軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第484話 神的な物質

サイナス枢機卿とオージェとエミルが、光の柱の周りを回ったり地面を調べたりしていた。それを俺達は離れた場所から観察している。どうやら3人が近寄っても何も問題は起こらないようだった。

「先生。どうやら彼らは問題なく近寄れているようですね。」

「そのようじゃな。」

「地面を掘っているようです。」

「地下にまで伸びているか見とるんじゃないか?」

「聖都で地下には伸びてなかったですがね。」

「うむ。そうじゃが、どのような状態で生えているのかを確認しとるんじゃろ。」

「なるほど。」

そして俺達が見ている先で、枢機卿はおもむろにその辺にあった石を拾う。

「あれ…何をするんでしょう。」

「なんじゃろな?」

すると枢機卿は拾った石を光の柱に放り投げた。

「あぶなっ」

「ほっ?」

俺とモーリス先生が、サイナス枢機卿の行動にひやりとしたが、投げた石は反対側に抜けて出て来たようだった。

「あれ通過しちゃうんですね。」

「そのようじゃな。」

光の柱に特に変化は起きなかった。

オージェがゴーレムに何かを言っている。

「あれ、僕のゴーレムに何か言ってますね。」

グレースが言う。

「だね。」

するとゴーレムは躊躇なく光の柱に突っ込んでいく。

「えっ!」

「おほっ!」

「ちょっちょっちょっ!」

俺と先生とグレースが声を上げる。

しかしゴーレムは何事も無かったように反対側に出て来た。

「ゴーレムも通過するんですね。」

「本当じゃな。」

「せっかくコマンドいっぱい覚えさせたのに、ひやりとしましたよ。」

そして、そのまま俺達が見ていると今度はエミルが二人に何やら話している。

「何を話してるんでしょうね?」

「なんじゃろな。」

「ラウルさんの無線を渡しておくべきだったんじゃないですか?」

「いや、しっかりした3人だからあんなことすると思わなかったんだ。」

「まあ確かに。」

そして俺達が見ていると、エミルの頭の上にふわりと何かが出て来た。人の形をしているが見た感じ何かの上位精霊らしい。

「なんと…風の上位聖霊じゃぞ。」

モーリス先生が驚いている。

「あれ、そうなんですか?」

「あれはシルフじゃな。」

何をするかを見ていると、シルフが空中を飛んでおもむろに光の柱に突っ込んだ。

「うわうわ!」

「ほほっ!」

「大丈夫なんですかね?」

しかしシルフは何も無かったように光の柱を通過して反対側から出てきたようだ。

「どうやら精霊は問題が無いようじゃな。」

「そのようです。」

そしてまた3人が相談をし始めているようだった。

「今度は何をするつもりでしょうかね?」

「ふむ。そろそろ止めに行った方が良いような気がするのう。」

「私が呼んで来ましょうか?」

「そうだなマリア。なんか見ててヒヤヒヤするし、一旦呼んで来てくれ。」

「はい。」

そしてマリアは俺達の下を離れ、サイナス枢機卿達の下へと歩き出した。

だが次の瞬間

俺達は信じられないものを見たのだった。

いきなりサイナス枢機卿が光の柱に入ったのだ。

「うおい!!!」

「あ、あやつは…何を考えとるのじゃ!」

「ちょっと、マリアさん急いだほうが!」

「はい!」

マリアが一目散に光の柱に走り出した。

俺達が見ている先で行われている蛮行を止めるために。

しかしサイナス枢機卿は反対側からスッと出て来た。すると今度はオージェとエミルが光の柱に手を突っ込んでいる。そこにマリアが到着して3人に話を伝えていた。少しの時間をおいて4人がこちらに戻ってくる。ゴーレム2体はその後ろをのっそりと付いて来ていた。

