軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第540話 リュート王都の受け入れ準備

リュート王国全域にゼドスウェン王子凱旋の一報が回っている頃。俺達はリュート王都へと到着していた。王城はほぼ無傷で残っていたが、都市内の建物には一部破壊されたものもある。100人の魔人達で修繕したり取り壊したりして、都市としての見栄えを良くしていった。

「城が無事でよかったです」

ゼダがホッとしたように言う。

「そうじゃなゼダ王子よ。そしてまさかここにもユークリット王都同様に、秘密の宝物庫があるとは思わなんだ。ユークリットの秘密の書庫とはまた違うようじゃが、ゼダ王子がそれを知っていたのはありがたい。そうでなければ見つけられんかったじゃろう」

「まあ王家の者しか知りませんけど、むしろ魔法師はいなくなっているのでモーリス様が居なければ結界が解けませんでしたよ。宝物庫に入れなくなるところでした」

「役に立ったのならよかったのじゃ。じゃがユークリット王都と違って、書籍の類は無いようじゃがのう。」

「モーリス様は宝玉や金銭、衣装などにはご興味が無いのでしょうか?」

「ない」

「ラウル様もここまでのお礼に金や宝物などをと思いましたのに」

「いや、ほんと使うとこないんだよ。カトリーヌが考えたように、ばらまきぐらいしか方法が浮かばない」

「ラウル様?お金はいくらあってもいいのですよ。使い道なら無限にあるのです」

俺の返答にカトリーヌが異を唱えた。

「そう言う事はカティに任せたいなと思っている」

「いえ!いずれはラウル様にも覚えていただかないと!」

ちょっと怒られた…

「わかったよ。戦局が落ち着いたら教えてくれるとうれしい」

「はい」

「ふふっ、ははは」

「どうしたゼダ?」

「何というか、あのラウル様がカトリーヌ様にはタジタジなんですね」

「えっ?そう? まあそうか…」

「はい」

確かにカトリーヌから何か言われている時は、イオナに似ている事も伴なってイオナに叱られているように感じてしまう。これがナスタリア家の血というやつなんだろうか?そう言う部分ではイオナ以上にカトリーヌは底が知れない。まあ最初に間違って毒で殺しかけた負い目もあって、頭が上がらないのは確かだ。

「それにしても私達まで良かったのでしょうか?」

マリアが言う。

「ええ、いいんですよ。もうリューテウスの家の者はいないのですし、衣装は余らせていても仕方がないのです。着てもらえて服も嬉しがっているはず」

「そうです。あんなにあったって私も着ませんし」

リズが言う。

「リズ姫が将来的に着られる事もあるのでは」

「うーん。私は新しくて楽なのがいいです」

「リズ姫らしいですね」

「うふふ」

リズはどっちかって言うと、軽い感じの服を好んで着ているようだ。どうやらドランに槍術を仕込まれて体を動かしやすい服が気に入っているらしい。

「ありがとうございます」

カトリーヌ、マリア、シャーミリア、カララ、ルフラ、ルピア、アナミスの7人は、宝物庫にあったきらびやかなドレスを進呈されたのだった。マリアはメイドなのでと断り、シャーミリア以下魔人達は俺の手前恐れ多いと言っていた。しかしリズがどうしてももらってほしいと言い、皆がドレスアップしてここに居た。もともと絶世の美女たちなのに、作り物か絵でも見ているようだった。

「俺の配下達の分まで本当にありがとう」

「いえ、ラウル様の配下の皆様には本当に良くしていただきましたので!」

リズがニッコリ笑って魔人達を見ると、魔人のみんなもリズに対して優しく微笑み返した。いまはゼダとリズを囲み、俺、モーリス先生、カトリーヌ、マリアが王城の一室で話をしていた。護衛にシャーミリアとファントムがいる。俺達の料理の給仕をカララ、ルフラ、ルピア、アナミスがやってくれている。

