軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第539話 ギルド復興の第一歩

俺達はようやく分岐の都市マナウにたどり着いた。ここまでの都市では恐怖の茶番劇と大量の金のばらまきを行ってきた。どの村でもミノスとドランは恐れられ、ゼダは好感度を上げたに違いない。ただ意味不明の多額の寄付金だけは、恐ろしくて誰も手を付けないかもしれないが。

「またマナウに戻ってきましたね」

「意外に早かったのう」

最近ここの冒険者たちをアグラニ迷宮で救ったばかりだった。まるで永遠の別れのように出て来たのに、今度は大軍を連れて来るのだからきっと驚かれるだろう。

「ここは普通にまいりましょうか?」

カトリーヌが笑って言う。

「そうだな。面が割れてるし俺達の演技がバレてしまうかもしれない」

「はい」

そして俺達がマナウ市の市壁に近づいて行く。門番が慌ててこちらに走ってくるが、俺達の顔を見ると安心したような表情を浮かべた。

「あんたたちはこの前の!」

「ええ。ファートリア神聖国を一緒に救った、ゼドスウェン・フォン・リューテウス王子をお連れしたんです」

「えっ!ゼドスウェン王子を?王子が生きていた!」

「ええ。ゼドスウェン王子!どうぞこちらへ!」

俺がゼダを呼ぶと、たくさんの魔人達の奥からゼダが歩いて来る。

「本当だ!ゼドスウェン王子だ!」

「しばらく国を空けてしまいした。皆さんには苦労をかけましたね」

「すぐ市長に知らせます!」

「お願いします」

門番をしていた自警団の男が慌てて都市の中に駆けて行った。

「ようやくゼダを知っている都市まで来たね」

「ええ。ここには何度か訪れた事がございますので、知った顔もあると思います」

「じゃあいこうか」

「はい」

ゼダとリズを護衛するように、ミノスとドラン、ギレザム、ガザムが囲み先頭を歩いて行く。俺達がそれに続いて中央通りを練り歩くのだった。街の中央に差し掛かった時には、町中の人が通りに集まっているようだった。

ワーワー!ゼドスウェン王子ー!リザベル姫―!ようこそお帰りになられましたー!キャーキャー

物凄い声援が俺達を包み込む。

《戦争に行った王子の凱旋として100人の魔人を連れて来ておいてよかった!数人だったらめっちゃしょぼかったぞ!モーリス先生とカトリーヌの言う事を聞いておいてよかった!》

ゼダとリズが手を振って市民に応えていた。するとゼダとリズの前に町長と数名の人間達が現れて膝をついた。

「これは!ゼドスウェン王子!リザベル姫!お久しゅうございます!よくぞご無事でお戻りになられました!急だったこともあり今からお出迎えの準備を始めます故、しばらくは迎賓館にておくつろぎくださればと思います!そしてお仲間の方々もぜひご一緒に!」

「そうしよう。みなさん!私は強い仲間と共に再びこの地に舞い戻りました!これからこの国の復興のためにぜひご協力ください!」

ワーワー!そんな声も大歓声の前に、市民達に聞こえたのか聞こえないのか。しかしながらゼダとリズは国民にものすごく愛されているようだ。そのまま俺達が町の中を凱旋パレードのように進むと、市民たちが通路脇にでて大歓声を送る。

「凄い人気ですね」

「想像以上じゃわい」

「ここでは寸劇もばらまきも必要なさそうです」

「ああカティ。そのとおりだ」

俺達がパレードのように都市を歩いていると、人だかりの奥の方に見た事ある顔がチラリと見えた。その人たちはゼダ王子じゃなくて俺達に手を振っているようだ。

「あ、ゼダ!リズ!悪いけど先に行っててくれるかい?俺はちょっと用事があるんだ」

「はい。それでは先に迎賓館にむかっております」

「魔人達をよろしく頼む」

「かしこまりました」

魔人の行軍をゼダに任せる。

「先生一緒に行きましょう」

「ふむ」

「カティ、マリア。あとあの時のみんなも行こう」

「「わかりました」」

「「「「は!」」」」

俺とモーリス先生、カトリーヌ、マリア、ゴーグ、シャーミリア、ファントム、カララ、ルフラが隊列を抜け出した。急に隊列を抜け出した俺達に都市の人たちが注目する。俺達その道のわきに居る人たちの前に立った。その辺一帯の人間達がめっちゃざわついている。それもそのはず絶世の美女たちが勢ぞろいしてやってきたのだ。色めき立つのもわかる。

