軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第528話 リュート王国偵察隊 〜ギレザム視点〜

いくつかの都市を調べたが、どうやら転移魔法陣やインフェルノの設置はされていないようだった。アナミスが確認してもデモンの干渉を受けている人間はいない。やはりラウル様が言うように、人間の調査が一番時間がかかる。

「ここまで不思議なくらい何もなかったな」

「だね」

リュート王国の都市調査に派遣されたのは、我、ガザム、ラーズ、アナミス、ルピア、マキーナ、ティラ、タピ、泥棒髭の9名だった。ティラが我の側に居て話しをしていた。ティラはラウル様がいないと、もともとの魔人の頃の口癖がでるようだ。

「上空から見ても何も見つからないようだな」

「うん。やっぱりこっちにはデモン来てないんじゃないかな?」

「そうかもしれぬ。だが西部までリュートの民を送り出したものがいる、その相手は間違いなくデモンか敵の大神官だ」

「ならこれから行く王都が怪しいって事かな?」

「アスモデウスが言うには何も無かったらしいがな」

「アスモデウス?」

「ああ、ラウル様がファートリア聖都で使役なさったデモンだ。我は好かん」

「デモンかあ…でも、ラウル様がよしとしたんでしょ?」

「そういうことだ」

「ならいいんじゃないの?」

「ティラも会ってみればわかる。むしろラウル様がお気を使いなさって、我々や人間に会わせないようにしているんだ」

「ラウル様に気を使わせたらだめだよね」

「だろ?」

ティラとはウマが合うようだ。すると上空の偵察からアナミスが戻って来た。96式装輪装甲車の側に降り立つ。

「どうだ?」

「やはりこのあたりは何もないわ。あの光の柱も見えない」

「そうか」

「ルピアとマキーナにも遠くまで飛んでもらってるけど何もないみたい」

「わかった。ではまもなくラーズとタピが食料の調達から戻ってくるだろう。皆を呼んで来てくれないか」

「はい」

アナミスは再び大空へと飛び立っていった。

「ティラは運転が上手いよな」

「これ好きよ」

我が後ろを振り向くと後部座席には、顔色の悪い泥棒髭の盗賊グールがボーっと座っている。ラウル様との共有用に連れて来たが、特に非常事態も起こらず使う事は無さそうだ。

「ギル」

ガザムが斥候から戻ってくる。

「どうだ?」

「地には何も危険なものを確認できない。大人数で広範囲に調べたら、どこかにあるのかもしれないが、怪しい場所を探しても何もなかった」

「そうか、ならこのまま進むか」

「まもなく王都が見えて来る」

「ラーズとタピが食料を調達して戻ってくる。いったん補給をしよう」

「わかった。王都で何があるかわからんからな」

「ああ」

1時間ほど進むとアナミスとルピアとマキーナが降りて来る。そしてすぐにラーズとタピが見た事のない魔獣を狩って来た。我とティラも装甲車から降りてみんなを迎える。

「戻ったぞ!」

「ラーズ、それは何だ?」

「わからん!だが食えるんじゃないのか?」

「まあ食えそうではあるが…」

それは四つ足の魔獣で、耳の横には巻貝のような角があり毛が体中にフワフワに生えていた。もちろん魔人達は知らないが、地球人が見たらこういうだろう。

羊だと。

だが大きさはやはりこの世界の魔獣らしく、羊の3倍はありそうだった。

「とにかく食うならこの毛はじゃまだね!」

ティラがニッコリ笑って言う。

「なら私が刈ろう」

ガザムが短剣を2本取り出し、その巨大羊の毛を刈り込み始めた。ぶわあぁぁぁぁっと毛が待って、フワフワとあたりに散らばって行く。手がハサミの散髪屋さんのようだ。

「これ集めたらあったかそう!」

「あつめてみようか?」

ティラとタピが飛んだ毛をすべて集めていくと、かなりの量の綿が出来上がるのだった。

「ふわふわ」

「ほんとだ」

ティラがそれに寝転がってみる。

「これ気持ちいいよ!」

「なるほどな。もしかしたら利用価値があるのかもしれない。ラウル様から下賜いただいたリュックに詰めて持ち帰ろう」

それをリュックに詰めさせた。ラウル様に見せれば何か意見をいただけるかもしれない。このあたりの魔獣なのかもしれないが、リュートの国民に聞いてみてもいいだろう。

丸裸になった巨大羊は服を脱いだようになってしまった。

「これはどこに居た?」

「ここから東に行った高山にいた。恐ろしく切り立った急斜面に何頭もいたが、これで撃ったら落ちて来た」

ラーズはSR-25セミオートマチックのスナイパーライフルを持ち上げてみせた。

「ラウル様の武器は本当にすばらしいわ」

アナミスがしみじみ言う。

「ああ。だがそれらの武器はな、ラウル様が自分の為だけに本気で使用した時が一番凄いんだ」

「だな」

「それは…」

我の言葉に、ガザムが頷きマキーナが少し顔をこわばらせる。もちろん我らオーガとシャーミリアが戦った時に見た、元始の魔人の力を思い浮かべたためだろう。

「それなら私たちも見たわ」

「そうね」

アナミスが言う。

「グラドラムでの話か」

「ええ」

そう…我ら魔人達の目に強烈に残っているのは、ラウル様が魔力を大量につぎ込んで撃ち込んだロケットランチャーの火力だった。シャーミリアがラウル様を連れて飛び、上空から逃げるアブドゥルに向けた放った一撃。

「あれは…」

「ああ…」

「あれは魔神様の御業であると思うわ」

魔人達が皆うんうん頷いている。感情的になったラウル様の魔力を大量に吸い込んだ、ロケットランチャーの爆発は大きなキノコ雲を生み出し黒い雨を降らせた。あの時の閃光は皆の目に焼き付いている。

