軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第552話 真実の告白

東の山脈から平野に出るまではかなりの距離があり、国一つ分くらいに延々と山脈が続いていたのだった。エミルが操縦するMV-22Bオスプレイで飛ばなければ、恐らく魔獣の群れがシン国にたどり着く時までに到着できなかっただろう。改めて自分のチートさに感謝するのだった。今は平野の上空を飛ぶ機体の中で話をしているところだった。

「東の山脈があのように広大じゃったとはな」

「普通の人間に踏破は無理ですね」

「まず無理じゃろうな」

「動く山脈を出たとして、オージェがいるからいいものの居なければ魔獣が来ますし」

「魔獣どころか、普通に遭難してしまうじゃろうて」

「そうですね」

「このラウルの飛ぶ乗り物があるおかげで、世界の謎がいろいろと解けそうじゃな」

モーリス先生がワクワクしたような表情で言う。

「ふふ。平和な日々が戻ったらぜひ一緒に冒険をしましょうね」

「そうじゃな」

俺とモーリス先生のほっこりする会話を、みんながニコニコと笑って聞いている。モーリス先生は飛行機やヘリに乗るととにかく上機嫌になる。本当に空を飛ぶのが好きなようだった。

《この世界に来て小さなころからずっと先生に教わってきたからな、なんというか本当のおじいさんのように感じてしまうなあ》

「なんかラウルと先生の会話を聞いてると、エルフの里に居た頃を思い出すよ。長老様が俺達小さなエルフにいろんなことを教えてくれた。そのおかげでこの世界の事を知る事が出来たんだよ」

「エミルにもそんなことがあったんだな」

「そう言えば俺もそんなことがあったな」

「オージェもか」

「ああ、龍の里に居た長老にいろんなことを教えてもらった。おかげで人間の大陸の事を知ったんだよ。そして居ても立っても居られなくなって単独で旅を始めたからな」

「あの過酷な北の山々と冷たい北海を越えて来たんだからな…オージェは凄すぎるよ」

「まったくだ」

俺とエミルがしみじみと言う。

《だって、魔人国の北の山脈で俺はラーズとの訓練で死にそうになったしな…しかも海竜がいる北海の海を泳いで渡ってくるなんて、どう考えてもあり得ないんだけど。前世が自衛隊のレンジャーだからといって度が過ぎているように感じる》

「いや、お前らの方が酷かったろ。仲間や親が殺されて逃げたり捕らえられたり悲惨な体験をしているじゃないか」

「まあそれは確かにそうだが」

「そう言われれば、みんな壮絶な経験をしてきたよな」

「そうですよ!みんな本当に凄いですよ」

グレースがうんうん!という感じて言う。

「いや、俺達からしたらグレースが一番凄いよなあ」

「ああ。いきなり卵で生まれて飛ばされて奴隷になって、やっとオンジさんに助けられてここまで来たんだもんなあ」

「えっ?いや全然大したこと無いですよ。だって前世では週7で出勤して、週一は徹夜して毎日午前様のような生活を何年もしてましたからね。激やせしすぎて死を感じて会社を辞めたんです。まあ別に他の社員みたいに心が病んだりもしませんでしたが、フリーランスになって初めて今までの生活が異常だったのかもって気づいたくらいですし。この世界の楽勝モードに驚いたくらいです」

「いやいやいやいやいやいや」

「いやいやいやいやいやいや」

「いやいやいやいやいやいや」

俺とオージェとエミルの声が重なった。

「まず週7ってなんだよ」

「いや、それでも月に2日くらいは休んでましたよ」

「月2て」

「そんな。こっちの世界に来てから休日なんてないじゃないですか」

「‥‥まあそうだな」

「たしかに」

「それはそうだが」

「まあ僕もフリーランスになる前に気づけって感じでしたけど」

「まあそうだな。そうやって厳しい環境でやって来たからこそ、その後の成功があるんだもんな」

そう。グレースは前世でフリーランスとしてプログラミングの会社を立ち上げ、営業マネージメントシステムを開発してクラウドで提供し大金持ちになった。そのおかげで時間に余裕が出来て俺達と知り合い、サバイバルゲームにのめり込んで行った。それ以前の過激なブラック企業のおかげで、そのメンタルとスキルを培ったのだった。そう考えたら奴隷になって食事も約束され、仕事をして過ごした幼少の頃なんてどうってことないと言いたいのだろう。

