軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第512話 魔法陣罠探索

都市内は普通に生活をする人たちであふれていた。活気があるとまでは言えないものの普通に市場などもあり、まるで戦争とは無関係のようだった。さらに俺達は目立っているらしく、リュート人しかいない場所で異国の人間がいる違和感があるのかもしれなかった。

俺、シャーミリア、ファントム、ギレザム、カララ、キリヤ、ルフラ&カトリーヌ。

少年、美女、化物、イケメン、美女、少しイケメン、美少女。

異国の人間じゃなかったとしても十分目立つ面子だ、普通に考えたら旅人というよりも冒険者の方が近いだろう。この地域の奥にはマナウ大渓谷という場所があり、この都市の名もそのままマナウという。その大渓谷にあるアグラニ迷宮を目指して来たと言えば、そう怪しまれる事もないはずだ。

「もちろんギルドなんて無いんだろうけど」

「どこに何があるのかもわからないですね」

「カトリーヌもリュート王国は初めてか?」

「はい」

「もしかしたらみんなも?」

俺の配下とキリヤが頷いた。

「まず警戒すべきは兵士でしょうか?」

「カトリーヌ様。人間の兵士などを処分するのは造作もない事です。もちろんそれも注意すべき事ではありますが、さきに魔法陣の調査を行わなければならないでしょう」

「なるほど。ただこれだけ人目があると、おおっぴらに調査をすることは難しいですね。ラウル様、夜を待ちますか?」

「その方が良さそうだな。それまで召喚魔法陣を発動されたりしたら不味い気もするし」

「では一度、市壁を乗り越えて外に出る事を~」

シャーミリアが言いかけた時だった。

「あの!お兄ちゃんたちは冒険者?」

いきなり声をかけられた。声をかけた相手はまだ幼い幼女だった。

「こら!迷惑がかかるから話かけちゃダメよ!」

10歳くらいの女の子が、後ろから駆け寄って来た。

「でも!やっと冒険者を見つけたんだよ!」

「ルーチカ!」

「だって!」

なんかいきなり姉妹喧嘩を始めた。

「ちょっとまて。君たちはいったい何だい?」

「あのすみません!なんでもないです」

姉の方が言う。二人はフワフワした感じのピンクがかった金髪の、緑色の目をした人間だった。

《この地域の人種なのか?》

「なんでもなくない!冒険者ならアグラニに行くんでしょ?」

幼女が食い下がる。

「いや…アグラニに行く予定は…」

あるかも?今はアスモデウスに調査させているところだ。

「もし行くとしたらなんだ?」

「もし!行くならば!お父さんを探してほしいの!」

「お父さん?」

「うん!」

「ルーチカだめよ!すみません!かまわずに行ってください!ご迷惑をおかけしました!」

姉は妹を引っ張って路地の向こうに行ってしまった。少しごちゃごちしてしまったので、更に視線が集まってしまった。

「行くぞ」

俺が言うと皆が黙って俺について来るのだった。

「ラウル様。あの姉妹なんだったのでしょう?」

「何か事情がありそうだが、俺達に絡んでは彼女らの身に危険が及ぶかもしれない」

「そうですね」

不用意に視線を集めてしまった俺達は、足早にその場を立ち去るのだった。街の中に入って行くと空き地のような場所にでる。

「それでは召喚魔法陣が発動する前に~」

シャーミリアが言いかける。

「あの!」

またいきなり声をかけられた。振り向くとまた違う子供が声をかけて来たのだった。どうやら少年のようだ。

「なんだ?」

「どうしてさっきルーチカの話を聞いてくれなかったんだ?」

「ルーチカ?あの子供の事か?」

「そうだ。あんたらは冒険者なんだろ?」

「俺達が冒険者だと、あの女の子を話を聞かなくちゃならないのか?」

「冒険者って言うのは困っている人を助けるんじゃないのか!?」

《うーむ。この土地の常識なのか?とにかく俺達に幼女を助ける動機がない》

「ちょっと聞きたいんだが、冒険者は人を助けるものなのか?」

「昔は凄い人たちがいっぱいいたんだ!」

「昔は…か?」

「そうだ」

「ギルドなどを通さずに無償で仕事を受ける冒険者がいたのか?」

「それは…」

「ならば、どうして俺達があの子を助けるんだ?」

「…昔なら、依頼のついでに人探しくらいはしてくれたもんだからだ」

「だけど今はギルドが無いじゃないか?」

「ない」

「ならついでってわけにもいかないな」

「ならお金を払えばいいのか?」

「悪いが金にも困っていないんだ」

「じゃあ…もういい」

少年はとぼとぼと歩いて行ってしまった。あの姉妹となんの関係があるのかは分からないが、とにかく俺達になんかにからんだら危険だ。ここは冷たいようだが関わらせない方がいいだろう。

