軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第535話 龍人の下へ

アトム神を迎え、ファートリアの聖都を完全に人間達に任せる事が出来るようになる。それから数日後には、俺と直属の部下達はドランのいる拠点へと向かっていた。

エドハイラを連れて、俺、シャーミリア、マキーナ、ファントム、モーリス先生、ギレザム、ガザム、ゴーグ、マリア、カトリーヌ、カララ、アナミス、ルフラ、ラーズ、ルピア、ティラ、タピ、の18人。そして魔導鎧1 体(ヴァルキリー) の全員がトラックと足を使って来ている。

「モーリス先生まで来てよかったのですか?」

「ふぉっ?ラウルは、あの息が詰まりそうな神の下にわしを置いておくのか?」

「もちろんそんなわけはありません」

「わしゃゴーグちゃんとおるのじゃ、あの神はサイナスのジジイに任せておればよい」

俺とモーリス先生の会話を聞いていたエドハイラが笑う。

「お二人は楽しそうです」

「ふぉっ?」

「はは…まあ、先生と話してるのは楽しいです」

「そしてあの神様。私が思っているような事をお二人も思っているなんて、ちょっと笑っちゃいましたよ」

「ああ、エドハイラさんはきっと嫌だろうと思って連れて来たんです」

「ハイラでいいですよ。本当に助かりました」

「ハイラさん。では私はラウルで、こちらはモーリス先生です」

「ではラウルさんと先生?でいいですか?」

「どうぞ」

「わしを先生と呼んでくれるかの?」

「私の世界の魔法使いの先生といえば、モーリス先生のような人なんですよ」

「ふむ。なら先生でええわい」

「はい」

どうやらハイラは俺達の事を苦手ではないようだ。

「ハイラさん、私の仲間にはいろんな奴がいますけど大丈夫ですかね?」

「どうでしょう。会ってみないとわかりません」

「当然ですね」

「ところでラウルさん。どうして私の世界の車がこの世界にあるのですか?」

《あ、やっぱりそこ気になるよね?あんま公にしてないんだけどね。そりゃ魂核もいじってないんだから素で思うよね》

「どうなんでしょうね。私の生まれつきの魔法だったので、もしかしたら何かが繋がっているのかもしれません」

「まあ確かに私たちもこっちに来ましたからね。あっちと繋がっているって言われても不思議には思いません」

《たぶん繋がってるんじゃなくて、俺の前世の現代兵器イメージの具現化なんだけどね》

「まあ、便利なのでこの魔法を使っている感じですね」

「不思議です。まさか車に乗れるなんて…そもそも、こちらの世界の人達が運転してますよね?」

「みな訓練して使えるようになりました」

「本当に不思議です」

「うーん、そうでもないんですよ。皆、努力家ですのでやればできるものです」

「やればできる…か…。前の世界の私に聞かせてやりたいです」

「なにかあったんですか?」

「あの神様にも行ったんだけど、私はシンガーという歌ってお金をもらう仕事をしたかったんです。神様にはそんなの無いっていわれたんですけどね」

「なれなかったんですか?」

「オーディションも落ちまくって、動画も配信したんですけどね。お母さんに学費出してもらって学校行ってるのに、本当に不良娘だったなと思う」

「なんですかな?おーでぃしょん?どうがのはいしん?」

モーリス先生が新しい言葉を聞いて目をキラキラさせている。

「ああ、なんていうか仕事にするための面接だったり、みんなに歌うところを見せたりみたいな?」

「ふむ。そういうものがあったのじゃな?」

《俺は普通に会話を理解できているが、モーリス先生はなんとなくで話を理解したらしい》

「ええ、だけどまったく鳴かず飛ばずで、私には才能が無いんだって諦めてたんです。やっぱりきちんと大学に通って薬剤師になろうって思ったりして。中途半端だったんですよね」

