軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第542話 潜在能力

リュート王国への人民の流入作戦は成功だった。数はそれほど多くないとはいえ1000人以上来てくれている。家族で移動して来た者もいて王都での生活に期待しているらしい。王以下全て平民という構成はまるでグラドラムのようだ。俺はモーリス先生と二人で話をしていた。モーリス先生が王立図書館に籠っていたので会いに来たのだった。

「魔人達が王族の服を着ているので、民が魔人を貴族だと勘違いしているようですけど本当にそのままでいいんですよね?」

「まあカトリーヌにも何か考えがあるのじゃろ。王族も貴族も殺されたか不明じゃからのう。当面は魔人に貴族のまねごとをしてもらうのがよいかもしれんのう。」

「はい。まあカトリーヌの考えは聞いてはおります」

「貴族の考え方はよう分からん」

魔人達に貴族の服を着せたままにしようと言ったのはカトリーヌである。

「まあ王政はあった方が私は良いと思いますが」

「そうかの?」

「封建制度の方がこの世界では良いような気がするのですよ」

「ふむ。わしはそれ以外の制度を知らんがのう」

「前世では民主主義といって民が主権をもつ、または資本主義という経済主体の国家構造だったのですが、自由なようで資本を持つ者が資本をもたないものを支配するような構造でしたから。民が決定権を持つ民主主義と言いつつも、支配する側とされる側がいたように思います」

「なるほどのう。王以下みなが平等であれば封建制度の方が自由という考え方もあるか」

「まあ難しい事は分からないんですけど、グラドラムがそれで理想的に回っていたような気がしましたので」

「そうか。わしゃ王政か帝国主義しかしらんからの、どちらにも一長一短があるように思う」

「魔人達には欲がありませんからね。貴族の真似とはいえ市民たちが良くなるように働くでしょうし、お金の価値すら分かっていない者達ですから変に搾取したりしないのが良いと思います」

「ふむ。欲のない貴族もどきか、ふぉっふぉっふぉっ!おもしろいのう」

「ある種実験ですよね。半分はカトリーヌの入れ知恵ですが」

「そうじゃな。わしが魔人を引き連れて行こうと提案したとき、ラウルが人間と変わらん見た目の奴だけを選りすぐったのは、そう言う目論見もあったのじゃな?」

「はい。どうやって早く王政を機能させようか考えました。それには私の系譜で指示ができる者達がいた方が良いと思ったのです」

ここリュートではゼダ王を中心とし、仮の特権階級を与えた魔人に国の運営をさせてみようと考えていたのだった。さらにギルドは既にマナウ市のライードが冒険者ギルドマスター、ドバが商業ギルドのギルドマスターとして表立って公表している。陰で暗躍するのが魔人となるが、俺の系譜に入っている以上は魔人は絶対におかしなことをしない。王以下の陰の実力者は全て魔人という形になる。

「それでゼダは了承しておるのか?」

「はい。いずれにせよ今はゼダは何の力も持たない王ですから、魔人が王の周りをかためておかないと話になりませんし」

「まあそうじゃな」

「その間に国内の貴族を探させるという条件もありますが、果たして敵の目をかいくぐって生き残っている貴族がいるかどうかです」

「凱旋パレードもやったのに、王都に貴族が来ないのじゃから絶望的じゃろうがな」

「だと思います」

「やはりリュートはリュートで課題が山積みじゃのう」

「はい」

むしろ王族と市民が生きていたラシュタルの方が再興は早いかもしれないが、冒険者の数は圧倒的にリュート王国の方が多い。物資の流通を考えてもアグラニ迷宮があるリュートの方が復興は簡単だろうと思う。国民に元気が出なければ国は強くならない。

「むしろ大国のユークリット王国とファートリア神聖国が、かなりズタズタじゃからのう。もともとダンジョンがあって冒険者がたくさん住み着いている、リュート王国は強いかもしれん」

「はい。私もそう考えておりました。ラシュタルにはティファラ女王やルブレスト達兵士が残っていましたが、国力が弱くなっているので時間がかかると思うのです。ユークリットにもトラメルなどの辺境伯が残っていたものの、ほとんど機能してませんからね。どちらも魔人の力なくしては復興はかなり時間がかかると思うのです」

「じゃから各地に基地を設置して、後ろ盾になっておるのじゃろ?」

「はい。ですがここリュートではゼダが全面的にこちらを頼って来てますから、魔人を入れ込んで内部からやってみようという事になったのです」

「逆にじゃな」

「はい」

「そう考えると、骨抜きのバルギウスはいまいち頼りにならんのう…」

「そこなんですよね。力のある騎士が大量にいるのであそこをどうにかしたいのですが、そろそろタロスを動かしてどうにかさせましょうかね」

「ここがある程度落ち着いたら行ってみるのもありじゃろな」

「はい」

モーリス先生の文献のチェックを邪魔して話をしに来ていたので、そろそろお暇させていただこうと思う。

「じゃあマリア!モーリス先生をよろしく頼む。モーリス先生もお休みになりながらにしてくださいね」

「わかったのじゃ。もう間もなく気になる文献は全て目を通すから、そしたらゆっくりさせてもらうよ」

「わかりました」

そして俺は王立図書館を出た。図書館は城の一室にあったのだが、想像していたより大きく大量の文献があったのだった。モーリス先生は目をキラキラさせてほぼすべてチェックするつもりらしい。俺はそのまま王城を出て市民の様子を見に行く事にした。図書館を出ると待合室に、カトリーヌ、シャーミリア、マキーナ、アナミス、カララ、ルフラ、ルピアが勢ぞろいして待っていた。