「シャーミリア。人目のつかない場所から外に抜けるってことだな?」

「は、はい。そういうことです」

俺はふと今の少年と、先ほどの姉妹の事を思い出す。

「万が一この都市のどこかに、召喚魔法陣や転移魔法陣があったら彼女らもダメになるんだな」

「左様でございますね」

「なら下手に動いて魔法陣を発動させるわけにもいかないか」

「はい」

本来なら一度外に出た方が良いのかもしれないが、俺はもう一つの案を思いついた。

「どうやらこの都市、ファートリア聖都と同じように地下道か下水道が通っているようだぞ」

「下水道でございますか?」

「ああ、それなら地下に潜んでやれることがあるんじゃないか?」

俺が言うとシャーミリアとギレザムが一斉にカララをみた。

「なるほど私ですわね」

「そう言う事だ」

「かしこまりました」

「さっき路地脇に下水道の入り口が見えたが、あんな目立つところからは入り込めないな」

「では入り口を探しましょう」

ギレザムが言う。

「そうしよう」

そして俺達は目立たぬように人気のない所を選んで進み、地下への入り口を探すのだった。

「ありました!」

ルフラ&カトリーヌ組が見つけた。目立たない路地裏の奥に30センチ幅5センチの隙間が…

「…狭くないか?」

「それでしたら!私が!」

キリヤが張り切って言う。

「壊した後は再構築するんだぞ」

「もちろんです」

キリヤが地面に手を当てて魔力を流すと、地下水道に繋がる小さな枠が崩れるように広がった。人が入れるような広さになり俺達は一人一人地下に降りていく。最後にキリヤが降りて来ると、穴を元通りに戻したのだった。

「キリヤ君すごいな!」

「あ、ありがとうございます!」

イケメンがペコペコしている。

「しかし、くっさいな」

「そうですね」

俺の言葉にキリヤだけが答えた。他の魔人とカトリーヌも何も言わない。

「すみません。私はルフラのおかげで臭いはしません」

「私奴も気にはなりませんが、確かに臭いはするようですね」

「私も多少は気になりますが大丈夫です」

「‥‥‥」

もちろんファントムが気にするとは思っていない。

「カトリーヌはルフラがいるからいいか。じゃあ臭いが気になる人のためにマスクを出そうと思う、要る人!」

キリヤ…ギレザムが手をあげる。もちろん俺もマスクを着けようと思うのだった。俺が召喚したのはM50 ガスマスクだ。口の周りとゴーグルで顔全体を覆うので臭いを気にする事はないだろう。万が一ガスなどが発生していたら危険なので、もうかぶっておくことにする。

コホー

「それじゃあ街の中心に向かって行くぞ」

「「「「は!」」」」

俺達は地下道を街の中心に向かって歩いて行くのだった。あちこちにネズミがいるが魔獣などの気配はないようだ。

「ここが中心となります」

「悪いなカララ、ここからは俺達にやれることが無い」

「心得ております」

俺達はキリヤの背負っているリュックサックから数本の鏡面薬を取り出した。一本一本蓋を開けて並べていく。カララはその瓶に数えきれない糸を垂らして表面に鏡面薬をつけた。

「それでは糸で探索を開始します。途中糸の付け根に鏡面薬を垂らすのをお手伝いください」

「了解」

地下道に沿ってサワサワとカララの糸が広がって行くのだった。糸は至る所にある地下の小さい隙間から地上に出て、そのあたりを鏡面薬で魔法陣を調査していくのだった。

それから1時間以上その場所でカララの糸に鏡面薬を垂らす仕事を続けた。

「ラウル様。どうやらこの都市には魔法陣罠が仕掛けていないようです」

「そうか」

「地下にもそれらしい場所が無く、下水道のみが張り巡らされているだけのようですわね」

「了解だ、それじゃあどこか目立たないところから地上に上がるぞ」

「「「「「は!」」」」」

俺達は再びキリヤの魔法で目立たない場所から地上へと出るのだった。

《この都市にはどうやらアブドゥルは来ていないようだが》

「う、うわ!」

俺達が地下から上に上がると、路地にたまたま入り込んで来た初老の男が驚いて走り去っていった。地面からこんなマスクをしているやつが出てきたらそりゃビビる。

「やべ!マスク!」

俺とギレザム、キリヤがマスクを外した。

「これは怖かったでしょうね」

「変なのをみられたな。誰か人を呼ばれる前にここを離れよう」

俺達はそそくさとその場所を離れて、路地を歩きだすのだった。

「魔法陣罠が無いとなると、敵兵の存在の確認ですね」

「そういうことだ」

俺達は情報収集も兼ねて、街の飲食店街を探し始めるのだった。

「あ、あの!」

「どうしたキリヤ君!」

「飲食店に行くのでしたら、恐らく私たちは臭いと思います」

「ん?」

スンスン

俺は袖の臭いを嗅いでみた。

「なんとなくドブの臭いがするな」

「さっきまで1時間もドブにいましたから」

「こんな状態で飯屋なんか行ったら嫌がられるか…」

「はい」

「ご主人様。アナミスを及び下さい」

「分かった」

シャーミリアはアナミスが出す、甘い芳香で臭いを誤魔化す作戦を思いついたらしい。洗濯などしている時間もないので、それが一番最良な気がする。

《アナミス、人目につかないように市壁を越えて侵入してきてくれるか?》

《かしこまりました》

少し待つとアナミスがスッと俺達の下へと現れた。

「悪いな」

「いかがなさいました?」

「俺達は1時間ドブにいたんだが、どうやら臭いが染みついてしまったようなんだ。力でどうにかならないか?」

「問題ございません」

アナミスからほんのりといい匂いが漂ってきた。俺達がそれに包まれると皆がいい匂いを放ち始める。

「いいぞ!」

「はい。ただ…」

「どうした?」

「これから街に潜入するにあたって異性にご注意ください」

「異性にか?わかった…あの、念のためアナミスも一緒に来い」

「かしこまりました」

俺達は改めて街の飲食街を探し始める事にした。なるべく人の多い所の方がいいのだが、そもそも人間達が俺の欲しい情報を持っているのかも分からない。あまりにも普通の生活を営む人々の中での作戦は、これまでにないやりにくさを感じるのだった。