「私思うの」

「なんだティラ?」

「ラウル様が大きな銃火器に、魔力を大量につぎ込んで撃ったらどうなるのかなって」

「「「「「「「……」」」」」」」」

我を含む全員が黙り込んでしまった。想像もつかない炎が世界を焼き尽くすイメージが浮かんでしまう。

「いや、ラウル様はそこまで分かって使わないでおるのだと思う」

「そうよね。いつも魔人達が使う武器に、魔力を並列でつないでいるのはそのためじゃないかしら?」

「うむ。それだからこそ我々はこうして武器を使っていられるからな。もちろんラウル様の魔力が切れても使えるが、並列では威力が低下する事も分かっている」

「そうね」

我はラウル様の真意についてはわからないが、きっと世界を滅ぼすほどの力を使おうとは思っていないはずだ。

「だが、いつまでもラウル様の武器に頼っておるのもなさけない」

ラーズが言う。

「まあそうだが、ラーズよ。ラウル様の命を忘れたわけではあるまい」

「もちろんわかっておる!安全に自己犠牲をせず楽に敵を倒す。安全マージンとやらを取って戦えと言うとる」

「まーじん。ときどき不思議な言葉を教えてくれるよね」

ルピアも嬉しそうだ。魔人達は皆ラウルが使う前世語が好きだった。魔人達の間ではある意味流行語のようにもなっている。

「ぐっじょぶ」

「りすくへっじ」

「いにしあちぶ」

「るーてぃん」

「あくせす」

「もちべーしょん」

皆がラウル様語録を話し出した。実際の意味は前後の文意からつかめるものの、完全には理解していないものばかりだった。だけどなんか響きがカッコいいと評判だ。

「とにかくラウル様は我々の理解を超える存在だ。我々はあのお方について行くだけだ」

「だね」

「うん」

「ですね」

「はい」

「だな」

魔人達が頷く。

「これ、どうするか?」

ガザムが皆に声かける。見ると巨大な羊が内臓を抜かれて寝かされていた。

「この内臓…あいつ食うかな?」

ティラが言う。

「人間以外いけるんだろうか?」

「どうだろう」

ガザムとタピも興味があるようだ。ティラが車両の中に居た泥棒髭を連れて来た。そして泥棒髭がどうするかをみんなで見てみる。

「……」

「食べないね」

「やはり魔獣は食わないんじゃないか?」

「これはラウル様がお入りになる緊急の器だ。これにこんなものを食べさせて何かなったら困る、やめておこう」

こいつらはいろいろと好奇心があるらしいが…これはラウル様が共有される大切なグールだ。何かおかしくなったら困るので、任せておいてはいけないだろう。

「じゃあ丸焼きにしよう!」

「そうするか」

櫓を組んで木に魔獣をひっかけた。そしてラウル様から下賜された火炎放射器で櫓に火を放つ。

「しかしこの魔獣はなんという名前なのだろうな?」

「ああ、魔人国にもグラドラムにもいない」

「でもおいしそう!」

「そうだなティラ」

それからしばらく時間をかけてその魔獣を丸焼きにした。

「ギレザム!斬ってよ」

ティラが言う。

我が腰に携えた刀を抜刀する。そして一気にその魔獣を細切れに切って行くのだった。

