し出がましい真似をいたしました。申し訳ございません。」

「問題ない。」

さてと、そろそろ良いかな?

「ミーシャじゃあ例の物を頼む。南側に向けてスピーカーを向けてくれ。シャーミリア、ミーシャが後ろから攻撃されないように援護を頼む。」

「はい。」

「かしこまりました。」

ガパン!

天板を開けてミーシャが上半身を出す。

天井に設置しておいた非殺傷兵器LRAD (ロングレンジ・アコースティック・デバイス)をゾンビと兵士が戦っている方向へ向けた。これはヴァンパイアとの乱戦の時にも使用した兵器で、角度30度の狭い範囲で2.1〜3.1キロヘルツという高音を発射する武器だ。この音に長時間さらされた場合、永続的な聴力障害をも引き起こす。デモの鎮圧にも使われている。

「ミーシャ。念のため車内に戻って天板を閉めろ。」

「はい」

「スイッチを入れろ」

「はい」

キュイキュイキュイキュイキュイ!!!

「う!うわ!なんだ!」

「耳、耳が!!」

「ぐあ!くそ!」

「やめろぉぉ」

大音量が狭い範囲で発射される。あまりにもの音に兵士には耳を塞ぐものや、ゾンビと戦っているときに音を浴びせられて、ひるみ殺されるものも出てきた。逆にゾンビには音の攻撃は全く効かないようだ。

「シャーミリア。お前たちはあれに苦戦したんだよ。」

「はい・・でも、今はほとんど音が聞こえませんが?私奴も問題なく動けています。」

「そうなんだよ。あれは向けた方向にしか音がいかないからな。」

「すばらしい。ご主人様の御業はなんと神々しいのでしょう。」

俺の技というより、機械の性能のおかげなんだけどね。

「シャーミリア。屍人や俺の攻撃に押されてそちら側に兵が逃げたら、銃で攻撃をあびせろ。」

「かしこまりました。」

俺はバレットM82対物ライフルのスコープに、FWS-Sナイトビジョンをつけてゾンビと騎士の戦いを見ていた。ゾンビと騎士では少し見え方が違うので生きた兵を狙いやすい。俺が国境沿いで狙った時は2㎞以上あったため狙いを外したが、ここからなら水平距離で1キロもなかった。縦に100メートルくらいあるので遮蔽物もそれほど気にならない。

「じゃ、じっくりと潰していきますか。」

スナイパーライフルを構えナイトビジョンで見える生きた敵騎士に狙いをつけて撃つ。

ズドン!

バクゥ!

頭を半壊させ脳漿を飛び散らせて一人倒れる。

「さて、次は。」

囲みで1体のゾンビを攻撃しているやつらの1人に狙いを定める。

ズドン!

バクゥ!

「うわあ、なんだ急に倒れたぞ!」

「屍人の攻撃なのか?!」

「お、おい!起きろ!」

「いったいなんだってんだ!?」

また脳漿を飛び散らせ一人倒れた。俺はそのまま淡々と狙撃作業を続けた。狙撃銃なんてものはこの世界には皆無なため、急に頭を割られて倒れる仲間を見て、さらにパニックになっていた。慌てているところにゾンビの一撃をうけて頭を割られるものもいた。騎士たち半ば半狂乱で戦っていた。

「よし、ゾンビの援護をして生きてる奴を倒せば、どんどんパニック状態に陥いるみたいだな。一件一件やっていくか。」

俺は違うパーティーを狙う。

ズドン!

バクゥ!

「敵がこちらに押し出されてきました。」

「ああ、順次撃っていいよ。」

作戦どおりうまく押し出されたみたいだ。

ガガガガガ ガガガガガ ガガガガ

M240機関銃の掃射をうけている。

「うわああ、こっちはダメだ・・押すな!グバァ」

「おい!戻れ!こっちは・・ゲボォ」

「なんだ!なんなんだよ!!グゥ」

パタパタと路地の出口や玄関先に積み上げられる負傷者や死体たち。

「あ・・ご主人様!申し訳ございません。。路地の出口や玄関先に死骸が積み上がり、敵の逃げ道を塞いでしまいました・・」

「わかった。今度は気を付けて少し整理しながら撃ち殺すようにしろ」

「かしこまりました。」

シャーミリアと話をしていると、街の奥側から人がやってくるのを感じた。

「ん?街の奥の方からフードをかぶって杖を持ったやつら数人が、光をまとってやってきたな。」

30名くらいの騎士たちに囲まれて何人かが光っている。あの光・・おそらくは魔法使いだ。とりあえず魔法使いを静観していると、魔法使いたちは数人でゾンビの元に来て魔法を発動した。すると魔法の光が広がった次の瞬間10体くらいのゾンビが倒れた。

え!?なにそれ?

