軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第496話 東方面軍の補給

飛行する巨大ヘリ、キングスタリオンの中はまるで託児所のようになっていた。エミルの加護を受けたことによって、さらに元気になった13人の子供達が…特に小さな子たちが所狭しと動き回っているのだ。最初は飛ぶ外の景色に興味津々で窓にしがみついていたが、しばらくすると飽きたようで遊び出したのだ。

「ほらほら!みんな!飛行中は急に揺れたりするからね、きちんと椅子に座ってベルトをしておこうね!」

ケイナが言うのだが誰も聞こうとはしない。

子供はワイワイガヤガヤとあちこちを縦横無人に走り回る。座るファントムの肩によじ登ったり、グレースの髪の毛を引っ張ったり、アナミスの周りにもちょこちょこ集まって、触っちゃいけないところをパフパフしているようだ。意外なところでいぶし銀のオンジに絡んでいる子供もいる。まるでスイスの高山で山羊を飼っているおじいさんのように見える。

そして…俺が助けた子供は、俺の膝の上から離れようとしない。

「こら!みんな助けてくれた人達に失礼だよ!」

ヴェーラも言うが一人として聞く耳を持つ者はいなかった。

「元気なのは良い事だがなラウル。戦闘になったら危ないんじゃないか? 」

エミルが言う。

「だな。哨戒をやめて真っすぐミノスの所に向かった方が良さそうだ。」

「ではこのまま北西に進路をとるぞ。」

「そうしてくれ。」

キングスタリオンは一路、ミノス達がいる駐屯地へと向かうのだった。

《ミノス。ルピア。》

《は!》

《はい。》

俺は二人に念話を繋げた。

《これからそっちに向かう。》

《お待ちしております。》

《ああ、そしてちょっとばっかし困った事もあってな、救出した人間を連れて行く事になった。》

《人間ですか?》

《ああミノス、正確には子供だな。》

《子供ですか、わかりました。》

《そしてルピアは滞在している人間達に伝えていて欲しい。精霊神の加護を受けた13人の選ばれし子を連れて行くと。》

《わかりました。人間にはそう伝えましょう。》

《ああ、これからずっと面倒を見てもらう事になる。だが精霊神の加護を受けた使徒として丁重に迎え入れるように伝えろ。そうだな…身分は皆より上だと伝えていいだろう。》

《分かりました。神童という事にしますか?》

《ああ。精霊神の使徒で神童たちって事でいいんじゃないか?》

《はい。》

俺はミノスとルピアとの念話を切った。村人はルピアを天使か何かだと思っているので、すんなりと受け入れてくれるだろう。俺の目の前では神童がオンジの髭にぶら下がっていた。

「よし!みんな集まれ!」

俺は子供達を寄せる。何が始まったの?といった顔をして俺の周りに集まった。

「よし!みんな!いいか?お前たちはこの龍を操る精霊神様の加護を受けた。それは分かっているかな?」

「「「「うん!」」」」

「「「「はい!」」」」

小さい子と大きい子で返事が違うが理解はしてくれているらしい。そんなことはかまわずに話を続ける。

「おかげで普通の人とは違う力がついたんだ。その力は決して人を傷つけるために使ってはいけない。それは分かるかな?」

まあ俺が言っても説得力ゼロだが、彼らが後悔するような事になってほしくない。将来的に自分の力に振り回されても困るから今のうちに教え込んでおく事にする。元気になった事で今の自分たちの変化に気づいては、いるらしいので教えるなら早い方が良い。

「「「「うん!」」」」

「「「「わかります。」」」」

ま、そのうち忘れるだろうけど…

「力の無い人達の為にその力を役立てるんだ。ただ一つだけ言っておくとな。」

シーンと俺の話に耳を傾けている。

「無理強いをしてくる者や酷い事をしてくる奴らには遠慮はいらない、力を行使して良い。盗賊のような奴らは特にな。」

「やっつけていいの?」

「命を取られそうになったらな。」

「‥‥。」

「その力はこれから強くなる可能性を秘めている。とにかく将来大人になったら弱い人を守るために使うようにしてほしいんだ。」

「‥‥‥。」

皆が黙っている。理解できなかったのだろうか?