「よう!また来たよ!」

俺がその市民たちの後ろに立っている人間に声をかけると、市民たちが一斉に後ろを向いた。

「あの、その…」

男に肩車されている少女がどぎまぎしている。

「おいでルーチカ!」

すると市民達が一斉に左右に分かれてその家族に道を開けた。

「ラウルお兄ちゃん!」

ルーチカが肩車から降りて俺に走り寄ってくる。俺はルーチカを抱き上げた。すると後ろからルセナとモーラ、ライードがやってきた。

「もう来てくれたんですね!」

ルセナが言う。

「来るって言ったろ!」

「今度は美味しい料理を食べさせるっていったからねえ。でも…これから迎賓館に行くんじゃないのかい?うちの料理じゃあねぇ…」

「いいんだよ。俺達はモーラの料理を食いに戻ったんだ。このままお店に直行してもいいかい?」

「もちろんさね!」

「急で悪いね」

「何を!あんたらは命の恩人なんだ。今日は臨時休業だよ」

「よろしく頼む」

俺達はそのままモーラの店に向かうのだった。仰々しい事は悪いけどギレザムに任せる事にしよう。

《ギル!俺達は迎賓館には行けない。お前の指揮で魔人達を統率してくれ》

《かしこまりました。それではラウル様はこちらへいらっしゃらないという事ですね》

《悪いね。知人の所に行く事になった》

《問題ございません。ごゆっくりお楽しみください》

《サンキュ》

念話で任せた。

そして俺達はモーラの店に行って、夜まで料理を堪能するのだった。前に来た時よりも打ち解けて話す事が出来た。あれから冒険者たちも無理をしなくなったとの事だった。

「で、ライードさんに相談なんだよね」

「うん?命の恩人の頼みとあっちゃ断れねえな。一体なんだい?」

「俺はこの地からギルドを再興しようと思ってるんだ」

「ギルドを再興!本当かい!」

「本当ですよ」

「そりゃありがたい!それで俺が協力する事ってないんだい?」

「他でもない。俺はライードさんに冒険者ギルドマスターになってもらおうと思っている」

「…えっ!」

「えっと、だからギルドマスターに」

「ちょっ!ちょっ!ちょっとまってくれ!俺なんかが?ギルドマスターだって?」

「なんかおかしいですかね?」

「ギルドマスターってのは高位の冒険者がなるもんで、俺なんかがなるもんじゃない!」

「えっ?十分高位じゃないですか」

「バカ言っちゃいけねえ。俺なんかのようなおっさん冒険者ができるわけがねえ」

「でも、ライードさんと火龍の翼の皆さんは99層から帰ってきた猛者ですよね?」

「そ、そいつはラウルさん達が助けてくれたからであって」

「でも事実は事実です。ここからが内緒の話なんだけどいいですか?」

「なんだかおっかねえな」

そして俺はライードに、アグラニ迷宮が国営化になる事と魔人がダンジョンの管理をすることを伝える。俺達とライードが裏でつながって、冒険者に楽しませつつダンジョンで魔物を狩らせるというビジネスの話をした。もちろん陰で暗躍するのは魔人という事になるが、表の管理はライードにしてもらう事になる。