《皆が機嫌よくなったような気がする。やっぱり女子―ズは服をもらえると嬉しいんだな。高そうなドレスだが、彼女らにこういうドレスを着せたことが無かった気がする。これからは、もっと女性らしい扱いをしていかないとな》

「それに…」

ゼダが言う。

「それに?」

「まもなく国の人間達が集まってくるかもしれません。その時に王城にドレスを着た人が居た方が良いかなと思ったのです」

「そういえばゼダも肩章のついた衣装だもんな。肩こらないか?」

「私は慣れています」

「さすがは王子」

「いえ。ラウル様はあまり着ない?」

「ユークリットの貴族の時には多少飾りのついたものは来た事あるけど、この戦争が始まってからはいつも同じ格好をしている気がするなあ」

「ラウル様らしいですね」

「うちは生みの親も育ての親もあんまり飾らない家系なんだ」

「ふぉふぉふぉっ!確かにのう。イオナなぞナスタリア家らしいのは中身だけじゃった。むしろカトリーヌの方が様になっておるわい。王家の血筋も入っておるからの」

「えっ!カトリーヌ様はユークリット王家の所縁の方なんですか?」

ゼダが驚いて聞く。

「父方がそうですね。でも私の母は出戻りでしたの」

「えっ!公爵に嫁いで出戻りってあるんですか!」

今度はリズが驚く。

「うーん…なんというか、ユークリットではそれがまかり通ったというかなんというか…」

カトリーヌが困ったような顔をする。

「ふぉっふぉっふぉっ!そうじゃな、リュートの王子と姫君には聞こえておらなんだか。ユークリットでは…いやバルギウスやファートリアでもナスタリアの血筋は有名じゃな。王家にも好き勝手言える力のある貴族じゃった」

「凄いものですね。私は一度嫁いだら永遠に戻れないと思っていました!」

リズが目を丸くして言う。

「ごめんなさい。どうやらうちが特別だったみたい。お恥ずかしい限りだわ」

カトリーヌが顔を赤くしていた。

「いえ!憧れます!自由な女性の象徴という感じで、羨ましいです!」

リズがめっちゃ尊敬している顔でカトリーヌを見る。カトリーヌはさらに恥ずかしそうに苦笑いをしていた。

「リズ姫。その話はまた今度」

「はい!是非仲良くしてください!」

「ええ。こちらこそ」

カトリーヌはリズの勢いにたじたじのようだった。どうやらリズは同じような立場の、年上のお姉さんにめっちゃ食いついているらしい。

「そしてラウル様。都市の修繕までしていただけるなんて、本当にありがとうございます」

ゼダが話を変える。

「だって市民が集まってきた時にボロボロだと体裁が悪いからね」

「市民は集まるでしょうか?」

「さあね。もちろん来た人間を全部入れるかってのもあるし、盗賊や犯罪者が紛れないようにうちの部下が厳選して検査させてもらう」

「わかりました。よろしくお願いします」

「あとは食料調達部隊が魔獣を狩ってきてくれるから、それを市場に流せるようにしておく」

食料調達部隊にはギレザム、ガザム、ゴーグ、ミノス、ドラン、ラーズと、サキュバスとハルピュイア部隊が出ていた。74式特大型トラックをいっぱいにして帰ってきてくれると思う。サキュバスとハルピュイア達には木の実や、果実や食べられる葉物を探してきてくれるように伝えている。

「あれから7日が過ぎました」

「そうだねゼダ。恐らく各地からそろそろ人が来る頃だと思う」

《たぶん…もしかしたら一人も来なかったりして。それだと王都が機能しなくなってしまうな。てか王都の位置も問題じゃないかと思う。恐らくは龍が龍の巣に住んでいた頃の名残でこんな東にあるんだろうけど、マナウ市より西側に首都があったっていい》

