軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第529話 素材提供相談

俺達はライードと火龍の翼の面々を集めて、魔物の素材をどうするのかの話し合いをしていた。さらにマナウ市の道具屋や鍛冶屋なども来ている。本来は冒険者ギルドで行うべき案件なのだが、そんなものはないので俺達が主導でやっているのだった。ダンプトラックについても話しを通しており、城壁のすぐ外に乗りつけていた。

「いやいや、ラウル様!私達では到底入手できなかった素材です!大賢者様が置いて行っても良いと思う物があればそれで十分でございます」

ライードが物凄く腰低く言っている。

「でも手伝ってもらったので、欲しい物とってもらっていいですよ」

「そういわれましても、なあ」

「そうですな。命を助けてもらった上に、物までもらうわけにはいかんのです」

「いいんですって、冒険者のメンツとか我々への恩義とかなんにも関係なく選んでください」

「そう言うわけには…」

「じゃあ!わかりました!道具屋さんと鍛冶屋さん!ちょっと見てみてください!欲しいものがあったら、彼らからの買取も考えて取ってくださいませんか?」

すると緊張気味に、道具屋と鍛冶屋が出て来る。

「えっと私達はもっと関係が無いので選んでいいと申されましても」

「まったくです、道具屋の言う通りでそんなことはできません」

「じゃあいいです。私が選びます」

俺は勝手にダンプトラックの中に入って、巨大カニの甲羅を取り出してくる。

「これなんかどうです?」

「これは…」

「それは…」

「ええ!何かに使えそうでしょう?」

「「なんです?」」

「え!見たことない?」

「はい」

「一度も」

「じゃあちょっとまってください!」

俺は再び中に行って他の素材を持ってきた。それは巨大酸ムカデの甲殻だった。黒いし強そうだしこれなら喜ぶんじゃないかと思う。

「どうです!黒々としていていいでしょう!このテカリみてくださいよ!」

「ん?」

「それはいったい…」

「えっと巨大な魔獣の甲殻ですよ」

「甲殻」

俺は鍛冶屋にその甲殻を手渡してみる。

「軽いな…軽すぎじゃないですか?これで何ができますかね?」

「えっ!何か凄い物じゃないんですか?」

「見たこと…ないですねぇ…」

《ヤバイ!どうやら深層でとって来た魔獣は彼らにとって、意味がなさそうに思えて来た。どうしよう》

「ラウルよ、見たことのない素材など加工の技術も分からなければ、手を出せる物では無いぞ。もっと浅い階層の物をお見せしたらどうじゃ?」

「わかりました!」

《浅い階層の奴…えっと…》

ドタドタ!

「これはどうでしょう!」

「おお!アークスパイダー!このような貴重な魔物の素材を!」

「本当だ…かなり強い冒険者でなければ取れない素材ですぞ!」

《あ、そうなんだ…比較的浅層でとれた奴なんだけどな》

「じゃあ!ちょっとまってください!」

俺はまた奥に行く。

《えーっと…これなんかどうかな?》

「えっと、こんなのはどうでしょうか!?」

「おお!これはシェルワスプ!」

「このような強力な魔物の素材などなかなかお目にかかれませんぞ」

《これも低層付近でとれたんだけどな》

「それならどうでしょう?」

「こんな貴重な素材をよろしいのですか?それなら十分役に立ちますが」

「そうですか!」

「ライード!もしよかったらこれを、ウチで買い取らせてもらうぞ」

「うちでも買い取らせてもらう!」

道具屋と鍛冶屋のテンションが上がっているように見える。

「そ、そうか?」

「本当にいいのか?」

ライードと冒険者パーティーのリーダーが申し訳なさそうに言う。

「商談成立だね!ファントム!運んでくれ!」

「……」

ファントムがズンと荷台に乗ってくる。そして俺の代わりにダンプトラックから、アークスパイダーとシェルワスプを運び出していく。

ドサ!ドサドサドサ!