「まあ僕にとってはオンジが先生ですかね」

「確かにな」

そんな思い出話をしていた時だった。

「ちょ…ちょっと待ってください!」

エドハイラが慌てて口をはさむ。

「なに?」

「前世ってなんですか!」

《そう言えばそうだった。この4人がそろった時にエドハイラに話そうと思っていたんだった》

「ラウル。まだ話してないのか?」

「4人がそろった時の方が良いと思ってな」

「なるほど」

「その方が良いかもですね」

「えっとハイラさん。俺はあえて黙ってたんだけど、実はこの4人は転生してきたんだ」

「……」

「俺達は向こうで死んでこっちに生まれ出て来たんだよ」

「生まれ出て…」

「君たちは向こうで生きてて、こちらに強制的に連れて来られた。言わば転移組というやつなんだよ。俺達は向こうの生を終えてこちらに生まれ落ちた転生組なんだ」

「そうだったの…それはそうよね。この機体に潜水艦に車…どう考えても前世で見たものばかりだもの。そしてエミルさんはこの機体を操縦しているし、それを皆が普通に受け入れているし」

「いままで黙っててゴメン」

「いえ。普通に考えたらそうよね、これってアメリカの飛行機よね」

「そうだね」

「こんな力を持って生まれたの?」

「そうだこういうのを呼び出せるんだ。そして俺以外のこの3人はこの世界の神になった」

「…えっと、なに?」

「神」

「神って、神様?」

「ああ、あのアトム神も神の一人だけど、このおっきな男が龍神でこのエルフが精霊神でこの虹色ヘアーの少女に見える奴が虹蛇さ。全員ハイラさんと同じ元日本人だ」

「もしかすると…あなたは」

「ああ、俺も覚醒はしていないが魔神と呼ばれるものだと思う」

「‥‥」

エドハイラは、物凄くショックを受けたようだった。ただ茫然と俺達を見つめていた。

「もしかして、アトム神とラウルさんは仲が悪いのかしら?」

おもむろにハイラが言う。

「あ。まあ別に仲が悪いわけじゃないんだけど、アトム神は神々が既に代替わりしていると知らないんだよ。恐らくはあの人、いや…神も代替わりの時期なんだが、おそらく俺の前任者とアトム神が相容れぬ関係だったんだろうな」

「やっぱり!なんとなくだけどそんな形がみえたのよね」

エドハイラが不思議な事を言う。

「えっと、見えたって?」

「最初にこの世界に来た時に、呼び出した神官が悪だと気がついたり戦闘で危険を察知したりするのと一緒。なんとなく見える感じがするの。でも一連の今の話を聞いてパズルが組みあがったわ」

「それで、俺とアトム神が相容れぬ感じだと?」

「そう」

やはりエドハイラの力は見る力だった。あるべき形を見る力なのか先を見越す力なのかはわからないが、何かが見えるらしい。

「アトム神に何か見た?」

「何というか。弱っている感じ?強がっているようだけど力がなくなってきていて、危うさがあったように思う。それを隠すためにあんなに高圧的な態度をとっているような…」

「なるほどね。やはり人の信仰が弱まって弱体しているというのはあながち間違いじゃないようだな」

「信仰?」

「人の信仰の無さがそれを危うくしているらしい」

「するとあなた達はその信仰があると?」

「うーん。それは分からない」

「だけど何というか大勢の力を感じるわ」

確かに俺は大勢の魔人のおかげで力が湧き出ているようだった。系譜の下から上に上から下にその力が巡っているように感じる。

「なるほど。俺の力の源は里の龍たちのおかげって事か。それならばうなずける…人間の世界に行って見聞を広げ、ことあれば助けてこいと強く言われた。勝手に出て来たようだが、長老にはそう言伝をもらっている。それが龍族の総意であると」