「おみごと!」

ティラが笑う。

「食うとするか」

皆がその魔獣を手に取って口にした。

「これは…」

「やわらかい!」

「美味いんじゃないか!」

「本当だわ」

魔人達はどうやらこの魔獣が気に入ったようだ。これはラウル様に報告を入れねばなるまい。この味は恐らくラウル様のお喜びになるはずだ。

補給が終わり我らは再び進み始めた。

「あれが王都か」

「そうだ」

王都が見えて来た。

「車両はここに置く。見張りはラーズに頼めるか?」

「まかせておれ」

「行くぞ!」

我らは王都に向かって進んでいく。王都からはアスモデウスから言われていた通り、人の気配はしなかった。

「全員手分けして、都市内に魔法陣設置が無いか鏡面薬で確認せよ」

「「「「「はい」」」」」

全員が都市内に散らばって行った。都市はだいぶ広いようで調査に1日はかかるだろう。我が中心部分に向かいながら進んだ時だった!

「なに!」

なにか恐ろしい気配が近づいて来る!

「ピィィィィィィ!」

我が合図の口笛を吹くと、ガザム、アナミス、ルピア、マキーナ、ティラ、タピが集まって来た。

「どうした!?」

「なにかあったの?」

「敵?」

ルピアとティラとタピにはまだ感じ取れないようだった。

「ん?ギレザム何か感じるわね」

「ああアナミス」

「なにかしら?」

「一度避難する必要があるな。マキーナはラーズに伝え城壁の門に車両を隠すように言ってくれ」

「はい」

マキーナは直ぐに城門の方にと飛んで行った。

「すぐどこかの建物に隠れよう」

「「「「「はい」」」」」

我の指示で大きめ建物に全員が身を隠した。全員が窓に張り付いて周りを警戒する。

「空だ…まずいな…」

恐ろしいほど強大な力がこちらへと向かって来るのが分かる。この全員でかかって倒せるかどうかというほどのとてつもない気だった。

「あ!」

タピが大きい声を出す。

「どうしたタピ!」

「あの…大丈夫です。味方です」

「どういうことだ?」

「あの、ラウル様の母君のお友達です」

「ん?ルゼミア王のか?」

「それもありますが、イオナ様の親友です」

「イオナ様の!??」

こんな強大な力を持つ者が…ラウル様の母君の…

「皆で迎えましょう」

「あ、ああ…」

タピに言われ都市の広場へと向かった。まだ距離があるがとてつもない気が近づいて来る。

「タピ」

「大丈夫です」

あっという間に上空に現れたのは、とてつもない力を持った巨大な黒龍だった。

「あら?タピちゃん!こんなところで会うなんて奇遇ね!」

そう、ラウルに都市観光を進められた黒龍のメリュージュが現れたのだった。どうやらアグラニ迷宮から真っすぐに飛んでこれたらしかった。

「オージェ様の…」

「いつも息子がお世話になっておりますぅ!」

ヴァサヴァサと物凄い風圧で地上に降りて来るのだった。北の大陸に待機しているとは聞いていたが、いきなりリュート王都に来るとは思わなかった。偉大な黒龍は優しい目で我らを見つめるのだった。