「シャーミリア。お前のほうからは見えないと思うけど、屍人が倒されちゃったぞ。」

「どんな魔法でしょうか?」

「光がふわっと広がったところにいた屍人が倒れた。」

「光属性の破邪の魔法です。私の呪いが解かれたようです。」

「わかった。魔法使いを狙撃してみる。」

「数名いるのであれば、間を置かずに攻撃されることをおすすめいたします。」

「なぜだ?」

「魔法使いであれば、撃った方向からご主人様の場所を特定するやもしれません。」

「了解した。」

そりゃ困る、位置が特定されたらせっかくのゾンビ部隊押し出し作戦が厳しくなる。

「おっと、また光を発し始めたぞ・・」

俺は魔法のイメージを高め集中して魔法使い集団を見る。1・2・3・4 、4人いる。バレットM82についたFWS-Sナイトビジョンで動きは丸見えだが的は小さい。連続でなんて前世の世界じゃあ考えられない神業だが・・

速射スナイプ・・いけるか。

ズドン!ズドン!ズドン!ズドン

バクゥ、バクゥ!バクゥ!バクゥ!

「よし! 」

4人とも意識外から撃たれ即死したようだ。

「くそ!魔法師たちがやられたぞ!」

「なんでいきなり死ぬんだよ!」

「お前たち・・屍人なんかになりやがって!」

「た、耐えろ!押し返せ!」

兵士たちは頼みの綱の魔法使いがやられて焦っているようだった。魔法使いを護衛するように一緒に、30名ほどの騎士がこちらにやってきていたが慌てて散開した。街の人間を捕らえて見張っていた騎士達だ。

「街の人の見張りが手薄になってるって事か・・」

やはり・・人間を大量に殺したおかげで俺の能力があがっている。狙撃銃の反動をがっちり抑え込むことができている。さらに魔法イメージを重ねることで連続スナイプの精度が上がった。夜間にこれだけの成果が上げられるのは、FWS-Sナイトビジョンの性能によるところも大きいが・・

ん?

「またほのかに俺の手の痣が・・光ってんな。魔法使いの魂は特別なのか?」

魔法使いを殺害したところかなりの魔力が流れ込んで来た。

《まちがいない・・魔法使いはおいしい。》

ガガガガガ ガガガガ ガガガガ

M240機関銃の射撃音が聞こえてきたため、俺は一度射撃を止めてシャーミリアの視界に同調させる。見えてきたのはゾンビに押し出されてきた兵士が、ドミノのように崩れているところだった。

「シャーミリア、うまくいっているようだな。」

「人間が重ならないように気をつけて丁寧に殺しております。面白いように騎士が倒れていますわ。」

人を殺してシャーミリアが高揚している。俺の兵器で人を殺した分の魔力の流れ込みが、系譜の下にも影響があるようだ。

「俺がこちらから屍人を援護して有利に戦闘を進めているが、また光系統の魔法使いが来ると不利だ。」

「はい、私奴も聖属性魔法には分が悪いです。」

「わかった。」

なるほど。ヴァンパイアは聖魔法には弱いのか?ならさっきのような魔法使いが来たら危険だな。

「シャーミリアは機関銃と弾倉バックパックを外し、その場をマキーナに任せて俺のところまで戻れ。」

「かしこまりました。」

「マキーナはそこで待機、出てきた騎士を撃て。」

「は!」

「マキーナはシャーミリアが使っていた武器も使っていいぞ。」

「はい。」

その間も俺は、ゾンビの援護をするために兵士を1人1人始末する。

ズドン!

バクゥ!

ズドン!

バクゥ!

スコープを覗いていると、何が起こっているのか分からない敵兵が、極限のパニック状態になっているのがわかる。見たことの無い武器は恐ろしいものだろうな。とりあえずゾンビは継続して援護しておく。

「もどりました。」

凄いスピードで飛べるヴァンパイアは本当に重宝する。

「シャーミリア。お前に次の任務だ。」

「はい」

さらにシャーミリアが付くまでにミーシャに指示を出す。

「ミーシャこれからシャーミリアがそっちに行って作業をする。LRAD の音を切ってくれ、シャーミリアが作業をしずらくなる。」

「はい。」

「マリア、一度車を、後方の街の入り口付近まで進めていてくれ。」

「はいラウル様。」

グチャ。グニュャ

「ぐあっ!

「うぐっ!」

「ベベッ」

死体やまだ生きている兵士を踏んづけながら、まっすぐにM1126 ストライカー装甲車がバックで進み始め来た道を戻っていく。

作戦は次の段階に入ろうとしていた。

「シャーミリア、これから俺たちの車に向かい乗り込め。」

「かしこまりました。」

「そして、乗り込んだらやってほしい事がある。」

「お望みのままに。」

「それは・・」

俺はシャーミリアに対して次の作戦を説明した。一つ一つ丁寧に相槌を打ち俺の話を聞いている。なまじ超がつく美人なのでヴァンパイアなのにドキドキする。唇の赤さがなまめかしすぎる。

いかんいかん・・集中。

「・・・というわけだ。」

「かしこまりました。」

「では行け。」

サッっと闇夜に溶け込んでいくシャーミリア。

「よし、まだ継続して狙撃を続けるか。戦場をさらに混乱に陥れる為に。」

ズドン!

バクゥ!

また一人騎士を倒し、そこにゾンビが襲い掛かる。

ガガガガガ ガガガ ガガガガ

押し出てきた兵士をマキーナが忠実に殺しているようだった。

「準備ができました。」

シャーミリアから連絡が入った。

「ラウル・・本当に上手く行くかしらね・・」

イオナが心配そうに聞いてくるが、もう作戦は進んでいる。

「母さん、最善を尽くそう。」

俺にもここからは賭けだった。