オージェが確信をもって話す。

「俺もだな。エルフの里や獣人たちの祈りや信仰は真っすぐだった。俺も幼少の頃から強く崇め信仰する様を見て来たからな。エルフの魂は繋がっているし、俺が精霊神になるとすぐに皆が俺を奉るようになった」

エミルが言う。

「うーん。僕はどうなんでしょう?なんかそう言うのはあまり感じてこなかったように思いますけど」

「でもオンジの家系のような守護の一族もいるし、シン国の人々は虹蛇を神として認識していたよな」

「あっ!そういえば、シン国の大ババ様とやらがやたらと僕を拝んでましたね。エルフの皆さんもやたら丁重に扱ってくださいましたし」

「ふむ。アトム神の力の源である大陸北の人間達は、自分の利益や立場ばかりを気にして信仰を無くしてしまったのじゃろうな」

先生が感慨深い表情をする。

「確かに」

そんな俺達の会話をエドハイラは黙って聞いていた。

「えっと、もしかしたらラウルさんはまだなのでは?」

「わかる?」

「恐らく…既にいるのだと思いますが、何かが邪魔をして出てこないというか…うまく言えないですが、もしかしたら…ラウルさん自身かも」

「俺自身?」

「ごめんなさい。よくわからないし、それを見ようとすると気が遠くなりそうです」

エドハイラの顔色が悪い。

「ふむ。ハイラ嬢ちゃんよ、ラウルをのぞくのはそのくらいにしといてほうがええわい」

「は、はい」

「あの」

アナミスが話し出す。

「ハイラさん。恐らく命の危険があると思いますので、やめておいた方が良いかと思います。私達でも無理なのです」

「わかりました」

「とにかく俺達の事は分かってくれたかな?ちなみに君と一緒に来た日本人には言ってない。まあ…君から言ってくれてもいいんだがね」

するとハイラが少し考え込む。

「どうした?ハイラさん」

「あの、彼らの事なのですが…」

「はい?」

「彼らは彼らであって彼らで無いというか、何と言っていいのか分からないのですがまったくの別人です」

ギクッ!この女…気が付きやがったな。

とはいえ別段どうという事は無い。

「どうなんでしょうね。きっとこっちの世界の人に触れて改心したんじゃないですかね?」

俺が言うと、魔人以外の皆が微妙な空気感で俺を見つめている。なるほど、”そこ”は嘘をつくんだ。という顔で見ているように感じた。魔人達はさも当然のようにウンウンと頷いている。

「そのとおりです。ご主人様の素晴らしさに触れ彼らは変わったのですよ」

「ええ。ラウル様と神々の素晴らしさに触れて改心したのです」

「そうですわ。彼らの曲がった気持ちはきっと真っすぐに伸びたことでしょうね」

シャーミリア、ギレザム、カララ、の順に言う。しかも心からそう思っている。

「なるほど。じゃあ今度彼らに会った時は私も距離を置かずに話してみようかな」

魔人達が心から賛同する様に、エドハイラも見抜けなかったようで信じてくれたようだ。日本人の感性として、魂の奥底から人間自体を変えてしまったなんて知られたら軽蔑されそうだし。とにかく魔人達が天然でナイスフォローしてくれた。転生の話をすると絶対そこに話が行くと思って伏せていたのだが、やっぱりこのメンバーがそろった時に話してよかった。

「ラウル。シン国が見えて来たぞ」

エミルに言われ俺達が窓から外を見ると、草原の向こうに都市が見えてくるのだった。アグラニ迷宮を抜けてからすでに5日が経過していた。敵なのか自然発生なのか分からないが、魔獣の群れは未だにこちらに侵攻している事だろう。デモンの存在もあったという事実から考えても、間違いなく敵の侵略であると確信しつつ次の行動に移るのだった。