「えっと、分かったかな?」

「ぼくたちだれもきずつけないよ。」

俺が最初に救った子が言う。

「わたしたちがあじわったおもいを、ひとにはさせたくないもん。」

女の子が言う。

「ヴェーラがいったんだ!ひとにわるいことをすればかならず、じぶんにはねかえってくるって。」

違う子が言う。

俺達はヴェーラを見る。ヴェーラは照れるようにして微笑んでいた。

「そうだ!ヴェーラの言う事は正しい、それは常に心に秘めておいてくれ。だが愛する人を守るときや、自分の命を守るときは躊躇なく力を使うんだ。これは俺からのお願いだ。」

「「「「「「はい!」」」」」」

皆が答えた。

「俺から言いたいことはそれだけだよ。あとは自由にしてくれ。」

皆がコクコクと頷く。そして子供たちはさっきのように暴れん坊になる事はなく、ちょっとだけ節度を持って遊ぶようになった。

「あ、あの…ラウル様。ありがとうございます。」

ヴェーラが言う。

「ヴェーラがみんなを導いていてくれたおかげで、ずいぶん聞き分けが良いようだね。」

「うーん。とにかく生きるので精一杯で、言う事を聞かなければ死ぬだけでしたから。」

「そうか…。」

ヴェーラはどれだけの事を背負っているのだろう。領主であった父のいいつけを守る事で、責任を全うしようとしているのかもしれない。だがその責任は10歳かそこらの子には重くのしかかってくるだろう。

《まるでご主人様のようでございます。》

《本当ですわ。》

《私達と知り合ったばかりの幼少の頃には、ラウル様はすでに大きなものを背負っておりました。》

シャーミリアとアナミス、カララが念話で言う。

《そう言われてみれば、そんなこともあったっけな。》

《ご主人様は必死に魔人と訓練をされて体術を身に付け、愛する者を守ろうと必死でいらっしゃいました。》

《確かに必死だったか。》

《彼女もきっと強くなりますわ。》

カララが言う。

彼女…

《えっ!ヴェーラは女の子なの?》

《ラウル様はお気づきで無かったのですか?》

《髪はぼさぼさだし顔は真っ黒だし分からなかったよ。》

いやー男として扱わなくて本当に良かった。もう少しで間違ってしまうところだった。せっかく究極の状況を生き抜いたのに、へんな心の傷を負わせるところだ。

「ほっ。」

軽くため息を吐く。

託児所と化したキングスタリオンがミノス達の居る拠点に着いたのは、それから3時間ほど後だった。着陸したヘリのハッチが開くと、人間の村人たちが膝をついて頭を下げて待っていた。

