軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第523話 亀竜大爆発

亀の竜が吐く液体の正体が分からないうえに、ムカデを殺せば酸が飛び散る。90層はかなり危険な敵だった。一度89層に戻るか、このままこのメンツで押し切るかの判断に迫られる。

しかし…

「やるか」

俺の判断は戦闘の継続だった。

《カララとゴーグは一度戦車の所までさがれ!あのムカデは地面からそう高くは飛びあがれないようだ。シャーミリアは高度をとって上空から徹甲弾を撃て!無駄撃ちはするな》

《《かしこまりました》》

《はい!》

カララとゴーグが俺が召喚した10式戦車に向かって走り出し、シャーミリアは高度をとりつつムカデの狙撃を始めた。

「ファントム!お前はこれであの亀を殴れ!」

俺はファントムに鈍器となるべき武器を召喚した。

ドン!

T-90Mプラルィヴ ロシア陸軍の新型戦車だ。ファントムはその戦車の砲身部分を持って、トンカチのように亀の竜に向かって振り下ろした。

ズン!ズン!ズン!

竜も首を振り足を振り下ろして、戦車で殴ってくるファントムに対抗し始める。

「とにかく殴り続けろ!」

俺はファントムにそう言い放ち、亀の竜の後ろの方に向かって走り抜けた。

《どこだ…》

俺は竜のある部分を探した。激しく動き回っていた亀の竜はファントムとの殴り合いで身動きが取れなくなっている。その間に俺はある部分を探していた。体が大きい為どこにあるか分からない。

《あった!ゴーグ!カララを連れてこい!ムカデだけは気をつけろ!》

《ムカデは上手くシャーミリアがひきつけていてくれているようです!》

やっぱシャーミリアは以心伝心、俺がやってほしい事を理解して動いてくれている。

《迂回して竜の背中の方に回り込め!》

《《は!》》

ゴーグとカララが到着するまでにやる事がある。俺はおもむろに後方の岩壁に向かって走り始めた。竜からの距離を測って垂直にその岩壁を登って行く。かなり高いところまで登って見下ろすと、シャーミリアはうまく奮戦しているようだ。だが預けた替えのマガジンは2つ、いずれ弾が切れてしまうだろう。その前に竜を殺る必要があった。

「よ!」

丁度良い岩の踊り場のようなところを見つけて飛び乗った。

《ラウル様!亀の後ろにまいりました!》

《よし!カララ!そこから見て尻尾の3メートルくらい上の所の甲羅が見えるか?》

《穴が開いています》

《よし!俺がこれからある物を落下させ、あの亀の上に落とす!その後で俺が落下し榴弾砲を召喚する、糸でその砲の先をあの穴に突っ込んでほしい》

《ラウル様が危険では?》

《大丈夫だ!魔導鎧は思ったより丈夫だ》

《かしこまりました》

丁度その時だった。亀の竜と殴り合って打ち勝っていたファントムの足元に、あの亀の唾液のようなものがふりそそいだ。

「ファントム!」

ファントムの足が地面に縫い付けられるように固まってしまった。どうやらあの唾液は瞬間セメントのような効果があったらしい。

ズボ!

しかしファントムは…地面ごと足を引っこ抜いて竹馬にでも乗るように動き出す。だがその足取りは重そうだった、足が固定されてうまく動けないらしい。

バグン

動きの鈍ったファントムは思いっきり亀の前蹴りを食らってしまうのだった。

ドゴ!

ファントムが岩壁にめり込んだ。

しかし次の瞬間。

ドガガ!!亀の上に落ちてきたのは、俺が召喚した長さ50m重量200トンの自衛隊ミサイル艦のはやぶさだった。亀の竜はたまらずムギュッ!という感じに地面にめり込むように突っ伏した。

その後ろから落ちてきたのはM777榴弾砲に乗った俺だった。

《カララ!》

《はい!》

カララは寸分たがわず、背中の下に10式の至近距離で開けた穴に榴弾砲の砲先を突っ込んでくれた。

《ゴーグ!カララを連れて出来るだけ遠くに離脱しろ!》

ゴーグは返事をせずにすぐさまカララを乗せ、猛スピードで10式戦車の方に走り去っていった。

《シャーミリアは衝撃に備えろ!》

《は!》

そして俺はM777榴弾砲の着火ワイヤーを思いっきり引っ張る。

ズドン!