「あ、待ってた?」

「すみませんご主人様。都市を歩くと皆が見るのです。あまり出歩くのは良く無いかと思われます」

「え?シャーミリアを見る?」

「私奴だけではございません」

「私も…」

「マキーナもか」

「いえ。私もですわ」

「カララも?」

「わたしもですっ!」

「ルピアもか‥って事はルフラも?」

「いえ。私は見られるのを防ぐために、姿を変えております」

「そうか…でもな。それは仕方のない事なんだよ。お前たちは人間離れした美しさをしているんだ…人間が目を離せなくなるのも無理はないんだよ」

「そんなことで見るのでしょうか?」

「そんなこと…ね。お前達にはそうかもしれないけど、人間達は興味の対象としては十分すぎるほどだよ。そして恐らく美しさだけじゃなく、貴族として見られているんだと思う」

「この衣装のせいという事でございますか?」

「そう言う事だ。しばらくは我慢して着ててくれ。カトリーヌの指示でもある」

「かしこまりました」

「はい」

「わかりました」

皆が渋々と従った。

「ラウル様。私は彼女たちが注目を浴びれば浴びるほど、ゼダ王の威を示す事が出来ると思います」

カトリーヌだけは違う意見のようだった。

「まあカトリーヌの案でやっている事だからな。とにかくゼダはこれだけの美女を集める事が出来る王とされるよな。ゼダは少年だからそう思われることに抵抗があるようだけど、異様であればあるほど王の価値は上がるって事で当ってる?」

「はい」

「じゃあこのまま行こう」

まあこれもカトリーヌの才覚の一つなのだろう。

「ご主人様。外出でございますか?」

「ああミリア。ちょっと見てこようと思う」

「それではお供いたします」

「わかった」

「それであれば!ゼダ王を連れてまいりましょう。そしてこの全員で街を練り歩く事を提案いたします」

「分かったカティ。じゃあゼダんとこ行って見るか」

「はい」

俺達は王室に向かう。

「あ、アデルフィア!」

「これはラウル様」

「ゼダ王知らない?」

「中庭で訓練をされてます」

「誰と?」

「ドラン様とギレザム様です」

「ちょっと案内してくんない?」

「かしこまりました」

アデルフィアについて中庭に行くと、ドランとギレザムから体術の指導をされている所だった。ゼダだけではなくリズも一緒に特訓を受けていて、その近くにはエドハイラが座って頬杖をついてみているのだった。

俺達が来たことに気が付いて、ドランとギレザム、ゼダ、リズの手が止まる。

「あー続けて続けて!」

「はい」

ゼダとリズが再び剣を使った体術の訓練をし始めた。ドランやギレザムが剣戟を入れて、それをいなし反撃をする練習を反復してしているようだった。

「筋がいいな」

「ラウルさんはわかるんですか?」

「ああハイラさん。僕もしこたま彼らに特訓されましたからね。まあ未だに誰にも勝ててない気がしますけど」

「私にはあのゼダ王やリズ姫の動きすら、人間離れしているように感じますよ」

「確かにそうかもしれない。人間の兵士になら余裕で勝てそうだ」

「成長してるんですね?」

「そういうことだ」

「ふぅっ」

エドハイラが大きなため息をついた。どうやら自分にまだ何の力も出現していない事に、焦りを感じているらしかった。

「ハイラさん」

「はい?」

「別に戦闘や護身術だけがすべてじゃないです。もしかしたら他の能力に長けている可能性があると思いますよ」

「他の能力?」

「歌を歌うんでしたよね?」

「はい」

「私の部下にも歌を歌って能力を発揮する者がおります」

セイラの事だった。

「歌の能力?」

「まあ…人を癒したり操ったりする能力なのですが、もしかしたらハイラさんにもそんな力があるのかもしれせんよ」

「そうでしょうか?」

「はい…あの…もし可能なら歌を歌う事できます?」

「まあ…でも私の世界の歌になりますけど」

「ならば、今度歌を歌う機会を設けましょう。自分のやりたいことをやっているうちに、何か見つけるかもしれませんよ」

「はあ…」

エドハイラは自信が無いように返事をした。

《前世ではオーディションに落ちまくって諦めかけてたって言ってたもんな…自信を無くしてしまっているらしい》

しばらくゼダとリズの練習をみんなで見守り、一通りの通し訓練が終わったようだ。

「お疲れゼダ」

「お疲れ様です。どうしましたラウル様?」

「都市の視察に行こう。この前市民たちに挨拶をしてからまだ出かけてなかったよな」

「そうですね!では急いで準備をいたします」

「ああ。リズも行くかい?」

「はい!」

そしてゼダとリズはアデルフィアと共に外出の準備をしに行った。

「ギレザム。彼らの能力はどうだ?」

「バルギウスの兵士並には戦えるようになっているかと思われます」

「そうか。ドランがここまで仕込んでくれたんだな」

「とんでもございません。彼らの資質によるものです」

「なるほどね」

「ただ資質以上の物を感じます」

ギレザムが言う

「どういう事?」

「何というか…時に爆発的な力を放出しそうになるようなと言ったらいいのでしょうか?」

「何か秘めたものがあるのかね?」

「まあそこまでは分かりませんが、我の感覚的な錯覚かもしれません」

「そうか…」

まあギレザムが感覚的に見間違えることは無いと確信できる。ギレザムがとらえているものが何か分からないが、ゼダとリズには何かあるのかもしれない。その話を聞いてまた落ち込むエドハイラがため息をつくのだった。自分にどんな資質があるのか分からないのがストレスらしい。

やはり一度、イオナに会わせた方が良い気がするのだった。