「‥‥なんていうか…ちっとばかり心が痛むというかなんというか」

「正直者のライードさんにはひっかかるでしょうね。でも悪い話じゃないと思うんですよ。これ以上アグラニで人死にを増やさない為にもやりましょうよ」

俺はライードに手を差し出す。しかしライードは直ぐにその手を握らなかった。

「なにかひっかかりますか?」

「なんつーか、俺にそんな難しい事ができるのか不安なんだよ」

「もちろんライードさんに丸投げはしませんよ」

「というと?」

「僕の仲間にね、物凄い冒険者パーティーがいるんだ」

「冒険者パーティーの知り合い?」

「ああ。それをギルドの看板パーティーにしてしまえばいいよ。まあなんていうか勇者ってやつだよ」

「勇者?おとぎ話の?」

「そう言う事」

「そんな奴がいるのか?」

「いるいる!男女4人のすっごい魔法を使うパーティーだから!物凄い魔力あるんだよ!今は世界一の聖騎士の元で物凄い訓練を受けているところさ」

「すごいな」

「すごいよ」

「わかった!ならそいつらの実力を見てからって事でいいか?」

「もちろん!それじゃあ商談成立だね」

俺が言うとライードが俺の手をやっと握ってくれた。これでギルドマスターがここに生まれる事なる。やっぱり冒険者のメッカであるマナウにこそ、ギルド本部が作られるべきだった。

「あの…ひょっとして俺、物凄い約束をしてしまったのかな?」

「いやいや。ギルド本部のギルドマスターになってもらうだけだから」

「ははは、それが凄い事じゃなくて何が凄い事なんだか…」

「ギルド立ち上げの時は、俺達の部下と一緒に実演としてアグラニに潜ってもらうかな」

「またあそこに?」

「ふぉっふぉっふぉっ!世界一安全なダンジョン攻略になりそうじゃな」

「大賢者様まで…」

俺達は街の小料理屋で将来の大事業について話し合っているのだった。世界的な伝説のギルドマスターが誕生した瞬間だった。もちろんライード本人には何のことか分かっていない。

「詳細はまた追って説明をするから、ライードさんは特に何もすることはないよ」

「あ、あの!それじゃあドバを、友達のドバをギルドの要職につけたいんだが」

「ああ、あのアグラニを俺達に教えてくれた人か!いいね!それじゃあ商業ギルドマスターの任についてもらおう」

「あいつもギルドマスター?」

「なんかまずかったかな?」

「いや!あいつが仕事にありつけるんなら、俺は冒険者ギルドのマスターを引き受ける!」

「なら決定ですね。そもそも魔物の素材の引き取りの時にあんなに苦労するなら、商業ギルドマスターがいないとだめだよ」

「じゃあアイツもここに連れて来て話をしていいだろうか?」

「大歓迎です!」

「ルセナ!ルーチカ!ドバを連れて来てくれるか?」

「はい!」

「うん!」

「ならゴーグも一緒に行って連れて来てくれ」

「はい!」

ルセナとルーチカとゴーグが店を出て行った。

結局のところ、ドバも説得し商業ギルドのギルドマスターを引き受けさせたのだった。ここまできちんと残っている都市は他にはない、ギルドを立ち上げる準備を着々と進めるのだった。

「モーリス先生」

俺は端っこで酒をちびちびやっていたモーリス先生と内緒話を始める。

「なんじゃ?」

「これでニホンジン達の就職先は、勇者ってことになりましたね」

「そうじゃな。勇者ってかっこいいのう!」

「ええ。やっぱダンジョンには勇者がいないといけません」

「いいのか?勇者って言うのは魔王を討伐するものたちじゃぞ」

「お!それも面白そうですね!でもあの4人がルゼミア母さんを討伐?」

「一瞬で炭になるじゃろうな」

「自分たちが殺された事も分からないと思いますよ」

「うむ。なら魔王の話はまた脚色せねばなるまいのう」

「大丈夫ですよ。きっと物語なんてそんな感じです」

「ふぉっふぉっふぉっ!案外そうかもしれんのじゃ」

「はい」

俺とモーリス先生はこれからどうやって面白おかしく伝説を作って行こうか、妄想をし始めるのだった。きっと楽しい冒険譚が出来上がるであろう。

楽しみだ。