「ここより北東の都市からなら来てもおかしくないと思うのです」

「むしろそこの人たちを王都に全て入れてしまっても良いと思ったんだけど」

「やはり自分たちが住んでいた地を容易に離れる事は出来ないという事でしょうか」

「だろうね」

《ラウル様!戻りました!》

ギレザムから念話が繋がる。

《おかえり!獲れたか?》

《車両をいっぱいにしてまいりました》

《ご苦労さん》

《は!》

「えっと、ギレザムが帰ってきました。獲物も大量に獲れたようです。確認をしにいきたいのですが、先生お願いできますか?」

「行くとするかのう」

「それでは私たちもついて行っていいですか?」

「ああ、ゼダ。だがその格好で行くと汚れるぞ」

「あ…それでは着替えます」

「じゃあ汚れても良くて、物凄く動きやすい服で行かないか?」

「それは?」

「よ!」

俺は迷彩戦闘服Ⅱ型を召喚して目の前に置く。

「おお!これは服ですか?」

「そうだ。だが俺の魔力が切れれば無くなるから数日限定って事で着てくれ」

「着ます!」

ゼダは何故か嬉しそうだった。

「そんな大したものじゃないけど」

「魔人達が着ていたのですよ!着てみたいと思っていました」

「どうぞどうぞ」

「はい!」

ゼダは迷彩服を持って隣の控室へと向かって行った。

「カティ!俺とモーリス先生はゼダと一緒に獲物を見にいく。リズ姫と仲良くしてやってほしいんだ。マリアとみんなもここに残ってお茶会をしててくれ!ファントムは俺達についてこい!」

皆が頭を下げる。

「ラウル様!こんな感じでいいのですか?」

ゼダが迷彩戦闘服を着て来るが、ベルトの通し方が分からないようだった。俺はベルトを手に取ってゼダの腰に通してやる。

「ラウル様自ら!」

「いいっていいって!」

そしてベルトをきゅっと締めてやると、そこには自衛官が一人現れたのだった。

「じゃあ、行こう」

「はい」

俺達はギレザムのいる場所へと向かった。

「ラウル様!」

「ギル!大量かい?」

「はい!これがクリフムートです!血抜きはしていますが毛はそのままです」

トラックの前に大型の魔獣が並べられている。だが俺はそれを見たことがある。

《羊だ》

バカでかい羊がゴロゴロと並べられていたのだった。そしてその羊たちの脇には様々な木の実が並び、これも大量にあるようだった。

「凄いな!」

「喜んで頂けて何よりです」

「毛皮も凄いし、これは商品としては相当な価値があるぞ!」

「そうですか!そう言っていただけるのではないかと思っておりました!」

「ああ、よく見つけてくれたな!これは特産物になる!」

「ありがとうございます」

「クリフムートか。わしも遠目でしか見た事が無いが、これは立派なものじゃのう!この角は何かに使えそうな気もするし、素材をいろいろと研究してみたいものじゃ」

「えっ!先生は見たことあるんですね?」

「わしもこのあたりを渡り歩いた事があるでのう、遠目で見たことがあるぐらいじゃが」

《モーリス先生はこの世界の松尾芭蕉かマルコポーロと言ったところだな、アグラニ迷宮やナブルトの麓、二カルス大森林にもザンド砂漠にも言った事があるらしい。車の無い世界でそれだけの範囲を旅するというのは並大抵の事じゃない》

「それじゃあ、これを解体して保存のために凍らせたいのですがお願いできますか?」

「もちろんじゃ」

俺達はこのクリフムートを分解して、モーリス先生が凍らせていくのだった。都市に人間が来た時に食料も何も無ければ、人は居ついてはくれないからだ。すべての作業を終えてギレザム達に、アグラニ迷宮に向かうように指示をした。俺がお願いしたのはあの巨大な蟹の魔獣だ。既にアスモデウスがアグラニ迷宮の内部調整をしているので、ギレザム達なら簡単に獲って来れるだろう。

人々が集まってくるまでに、リュート王都ならではの特産物を用意して、市場に肉や薬草を大量に並べられるように準備するのだった、