ボズウウゥゥゥゥゥバーァァァ

亀の竜が風船のように一気に膨らんだ。

バガァァァァン

そして竜は体内から大爆発を起こしたのだった。俺は10式が空けた穴にM777榴弾砲を突っ込み、その体内にサーモバリック弾を撃ち込んだのだった。俺とヴァルキリーはそのまま吹き飛ばされて、恐ろしいほど強く天井にたたきつけられてしまった。

《大丈夫ですか!我が主!》

《意識が飛びそうだ》

《我がうまく着地します!安心してください》

《頼む》

ヴァルキリーは俺を中に入れたまま、うまく着地してくれたようだ。

《…ミリア…ミリア…》

《ご主人様!》

瞬間で俺の側に立ったシャーミリアは悲痛な面持ちで俺を見る。

《…ふう》

俺は大きく息を吐いて落ち着かせる。

《ご主人様!すぐに治療薬を!》

《すまない。ちょっと周りを警戒しててくれ》

《はい!》

ガパン

俺がヴァルキリーから出て来る。

「大丈夫だけがはない。衝撃で意識が飛びそうになっただけだ」

「とにかくお休みください!」

シャーミリアはこちらに向かって来るムカデを、バレットM82で撃ち続けながら言う。徹甲弾で貫かれるものの死ぬことは無く、酸の体液をばらまきながらこちらに向かって来るのだった。

「シャーミリア。後ろのデカ物は船だ!あそこに入ろう!俺を連れて行ってくれ!」

「は!」

《ヴァルキリーはここから撤退しろ》

《はい我が主》

竜の体内で爆発したサーモバリック弾の破壊力で、かなりの損害が出ているようだったがミサイル艦のはやぶさはそこにあった。シャーミリアが俺を連れて飛び、はやぶさの割れたガラスから内部に侵入していく。

「とりあえず船底の方に」

「かしこまりました」

艦内通路を正確に飛びながら船底に到着した。

「ふう」

「なぜにあんなご無理を!」

「いや、ああでもしなきゃあの亀殺せないだろ」

「それはそうですが!」

「ファントムも足を固められてしまったんだ」

「あのウスノロ!」

「いやあいつはよくやった、思いっきり竜に蹴られたから破損したかもしれない」

「どのような状態でも再生いたします。あれの心配などご無用です」

「やっと体が動いて来た。さすがにサーモバリックの至近距離の爆発はかなりの衝撃のようだ」

「私奴もかなり飛ばされてしまいました」

「すまない。とっさの判断でお前にも酷い事をした」

「何をおっしゃいますか!私奴の命など何の価値もございません!とにかく一度カトリーヌ様の下へ!」

「そのまえに」

《カララ!ゴーグ!大丈夫か?》

《ラウル様の機転のおかげで、大事には至りませんでした》

《俺はカララの糸で救われました》

《すまない、逃げ切れなかったか。怪我はしてないのか?》

《動けます》

《ならそのまま89階層へ向かえ、一度体制を立て直す》

《ラウル様は?》

《大丈夫だ。シャーミリアと居る》

《よかった。シャーミリア!ラウル様をお願いね!》

《お前たちは命令を遂行しなさい。私奴はご主人様を連れて後を追います》

《わかったわ》

カララとゴーグを89層へと向かわせた。

「ご主人様…」

「どうした」

「あのムカデたちがこの船の中に入り込んできたようです」

「ムカデは何匹だ?」

「どうやらあれは一匹の頭脳が他の個体に命令を下して動いているようなのです。すべてのムカデが中に侵入して来たようです。どちらの入り口に向かっても遭遇するかと思われます」

「中に逃げたのが失敗だったな」

「私奴が蹴散らして来ます」

「いや…まて…俺に名案がある」

「はい」

俺はすぐさまシャーミリアにやるべきことを説明した。

「では私奴がおびき寄せてきます」

「頼む」

「お任せください」

俺を船底に残して、シャーミリアは船室を出て行った。

《ヴァルキリー》

《はい我が主》

《ファントムを掘り起こしてくれるか?どうやらムカデは全て船の中にいるらしい》

《すぐに取り掛かります》

俺が体を回復させるようにした。しばらく待っているとガチャ!とドアが開いてシャーミリアが戻って来る。

「ムカデはここに向かってきます」

「よし」

俺は壁に向かって大量のTNT火薬を積み上げ信管を取り付ける。

「これは?」

「足止めだよ」

「では」

「ああやってくれ」

シャーミリアが久しぶりにその手の爪を長く伸ばした。本来のシャーミリアの武器である鋼鉄も斬り裂く爪だ。

シャッシャッシュパ!

艦艇の壁に1メートル四方ほどの穴が開いて外が見える。シャーミリアが分厚い鋼鉄の船の壁をその爪で真四角に斬り裂いたのだった。

「来ます」

バガン!

鋼鉄のドアを突き飛ばしてムカデが入って来た。俺とシャーミリアはその四角い穴から外に飛び出して、TNT火薬に火を点ける。

ドガー!!

俺達が見下ろす船底の壁を突き破って爆風が出て来た。

「よし、シャーミリア!」

「お任せください」

シャーミリアが俺を掴んで飛びながらそのままその穴に向かって降下し、俺は今日何度かめのM777榴弾砲を召喚した。シャーミリアがその砲底を支え俺が榴弾砲の上に乗る。破損して穴の開いた場所にその砲先を向けた。

「ワイヤーを握りしめた!引いたら最速で離脱してくれ!」

「かしこまりました!」

グン!