「いやー皆さん。お出迎えありがとう。」

「ラウル様!何やら神の使徒を連れて来て下さったとやらで。」

話すのは村長のンダベガだった。

「ええ、ンダベガさん。この地で皆様と共に生きるのです。」

俺の後ろからワッっと13人の子供たちが出て来た。ワーワー言いながらあたりを駆けまわる。

「こらー!みんなちゃんとしなさい!」

ヴェーラが怒って出て来るが誰もいうことを聞かない。

「ラウル様。」

ルピアがそばにやって来た。

「おうルピア。皆には伝えてくれたかな?」

「はい。」

「オッケ。」

そして俺は遊び駆けまわる子供たちを見て唖然とする村人たちに言う。

「神童様達は、今はまだ元気に遊ぶ時なのです。それも彼らの仕事のうち、皆様のお仕事は彼らが成人するまでお世話をすること。」

「はい!天使様よりそのように申し付かっております。我が子のように…いや我が子以上に大切にお育ていたします。」

ンダベガ村長が深く頭を下げた。

「うむ。そうしてくれると助かる。くれぐれも精霊神様の大切な神子だと言う事を忘れないように。」

「はい!」

村人が皆頭を下げた。

「ヴェーラ!」

「はい。」

ヴェーラが俺の隣に立つ。

「ンダベガさん。彼女は一番の信徒となる、そして他の子はその弟子だ。」

「はい!」

「じゃあヴェーラ、挨拶を。」

「えっ!えっ!あいさつ?」

「君は精霊神様の使徒だ。これからお世話になるこの人たちに言葉を。」

「‥‥‥。」

うん、ヴェーラは頭の中が真っ白になっているようだ。しかし目の前には神託を待つ村人たちが待っている。

打ち合わせしとくんだったな…。

するとヘリの奥から精霊の力で薄っすら光を纏うエミルがやって来た。

「せ、精霊神様。」

「おおー!」

村人が頭を地面に擦り付けるようにエミルに頭を下げる。

「いいんだよヴェーラ。これから君はこの人たちに面倒をみてもらうんだ、これからよろしくとかそんなんでいいよ。」

エミルがヴェーラにこっそり耳打ちする。

「は、はい。」

そしてヴェーラは村人たちに向き直る。

「皆さん、私たちは東方からきました。既に親も無く今はこの精霊神様を親だと思っております。私たちは年端も行かぬ子供です。いろんな粗相をすると思いますが、時には厳しくそして優しく見守っていただけたらと思います。これからよろしくお願いします。」

ぺこりと頭を下げてヴェーラが言う。なんという立派な挨拶だろう、さすがは領主の子供だ。

「は、はい!何というありがたいお言葉!」

ンダベガが言う。

えっ?そんなにありがたい言葉だったかな?

「本当に…使徒様となればやはり神々しくてあらせられる。」

「使徒様を大切にお守りするのが私たちの役目。」

「むしろ導かれるのは私達の方でしょう。」

村人たちが口々に言う。どうやらルピアがしっかりと仕込んでいてくれたらしい。

「では!皆さん。精霊神の神子の事をどうかよろしくお願いします。精霊神様はいつも見ていますよ!」

「「「「「「「ははー!」」」」」」」

村人たちが地面に頭をこすりつけるようにした。

「じゃあヴェーラ、ここは俺の仲間もいるし安全だよ。何かあったらこのルピアを頼るといい。」

「あ、あのもしかして‥‥天使様ではございませんか?」

ヴェーラがルピアを見て頬を染めた。

「天使…まあそんなところだ。じゃあルピア、ヴェーラたちをよろしく頼むよ。」

「かしこまりました。」

《風呂に入れて髪を切ってあげてくれ。》

《もちろんです。》

ルピアがヴェーラを連れて行く。

「じゃあ村人の皆さん!まずは天使様に任せてください。あなた達はいつもの作業に戻ってよろしい。」

「「「「「「はい!」」」」」

村人たちが散っていった。

《ふう。やっと本題に入れる。》

「ミノス!それじゃあ装備の点検と作戦会議をするぞ。」

「御意。」

「グレースとエミルも来てくれ。シャーミリア、マキーナ、カララ、アナミスは魔人兵の状況を確認し必要兵器数を報告しろ。」

「了解。」

「「かしこまりました!」」

「「はい!」」

俺はミノスを連れて装備の点検をしに行くのだった。

戦闘車両には既に燃料があまり残っていなかった。前線基地からの行軍でほとんど使ってしまっていたらしい。グレースに全て収納してもらうように頼んで、俺は新たに戦闘車両を大量に召喚した。あのデモンの大量駆除をしてからというもの、魔力にはかなりの余裕があるようで、系譜を伝わってくる魔人達からの魔力も凄まじいものだった。

「魔人達の見た目もだいぶ変わったな。」

「はい、ここの魔人達は数度目の進化ですので、かなりの強さとなっているようです。」

ミノスが言う。

「お前は見た目あんま変わらんのな。内包する魔力だけとんでもない事になってるけど。」

「そうですね。我はあまり見た目が変わりません。しかし今の容姿はそれなりに気に入っておりますぞ!昔に比べれば少し細くなって、すこしか弱く見えてしまうところが難点でしょうか?」

えっ?世紀末の拳法家の長男のような、覇者的なぶっとい腕と首と足をした筋肉隆々の大男が?か弱く見えてしまう?レッドベアーとか片手で放り投げる奴が?