「な、なにをやってるんですか!」

俺が大きな声を出す。

「なんじゃ?藪から棒に、大きな声を出しおって。」

サイナス枢機卿は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。

「オージェとエミルがついていて何やってんの!」

「ラウル、なに怒ってんだよ!」

「ホントだな。」

「お前達3人を送り出したのはわしらじゃが、無謀すぎやせんかの?」

モーリス先生が穏やかに言う。

「さすがの僕もヒヤヒヤしましたよ。」

グレースも言う。

「ああ、なるほどじゃな。いや向こうでエミルにいろいろやってもらっておったのじゃよ。」

「エミルが?」

「先に下級精霊を放って調べたんだよ。精霊の皆が言うには危険な物じゃないらしい。」

「それを聞いてあちこち調べたんじゃが特に問題は無さそうじゃった。」

「精霊に聞いたら、何かを放って見ろって言うんでサイナス枢機卿にそう伝えたのさ。」

「それで石を投げたと?」

「そう言う事じゃな。」

「そのような事をやっておったのか。」

「ふむ。精霊神がついていての事じゃ。わしが単独ならもちろんそんなことせんわ。」

「ま、まあそうじゃろうな。」

どうやら危険じゃない事を分かっていてやってたらしい。俺達からはそれを知る事は出来なかったので、思いっきり無防備にあんなことをやり始めたと思っていた。

「しかし、枢機卿が自らが入ってみるなど、ちょっと軽率に感じましたよ。」

「先に上位精霊が通ったじゃろ?そのシルフが問題ないというのじゃ。わしも多少の疑問は感じたが、何も収穫が無いのでは子供の使いになってしまうじゃろ?」

「分かりました。とにかく何も無くて良かったです。」

とりあえず向こうで何が行われていたかが分かって安心した。

「それでな、中を通ってみたのじゃが。」

「どうじゃった?」

「何も。」

「何もじゃと?」

「そうじゃ。」

「抵抗の一つも無かったということかの?」

「そう言う事じゃな。」

なるほどサイナス枢機卿の体には何も影響がないようだ。それならあの光の柱はそれほど危険視する物では無いのかもしれないと言う事か?なら聖都の復興も早いかもしれないが…

オージェが少し考えるようにつぶやく。

「そうなのですが…」

「どうしたのじゃ?」

「モーリス先生。私が手を入れた時には少しの抵抗と、温度変化のような物を感じた気がします。」

「そうなのか?」

「はい。」

オージェが手首の部分をさすりながら言う。

「えっオージェそれ。」

俺がオージェの手首を見て言う。

「あれ?」

オージェの手の皮膚の色がほんの少し変わっていた。手首から先がほんの少し赤っぽくなっているような気がする。

「…俺もだな。」

エミルが手を出すと手の色が少し変わっていた。

「ふむ。これは…火傷じゃな。」

モーリス先生が言う。

「ん?痛くはないですよ。」

「俺もです。」

「聖痕にも似てるのう。」

サイナス枢機卿が言う。

「えっ!どうしましょう色変わっちゃいましたけど!」

エミルが慌てる。

「大丈夫じゃ。手を出して見よ。」

サイナス枢機卿がスッとエミルの手を包むようにかぶせてすぐに離す。

「消えた。」

「ほ、ほんとだ!」

「オージェもほれ。」

「は、はい。」

オージェが手を出すとサイナス枢機卿がスッと手をかぶせ、オージェの手の赤みも消えるのだった。

「よかった。」

サイナス枢機卿が神聖な術を使って治したらしい。やっぱりこの人はファートリア神聖国の枢機卿をやっていた人だ、神を受体している二人の手をあっさりと治した。

しかし…万がいちがあったらどうするんだ…

「サイナスには無害じゃったということじゃな。」

「そのようじゃ。」

「どういう事じゃろな?」

「神的な何かとも考えられるのう。」

「まあ聖痕のような物が残ったからのう。」

「うむ。」

「枢機卿、いったいどういうことですか?」

俺が聞く。

「精霊には問題が無く、無機質なゴーレムにも問題が無い、そしてアトム神を信仰するわしにも影響がない。しかし龍神と精霊神を受体しとるはずの二人には影響があった。そう考えれば、あれが神的なものと考えるのが妥当じゃろう。」