俺がワイヤーを引いた瞬間に、それこそ意識が飛びそうになるくらいの加速でシャーミリアがその場を飛び去った。いや実際に意識が飛んだ。

・・・・・・・

「ご主人様!ご主人様!」

俺が薄っすらと目を開けると、シャーミリアが申し訳なさそうな顔をして覗き込んでいる。

「よおミリア。あれ?今、俺なにやってたっけ?」

「ムカデを、」

「あ、そうそう!どうなった?」

「ご主人様の目論見通り全滅いたしました」

「よし!」

俺は半身を起こしてガッツポーズをする。

「よし!じゃないです!」

「えっ?」

声の方を見ると、カトリーヌが怒った顔で俺を睨んでいる。

「そんな無理をして!もし何かあったらどうするんですか!」

「あ、ごめん。でもチャンスだったんだよ!」

「皆で考えれば、もっと安全にできる知恵があったかもしれません」

「まあ確かにそれも考えたんだけど、皆が危険に晒されてしまうと思ったんだよ」

「なんの為の仲間ですか!」

ポロポロ涙を流しながら言う。

「ごめん」

「まあ、カトリーヌよ。こうして無事に戻って来たのじゃ。まずは90層攻略を褒めてあげるべきじゃろ」

「ほら!先生もこういってるんだし!」

「こりゃ!ラウル!お前はもう少し周りの気持ちを考えい!」

「す、すみません」

あら?モーリス先生も割と真剣に怒ってる。

俺が周りを見渡すと、まず目についたのはファントムだった。あの粘着性の竜の唾液を取り除くためになのか、マリアに焼かれている所だった。どうやらあの粘着液は熱に弱いらしく、ポロポロと取れていっているようだ。ファントムを焼きやすいようにヴァルキリーが担いでいるので、一緒に焼かれているように見える。

「迷宮に入ってから、ファントムがマリアに焼かれている光景を何度もみるなあ」

「トロいのが問題なのです」

シャーミリアが言う。

「トロくはないと思うがな」

「いえ、ご主人様を守りきれぬとなればもっと強化を施さねばなりません」

「えっ!?あれ以上に?」

「どこかで養分の調達をご検討いただけますとありがたいです」

ファントム強化の養分って‥人間数千人とかだよな…

「そのうち考えとく…」

「おねがいします」

「ゴーグとカララは」

「ここに」

「俺もいます」

「怪我はないか」

「私は大丈夫です」

「俺はカトリーヌさんに治してもらいました」

「そうかよかった」

あと誰かいたような気がするが‥気のせいだったっけ?

「あ、あの!私も無事です!」

あ、思い出した。

「キリヤ君も無事で何よりだ。君90層に行ってたら死んでたよ」

「ラウル様の為ならもちろん!」

「えーっと、一応魔人国では自己犠牲はしないという暗黙のルールがあるんだよ」

「わ、わかりました」

どうやら俺達は無事に90層のモンスターを全て討伐できたようだ。逃げ道を塞いだり、束になって攻撃してきたりとかなり知能が高くなってきたように思える。

「とにかく、一度この階層で休憩をとりましょう」

カトリーヌが言う。

「そのほうがええじゃろ」

「でも先生、あんなムカデが出るような場所じゃあ安心して休めないですね」

「ラウルよ、それはそうじゃが仕方ないじゃろうて」

「えーっと…」

この空洞は直径200メートル以上ある。高さも40メートル。

「問題ないです」

ズッズズズゥゥゥン

俺はそこに海上自衛隊の艦艇、輸送艇「1号」型を召喚したのだった。

「ふう」

「おおおおおお!!」

モーリス先生が驚いている。

「これなら堅牢な要塞のようになります」

「じゃ、ろうな…」

「ではみんなで乗り込んで休みましょう!」

「おぬしの魔力は本当に無尽蔵なのじゃな…」

「えっと…竜を倒すたびに力がみなぎる感じがします」

もしかすると竜という種族の魂は、人間の魔法使いなどより重くて大きいのかもしれない。地竜よりも亀竜を倒した時の方が更にそれを強く感じた。きっとこの世界で竜は特別な生き物なのかもしれない。

すっかり粘着液が取れたファントムが俺達の場所に来る。

「ファントム。そのまま警護を頼む」

12.7mm重機関銃を召喚して渡した。

「魔人達は船内に20ミリ機関砲があるから、交代制で見張ってくれ」

「「「は!」」」

さてと、この迷宮はあとどれくらいの層があるのだろうか?90層でこんなに強い魔物が出るとすると、これ以上の深度に潜るのは危険と判断せざるを得ないかもしれない。とりあえず休息をとって魔力を回復させ、明日みんなと相談しようと思うのだった。