「えっ!」

「えっ!えっ!」

とりあえずアークスパイダーとシェルワスプの、半分10匹分くらいずつをダンプの外に積み上げていく。

「こ、こんなには買い取れない」

「そうですな…」

「いや、じゃあ必要になったら、ライードと火龍の翼の面々から買い取ってください」

「分かりました…」

「あとどれがいいですかね?」

「ん?まだ何か?」

「これだけでも凄いというのに…」

俺は再び奥から素材を持ってくる。

「これなんか良いんじゃないですか?」

「ブラッディバット!」

「これならいろいろと使い道があります!」

「それはよかった。ファントム!」

ブラッディバットも10匹ほど外に運ぶ。道具屋も鍛冶屋もポカンとした顔で、ただただ眺めているだけだった。その後も10層まででとれた素材を惜しみなく出していく。

「ラウル様!もうこれぐらいで!」

山積みになった魔物の素材を見て、ライードが止めた。どうやら出しすぎてしまったらしい。

「いいんですか?」

「十分すぎます!」

「本当に、我々は何もしていないのにこんなに」

「いいじゃないですか。山分けにしてください」

ライードと冒険者パーティーが相談している。

「わかりました!それではこれをいただきましょう。街の皆にも分けてやろう」

「このご恩は忘れません!」

よかった。どうやら受け取ってもらえるようだ。命がけでアグラニ迷宮に行って数ヵ月も帰って来れなかったのだ、このくらいのご褒美があってもバチはあたらないだろう。

「ふぉっふぉっふぉっ!よかったのじゃ!ラウル!役に立つようでよかったのう!」

「ええ。やっぱり素材は使ってもらってナンボですからね」

「そうじゃそうじゃ!」

商談がまとまったので…というか商談というより、勝手にこっちが贈呈しただけなんだけど。

「あの!うちの息子がお礼を言いたいと!」

唐突に冒険者パーティー火龍の翼のリーダーが言う。

「なんです?」

「おい!ザイル!」

すると門の奥から少年が走って来た。

「あ、お前はあの時の」

「はい!父さんたちを助けていただいてありがとうございます!」

俺達に声をかけてきた少年だった。ルーチカの言う事を、どうして聞いてくれなかったのかと詰め寄って来た奴だ。

「そうか!ルセナとルーチカのお父さんを助けたかったのか!お前のお父さんを助けに行ったんだもんな!」

「はい!」

「コイツとルセナは幼馴染でして。どうやら俺達を助けに行って、戻らなくなったライードを救いたかったらしいんです。親の不始末に責任を感じてしまったらしくて」

「そうですか…。お前えらいな!」

「そんなことは…」

「そんなことある」

「ありがとうございます」

「子供は素直に褒められとけ」

「はい!」

マジで偉いと思う。自分では何とか出来ないけど、少しでも可能性がありそうな俺達に頼んだルーチカとザイル。こいつらに声がけされてなければ俺は助けに行っていない。もちろんこれがアトム神と出会うための必然だったとしても、見知らぬ冒険者に声をかける勇気は褒めよう。

「じゃあ素材はそんなところで良いかな?」

「もちろんです!」

ライードが言う。

「恐らく、しばらくはアグラニ迷宮も落ち着くと思います。マナウ大渓谷に狩りに行く事も可能となるでしょう。だが無理は禁物ですよ」

「わかってます。お前たちも十分気を付けるんだぞ」

「わかった」

「ああ」

「はい」

「ええ」

火龍の翼の面々がバツ悪そうに返事をした。

「では俺達は行きます」

「ラウル様!もう行きますか!?」

「我が子よ!余はそろそろ聖都にいかねばならんのじゃ。あそこには結界に閉じ込めたままの者を置き去りにしておる」

「ははー!アトム神様!」

ライード、冒険者、道具屋、鍛冶屋が跪き地面に額をつける。

「よいよい!とにかくもう無理をするでないぞ」

「ははー!」

「ではアトム神様。まいります」

「うむ。苦しゅうない」

うーん…ここでその台詞があっているのかどうかわからない。でもローマの衣装を着た座敷童が言うとそれなりに様になっている気がする。2台のダンプトラックに乗り込み走り出す。ダンプトラックの後ろをヴァルキリーとファントムが走ってついて来る。

《何つーか、ずーっとついて来るシークレットサービスみたいだな》

すると道のわきにモーラとルセナとルーチカが立っていた。

「止めてくれ」

2台のダンプトラックが止まる。俺がダンプトラックを降りて3人の下へと行く。

「わざわざ見送りにきてくれたんだ」

「そりゃそうさね!亭主を生かして連れて帰ってきてくれたんだ!命の恩人に挨拶くらいしたいよ!」

「モーラの料理凄く美味かった」

「またマナウに来た時は、もっと腕をあげておきますよ」

「それは楽しみだ」

「ありがとう!」

「ありがとうございます!」

ルセナとルーチカが目に涙をためて言う。

「親父さん生きててよかったな」

「うん!」

「はい!」

「君たちの勇気が俺達を動かしたんだ。そのおかげで俺達はアトム神様と会う事が出来た。もしかしたら君たちにも何か使命があるのかもしれないな」

「それなあに?」

「使命ですか?」

「まあ今は分からないかもしれない。これから人の役に立つような事があったら、俺達から受けた恩をその人に返してやってくれ」

「うん!」

「わかりました!」

「じゃあ元気でな!」

「「はい!」」

二人が元気で返事をしてくれた。

俺はダンプトラックの後部に立ち3人に手を振る。それを確認したマリアがトラックを出発させるのだった。俺達が見えなくなるまで3人は手を振り続けていた。

「出会いとは必然のもの、あの子らもまた誰かの役にたつであろう。おぬしの声がけが心に残り、将来また誰かに返される。おぬしもそれが分かっておるようじゃな」

「虹蛇様よりそう教わりました」

「ほう、あのトンチキもそんなことを」

「ええ。何度も言ってました」

「少しは成長したかのう」

《いや、その元虹蛇は既にどこかに行ってしまいました。今はグレースという俺の友達です》

アトム神を乗せた2台のトラックは西へと向かってひた走る。そして俺は一つの楽しみがあった…ダンプトラックの荷台には、モーリス先生が凍らせてくれたあの巨大ガニがいるのだった。帰り際にまだ生きていた個体を見つけ、始末をしてすぐに冷凍したのだ。ファートリア聖都のみんなへのおみやげだ。

「先生。あの魔物…枢機卿おどろくでしょうね」

「うむ。じゃが食ったらびっくりするじゃろうな!」

「はい。まさかあんなに美味いと思わないですよね」

「酒があれば言うことないのじゃがな」

「ああ…グレースは南に遠征中で酒はないです」

「ふぉっふぉっふぉっ!それは仕方ないじゃろ!カゲヨシ将軍たちにも食わせてやりたかったのう」

「同じような魔物どっかに居ないですかねぇ」

「わしも見た事ないのう…」

どうやら蟹の魔獣はアグラニ迷宮でしか手に入らないらしい。どうしてあんな海も無いところに蟹がいるのか分からないが、深層まで潜らねば取れないのでかなり貴重だ。次はヘリで魔人で大挙して押し寄せて取りに行こうと決心するのだった。