「ふむ。なるほどのう…」

「だめですよね」

「中途半端がかの?」

「はい」

「そうじゃろうか?」

「えっ?」

「若いうちは中途半端でもいいのじゃなかろうか?いろんなものを吸収するからこそ、成長するものなのではないかの?」

「それは…」

《うわあ…やっぱりモーリス先生はいい事言うなあ。何つーか、深っかいわ。そう言えば俺がサナリアに行くときは良く遊べと送り出されたっけな》

「ガチガチに決めたことを貫き通すのも悪くはないじゃろう。じゃが中途半端でもいい」

「どういうことです?」

「中途半端にかじった事でも無駄ではないということじゃよ。それを失敗したところでどうという事は無い。若いというのはそう言う事じゃ」

「でもシンガーなんて若いうちしかなれなくて」

「うーむ。シンガーという物がどういうものか分からんのじゃが、何事も始めて遅いという事はないじゃろうよ。いつ始めてもいい、それはそれぞれが自由に決めて良い事じゃ。なーんも縛るものなどないよ、いつだってどこだってなんだって好きなものに打ち込めば良いのじゃ。何度でも飽きるまでやってみるがよい、いつか道はみえてくるものじゃよ。言ってみれば失敗などと言うものなど無いのじゃ!わしゃ今でも失敗の連続じゃし、新しい事の連続じゃぞい!ワクワクするわい!ふぉっふぉっふぉっ!」

「……」

エドハイラは黙り込んでしまった。

「ん?あらら?すまんのう、わしゃハイラ嬢ちゃんに悪い事を言ってしまったのかの?」

モーリス先生が珍しく慌てたようすだ。

「いえ!」

ぽろぽろぽろぽろぽろ

エドハイラの瞳から大粒の涙がこぼれ始める。

「やはりわしゃ酷い事を言うてしもうたようじゃ!すまんのう…」

「違うんです先生。なんというか私という人間を凄く肯定された気がして、心が温かくなったような気がしたんです。認めてもらえたというか、私の思いを否定されなかったっていうか」

「ん?否定するとこあった?」

モーリス先生が困った顔で俺を見る。

「いいえ先生。まったくありませんでした。ハイラさんの話すことに否定するようなところは無かったです」

「じゃが泣いてしもうたぞ」

「ハイラさんは嬉しいんですよ。きっと誰からも認めてもらえなかった自分が認めてもらえたことが」

「ラウルさんの言う通りです。先生、本当にありがとうございます」

「わしゃ、お礼を言われるような事も何も言うとらん。じゃがハイラ嬢ちゃんが救われたのならそれでいいのじゃ」

モーリス先生が優しい顔で笑いかける。

「ありがとうござます!」

ハイラがモーリス先生にぺこりと頭を下げた。

「ラウル様。まもなくドランの駐屯地に到着します!迎えが来ているようです」

俺が運転席の窓から前を見ると、魔人たちがぞろりと並んで待っていた。

「了解だ。停めてくれ」

「はい」

運転していたタピが車を止めた。俺は車を降りて魔人達の下へと行く。

「ラウル様!」

ドランを先頭に魔人達が跪いている。

「楽にしてくれ」

「「「「は!」」」」

「ゼダとリズは?」

「駐屯地におります。ぜひ会ってみてください」

「わかった」

俺を先頭にドランと魔人達がついて来た。その後ろを俺達のトラックと、護衛についていた魔人達が歩いて来る。

「基地はずいぶん発展したな、ファートリア地内の治安が落ち着いたらここは村人に明け渡すつもりだ。もちろんルタンからまた兵士を補給するがな」

「はい」

「まだ当分先だが。デモンだけが不安材料じゃない」

「盗賊と魔獣ですか」

「そうだ」

「その部分ではラウル様に見ていただきたいものもございますが、まずはあの兄妹の下へ」

「そうか。そうだな」

基地につき皆にはそれぞれ休息をとるように伝えた。基地内はかなり安全なため、護衛を着けずに俺とモーリス先生、カトリーヌがリュートの兄妹のところに向かう事にする。めずらしくシャーミリアも大人しく俺から離れた。

「あの…私も先生について行ってもいいでしょうか?」

ハイラが言う。

「ふむ。ラウル?」

「かまいません」

「いいそうじゃ」

「ありがとうございます」

ドランについて俺達が歩いて行くと、少し立派な建物が見えてきた。どうやらゼダとリズを住まわせるために作ったらしい。俺がリュートの王族だから気を使えと言ったのをきちんと覚えていたようだ。建物の前に二人の番兵が立っている。