意味分かんねー。

そんな事を考えながらも、必要な分の戦闘車両プラスアルファを召喚して配備していく。

「まあこんなもんかな。」

「は!」

一通り戦闘車両などの入れ替えを行い、ミノスとあちこち確認して回っていると、シャーミリア達が俺の下に来た。シャーミリア達が全体の武器の不足分などを報告して来たので、俺はそのまま保管庫に向かうのだった。

「ずいぶん立派な保管庫が出来たもんだな。」

エミルが言う。

「は!精霊神様。ヘリの翼を畳めば収納できるかと思います。」

「だろうね。」

超巨大な、航空機すら入れる事が出来そうな建物が出来ていた。前世なら空港にありそうな巨大な建物だ。ここに来てからそう日数もたっていないと思うのだが…。その建物に入っていくと更に奥に繋がる扉があった。

「奥が保管庫です。」

奥に行くと理路整然と武器が並び、丁寧に手入れをされているようだった。

「手入れとかちゃんとしてんだ?」

「もちろん、ラウル様より下賜された大切な武器です。使わぬ時は手入れして保管しております。」

「30日で消えるのにご苦労なこった。」

「30日でも大切なものです。」

「そうか、お前達の気持ちは分かった。だがいったんグレースが全て引き取るよ。」

「わかりました。」

俺は現存する武器を全てグレースに収納してもらう。グレースは車両も全て収納したにもかかわらず、まったく気にする様子もなく次々に武器を収納していった。

「しかし虹蛇の保管庫って凄いのな。」

エミルが言う。

「お前は虹蛇の本体を見た事ないんだよな?」

「ああ。」

「空を埋め尽くすほどだぞ。」

「へぇ~。そりゃ入るか。」

「ああ入ると思う。」

グレースが武器を収納する側から、俺は次々に銃やロケットランチャーや機関銃を召喚して並べていく。さらに過剰なくらいの弾薬と砲弾を召喚して置くのだった。

「よし!ミノス。外に出て兵を集めろ。」

「あのラウル様。」

「なんだ?」

「数度進化をくりかえしておりますので、全員念話が通じるかと。」

えっ?そんなことになってんの?

「わかった。」

《ここに駐屯している魔人軍に告ぐ!今すぐ携帯している武器を持ち保管庫の家屋の前に集まれ!》

俺が念話で伝える。

そのまま保管庫から外に出ると、既にビシィっと魔人達が整列をして並んでいた。武器は片づけやすいようにみんなの前にきっちりと並べられている。

「グレース頼む。」

「了解です~。」

グレースが武器を収納している間、俺は魔人達に話をする。

「これからこの国に残った残敵を探し掃討する!そのため武器弾薬は全て刷新し置いて行く。お前達にはファートリア東部の探索及び制圧をお願いする事になると思う。デモンなどの強敵が潜んでいる可能性は高い!気を緩めることなく事にあたれ!」

「「「「「「は!」」」」」」

大勢の魔人達が返事をする。隊列は真っすぐで誰一人として姿勢の悪いヤツなどいなかった。見た目が俺に近くなり、人間の軍人のように見える。

こいつら、たぶん…デモンなんか余裕だろうなあ…

今までの直属部隊の成長を考えると、ここにいる奴らはかなり戦力アップした事が分かる。聖都から一番近い位置にいた為、その恩恵も大きかったのだろう。この部隊には東方を担当させ、更に東のリュート王国まで守備範囲を広げても良いかもしれない。

魔人の成長ぶりを見て、俺は次の展開を想像するのだった。