「えっとそうだとすれば、なんのためにエミルとオージェに跡を?」

「何かを伝えたいのじゃろうな。」

「何かを?」

「そうじゃな。」

なるほど、同じ5大神の二人に何かを伝えたがっていると言う事か。とすればアトム神の影響を受けた何か、と考えるのが妥当なのかもしれない。

「ラウルよ。」

先生が何かを思いついたように言う。

「はい先生。」

「やはり魔人達には不用意に近づかんように伝えよ。」

「分かりました。」

「ラーズもゴーグもあれに近寄る出ないぞ。」

「御意。」

「はい!」

二人が頷く。

「ラウル、ファントムにも言っておくれ。恐らくはその性質上、一番近づいてはならんように思う。」

今度はサイナス枢機卿が言った。

「ファントム、あの光の柱には絶対に近づくな。」

「‥‥‥。」

「それで伝わったのかの?」

「大丈夫です。あとは魔人達に一斉に伝えます。」

俺は念話で一斉につなげる。

《みんな聞こえるか?》

《《《《《《《《《《《《はい!》》》》》》》》》》》》

《ファートリア国内にいる直属の魔人全員に告ぐ!》

シャーミリア、カララ、マキーナ、アナミス、ルピア、ギレザム、ガザム、ドラン、ミノス、スラガ、セイラ、ウルドの12人が一斉に返事する。

《全員に命令だ。絶対に光の柱に近づくな。もし光の柱を確認したら距離を置くように。》

全員が返事をしてくる。

《特にシャーミリアとマキーナは間違っても触れるなよ。》

アンデッド不死身系といえば二人も同じなので忠告しておく。

《かしこまりました。》

《仰せの通りにいたします。》

そして俺は最後に配下にしたアスモデウスに伝えるのだった。

《お前はあれが何か知っていたか?》

《存じ上げませんでしたが、君主様の御心は伝わっております。もとより私はあれが苦手でございました。》

《なるほどな。まずは近寄らんようにしとけ。》

《私にお気遣いをいただけるとは、なんという光栄でございましょうか。使い捨ててくださって結構でございますのに。》

《まあせっかく俺の系譜に入ったんだ、わざわざ使い捨てなんてするわけないだろ。》

《かしこまりました。我が魂、君主様のお好きにお使いください。》

《わかった。》

アスモデウスが光の柱を苦手って言う事は、やっぱりアトム神の影響を受けた何かなのかもしれない。

…と言う事は?敵は俺達の対策として、あの魔石粒を飲ませた人間をばらまいたのだろうが、逆に裏目に出た可能性があるぞ。あれはデモンを退ける能力がある柱だ。アトム神はあれを使ってデモンを追い払いたかったのだろうか?

そう考えると敵はもしかしたら‥‥

案外行き当たりばったり、もしくは計画性の無い愉快犯的な性質なのかもしれないな。

《とにかく全員光の柱には十分注意するように。》

緊急通達をして念話を切った。

「伝えました。」

「ふむ。」

「それであれば、あれはどうすればよいでしょうかね?」

「もしかするとじゃが。」

サイナス枢機卿が答える。

「はい。」

「真面目な聖職者ならば、あれを脅威とせずに聖都復興に邁進できるのではないかな?」

「その可能性はありますね。光の柱はむしろ悪しき者から、身を守る可能性があるかもしれません。」

「そうかもしれぬな。」

なんとなく安易にそう言った。

「まて、それは早計じゃろ。」

するとモーリス先生が言う。

「どうしてじゃモーリス?」

「あの光の柱の目的、もしくは最終的な効果を誰も知らんのだぞ、手放しでそれを受けいれるのはだめじゃろ。」

「‥‥まあその通りじゃな。」

「とにかくじっくりと調査を重ねてからにした方がいいじゃろな。」

モーリス先生の言うとおりだ。あれがアトム神の影響を受けた何かと考えたにしても、それが必ずしも良い方向へ向かうとは考えられない。まずは光の柱がもたらす結果を見るべきだった。

そこで一つ俺が思い立ったことがある。

「あの…。」

「なんじゃラウル。」

「先生。私の武器をあの光の柱に放り込んだらどうなるでしょう?」

「‥‥そうじゃな。ありとあらゆる実験をする必要があるじゃろうし、それはすぐに試せそうじゃな。やって見ても良かろう。」

「はい。」

俺は直ぐにブラックホーネットナノ小型偵察ドローンを召喚した。

「では。」

操作用のコントローラーを操って、虫のようなドローンを光の柱へと飛ばしてやった。光の柱の周りを回らせてみる。

「やっぱり画面には映りませんね。小さいので双眼鏡で覗いてください。」

モーリス先生、サイナス枢機卿、マリア、グレースが双眼鏡で覗いている。

「ゴーグとラーズは見えているな?」

「はい。」

「見えております。」

「オージェとエミルは?」

「俺は大丈夫だ。」

「俺は精霊で追えている。」

ファントムは特に見てもらわなくていいな。

「では突入させます。」

俺はコントローラーを使って、目視でブラックホーネットナノ小型偵察ドローンを光の柱に突入させた。

スッ

そして…

出てこない。

反対側から出そうとしていたはずだが…

出てこなかった。

「ん?ラウルどうした?」

「直進させているはずだが、消えたようだ。」

「ちょっと待っておれ。」

サイナス枢機卿が言う。

「どうするのです?」

「わしが見て来る。」

「あの!くれぐれも無理はしないで下さい。」

「わかっとる。」

「では今度は私が付き添います。」

マリアが言う。

「ああ、マリア。これを持って言ってくれ。」

俺は無線機を召喚してマリアに渡す。

「はい。」

枢機卿とマリアは光の柱に再び近づいて言った。

「どうだ?」

光の柱の周りを二人がウロウロしているので聞いてみた。

「どこにも…ありません。」

「そんなはずはない、電波が途切れて落ちたのかもしれない。」

するとまた…サイナス枢機卿は無造作に光柱に突っ込んで反対側から出て来る。

「また入る!」

ほんとあの爺さんひやひやする。案外考え無しな性格なのかもしれない。逆にモーリス先生は飄々としてはいるが、その行動は考えた上での行動の事が多い。正反対の性格のような感じだが、どっちも好奇心モンスターだから何とも言えないか…

「枢機卿は無事のようです。」

「それで?」

「ラウル様のドローンはどこにも落ちていないそうです。」

「マジか…。」

俺は皆を見る。

「ラウル…どうやらおぬしは、あれに近づかん方が良いようじゃな。」

「は、はい。」

「俺達で良かったよ。」

「本当だ。」

「だな。マジで感謝だ。」

俺の召喚兵器が光柱に入ると消えてしまうという現象が起きてしまった。もしかしたらアトム神を怒らせる何かがあったのかもしれない。

俺は、俺を調査に行かせなかったみんなに感謝するのだった。