「ごくろうさん!」

「ラウル様!よくぞおいでくださいました!」

「まあそんな力まなくていいよ」

「ありがとうございます」

兵士が扉を開けてくれたので俺達が入って行く。そしてゼダとリズのいる部屋へと向かった。

コンコン

「はい!」

ゼダの声だ。俺達が入って行くとゼダとリズが深々と頭を下げた。

「ラウル様!」

「及び立てして申し訳ありません!」

「いやいや。俺も丁度二人の所に来る予定だったからいいんだよ」

「僕たちのところにですか?」

「ああ」

「やはり何かありましたか?」

「そっちも何か感じるものがあったんだって?」

実は先日ドランから念話が繋がって、ゼダとリズが何かを感じたので俺に会いたがっていると教えられていたのだった。

「はい。その前に…リュートはどうでした?」

「まあそうだな。まずはゆっくり話せるようにしようか」

「それでは、給仕をしているメイドを呼びましょう」

ドランが言う。

「頼む」

パンパン!ドランが手を叩く。するとドアから見覚えのある人間が入って来た。

「あ!アデルフィアさん!」

「これはラウル様!その節は大変おせわになりました」

「えっと、ドラン?」

「申し訳ございません。彼女には真実を話してございます」

「じゃあ商人の従者じゃないって…」

「バレてます」

「なるほど。アデルフィアさんあのときは嘘をついてごめんなさい。いきなり来て盗賊を壊滅させた挙句、魔人国の王子だなんて言っても怖がられるだけだと思って」

「大丈夫です。訳は後で知り驚いていますが、もちろん商人の従者だとは思っていませんでした。そんなに強いお嬢様と従者がいるはずないですから」

アデルフィアは笑いながら答える。

「見透かされてましたか」

「はい」

「ところでどうしてここに?」

「志願しました」

「志願?」

「ドラン隊長様にお話をして、ぜひゼダ様とリズ様の身の回りのお世話をいたしたいと懇願しました」

「そうなのですね?」

「もう一人紹介します」

コンコン

誰かが来た。

「失礼いたします」

「ジョーイ!」

「ラウル様!私の名前を憶えていただいて光栄です」

「そりゃおぼえてるよ。ジョーイは何してんの?」

「騎士の見習いとして、あの3人の騎士より手ほどきを受けてきました。おかげで剣の腕も上がりゼダ様とリズ様の従者をさせていただいております」

「えっ?やっぱり志願して」

「はい。私たちの村を救っていただいた恩返しだと思っております」

「そうか。自分で決めたんならそれでいいと思うけど…ゼダとリズは良かったの?」

「はい、僕たちには身に余る事です。なんの後ろ盾も無い我々に力強い味方が出来ました」

「それなら良かった」

どうやら俺がいない間にここはここで上手くやっていたらしい。ドランからは聞いていなかったがリュートの二人も同意しているのなら文句はない。そして俺達はテーブルに座り、アデルフィアと数人のメイドが用意した軽食をつまみながら話をすることになった。

「それでリュートはどのように?」

「まずはゼダとリズも知っている事と思うが、王都についてだ」

「それは分かります…壊滅してましたよね?」

「もうしわけないがそうだ」

「それは覚悟していました。民はどうです?」

《凄い!さすが王族という事なのだろう。王都が壊滅している事を聞いてもまゆ毛一本動かさず、民の事を聞いて来た》

「ああ、他の都市の民は無事だ。デモンの影響も受けていないだろう、その詳細についてはギレザムから後で報告させる」

「ありがとうございます!」

するとここまで黙っていたリズが口を開く。

「端的に行って、リュートは復興可能な状態でしょうか?」

「問題ない状況だ、市民は元気で軽い流通も行われている。むしろ今までの国の中で一番まともに機能していると言っても過言じゃないぞ」

「良かった…」

リズが涙目で喜んでいる。

「そして二人は何かを感じたんだって?」

「もしかしたらですが…」

「なんだ?」

「私達が一緒に旅をしていたオージェさんについて聞きたいのです」

「なるほどね」

「何かご存知でしょうか?」

「まあ、話せば長くなる。まずはお茶でも飲もうじゃないか」

それから俺はオージェと巡り合ったあたりからの話を始める。この二人は 龍人(リュート) の民の王なのだから聞く権利がある。未来のリュートの王に龍神の全てを伝えてやろうと思うのだった。